イベントリって本当はインベントリって言うみたい。素で間違えた。
めんどくさいからウチではイベントリで通します。
キーン コーン カーン コーン …
「時間か。今日はここまでとする」
チャイムの音を聞いて担任の鉄人が教科書を閉じる。
あー…ようやく終わった。英語の授業は普段の倍以上時間の流れが遅く感じる。
「ああ、そうだ。詳しくはまた説明するが、来月は学力強化合宿があるから頭に入れておくように。それと音楽祭もあるから、出場する場合は早めにエントリーしておけ。以上だ」
学力強化合宿。
文字通りの
他校でいう林間学校だな。
音楽祭は正式には『神月ロックフェスティバル』。学生が3〜5人くらいでバンドを組んで歌うと言う特に詳しく説明する必要もないイベントだ(たまに教師も出場する。)
マンモス校だからとんでもない人数の前で歌声を披露するんだが…俺は出ないから関係ないな。
『あー終わった終わった』
『帰りどっかよってかね?』
『いいねー』
「さて俺も帰るか」
帰り支度をするクラスメイトを横目に、さっさと席を立つ。イベントリとか持ってるとこういう時便利だ。
呂布ちゃんは…下駄箱辺りで合流できるだろう。
近々親戚であり厄介&問題児の司が神月学園に転校してくるらしいが、奴と一緒に登下校する予定は今のところ無い。何かあると殴り飛ばしそうだから。
というか頻繁に殴ってる。蹴り入れてる。関節外してる。
昔に植えつけられた
非道?俺はゲスだよ。
「今日は…げ、バイトの日だった」
なんとなくスケジュール帳をめくってみると、生徒会以外の予定が入ってる事に気づいた。
まいったな…いや別に職場がどうこうって訳じゃないんだが。
正直司が来てから食費入る(予定)し、電気やガス代浮かす手段も手に入れたから辞めてもいいんだよな…
まぁ「辞める」って言ったら全力で縋りつかれそうだけど。想像すると軽く憂鬱だ。
ピンポンパンポンッ
『二年Fクラス瀬能ナツル。二年Fクラス瀬能ナツル。
至急、特別演習棟へ来てください。繰り返します。二年Fクラス――』
訂正、ひどく憂鬱だ。
特別演習棟〜〜〜?確か学園の端に建ってる馬鹿デカい建物だったはず。その割に一度も行事や授業とかで使われたこともないんだよな。
噂じゃ行き過ぎた問題児を使ってキメラ生み出してるとか…ゲームのやり過ぎだろ。
『おい今の放送…瀬能が特別演習棟に行くって』
『ああ…やっとか』
『ざまぁだな』
『うん、ざまぁだ』
『『『ざまぁ!!』』』
「よぅしよく言ったメギドラ」
ガッッ――――――!!
『『『ぎゃあああああああああ!!』』』
万能属性の全体魔法で吹き飛ばされるクラスメイト面々。
このクラス正直な奴が多いのは嫌いじゃないけど、すぐ調子に乗るんだから。
「………まてよ?」
魔法で思い出したが、特別演習棟は確か桐条グループのプライベートエリアだったような…
となると要件はペルソナ関係か?美鶴先輩(父)にも後日説明するとか言われてたし。
だとするとフケるのはマズイかな。
ム"ーーー
『呼び出しを無視した場合、桐条美鶴の手によりマスターが氷付けにされます』
「マジかよ」
ノルンからメール来た。
限りなく予知に近い予測だから逃げたら処刑されちゃう。冷凍ナツルはイヤだ。
仕方ない。行くか。
つーかちょうどよかったかな。報告したいこともあったし。
そうと決まればまずは…下駄箱だな。一度外履きに履き替えなきゃ移動できないから。
☆ ★ ☆
「はいっというわけでやってー来ましたー特別演習
「……?……」
ぱちぱちぱちぱちぱち…
一緒に歩いて来た呂布ちゃんが怪訝な雰囲気をしながらも気の抜けた拍手を返してくれる。
この子も日々成長してるんだなぁ…と少し感慨深くなった。
閑話休題。
「来たか、瀬能」
特別演習棟からひとりの人間が出てきてこちらに歩み寄ってくる。
我らが生徒会長・桐条美鶴先輩だ。
「来ないかと思っていたぞ」
「みたいっすね」
片手に拳銃、もう片手にレイピアで出現準備万端じゃん。仕舞おうよ来たんだから。
「『姿を見せたから帰ります』と言うと思ってな」
「あんた俺をなんだと…」
よく分かってるじゃないですか。
イヤ報告することがあるからやんないけどさ。
「まあ来たからいい。それより…」
美鶴先輩がチラリと呂布ちゃんを見る。
「この棟は関係者以外の立ち入りは禁止されているのだが」
「知ってます」
昔好奇心から侵入しようとして失敗したから。
次の日緊急で全校集会されてちょうビビったわ。(犯人が俺だとはバレてないはず)
「ペルソナ関係って意味なら、呂布ちゃんは無関係じゃないっすね。彼女も使い手になったから」
「、!?」
俺が報告したかったことがこれだ。
なんか、最近になって急にペルソナと真拳に覚醒したとか。まじでいってる?
俺が強くなるとそれに追いつくように強くなるなこの子…まぁいいけど。
「て訳で、呂布ちゃんも入っていいすか?」
「はあ…分かった。手配しておこう」
美鶴先輩は疲れたようにため息を吐いた。
…ボソっと「幾月がまたうるさくなるな」って呟いてたけどどういう意味だろう。
☆ ★ ☆
特別演習棟に入るとすぐに受付があり、そこで手続きと入館許可証を貰って中を歩く。
「
「呂布のはゲストパスだがきみのは専用の許可証だから返さなくていい」
これから先何度も通うことになるから用意していたそうな。だから顔写真付きなのか。
「先に言っておくが無くすんじゃないぞ」
「はいはい」
「無くしたら処刑するからな」
しばらく日にちを空けてから「無くしました!」とか報告してみようかと思ったけどやめておこう。
しばらく歩き続けると、体育館ほどの広い部屋に入る。
先日エリザベスにボコボコにされた記憶が蘇った。激しく不快。
「ん?」
しかし部屋の中央付近と思われるところに、十数人ほどの集団がいることに気づいた。
一人一人ジョジョ立ちのようなポーズ決めて。
「…………」
「…………」
「…なにをしているんだお前たち」
美鶴先輩が尋ねる。
「いや、マーガレットがやれって」
集団の中で先頭にいた…銀だか白だかよく分からん髪色の男子生徒がポーズを決めたまま答えた。
俺も対抗して厨二っぽいポーズ決めるべきか?
「やめろ。まったく…あの人にも困ったものだ」
びっくりした…心を読まれたかと思ったぜ。
咄嗟にゴメンなさいするところだった。
内心で汗を拭っていると、美鶴先輩と喋っていた男が俺を見る。
「お前は…瀬能ナツルか。初めましてだな」
「ポーズ取るのやめたら?」
全員が上げていた腕などを下ろした。
殆どの人間が疲れたように一息ついてる。最初からやるなよ。
「この前のエリザベスとの戦闘は途中からだが見させてもらった。凄かった、ナツルって呼んでいいか?」
「どーぞ」
ぐいぐいくるなこいつ。つーか自分の名前は言わないの?
「お近づきの印にコレをプレゼントだ」
≫ナツル は 道士バッジ を 受け取った !
白銀髪男から変な物を押し付けられた。
なんだこのヘンテコなバッジ。
「あっずる――じゃない、鳴上君!抜け駆けはダメだよ!」
「僕からもどうぞ」
「ああっ有里君まで!?」
≫ナツル は ジャック手袋 を 受け取った !
「ぇえーい、私もあげるっ!!」
≫ナツル は 鉄の眼球 を 受け取った !
「なんでだよ」なんか気持ち悪い物渡されたんですけど。
バッジとハンドパペットはともかく鉄製の義眼はおかしいだろ(しかも複数個)。男女でプレゼントに差がありすぎる。
だいたいなんでこいつらいきなり俺に貢ぎ出したんだ?
………………
「お前ら…
俺のアルカナは愚者から派生したからものだからコミュは発生しないと思うぞ?」
「「「――――――」」」
「や…やだなぁナツル、そんなこと気にしてるわけないじゃないか」(ちぃっ…!)
「そっ、そうだよ!ただ純粋に仲良くなりたくてプレゼントしただけだよっ」(解せぬ…!)
「ジャック手袋返して」
「うんうん正直な子は好きさ。ぜってえ返さねぇ」
「ケチ」
「テメェが言うなや!」
これが今後長い付き合いになるペルソナ使いたち、そして三人のワイルドたちとのファーストコンタクトだった。
メギドラ…ペルソナシリーズで使われる万能属性魔法スキル。
Q.魔法とかって秘匿しなくていいの?
A.秘匿するべきです。他のペルソナ使いなどの特殊な能力者も他言無用で生活しています。
「そんなの関係ねェ」と言わんばかりに人前で魔法を放つ男、瀬能ナツル。
まぁ周りは"気"を使用した技なんだろうと勝手に思ってるからいいんじゃないですかね。回復魔法(ディア)使っても誰も疑問に思ってないし。