戦士たちの非日常的な日々   作:nick

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今回はわりとサクサク話が進みます。

サクサク動画です(←違う)


9時間目 それが一番大事

〜〜〜〜

 

翌日。体育館。

 

本来なら朝のホームルームが始まっている時間だが、今日だけは学園のほぼ全員が集まっていた。

 

 

神月学園では月に一度、全校集会が開かれる。

 

主に月ごとの目標やら必要事項を発表したりするのだが、実際にはただ上級クラスと下級クラスの扱いの差を見せつけて向上心を煽るのが目的と言われている。

その証拠に、最上級であるSクラスには高価そうな椅子(座布団・ミニ机付き)が用意されており、逆に最下位のFクラスには何もない。(それ以外のクラスは普通のパイプ椅子)

 

本来なら皆そんなFクラスを見て、ああはなるまいと決意を新たにするか、侮蔑の意味を込めて嘲笑するかなのだが…今回はそのどちらでもなかった。

 

 

『おい聞いたか?A組の阿久津が負けたって話』

『聞いた聞いた。瞬殺された挙句にションベン漏らしたってやつだろ?』

 

『正直私あいつ嫌いだったんだよねー。すぐ暴力振るうし、弱いものいじめするし』

『カツアゲされた人、けっこういたらしいよ?』

 

『いつかやられるだろうとは思っていたけど、まさかFクラスの奴に負けるとは思ってなかったぜ』

『あの最低クラスに?ホントかよ…』

 

島田「…みんな盛り上がってるわねー」

島田がぽつりと呟いた。

 

大和「武道をやってる中でも7番目に強い奴を、全く無名の人間が倒したんだ。無理もないさ」

坂本「しかも無傷で、な。あそこまで圧倒的な大差をつけて勝つとこを見られたら同じ手はもう使えないだろう。ま、それは分かってたことだがな」

ガクト「で、その冴島はどうしたんだ?どこにもいねえみたいだけど」

 

島津の言うとおり、青い髪が特徴の若干影が薄い瀬能の姿がない。

ついでに吉井と姫路の姿も見られない。

 

ワン子「タイガなら朝一緒に来てたわよね。トイレかしら?」

秀吉「ぬ、お主らは一緒に登校しておるのか?」

モロ「タイガはたまにだけどね。」

島田「へー、みんな家が近いの?」

大和「そういうわけじゃないけど…学園に来るためにはどうしても多摩大橋を渡んなきゃいけないからな。それで自然に」

 

 

「え、ナツルもモンハン持ってるの?」

 

 

ザワっ…ばらばらな音量で話していた生徒達が、突如として静かになる。

 

「ああ、昔知り合いに貰って一応な。最近全くやってねえけど」

「へー、じゃあ今度一緒にクエスト行かない?」

 

そしてある人物が体育館に入ってきた途端、それまでのなりを潜めてヒソヒソと囁き声で話し始める。

 

 

あれが瀬能…  思ってたより普通っぽい…  なんかひ弱そう… ちょっとかっこいいかも… ほんとに勝ったのか?… でもモモ先輩って事例も…

 

 

「二人とも待って下さいー」

 

 

あれは姫路瑞希… Sクラス並の実力があるっていう…? F組って最低じゃなかったのか?… 姫路さんかわええ…

 

 

「あ、ごめん。話に夢中になってつい」

 

 

あの二人と並んで歩いてる男は誰だ…? バカお前あれは…誰だ? なんかザコっぽいぞ ホントだ、

ザコっぽい ていうかザコだろ うん、ザコだな

 

 

吉井「僕だけ扱い酷くない!?」

坂本「明久、そんなどうでもいいことはほっといてさっさと来い」

若干影が薄い瀬能「全校集会ってメンド臭えなぁ…なんで月ごとにやんだよ…」

 

吉井は叫び、瀬能はぼやきながらも坂本達が作る輪に近づいていく。

その後を少し遅れて、姫路が駆け寄ってくる。

 

姫路「み…皆さん…遅れて…すいません…」

若干影が薄い瀬能「あんまり無理すんな。身体弱いんだろ?ほら深呼吸深呼吸」

姫路「は、はい……すー…はー…」

京「優しいねー瀬能は」

若干影が薄い瀬能「茶化すなよ…流石にこういうの見せられて普段のノリ貫くほどガキじゃねーよ」

大和「ナツルってホントゲンさんそっくりだよな…」

モロ「キャップとガクトと足して3で割った感じだよね」

若干影が薄い瀬能「聞き捨てならねーなオイ、つかさっきから不当に罵倒されてる気がするんだが」

 

気のせいですよ。

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

〜ナツルSide〜

 

 

「それではこれより、試験召喚戦争を始めます」

 

Sクラス教室。学年主任であり、クラスの担任である高橋教員がいつもと変わらぬ口調で告げた。

この人少し前まで俺の担任教師だったんだよな…

 

さて今はまさにS組との試召戦争が始まる直前なのだが、Dクラス戦や昨日の決闘と違うのはわけがある。

 

前に坂本がクラス単位での戦いでは勝てないので、一騎打ちを仕掛けると言ったのを覚えてるだろうか。

覚えてるならそれでいい、忘れてるなら前の話を読め。説明がめんどくさい

 

まあそんなこんなで昼休みに交渉に行ったんだが―――条件をつけられて帰ってきた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

『5対5の団体戦?』

『ああ…交渉は比較的うまくいってたんだが、一騎打ちにまでは持ち込めなかった。姫路や瀬能がいるから警戒されたんだろう』

『そこでなぜ俺の名前が出てくるのかよく分からんのだが』

『試合の詳しいルールは?』

『5対5の団体戦、先に3勝した方が勝ちで勝負方式の5回のうち3回はこっちが指定できる』

『有利か不利かよく分からないわね』

『で、オーダーだが、明久・康太・姫路・瀬能・俺の順でいきたいと思う』

『えっ、僕が最初なの?』

『直江とかは入れないのか?』

『ああ。今回は召喚獣を使ったことがある上で実力がある奴を出そうと思う。とくに先鋒は重要なポジションだが…俺はあえてお前に託す。がんばれ明久』

『雄二…うん、がんばるよ!』

 

パアァといい笑顔になり、両手でガッツポーズする吉井。こいつ絶対賭け事でカモにされるタイプだな

そんなノー天気君を尻目に坂本に小声で話し掛ける。

 

『(吉井を一番手にする理由は?)』

『(まず向こうの点数を知っておこうと思ってな)』

 

捨て駒じゃん

 

『(…それなら島田あたりでもいいんじゃないのか?)』

『(下手に点数高いと負けた時士気が下がりかねん。そういう意味じゃ明久(あいつ)は適任だ)』

非人道的なことをサラリと言いやがった。

 

『ねえ坂本』

『ん?なんだ島田』

『ウチや木下が出ないのはいいとして、なんで瑞希が三番手なの?』

『んお?あ、確かに。大将がクラス代表なら副将は二番目に成績がいい奴だろ?ならこっちは姫路の方がよくねーか?』

『まあ俺も本来なら姫路を4番手にしておきたいところだが…もう後がない、って状況で周りが囃し立てたりした場合、精神的負担が大きすぎる』

『プレッシャーか。確かに強そうには見えねーな』

『す…すいません…』

『その点瀬能なら大丈夫だろ。成績もそこそこだし召喚獣の扱いにも長けてる』

『なるほどね…』

 

全員の視線が一気に集まる。

 

『瀬能、頼んだわよ』

『わしらも精一杯応援するぞ』

『まかせろ。…むしろわざと負け越してもいいぜ?逆境で勝てばスターになれるからな』

『頼もしいな』

『つーかお前はどうなんだよ、召喚獣出してもいないんだろ?』

『そのへんはちゃんと考えてある。心配するな』

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「今回は両クラス5人ずつ一騎打ちをするとのことなので、まずは一番目に戦う方、前へ」

 

「はいっ」

 

そう元気よく前に出たのは吉井。自分の役割も知らず哀れな奴だ…

 

 

「にょほほほほほ、見るからに貧相な輩が出てきたのじゃ」

 

緊張気味の吉井を着物姿のチビが笑い飛ばす。

 

 

「…誰だあれ」学校であんな格好してる奴保護者以外で初めて見たぞ

 

「不死川心。日本三大名家って言われてる家の娘だ」

 

とくに誰かに訊いたわけじゃなく、ただ口からぽろっと零れた一人ごとだったが、直江が律儀に拾って解説してくれた。

なるほど…あれが噂の七光りか。小物臭半端ねーぜ

 

 

「Fクラスの山猿ごときじゃ力試しにもならぬのじゃ。早々に這いつくばって許しを乞う姿が目に浮か―――」

「ウっゼぇーんだよ時代錯誤チビが。顔にヒゲつけてニョロニョロにすんぞ」

 

イラっと来たので軽く脅してやると、にょっ…にょわっ…と半泣きになって静かになった。ザコが

 

「流石は瀬能…顔に似合わず頼もしいわね」

「つーか相手側少なくねーか?見たとこ20人くらいしかいねーぞ」

 

机の数もそれくらいしかない。前にちょろっと覗いたときこんなもんだったっけ?

 

「S組は成績上位20人、特待生2人の合計22人のクラスだからな」

「それって2年の総数と合わなくねえか?それに成績ってテストの度に変わるだろ」

「A・Bなんかの他クラスが代わりに多いらしい。あとテストで20位以内に入れなかった生徒は、その時点でAクラスに落とされるんだ。これも生徒手帳に書いてあるぞ?」

 

だから無くしたっての、三日で

 

「猶予期間も無しに即他クラスに行かされるんだ。当然、風当たりは悪い」

「それまで散々見下してたらそうだろ」

在籍してる奴も落ちた奴も、歩み寄るなんて発想出てこないんだろうな

 

しかしそうか、道理で……性格がとてもよろしくない人間が多いと思った。

 

 

「まあここは基本、『自分は選ばれた人間だ』って思ってる奴らの集まりだからな。名家の跡取りや大金持ちとか」

「庶民と関わる気ははなっからないってか」

 

 

「ふははははっ、九鬼英雄。見参である!  おおっ!一子殿ではありませぬか!!」

「ううっ、く、九鬼君…」

 

 

「…そうでもない変り者もいるみたいだな」

 

突如教室に入ってきた白髪でスーツ姿の男が、流れるようにワン子に近づいていった。

…ホントに同い年?

 

「このバカっ、成績に利き手は関係ないでしょうが!!」

「あがっ!?し・島田さん、フィードバックで痛いんだから止めてよ!!」

 

えっ、なに?いきなりどうしたの?

 

見れば島田が吉井に地獄卍固めをかけていた。

 

え、なになに、ホントになにが起きたの?

 

どうやら他所に目を向けてる間に試合が終わってたらしい。

その証拠に前の巨大スクリーンに"木下優子○  ―  ×吉井明久"と出ていた。

 

早くね?

 

「そりゃ瞬殺されたからな――ってお前なにしてんだよ!?」

「あ?見りゃ分かんだろうが」

 

来るべき試合に向けて英気を養ってるんだよ。具体的にはリクライニングシートにゆったりと座りこんで付いてる機能をフル活用。

あ〜気分いいわー。マッサージ最高

 

「明日からこの設備で勉強するんだから使い心地を確かめておこうかなーと」

でもヤバイな、居心地良すぎて寝てしまいそうだ。こんなの使って真面目に授業受けれんのか?

 

『なんて大胆でふてぶてしい…』

『自分たちから乗り込んでおいてあの行動…非常識なっ!』

『というよりうらやましい…!』

 

Sクラス側からひそひそとモブの囁きが聞こえる。

でも俺は気にしない。強い子だから

 

 

「イタタタタタタタタッ!?島田さんホントにっホントに痛いから!ホント反省してるから許して!!」

 

教室の前の方では、情けない声で吉井が許しを請うていた。

 

捨て駒にされたり技決められたりかわいそうなやっちゃな

よし、せめてその状況をムービーで撮っておいてやろう

 

「本当に反省してる?嘘じゃない?」

「してます!すっごいしてます!!だから離して!」

「うーんどうしよっかな〜?」

「今ならたいていのことは聞きますっ!」

 

必死だな吉井。まあそろそろ本格的に間接が悲鳴をあげてるだろうから当然か

 

「じゃあまず呼び方から変えてもらおうかしら。ウチはあんたを『アキ』あんたはウチを『美波様』って呼ぶように」

「みっ美波様!これでいい?!」

「あと今度の休み、駅前の『ラ・ペディス』でおいしいクレープ食べたいんだけど」

「うん?じゃあ一人でいって――ああ゛ぁ゛あ゛っ嘘ですわかりました!!おごらさせてもらいますっ!!」

 

どうでもいいけどこれって結構問題じゃねえ?端から見れば教師の目の前でいじめが行われてるって感じだけど

…じゃれあいにも見えるからいっか

 

「じゃあ最後に…」

「まっまだあるの?!」

「う…ウチのことを愛してるって、言ってみて?」

 

顔を赤くしながらも、さっきまでと違いお願いするように言う島田。それと同時に、今までハラハラと固唾を飲んで見守っていた姫路が目を見開いてハッと慌て、止めようと駆け寄ろうとした。

 

「みっ美波ちゃんそれは――!」

 

 

「う…ウチのことを愛してるって言ってみてー!!」

 

 

 

………………………………………………………………

 

 

 

その場にいた全員が一気に固まった。

いつも冷静な高橋教員までぴくりとも動かない。

 

「………ばか」

 

ごきょり

 

 

 

 

 

 

 

その日、学校中にある男の悲鳴が響いた。

それはそれは、聞くも無惨な叫びだったそうな。

 

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

吉井が島田の卍固めから解放され、それを尻目に二回戦が始まった。

ちなみに吉井が悲鳴を上げる中、姫路はホッと胸を撫で下ろしていたんだが…まあ気づかなかったことにしよう。

 

「ねえ」

 

一回戦目をまともに見てなかった分、今度は真面目に観戦してやろかと考えてたら、急に声をかけられた。

 

「ん?なに?」

「そこ、私の席なのだけれど」

 

声をかけてきたのは黒いロングヘアーの美人さん。でもなんか冷たい印象があるな

……? どっかで見たような…?

 

 

「勝者、Fクラス」

 

 

考えても思い出せず、かといって無視して女子生徒の席に座りっぱなしでいたら。二回戦目が終わった。

 

今度も早くない?なに、流行ってんの?

 

 

Fクラス “隠密戦士”土屋康太

保険体育 572点

VS

Aクラス 工藤愛子

保険体育 446点

 

 

今度はこっちの勝ちみたいだけど…保体で400超えって普通ねーぞ。どんな頭してんだ?

 

「…あなた、瀬能君よね。Fクラスの」

 

スクリーンをぼんやり眺めていると、再び女生徒が話しかけてくる。

こここいつの席らしいし、退いた方がいいのかな

 

「昨日の決闘見たわ。…一つ訊きたいのだけど、なぜそれほどの実力を持っているのに活かそうとしないの?あなたなら特待生制度を利用してS組に編入出来たでしょうに」

「…なんで俺がそれに答えなきゃならんのだ?見ず知らずのあんたに」

「人の席を勝手に使っているのだから、ささやかな疑問を解消してくれてもいいでしょ?」

 

そう言われ、真っ直ぐに上から見つめられ、机に頬杖付きながら考える。どうすっかな

 

その時、

 

『ちっ…工藤の奴、負けやがった』

『Sクラスの恥がっ』

『ま、所詮あいつも下賤な身。期待はしてなかったけどな』

 

教室の後ろ…Sクラス生徒がいる方から、そんな話し声が聞こえた。

 

……負けたとはいえ自分のクラスメイトを、よくまあこうまでボロクソに言えるもんだ

 

「成績じゃ品性は補えないからかな」

「……あれだけを見て決められると困るのだけど」

「なんで?」

 

机に手をついて立ち上がる。

そして女生徒に向き直り、

 

「別にあれがおたくらの全てとは言わねえ。でも一人でもあんなのがいるんなら、穴あきの教室の方がマシだ」

 

それで話を打ち切るように、背中を向けて自陣へ歩き出す。

 

その間、俺が直江たちのところに戻るまでの間。なにか言われるかと思ったが、結局女生徒はなにも言わなかった。

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

 

「これで1勝1敗ですね。では次の方、前へ」

「はいっ」

高橋教員に促されるように、姫路が前に出る。

 

「彼女ですか…、それなら私が行きましょう」

Sクラス側からは眼鏡をかけた優男風の奴。

たしかあいつ昨日見たな、名前は…

 

「葵冬馬…!ここでくるか」

坂本が真剣な顔で呟く。そうだ、葵だったな。

 

「強いのか?」

「S組のクラス代表だぞ、決まってるだろ。学年二位の成績保持者だ」

 

べらぼうに強いじゃん。姫路で勝てるのか?

 

「科目は何にしますか?」

「私はなんでも構いませんよ」

 

 

葵の言葉に、姫路が振り向いてこっちを見てくる。

なんだ?なんか言いたそうってのは分かるが、あいにく俺にサトリ能力はないからそれ以上は分からない。

 

「おそらく科目の決定権についてだろう。一回は俺が使うから、次が事実上最後の権利だ」

 

坂本が答える。そういや五回のうち三回は試合内容決めていいっつわれたんだっけ。

次に戦うのは俺だから、『使っていいのか?』って確認してきたのか。律儀だねぇ

 

「使っていいって言ってんだから使えば?」

「え…でもっ」

「大抵のことになら対応してみせるから心配するな」

 

いいからいいからと軽く手を振ってOKサインを出すと、姫路は一度申し訳なさそうな顔をし、すぐにキリッと表情を引き締めて葵に向き直り、

 

「総合科目でお願いします」

力強く言葉を発した。

 

「分かりました。では、初めてください」

 

試獣召喚(サモン)っ!」

 

掛け声と共に出現する魔方陣。

 

そこから出てきたのは、姫路を小さくデフォルメしたような姿の召喚獣。防御力が高そうな鎧を着込み、大剣を装備していかにも強そうだ。

そういや姫路の召喚獣を見るの初めてだな

 

んで、気になる点数は……見た瞬間話が眼を疑った。

 

 

Fクラス “一撃必殺”姫路瑞希

総合科目 6109点

 

 

『6000?!』

 

『バカな、学年トップクラスの成績だぞっ』

『流石は姫路さん、桁違いだ。可愛さも』

 

にわかにざわめき立つ生徒たち。

無理もない。総合6000ってのは普通ないからな。

 

前に成績聞いた時は、確か4000そこらって言われたけど何時の間に上げたんだろうか

 

「強いですねぇ。その点数なら確実にSクラス入りできたでしょうに、惜しかったですね」

「…私、このFクラスが好きなんです、一人のために一生懸命になれるみんなが。  だから、皆さんがいなかったらここまでの点数は取れませんでした」

「………」

「私は、チャンスが来てもSクラスには編入しませんっ、皆さんと一緒に、頑張ります!」

「そうですか…では、私も手加減はせず全力でいきましょう。試獣召喚(サモン)

 

 

優しげに微笑み、試験獣を召喚する葵。

魔方陣から出てきたのは…柄が長い長刀タイプの青龍刀を手に、中華風の道着を着た葵そっくりの召喚獣。けして弱そうには見えないが、姫路のと比べるとどうしても劣ってみえる。

 

これは……いけるか?

姫路はうちのクラスの最大戦力。向こうの葵はクラス代表(男子)

 

実力だけを見れば実質これが大将戦だ。ここで勝利を得られれば、後の勝負に有利になるだろう…士気的な意味で

 

「いきますっ、やあっ!」

 

先手必勝とばかりに、大剣を頭上に掲げて突進する姫路の召喚獣。

それに合わせるように葵の召喚獣も青龍刀を両手で持ち、槍のように構えて突進する。

 

十分に距離が近づき、互いに得物得物を振るい、ぶつかり合う。そして―――

 

 

 

 

 

「…本当に、惜しかったですね」

 

姫路の召喚獣が、真っ二つになった。

 

 

 

「…………えっ?」

 

隣にいた吉井が間の抜けた声を出す。

その次の瞬間、タイミングよく空中に文字が現れた。

 

 

Sクラス 葵冬馬

総合科目 8775点

 

 

「はっ…」

8000んん!?

 

なにそのデタラメな数字!?ありえねえだろ!チートにもほどがあるわ!!

 

「おおっ、また点数を上げたな。我が友よ!」

「ええ、FクラスがS組を狙っていると聞いて、備えていたのです」

「にょほほほほほ、流石は葵君じゃ。見よ、F組の猿どもが間抜けた顔をしておるわ!」

 

にょわ子の言葉を合図にS組どもがやいのやいのと騒ぎ出す。

 

 

『所詮Fクラス』『身の程知らず』『勝負あり』『時間の無駄だったな』『負け犬』『クズの集まり』…ガヤに混じってそんな単語ばかりが聞こえてくる。

 

エリートってこんなもんだっけ?

高橋教員が静かにするよう呼びかけてるが、誰一人止める気配がない。今にもなにか物が投げこまれそうだ。

 

 

「…俺こんな中で戦う(やる)のかよ…」勘弁しろよな

 

 

ただでさえ後ろ(Fクラス)からお通夜みたいな空気が漂ってんだから。皆目線を下に向けて歯を食いしばっている。

姫路が負けたのが相当こたえたみたいだな。

 

こんなんでテンション上がるか

 

 

「逆境で勝てばーとは言ったがマジでそんな状況作らんでも……」

 

思わず頭を掻きながらボソリと呟いた。

プレッシャー感じてるってわけじゃねーけど、勝てるかどうか自信ねーなー

 

 

「……ック…ヒック…ごめっ…なさッ……!」

 

 

「?」

なんか背中が引っ張られ…それに泣き声まで。

 

不審に思い首だけ後ろに向けると、姫路が俯き姿勢で時折肩を震わしながら、俺の制服を掴んでいた。

 

「…ック…わたっ…私が…ヒッ……負けた…っから…」

「…………」

「本当に…ッ……ごめんっ…なさっ……」

 

よく見れば彼女の顔からは水滴がいくつも零れ落ちていて、それが床一面に敷き詰められてる…カーペット?にシミを作る。

 

なんだこれは、これじゃ俺が悪者みたいじゃねーか

 

「泣くなうっとーしい。あとジャマだから離せ」

「っ!ナツル!!」

 

言った途端姫路スキーが大声で怒鳴りやがった。あーあーウッセぇウッセぇ

 

クラスメイト全員(一部除く)から軽蔑や怒りの眼を向けられながらも、今だ俺の制服を握りしめて離さない姫路の頭をグシャグシャっと多少乱暴に撫で回す。真後ろに立たれてるからしかたねーんだよ

 

 

「心配するな。…お前の思いは無駄にせん」

「…ック…え…?」

 

小声で言ったから他の奴には聞こえなかったのか、島田がすぐに近寄ってきて、キッと俺を睨み姫路を引き離す。

 

完全に悪役だなー俺。なんかワン子ん時と状況似てない?まーあん時は当事者の俺とワン子二人だけだったけど。

今回は人数が桁違いだ。

 

ま、いいけどね。別に

とりあえず―――今だに笑い続ける奴らに目に物見せてやろうじゃねえか

 

「勝つぞ、俺は」

俺も嫌いじゃねーからな、このクラス

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

「そろそろ次の試合を始めます。双方、準備はいいですか?…おや瀬能君、あなたが4番手ですか」

 

前に出たら唐突に高橋教員にそう声をかけられる。てっきり忘れられてると思ったが、そうでもなかったようだ。

 

「お久しぶりッス。高橋せんせ」

「そうですね、…Fクラスはどうですか?」

 

表情に変化はあまりないが、どこと無く心配したような感じだ。いい先生だなぁ…

 

「まあ悪くはないッスよ。ただ畳にちゃぶ台は飽きたんでシステムデスク、狙わしてもらいます」

「ええ、向上心があることはいいことです。一応言っておきますが、召喚獣ではなく直接相手を攻撃するのは反則行為ですから。それを行った場合即座に負けになります」

「…そこまで非人道的な精神は持ってねーッス」

 

俺が観察処分者だから言うんだろうが…吉井の時は言ってなかったよね?なんで今言うの?

 

「では、科目は何にしますか?」

 

いろいろ問いただしたい気持ちがあったが、その一言で切り替える。って相手はさっきの美人さんか

 

「レディファーストってことで、そっちが決めてどうぞ」どっちにしろ俺に決定権ないけど

 

「あらどうも。先生、総合科目でお願いします」

「分かりました」

 

総合か。現国が得意だからそっちの方がよかったんだが…いや向こうが一定点数超えてたら魔法使われるんだよな。それは色々面倒だ。そういう意味でこれはこれでよかったんだろう。これなら相手のが点数高くてもテクニックでカバーでき――

 

「それではどうぞ」

試獣召喚(サモン)

「すいませんちょっとタイムを」

 

召喚獣が出た途端、高橋教員に待ってもらうよう即行で宣言した。

だって

 

 

Sクラス 三郷雫

総合科目 12024点

 

 

「誰か代われっ!頼むから!!」

ありえねーだろ!なんだよ12000って!?チートどころの騒ぎじゃねえよ!化け物か!?

 

 

「しっ・島田さん!お願いです、代わってください!!」

「むっムリよ!敵うわけないでしょ!?」

「木下っ後生だ!代わってくれ!」

「無茶を言わんでくれっ!」

「島津、お前美人好きだろ!?玉砕してこい!!」

「砕けんの前提かよ!?てかタフガイの俺様でも限度ってのがあるぜ!」

「代われ直江!お前ならやれる!!」

「俺まだ召喚獣ろくに扱ったことないんだぞ。瞬殺されるわ」

 

その後も何人かに恥を承知で頼んでみるが一蹴される。当然か

つか思い出した、あれ生徒会長じゃん!今朝全校集会で壇上で話してたもん!(どお)りで見たことあると思ったよ!

 

「あきらめろ瀬能、どっちにしろお前以外はまともにやり合うことすらできん!」

「ふざけんなよ!葵より四千も高いじゃねーか!そもそもそんな成績ならなんでクラス代表じゃねーの!?」おかしいだろ絶対!

 

 

「私はすでに生徒会長に就任していたから、クラス代表と兼任するのは無理だったのよ。だから霧島さんに代表になってもらったの」

 

当然の疑問に本人が答えてくれた。くっ…正論ではある

 

でも納得はできない。俺の総合点数がだいたい2000そこらだったから…、単純計算で5倍以上の実力差がある。いったいどう戦えってんだ

 

前にも言ったが、俺は観察処分者なんだぞ?召喚獣のダメージの何割かはフィードバックされるんだ。

あんな点数で攻撃されて直撃でもしたら、痛みでショック死するわ

 

「………瀬能さん……」

 

学園に入学して以来、これ以上ないってくらい悩んでいるとまた姫路が話し掛けてきた。

 

誰が見ても「沈んでます」って表情をしている。

さらに目には涙が貯まってて、今にも零れ落ちそうだ。

 

「〜〜〜〜クソッ!」

 

さっきは顔見てなかったから悪態つけたが今度は無理だ。

そういや女を泣かして心が痛まん奴は外道でしかないとかジイさんも言ってたっけなぁ!

 

残念だが俺はまだ外道にはなれてないみたいだ

 

彼女が口を開く前に両の頬をパァン!と勢いよく叩き、気合いを入れる。男は根性!それが一番大事!!

 

「骨は拾えよテメぇら!Fクラス瀬能ナツル、いきます!試獣召喚(サモン)!」

 




 ニョロニョロ
  ムーミンに出てくる白い靴下を逆さにしたような形をしたおばけ。
 地獄卍固め
  キン肉マンの技。卍固めの原型といわれているとかなんとか。掛けるのが難しいらしいけど普通卍固め決めるのも難しいよ。


そんなこんなでSクラス戦です。
そして満を持して登場。我らが生徒会長・三郷雫様。総合点数一万超えというまさしくパーフェクト超人な実力を引っさげてナツルの前に立ちふさがりました。
はたしてナッチは勝てるのか…その試合展開は…?
今、作者の腕が試されています。たぶん


~S組成績順位(登場した人のみ)~

三郷雫 1位
葵冬馬 2位
九鬼英雄 3位
霧島翔子 4位

不死川心 7位


木下優子 16位
工藤愛子 18位


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