戦士たちの非日常的な日々   作:nick

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超久々の日常回。なんか実家に帰ってきたような安心感がある。



97時間目 契約の代償

〜〜〜〜

 

・2年Sクラス教室

 

 

清涼祭が終わってから数日後。学園内の片付けも完全に終わり、日常へと戻りつつある日の朝、霧島翔子は呂布奉先に話しかけた。

 

「……呂布さん、ちょっといい?」

「……?なに…?」

「……相談がある」

 

周りで聞いてるクラスメイトは「この二人、喋り方といい雰囲気といい、そっくりだな」と思った。

 

「……私は雄二が好き。大好き、愛してる。雄二の子供を産む」

 

接点がほぼ無い奴になにぶっ飛んだこと言ってんだ。

 

この会話をFクラスででもしていれば即座にツッコミが入っただろう。

しかしあいにく、この場にツッコミを入れる人間はいない。奇跡のようなタイミングで主要な人物は教室を出払っているのだ。

 

「……熱々」

「……でも雄二はシャイだから中々関係が進まない。悩む…」

 

霧島(おまえ)が突っ込みすぎなんだよ。

 

そうツッコむ人間はいない。

 

「……呂布さんは瀬能と仲良し。その秘訣を聞きたい」

「……主…主は……」

 

「……押して…」

「……それなら私もして…」

 

「……押し倒す…」

「……!なるほど…!」

 

「足りないのは積極性…。奥手な雄二を押して押して押し倒すこと。つまり私に必要なのは、力!」

「……多分そう」

 

 

何度も言うがツッコミは不在である。

 

 

「……そうなると本格的に武術とか習いたい。呂布さん、お願いできる?」

「……私より適任がいる」

「…?適任?」

 

ガラガラガラっ

 

「うーっす」

「おっはー」

「おはようございます。おや?呂布さんに霧島さん、珍しい組み合わせですね。何かお話で?」

 

 

「……詳しい話は後で」

「(こくり)……分かった」

 

井上や葵といったSクラスの主要人物が教室に入ってくるのと、程なくして授業開始のチャイムが鳴ると気づいた霧島は話を切り上げた。

 

この話し合いはきっかけであり、事態が動くのは次の日であった。(早いよ)

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

〜ナツルSide〜

 

 

「……という訳で連れてきた」

「どういう訳?」

 

早朝。学祭期間中はやめていた青空道場(ワン子がやってる鍛錬)通いを再開しようと、いつもの空き地に来てみれば、珍しく我が家(うち)に来なかった呂布ちゃんが珍しい人間と一緒にやって来た。

 

先に来てたワン子も困惑してるじゃねーか。もうちょい説明してくれ。

 

「あー…たしか霧島だったっけ。霧島翔子」

「……そう。お久しぶり」

 

うん、そうだな。お互い自己紹介したことはないけど、何回か顔合わせしてるから初めましてじゃあないな。

 

ただとりわけ仲良しって訳でもない。そもそも接点ないし。

 

「その霧島さんがなんでここにいるんだ?」

この空き地は学園からそう離れてない場所にありはするが、通学路からは相当外れてる筈だが。

 

「……実は…」

 

 

〜〜前日のやり取りを説明中〜〜

 

 

「つまりあれか、俺に戦闘技術を習いたいと」

「(こくり)……経験あるって言ってた」

 

まあ確かに、全くのゼロからひかりちゃんに波紋とか教えはしたけど。

 

「だからって俺に頼むか?一応あれだぞ、Sクラスの教室虎視眈々と狙ってんだぞ」

 

主に坂本が。

俺?別にいいかなって思ってる。

 

学園にさえ来れれば学生生活はできるからな。

 

「……是非に、師匠」

「師匠…」

 

なんだろう。なんか…くるものがあるな。男の子だもんね!

 

思えばひかりちゃんはそういうなかったからなぁ…俺が鍛えると同時に茜とレッサーパンダパイセンの高等教育により性格変わったから。

 

端的にいえば悪くなった。

砂糖はいった軟水がどろっどろのコールタールみたいに。

 

 

閑話休題。

 

 

「しかし急に言われてもなぁ…」俺にも心の準備ってもんが。

「……主、駄目?」

「う〜ん…ちょっと待って」

 

うーむ。

 

うーーん。

 

う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んむ……

 

 

 

「……(…無理そう?)」

「……(……もう少し待つ…)」

 

「…………」

 

イベントリから取り出した飴玉を口にぽーいっ。

 

「まあいいか」教えても

「えっ、いいの?」

 

行く末を黙って見守っていたワン子が思わずといった感じで口を開く。

 

「いやいくら考えても断る理由ないし…つーか、お前こそいいのかよ」

「え、アタシ?」

「この青空道場お前が主体だろ」

 

早朝から1・2時間ほどここで鍛錬してるって知って、勝手に参加したの俺だからな。

言ってみればワン子は師範みたいなもんだ。

 

「いやアタシは別に…タイガがいいならいいけど…」

「じゃあいいじゃん」

「うー…ん……いい、のかしら?」

 

いいのだ。(適当)

 

「とはいえ俺も暇じゃねえんでね。またゼロから他人を鍛えるとか面倒だからイヤだぜ。なんか武術に繋がるもんとかあるか?」

「……握力には自信ある」

「ほう」握力か。

 

一見地味かもしれんが割とバカにできん力だな。面白い。

 

つい最近、エリザベスという強敵に勝った俺はこの時、結構調子に乗っていた。

 

ゴキリ、とわざとらしく拳を鳴らして握手を求めるように手を差し出す。

 

「ならぜひ味あわせて貰おうか。ご自信の握力ってやつをなぁ」

 

 

=2秒後=

 

 

「ぎゃあああああああああギブギブギブッギブだってッ!!」

 

バシバシと前屈みになって自分の膝を叩き、降参の意を示す。

 

 

ぐぉおおぉっ……!…掌から先が握りつぶされるかと思った…超いてぇ

何が「握力には自信ある」だ…謙遜しやがって、十分自慢できるレベルだぞ。

 

「……大丈夫?」

「ふ…ふふっ……喜べ、俺からギブを取った一般人はお前で一人目だっ…!」

「何キャラなのよタイガ…」

 

精神が不安定な年頃なんだよ。

 

思いっっ切り取り乱したし、なんならまだちょっと(かなり)手が痛い。だが大丈夫だ。

霧島に掴まれた跡がついたけど大丈夫だ。問題ない。

 

なぜなら僕はオンディーヌ家の一族だからねっ!

 

 

「まぁとりあえずは合格かな。俺でよかったら師匠役を引き受けよう」

「……!本当?」

「ああ。そうだな…握力を活かす方向で進めるか。相手を掴んでからの技術。まずは簡単な崩しを…合気とか教えんのも面白そうだ」

「「「…………」」」

 

ぶつぶつとこれからのスケジュールを考えていると、呂布ちゃん・ワン子・霧島の三人が意外そうな顔―――その内二人は無表情だけど、気配で―――で俺を見つめてくる。

 

「なんだよ」

「……面倒見いい?」

「そういえばいつも初めは文句言うけど、一度引き受けるとキリのいいところまでは付き合ってくれるのよね。タイガって」

「……主は、いい人」

「結局そうなのよね」

 

「やめて?」俺のことを「実はいい人」呼ばわりするの。

 

これはそう…爽やかなゲスの爽やかな部分が見せる残像なんだよ!(意味不明)

 

「まあ詳しいことは後日でいいだろ。今日はもう学園行こうぜ」

 

まだまだ時間に余裕はあるが、急すぎて何をどう教えたらいいか分からんからな。

一度気持ち落ちつかせてからゆっくりと考えたい。

 

「……なら、連絡先を交換したい」

「ああ?まー確かにお互い知っといた方がいいか」

 

毎朝この空き地に来てるわけじゃないからな。

 

 

という訳で、携帯の電話番号とメールアドレスを交換して、霧島は去っていった。

なんでも今日は日直だとか。完全に顔合わせのために来たんだな。

 

「ところでタイガ、もしかして調子悪い?」

「なんだ藪から棒に」

「……どことなく、変」

「…お前らに隠し事はできねえなぁ」

 

いや別に隠すほどの事でもないか。

 

 

「…実はうまく"気"が練れなくなったんだ」

「え?」

「…!」

「身体強化ぐらいなら問題ないんだが…無茶苦茶な必殺技はもう使えそうもない」

 

ホットリミットやゴールデントライアングルとかな。

 

ペルソナ覚醒前にゼウス倒そうとかなり無理をしたからな。多分その後遺症だろう。

むしろこの程度で済んでよかった。相打ちで死ぬ気だったからな。

 

「……主」

「おいおい、深刻に捉えるなよ。逆にスッキリしてんだぜ、俺は」

「そうなの?」

「ああ」

 

よく考えれば何であんなに強力な技開発にこだわってたんだろう。バカじゃねえの?

 

自分自身を火炎に変えるとか使い道ねぇってか、不幸な未来にしか繋がってないじゃん。弱体化してマジでよかった。

 

「"気"の代わりに新しい力に目覚めたしな。今度はもうちょっと…スーパーウルトラにウケる技でも考えるさ」

「笑いで新技作るのタイガくらいよ…」

「(こくり)……主らしい」

「褒め言葉として取っとくよ」

 

とっとと学園行くぞ。

 

 

 

 

〜〜〜〜

 

 

ペルソナと契約した代償は"力への渇望の収縮"

 

それは決してマイナスではなく、破滅への回避であった。

 

 





秀才な弟子(霧島)に、凶悪な師匠(ナツル)

坂本逃げて。(逃げられない)
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