戦士たちの非日常的な日々   作:nick

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93時間目 光なき荒野を越えて

 

〜ナツルSide〜

 

 

なんだ、一体。

 

 

『なまじ色々と出来ると大変だなぁ!ギリギリになんねぇと本音も吐き出せねぇ』

 

 

普段から授業で使う体育館。非日常な力を持つ相手と敵対している途中で、目の前にいきなり青白く輝くカードが出現した。

 

それだけでも十分"ありえない"ことなのに、空中に浮かぶソレから発せらる声が辺りに響く。

 

 

『一生喚ばれねぇんじゃねえかとヒヤヒヤしたぜ!』

 

 

喚ばれるって……あのカードはもともとマーガレットのものだろ?ついこないだ貰ったのに一生もなにも――

 

待てよ、何かおかしい。

 

確かにカードはマーガレットから貰った。そのあとはブレザーの胸ポケットにしまった。

 

そこからは一度も出した覚えはない。

そしてブレザーは九鬼家のメイドか執事に持ってかれたままだ。

 

…なんであのカードが今ここに?

 

 

『人からの貰いもんなのは確かだけどよぉ、お前の物になった瞬間からただの物質じゃなくなったのサ』

 

 

? どういう意味だ?

 

 

『完全にお前の一部、お前の力になったって事よ。さっき願ったろ』

 

 

 

"最強じゃなくていい。ただほんの少し、大切な友だちを守れるくらいに強くなりたい!"

 

 

 

…確かに願ったな。

 

でもまさか答えが返ってくるとは思わなかった。

 

 

『だがよぉ、こっから先は一本道だ。一度進んだら後戻りはできねえ』

 

『やめるんなら今のう――』

 

 

バリンッッ!

 

 

グダグダと無駄話が続くのを無視して、浮いている発光カードを握りつぶす。

 

なぜそうしたのか、別に理由はない。強いて言えば()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「死ぬ直前まで行った奴によー…覚悟もクソもねーだろ」

 

握りしめた拳の隙間から光の粒子が溢れていく。

水滴のように下にではなく、舞い上がる火の粉のように、より高い位置へ。

 

それを視界に収めながら、再びエリザベスを睨みつけ、喧嘩腰の荒々しい構えを取る。

 

「人生はいつだって一方通行だ。回れ右はできねえ。でもな、道は一つじゃない!」

 

『ンガッハッハ!!いいねいいねぇ!さいッ高にイカしてるじゃねえか!!何かいいことでもあったか!?』

 

 

立ち昇る光の粒子が俺の頭上に集まっていき、一つの人形を作り上げる。

 

ブリキの人形のような体躯に人の頭部を付けたような男。

 

全身は闇のように黒く、静脈のような青色のラインが首から下のあちこちに走っている。

 

頭と身体の境目を隠すように巻いているボロ切れのような群青色のマフラー。

片手には三角ベースのような形の改造ハープ。

 

片目が黒髪で隠れる顔の口は耳元まで裂けるように開かれ、常に何かを叫んでいるようにも見える。

 

 

これが俺の力……願った証………

 

 

不思議だ…さっきまで心身共に死にかけだったのに、全身に限界以上の力が漲る。

 

まるで魂から何かが新しく産まれてきたかのような…不思議な感覚がする。

 

 

確信した。俺は今、一段階"強く"なった!!

 

 

「今日が俺のバースデイだ」

『イーねぇ。それじゃぁ とびきりド派手にぶちかまそうカァ!』

 

「いくぞペルソナァッ―――ダークオルフェウス!」

『オーーケィィ 汝は我!!』

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

『資格を得たか…』

 

エリザベスが口を開く。

 

無表情、青白く光る瞳。

さっきまでとなにも変わらない。

 

しかし決定的に違う点がある。ペルソナに目覚めるまでは見えなかったものが。

 

エリザベスの背後に不動明王のような、とにかくでかくて存在感のある物体がこちらを見返している。

 

さっきから受けてたのは奴の拳かなんかか。痛いわけだ。

 

『"それ"は悪魔の力を借りた紛い物ではなく、貴様の意思が形になったもの…貴様自身の手で得た強さを確かに感じる…』

「そりゃどーも」

『しかしそれが我に通じるとはかぎらぬ。故に、チェックをしてやろう。ペルソナチェックを』

 

ソレさっきコイツが言ってた事だな。正確にはエリザベス(本体)だけど。

 

『自らを由とし、生を行使する者こそ加護すべし…未踏の大地を、己の足で踏みしめる者こそ祝福すべし……』

 

『あらためて名乗ろう…我が名はゼウス。見せてみろ…貴様の力を!』

「ラウンド・ツー、だ」

 

その台詞を合図に再び死合(たたかい)が動き出す。

 

俺と明王が同時に片腕を引き、踏み込んで同時に突きを放つ。

 

 

 

ドン――――――ッッッ!!!

 

 

 

「わぁぁ!?」

「くっ!!」

 

ぶつかり合う両方の拳を中心に発せられた衝撃波に煽られ、善くんと玲ちゃんが驚きの声を上げる。

 

『ペルソナを使わず身一つで我と互角だと!?』

 

同期でもしているのか、エリザベスと共にエセ明王が驚愕の表情を浮かべる。

 

小山のような体躯をした存在が180cm(センチ)の人間を吹き飛ばせないのがそんなにショックか?

さっきまで散々好き放題かましただろ。テメエのターンは終わりだ。

 

「おおお!!」

『なっ!?』

 

 

ガンッッ!!

 

 

さらに力を込めて相手の拳を弾き返す。

 

見えてりゃ押し負けたりなんかしねえ。山よりデカくてヤバい奴らと戦い(やり)合って来たんだからな!

 

「オルフェーーース!!」

 

 

――ソリッドアンプ!

 

 

ドギャッッッ!!!

 

 

『ガ――――!!?』

 

 

ダークオルフェウスの腹部のスピーカーから、音波の弾丸のようなものが放たれ、ゼウスの胴体を貫通する。

 

と言っても、外見上身体は無傷だ。()()()()()()()

 

 

「どうよ。虫だの羊だのと見下してた"人間"からダメージ受けた気分は」

 

『ぐッ…調子に乗るなァッッ!!』

 

 

――ジオダイン!!

 

 

ジジジジッ!!!

 

 

先ほどまでのよりは規模が小さいが、それでも巨大な雷が一直線にこちらに放たれる。

 

「ダークオルフェウス!」

『オゥヨッ!』

 

 

――音壁!!

 

 

ゥ“オ"ォ“ン!

 

 

『なに!?』

 

直撃する筈だった雷は俺の目前で急に軌道を変え、すぐそばの床を砕いて消えた。

 

「理科の授業で習ったんだけどさー、カミナリって風とか空気の流れの影響モロに受けるんだろ?」

 

散らばった床の破片を足でいじりながらなんとなしに口を開く。

 

どうでもいいがここを破損させた請求は誰に行くのかね。俺は払わないぞ。

 

「俺のペルソナは音を操る。そして音は空気の振動だ」

 

偶然かもしれないが、相手との相性がいい能力に目覚めた。

さてどうギッタンギッタンにしてやろうか……?

 

『………』

「…?」

 

仕返しのプランを練っていたが、相手の静けさに思わず中断する。

 

なんだ…?なにを考えている……?

 

気のせいか胸騒ぎがする。奴の…エリザベスじゃない、あの巨人の視線は…

 

『膂力、胆力、ペルソナ能力…それに貴様自身の未知の力。全てが我と一騎打ちをするに十分なものだろう。しかし』

 

巨人が拳を固め、両腕を高く振り上げる。

 

 

―――バチ"ッ、バリバリバリバリ!!!

 

 

「!!?」

 

体育館の天井に届きそうな位置にあるそれ(・・)から青白い光と電流が迸り、轟音と衝撃が辺りに響く。

 

「きゃあっ!?」

「くっ!!」

 

「!」離れた場所から善と玲の悲鳴が――コイツまさか!

 

『一人なら勝てたかもしれぬな。しかし、所詮は群れる羊よ』

「てンメェェェェェェ!!!」

 

叫びながら急いで二人のもとに走り出す。

 

完全に巨人に背を向けることになるが気にしてなんかいられない。奴の狙いが俺の予想通りなら!

 

『サンダージハード!』

 

背後で拳が振り下ろされる気配を感じる。

 

それと同時に室内を覆っていた光が、無数の青白い剣へと変わる。

剣先は地面に壁に天井にと、規則性なく乱雑に向けられており、鋭く尖った形状は触れただけでも簡単に皮膚を貫きそうだ。

 

いや、創作工程を考えたら柄の部分でも触ることはできないだろう。そんな凶悪な凶器が――

 

 

無防備な二人に、今、落とされた。

 

 

………その光景を見て、なぜか冷静でいられる自分がいた。

ビデオのスロー再生のように、世界が緩慢な中、俺だけが取り残されている。

 

 

なにをしているだ。俺は。

 

 

助けたかったんだ。守りたかったんだ。

友達を、救いたかったんだ。()()()()

 

でもなにもできない。せっかく力を得たのに、手が届かない。

ほんの少し、希望を持たせただけで、見殺しにするのが俺の限界なのか………

 

 

"私を使え、ナツル!"

 

 

!?

 

先程のダークオルフェウスの時同様、いきなりカードが目の前に出現し、脳内に直接声が響く。

 

 

"お願いだ急いで、信じてくれ…!"

 

 

声は焦った様子で語りかけてくる。

聞いたことのない声。しかし、なぜか懐かしい気がする。

 

 

"今度こそ君の、君たちの役に立ちたいんだ!"

 

「役立たずなんて思ったことねえよ!!」

 

 

バリンッッ!!

 

 

浮いているカードを掴むように握りつぶす。

 

 

 

"我は汝…汝は我―――

 

 

 

〜美鶴Side〜

 

 

瀬能が突如出現した新しいペルソナカードを砕いた瞬間、彼の姿が消えた。

 

いや彼だけではない。善と玲の二人も消えた。

 

「っ、」

 

驚愕の声を発する直前で、画面内がおかしいことに気づく。

 

青白く光る剣――おそらくは電撃でできているのだろう――の剣撃の間を縫うように影が通過していっている。

 

「スロー再生してみますっ」

 

研究員の一人がモニターを操作する。

 

画面内の動きが鈍くなり――浮かび上がる人影。人影?

 

善と玲を両脇に抱え、空中を飛ぶように跳ね回る…紳士服のような物を着た人の形をした猫。それが影の正体だった。

 

意味がわからない。

 

あれが…瀬能?なのか?

 

 

「は…はは……」

「まさかワイルドとは…」

 

私と同じく映像を見ていた研究員が乾いた笑いを漏らす。

 

ワイルド…複数のペルソナを扱える者。

 

ペルソナ使いの中でも稀有な存在だが、瀬能はその中でも…いや私が見てきた使い手の中でも群を抜いて変わっている。

 

「自らがペルソナとなるペルソナ使いなど異質にもほどがあるだろう…!」

 

再生速度が通常に戻った画像で、エリザベスさんの攻撃を全て躱した黒い猫が丁重に二人を下ろす。

 

そして、その場にいる誰のものでもない声がした。

 

 

『我は汝、汝は我』

 

『私は君の心の海に輝く星――フェクダ』

 




■ ソリッドアンプ
 カービィ。ロボットが主な作品でマイクコピーの技。

■音壁
 トリコ。原作では一枚板みたいな感じだけどナツルは割とテキトーにドーム状とか色んな形にしてます。

ペルソナのステータスについては追々一話使って解説します。多分(ヲイ)

そろそろ展開に飽きてませんか。作者は飽きてます。
真面目にバトる展開書くのちょっと…だから4年ぐらい間開いたんですよねぇ…

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