戦士たちの非日常的な日々   作:nick

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95時間目 大逆転・ミラクルK.O.

 

〜〜〜〜

 

 

――真紅の手品(レッド・マジック)真拳奥義「布の魔術」

 

 

バフッ

 

『なにぃっ!?』

 

 

ゼウスの攻撃が当たる瞬間、ナツルの身体を人ひとりがすっぽり覆えるくらいの白い布がいきなり出現し、その姿を隠す。

 

シーツのような布に包まった程度では防御にもならず、ナツルは高圧電流の刃の餌食に…とその場にいた全員が想像した。

しかし結果は()()()が刃に当たり、すぐに燃え尽きた。そこにナツルの姿はない。

 

「あれっ、えっ、ナツルくん!?」

「なに?」

 

 

――真紅の手品(レッド・マジック)真拳奥義「黒箱の魔術」

 

 

虚空からいきなり出現した大型の黒い箱から当然のように出てくるナツル。

 

「ふぇっ!?」

「瀬能!?」

『なっ!』

 

全員がギョッとして注目が集まる。

 

「…………」

 

なんでちょっと照れるんだ。

 

『貴様っ、何をした!』

「どうも俺が目覚めたのはペルソナ能力だけじゃないみたいだな」

 

右手を軽く掲げ、手の甲と掌を交互に裏返し、何も持っていないことを見せつける。

 

それを数回続けたのちに――素早く手を振ると、その手に数十枚のトランプが握られていた。

 

「わっ!すごい!」

「…手品か?」

「こんなの一度もやったことないんだけどねぇ」

 

タネも仕掛けもございません。と呟きながら、バラっとカードを無造作に放り投げる。

 

 

――真紅の手品(レッド・マジック)真拳奥義

「トランプの魔術」!

 

 

ザザザザザザザ――――ッッ!!

 

 

『ぬぅっ!?』

 

 

投げ捨てられた無数のトランプが数秒だけ空中を漂い、一斉にゼウスへ向かって飛んでゆく。

 

ただの紙製のカードのはずなのに、一枚一枚が鋭い刃のような切れ味を持ち、ゼウスの身体に切り傷をつけていく。

 

――パチッ

 

ボンッ!

 

『ガァッ!!』

 

 

ナツルが指を鳴らすとカードが爆発し、ゼウスにまたダメージが入る。

 

 

「こんな小手先だけの技で入るダメージたかが知れてんだろーが、」

 

 

青い光がナツルから溢れる。

次いで虚空から現れたタロットカードを、警戒した様子もなく自然に握る。

 

 

「隙を作るにゃちょうどいい」

 

パキィン――

 

「カグヤ!」カッ!

 

 

他のように召喚されたのは、身体の周囲に十二単(じゅうにひとえ)のような羽衣を纏わせたメタルティックな宇宙人のような見た目で、頭部にウサギの耳を付けた女性型のペルソナ。

 

 

『我は汝、汝は我…(わらわ)は主様の心の海の夜空に浮かぶ星。メラク』

「北斗七星か。好きだぜ、そういうの」

 

 

カグヤの台詞にふっ…と優しく微笑み――マスクをしているので口しか見えない――すぐに気を引き締め、拳を構える。

 

 

「いくぜ戦友!」

『ええ』

 

 

―――魂の共鳴

 

 

「『無理難題な嫁入道具EX(ブライドプライド・シン)』」

 

カグヤとナツル、一人と一体の叫ぶ様な声と共に、カグヤの背後に拳大の黒い球体が5つ出現する。

黒い球(それ)は五角形を描くように宙を浮かび――どこか触れがたい存在感を感じた。

 

 

……………

 

青い服を着た女性、ディーラー服を着た少年。

お互いに未知な存在を背後に従え、静かに向き合う。その目に強い闘志を宿して。

 

決着が近い――それはこの場で戦いを見守っている全員の頭に浮かんだ思いだった。

 

 

「オルギア全開」

『認めてやろう…強敵と』

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

〜???Side〜

 

 

我はゼウス。

 

我は力の化身。

 

我以外の強い力の気配に呼び出された存在。

 

今現在、その力の持ち主は我の依代になっているが、それに勝るとも劣らない者が我と対峙している。

だが、この仮面の男の力は複数の力を束ねたもの。そのような気配がする。

 

許せぬ。

 

 

「『燕の子扠貝(こやすがい)』」

 

ビュッ――――!!

 

 

ペルソナの背後に浮かんでいた黒球の一つが鳥のように鋭く尖った形に変形し、勢いよくこちらに飛んでくる。

 

『フンッ!』

 

ガギンッ!!

 

 

近づかれる前に剣を振い、弾く。

 

馬鹿め。食らう筈がなかろう。

 

 

「単体ならな」

 

――イン・ボディー

 

『ぐばはッ!?』

 

仮面の男が手を開いた状態で片腕をこちらに向けると、先程弾いた黒い鳥が我の腹部を斬り裂いて飛び出す。

 

まるで気配を感じなかった。一体何を!?

 

「タネも仕掛けもございません」

 

軽口を叩きながらまた別の黒球を手に取る男。

 

そのまま握りしめると、出来上がった拳が岩のような小手に包まれる。

 

「『御仏(みほとけ)石罰(いしばち)』」

 

そのまま後方にペルソナを待機させて拳を構える。…打ち合う気か。

 

頭に乗りよって。

どのような小細工をいくつ持っているかは知らんが、それは自身の力の無さの証。

 

思い知るがいい。我には勝てぬと!

 

天蓋(てんがい)…」

 

何を思ったのか男が身体を床に伏せ、四足獣のようなポーズになる。

あれは…依代の記憶によればたしかクラウチング―――

 

明星(カムイ)

 

ゴッ"ッ"

 

『ぐぁッッ!!?』

なっ、!?

 

ドッガッガゴッッ!!

 

『ガハッ!?』

 

息をつく暇もなく連続して殴られる。

 

なんだ、何が起きた?何が起きている!?

 

男が一言つぶやいた瞬間にはすでに顔面に奴の拳が触れていた!?

一体どのような小細工を…いやまずはこの連撃を止めるのが先だ!

 

『離れろ!!』

 

顔近くにいる男に空いている手を伸ばす。

 

「シアリングテンペスト」

 

ザシュッ

 

『グッ、』

あと数センチで掴める距離にまで手が届いた途端、指先に痛みを感じた。

 

 

ザシュッザシュッザシュザシュザシュザシュザザザザザザ

 

『、ガああッッ!!』

 

すぐに幾度(いくたび)も切り裂かれる。

掌も指も、とにかく手首から先を容赦なく。

 

それに今気づいたが、先に殴られた箇所がおかしい。顔全体に何かが付いている!

 

「グルーティナスダート」

 

『グッ、があああああ!!!』

 

終わらない斬撃と、追加で顔に飛んできては纏わりつく蜘蛛の糸のような何かを、魔力を放出して強引に引き剥がす。

しかし斬撃は消えたが、視界の半分ほどは塞がれたままだ。忌々しい!

 

「さっきからガとかゴとかばっかだな。中古の洗濯機か?」

 

いつの間にか男が自らのペルソナの位置まで戻っていた。

仮面に隠れてはいるが、その視線は―――

 

「条件が同じになったらすぐ立場が逆転したな。がっかりだ」

 

嘲り、見下すそれ(・・)だ。

 

本来ならありえぬ我の頭から、ビキリという音がした。

 

 

『…ならば受けてみるがいい』

 

 

バヂヂ…!!

 

 

雷と化して迸る魔力が大気を震わせる。

 

『初めに放った戯れなどではない、我の本気の一撃だ』

「………」

『食らえばひとたまりもないだろう』

 

これは防いだところでどうしようもない。先回りして避ける他に切り抜ける方法はない。

しかし、それは出来ぬ筈。

 

部屋の隅にいる人間たちはもとより、召喚してから一度も動いていないペルソナ。あれはおそらく動かないのでなく動けない(・・・・)のだ。

 

強力な力を発揮する時はそれ相応の代償が付き纏う。能力の維持にかかりきりなのだろう。

 

『受ける勇気が貴様にあるか?』

「避けてほしそうに聞こえるセリフだなそれ」

 

 

「さっきも言ったろ。吐いた唾は飲めねえ」

 

 

そう言って男は両腕をおろし、真正面からこちらを見返してくる。

…意思は固いようだ。

 

『ならば食らうがいい。神の雷を!』

 

無手を突き出し、限界まで貯めた力を魔法として対象に振るう。

 

『『「ケラウノス!!!」』』

 

ドン―――――――――――――!!!!

 

 

 

「きゃあ!!」

「、瀬能ーーーーーー!!」

 

 

部屋の隅から悲鳴が上がる。

 

立ちこめる埃の向こうに浮かび上がる人影…

直撃したのにまだ立っていられるか…しぶといものだ。

 

 

『……?』

 

違和感を感じた。

 

立っている人影は俯いていて表情は見えない。

その格好は青い服に青い帽子。そして白銀色の髪…

 

あれは我の依代ではないか?

 

「やあしまった」

『…!?』

 

真下から奴の声が!?

 

「ついうっかり順逆自在の術を使ってしまった。いやーめんごめんご」

『主様はそういうところよくありますなぁ』

 

仮面の男とそのペルソナがほのぼのと雑談に興じる。

その光景に困惑し、固まっていると、次の瞬間には依代と奴らが入れ替わっていた。

 

『…逃げぬのでは無かったのか?』

 

停止しそうな思考をなんとか動かし、ゆっくりとだが視線を再び前に向ける。

 

「記憶にございません」

 

臆面もなく言い放った。

 

『"逃げない"とは確かに言うておりませんなぁ』

奴のペルソナさえも楽しげに。

 

…確かに思い返せば言ってはいない。しかし……釈然とせん。

 

 

「………ドロー…」

 

 

…………!?

 

今までになかった声色がした。

 

我が依代の女の声。乗っ取っている故に意識はないはずなのに、まさか目覚めたのか!?

 

いやしかし、何かおかしい。

身体の所有権を取り戻したのに、なぜ我ではなくあの仮面の男に敵意を向けるのだ?

 

 

「ペルソナカード…!」

「お前の番ねーから。アイススパイク」

 

ズッドゴ!!

 

『ぐぁ!?』

「うっ!」

 

足元から巨木が如く大きな氷の塊がいきなり伸びて、我と依代を削るように掠める。

 

『馬鹿なっいつの間に!』

「さっき位置替えしたときに床に設置しといた。ダメだろ敵がいた場所を警戒しなきゃあ」

 

男は喋りながらも芝居掛かった動作でゆっくりと両腕を広げ、

 

「『ミックス・レイド』」

 

なんだ?一体何を…

 

 

「『スモール・パッケージ・ホールド』」

 

 

 

―――――――――――――――!!!??

 

 

 

な…んっだ。!?

 

顔に、両腕に、両足。

全身が絵も言えぬ感覚と共に締め付けられる。

内側へと、体の中心へ収縮される!?

 

『なんだこれは!?どんな魔法だ!?』

 

「勝とうと思えば勝つことはできるだろう」

 

目前の仮面の男が口を開く。

 

「俺が決死の覚悟でやればな。最悪相打ちだろうけど」

 

「……!」

「やんねーよ、テンション上がんねーし。来世まで恨まれそうだ」

 

壁際から息を飲むような気配を感じ、男がひらひらと面倒くさそうに手を振る。

 

「つー訳で、このまま封印させてもらおうか」

 

その言葉とともに、男とペルソナの魔力が急激に高まる。

 

これは…我を封じるだけではない。次元の扉を開く気か!?

 

「『マルチディメンション!!』」

『ぐッ、おおおっ!!』

 

ゼウス(われ)が…エリザベス(よりしろ)から引き剥がされる!

 

身体の拘束も強くなり、自由が効かないまま次元の狭間へ吸い込まれてゆく。

…………これまでか。

 

『忘れぬぞ』

 

身体の大半が異空間に飲まれた状態で、目の前の青髪の男を睨みつける。

 

『たとえ幾千の時が流れようともいつか、いつの日か、貴様を我の世界に招待してくれる』

 

そう、そこは世界樹の庇護の下、冒険者たちが己の腕で道を切り開く命の「面倒なのでお断りしまーす」

 

顔面を踏みつけるように蹴られ、強制的に異空間に落とされる。

 

さらに落ちた瞬間に隙間が閉じ、光一つ無い闇だけが辺りを支配する。

 

『………………………………………………………………………………………………』

 

許さぬ。

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

〜ナツルSide〜

 

 

「ぶっはッ!!」

 

ゼウスの姿が完全に見えなくなり、再び出現する気配も無くなると、全身から力が抜けて床に尻餅をつく。

 

つ……かれた………!!

確実に人生でワーストスリーに殿堂入りする最悪の事態だった…もうやりたくない。

 

 

「ナツルくん!」

「瀬能!無事か!?」

 

 

善くんと玲ちゃんの二人が慌てた様子で駆け寄ってくる。

見たところ怪我とかはなさそうだ。…よかった。

 

『頑張りましたなぁ』

 

宙に浮かぶカグヤが口を開く。

 

表情は変わってないはずなのに、なぜか優しく微笑んで見えた。

 

『親しき友のためならば身体を張り、生命を賭ける。口にするのは簡単ですが実際に行える者は多くありませぬ』

「…………」

『その心ある限り、妾たちはいつでも力となりましょう』

 

カグヤの体が光の粒子となり、消えてゆく。

 

「俺はそんないい奴じゃねーよ」。いつもならそう言って悪態の一つでもつく流れなんだが…何もせずに見送った。

……疲れてるからだな。きっと。

 

 

「うーん…」

 

 

今度はなんだよ…

 

声が聞こえた方に目を向けると、床にねっ転がっているエリザベスの姿が。

 

そういやいたなコイツ。諸悪の根源が…

 

「はっ」

 

憎々しく思っていると、パチリと目を覚まして、何事もなかったかのように立ち上がる。

 

こっちはだいぶ疲れてるっつーのに……とはいえいつまでも座っていてもしょうがない。俺も立つか。

 

「夢を…見ているようでした」

 

なんか語りだした…

 

「強大な生の輝きと得も言われぬ充実感…それらが全身を駆け抜けていくような…」

「はぁ」

「とても…幸せなひと時でございました…」

 

こっちは最悪だったけどな。

 

「私の実験に付き合っていただき、ありがとうございます。瀬能様」

「え?ああ…」そういや最初にそんな事言ってたな

「ですが…」

 

?エリザベスが自分の口に人差し指を当てて…?

 

「私に惚れると火傷しますよ?ベイベー」

「…………」

 

 

 

2秒後、おそらくは俺の人生で一番のレッグラリアートが華麗に決まった。

 

晴れ渡る夏の青空の下、延長からの逆転場外ホームランぶち上げたぐらいスカッとした。

 





・解除条件:力を司る者を相手にフルラウンド戦い勝利する。


■真紅の手品(レッド・マジック)真拳
 ボーボボ。ラスボスが使っていた超強力な(ただし決して拳ではない)技。
 どうしても敵の技を使いたがるそれがナツルクオリティ。

・「布の魔術」…
 人ひとりが隠れられるくらいの布で対象を包みこみ、空間移動させる技。
 本家は別世界?に送っているようだけど、実はどこへ行ってるかナツルもよくわかっていない。

・「黒箱の魔術」…
 成人男性ひとりが楽に入れるくらいの長方形サイズの黒い箱を出現させ、消したものを取り出す技。
 基本的に布の魔術とコンボで使われる。

・「トランプの魔術」…
 トランプを生み出し自由に操る技。
 "魔術"というだけあって、攻撃時に魔力(SP)が消費される。(ナツルはMP。←ややこしい)

■ 魂の共鳴
 ソウルイーター。職人と武具がシンクロする事で特殊な技を発動できるとかなんとか。ツープラトン?
 作中ではペルソナの能力にナツルの思想を直結してる感じです。これによりペルソナの能力がランクアップします。

■ イン・ボディー
 クロノクロスってゲームの味方キャラが使える技。武器である杖をマジックで敵の体内から突き出す単体攻撃。

■ シアリングテンペスト
 FF11の青魔法。身を焦がす嵐
 自分を中心に熱風のカマイタチを連続して放ち、竜巻のバリアを張る。

■ グルーティナスダート
 FF11の青魔法。ねばねばする投げ矢(ダーツ)。
 蜘蛛の糸みたいなのを手から噴出する、スパイダー●ンみたいなイメージ。なぜこんな事ができるのかナツル自身わかっていない。

■アイススパイク
 FF14の青魔法。氷柱を勢いよく地面から突き出すトラップタイプ攻撃。
 本家のアイススパイク知らないから本来どんなのかわからないすよねー(←ヲイ)


・天蓋《てんがい》明星《カムイ》…
 ペルソナ(あるいは悪魔)の力を借りて扱う技。成功すると自身に"電撃"属性を付与し、雷のように超スピードで動けるようになる。

・ミックスレイド"スモール・パッケージ・ホールド"
 対象一体を手足などの末端から身体の中心部(胴体)へ強制的に丸めて小さくする、ペルソナとの合体技。
 魂の共鳴と違って割と簡単にできる。(凶悪ェ…)名前の元はプロレス技。


■マルチディメンション
 対象を異次元の力によって瀕死状態にさせる魔法。昔のペルソナシリーズにはあったらしい。
 上位にアナザディメンションというのがあるが、ぶっちゃけこの作品ではセイントセイヤ臭が強いのでマルチもアナザも対象を異次元に送る魔法となってます。


長かった…マジで長かった対エリザベス(ゼウス)戦がようやく終わった。
後日談挟んでしばらくは日常回続きます。


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