・桐条グループ所有プライベートエリア
神月学園の最高責任者(資金を出資した団体)には学園の敷地内のどこかに一つは専用の部屋がある。らしい。
と言う噂をどっかで聞いたことあったが、本当だったんだな。
エリザベスを豪快にK.O.した後、閉ざされていた防火扉をこじ開けて駆けつけた桐条グループの人間に俺たちは保護された。
学祭中で人目が多いからここに案内されたが、そうじゃなかったら車で拉致紛いのことでもされたんじゃないかな。多分。
救助に来たはずの奴らは倒れてるエリザベスよりも満身創痍の俺を一番に注視してたから。
善くん玲ちゃんとはそこで別れた。
本人たちは俺について来る気満々だったが、エリザベスについてやってくれと言って無理やり別行動を取った。
むっちゃ不機嫌になったけど。あとで説明するように指切りげんまんさせられたけど。
別に仲間外れにした訳じゃないが…なんか嫌な予感がするんだよな。
なんかあったらまた身体を張ればいいんだろうけど、今はその肝心の身体が怠くてしょうがない。
激戦の影響…って感じじゃないな。初めてペルソナ使ったからか?
コンコンコン
ガチャっ「いやあすまない。お待たせしたねきみたち」
悩んでるといきなりデコが広いウェーブヘアーのメガネかけたおっさんが部屋に入ってきた。
「返事を待たねばノックの意味がないだろう…」
その後ろから美鶴先輩の親父さんが一緒に入ってくる。
連れてこられて十数分。ようやく対応か。
「昨日ぶりだな、瀬能…君」
「呼び捨てでいいすよ桐条さん」
机を挟んで斜め前の椅子に座る隻眼の人物。
「先ほどのきみの戦いぶりは見せてもらったよ。いやあ凄かった!できれば最初から見たかったよ!」
そして当然のように俺の目の前にきて、椅子に座ることもなくペラペラとまくし立てるデコ広の男。
なんだその差し出された手は?握手か?
「………」
「おっと、警戒させてしまったかな?すまないすまない」
微動だにせず見つめ返す俺に気づいたのか、男はバツが悪そうに頭を掻いて席につく。
つか今気づいたけどこのオッさん「きみたち」っつって入ってきたよな。俺一人しかいないんですけど。もしかしてギャグのつもり?
「改めて自己紹介をしようか。私は幾月修司。神月学園の理事長だ」
理事長…こんな胡散臭い奴でもなれるんだな。
そこはかとなく昨日ぶちのめした教頭とおんなじにおいがするんだが。
「まあ理事長といっても肩書きだけで、大したことはしてないけどね。特別課外活動部の顧問と研究者が私の本業さ」
「特別課外活動部?」
生徒会役員として色んな部活を見聞きしてはいるが、そんな名前の部はなかったはずだ。非正規のサークルか?
「ペルソナ使いたちを管理する所、といったところかな」
「他にもいんのかよ」俺みたいな人間兵器。
「ああ!と言ってもきみほど力が強い子は流石にいないけどね」
そう言って幾月はチラッと目線を下げる。
俺の今の服装は戦闘前と同じ、神月学園指定の学生服だ。
エリザベス倒して気が緩んだのか元に戻っていた。どういう仕組みだ?
「あの仮面と服装はまた出せるのか?」
「すぐは無理ですね。疲れてるし、練習すれば多分いけます」
「素晴らしい、すぐにでも研究させてくれないかい?」
なんかこのおっさんさっきからウザいな。視線も熱っぽいしキモくて不快。
「やめろ幾月、流石に失礼が過ぎる」
「…すみません。少し急ぎすぎました」
興奮じゃなくて?
「瀬能くんも悪かったね」
「はあ、まあ別に」
「じゃあ話題を変えて、まずは所属クラスをどこにするか決めようか」
「は?」
「特別課外活動部に入部すると、いくつかの特権が与えられるんだ。同時に研究対象にもされるから、私からのせめてものお詫びとお礼の気持ちだね」
「なんでもは無理だが理事長としての力を使えば、好きなクラスに編入するくらいはできる。ペルソナ使いというのはそれだけ貴重だからね」
「いやあの――」
「お金は出せないけど、タルタロスという…ダンジョンといえば分かりやすいかな?そこに潜って素材を回収してくれれば、対価として払うことはできる。エリザベスと渡り合えるきみなら何も問題はないはずだ。割りのいいアルバイトだとでも思えば」
「聞けよ」
ゾンっ……
「ぐっ、!?」
「幾月?」
目の前でマシンガントークをかます男に
善くん玲ちゃんを連れてこなくてよかった。こんな所を見せたくはない。
こんな醜くてうす汚いやり取り、精神の毒だ。
「悪いけど俺はクラスを移るつもりはねぇっすよ。つまりその特別課外活動部とやらに入る気はない」
「なぁっ!?」
「そうなのか?」
「ええ」
「なぜだ!?きみのことは知ってる、調べた!本来ならCクラス程の成績を持ちながら観察処分者という肩書きのせいで不当に評価されているのだろう!Fクラスなんていうゴミ溜めにいるべき人間じゃないっ!!」
ゴミ溜め?
「幾月!やめろ!」
立ち上がって掴みかからんばかりに見当違いなこと熱弁する男を、桐条さんが同じく立ち上がって押し留める。
対する俺は座ったまま冷めた目で
「俺のことどんだけ色メガネで見てるかしんないけど、そこまで持ち上げられるほどの人間じゃないすよ」
口より先に拳が出て、拳より先に殺気が飛ぶから。
「そん――」
「アンタが欲しいのは新しいモルモットだろ?諦めろよ。注射器向けた瞬間動脈噛みちぎるぞ」
それともお前が一人目か?
どっちでもいいけどね。
ム"ーー、ム"ーーー、
腕のデバイスが震えだす。メールだ。
目の前で固まる大人二人を無視してデバイスを操作する。送り主は…直江か。
『今どこだ?もうすぐ打ち上げ始まるぞ。場所は東門から出てすぐにある公園だ。早くこいよ?』
…………
「……桐条さん。申し訳ないんですけどこれ以上の話し合いは後日でいいすかね」
「うん?何か用事でもあったのか?」
「友達が呼んでるんです」
「はぁ?そんなの後に」
「わかった」
「武治さん!?」
「後から改めて説明なりをする時間を取る。…おそらく美鶴が対応するだろう」
「ありがとうございます。ああ、幾月サン」
立ち上がり、桐条さんへ唖然とした表情をする男に顔を向けずに一言かける。
「俺、案外気に入ってるみたいすよ?ゴミ溜め」
ニャー
☆ ★ ☆
〜〜〜〜
・ナツルが去った後のプライベートエリア
「幾月、お前はもう瀬能ナツルに関わるのをやめろ」
「なっ、何故です!?」
「分かってないのか?自分を抑えられていないではないか」
「そんなこと…!それにっ!彼の力を調べればペルソナはもとよりシャドウについても研究が進むはずです!それなら私の力が必ず必要に――」
「焦る必要はない。それに」
「闇に囚われようとしていた少年が光を見つけたのだ。大人として、学園に関わるものとして、これほど喜ばしいことはないだろう」
藤堂と川神にも見せてやりたかった―――そう思い、桐条武治は笑みをこぼした。
文化祭編ようやく完結。いやー長かった。マジで。
自分ペルソナ3やった事無いんで幾月と桐条父の口調とかプレイ動画見て「こうかな?」みたいな感じで小説書いてます。幾月が桐条父をどう呼んでるのか全く分からねェ…まあ完全に似せなくていいか。
次の話はナツルのペルソナデータです。