それもあってこの木の下は学園有数の告白スポットだとか。
〜ナツルSide〜
「午後5時、
放課後。げっそりしながらも、下駄箱に入っていた手紙を読みながら目的地へと足を進める。
げっそりしてる理由?言わせんなよ恥ずかしい。
「にしても…」
貰った手紙の中身、だいぶポエミーだな。比喩が多すぎて解読に手こずったぞ。
もしかしてラブレターじゃない?ただのポエムだったらどうしよう。
ちょっとドキドキしながらも歩き続け、目的地である天然棟の近くまでやって来た。
前にもちょろっと触れたかもだが、この天然棟は巨大な樹木を丸ごとくり抜いて作られた特殊な校舎。モノが木だけにこの区画は植物がやたら多い。
植物園やら天然由来の香水や化粧品などを開発する施設も―――やめよう。話が長くなる。
まぁつまり。ここは神月学園でも数多くある人目につかない場所なのだ。
特にレモンの木の下は生徒たちの絶好の逢引きスポット。告白なんかによく使われる。クソが。
「……ん、」
件のレモンの木の根本に、人影が一つ。
木の方を向いているから顔は分からないが、どうやら少女のようだ。よかった。
迷わず近づいていく。
☆ ★ ☆
〜???Side〜
「恋人になりたい人がいる」
同じ寮に暮らしていながら、普段から交流がない同学年の少女にそう言われたのは昨日の夜。ラウンジでくつろいでいた時だった。
同じ寮生の女子で…桐条先輩と琴音以外全員の前でだったから、ちょっとしたパニックが起きた。
とりあえず手紙で呼び出して告白したら?ってことで天然棟のレモンの木の下を勧めてみたけど…
「マリーちゃん…大丈夫かな?」
「どうだろう…う〜〜あたしが緊張してきた…!」
雪子と千枝。そして同じくラウンジにいた風花とりせ。
私こと岳羽ゆかりを含めた計5人は、相談されてアドバイスした手前、ことのなりゆきが気になるのでレモンの木から離れた植木に隠れて行く末を見守っている。
そこ、デガバメとか言わない。
………何言ってんだろ。私。
「あ、瀬能さん来たっ」
りせの言葉に緩んだ空気が引き締まって、自然と口を噤んだ。
木の下で立っているマリーちゃんの方を注目すると、彼女に近づいていく青い髪の男子生徒…瀬能ナツルの姿が。
……ヤッバ…緊張してきた……!
『あんたが俺に手紙くれた奴か?』
瀬能君がマリーちゃんに話しかける。
『…!うん、そう』
『…何年生?一年?二年?』
…?なんでそんな事聞くんだろう。
この間顔合わせしたばっか――って、あの時マリーちゃんいなかったか。え、じゃあ2人とも初対面てこと?
それなのにマリーちゃん、瀬能君と恋人になりたいって言ったんだ。一目惚れ?
『え?…二年生、だけど…』
『なんだ、嘘コクか』
空気が凍りついた。
嘘コク…嘘の、告白。
「な…なんでっ」
『二・三年で俺の異常性を知らない奴なんてまずいねーだろ』
ちょっと納得しちゃった。
『一年ならまだ可能性あったけどな。どうせそこに誰かいるんだろ?気配で分かるんだよ』
そう言って瀬能君がこっちの方を指差す。
え、ウソ。ホントに気づかれてる!?
さっきのりせのつぶやきも偶然じゃないの!?
ど…どうしよう。このままだと私たちのせいでマリーちゃんの告白が最悪な結末になる!!
―――パリンッ
『…ん?気配消えた?…人がいると思ったんだが気のせいだったか?』
瀬能君が怪訝な表情でキョロキョロと辺りを見回す。
…一瞬、りせからペルソナ召喚時に出るアルカナカードが光ったように見えたんだけど、…見間違い?
『わ…私…最近来たばっかで……』
『え?転入生だったってこと?あー…それなら…しょうがないか』
『それならやめた方がいいぜー?自分で言うのもなんだけど俺かなりヤバいから。付き合ったりなんかしたらあんたまで奇異な目で見られる』
かなり軽く言っているけど、普段から聞こえてくる彼の噂を考えると納得できる。
教頭先生を病院送りにした上で退任させたとか、清涼祭で校舎燃やしたとか。
…マリーちゃんの初恋叶わないほうがいい気がしてきた。
『それでも、私は貴方の恋人になりたい』
私の考えを他所に、とても強い意志を持った瞳をまっすぐに瀬能君に向けるマリーちゃん。
生半可な答えでは決して引かないだろう。瀬能君もそれを察したのか、ため息をつくように深く息を吐いて頭を抱える。
『……実を言うとさ。こういう告白自体があまり好きじゃないんだよね』
そう言って語り出した。
『この学校入ってばっかのころかな。詳細は省くけどかなり浮かれて調子乗ってたんだよ。俺』
『それでまぁ…ちょっといいなって思った一つ上の先輩に告白したんだ。玉砕したけど』
『そん時言われたんだよねー……き…きみ………きみは……』
『ちょっと…普通すぎるかな……って………』
「「「「えぇー…」」」」
思わず4人でハモっちゃった。
普通って…複数のペルソナ使える超強いエリザベスさんを飛び膝蹴り(※正確には違う)で気絶させられる男子なのに…
それとも入学当初は違ったのかな?
『それ以来人付き合いがちょっと難しくなった。昔からだけど、多分より一層他人と仲良くなりづらくなった』
『多少の改善はされてきたとは思うけど、まだ彼氏彼女の関係を築けるほど強くはないんだ。分かって?』
『…………』
ふざけた様子を見せる瀬能君に対して、深刻そうに俯いて黙り込むマリーちゃん。
軽口だったけど、瀬能君の言った事は彼自身の過去のトラウマだ。
マリーちゃんの一目惚れってだけで瀬能君を心変わりさせられるは…ちょっと、難しいと思う。
『まぁーあれだ!あんた可愛いからさっ、すぐに俺以上のいい男見つけられ――』
『いない!!』
「「「「!!?」」」」
『いないいないいないいないよ!あなた以上の人間なんてどこにもいないし、いらないよ!』
「まっ、マリーちゃん…?」
普段から交流がある娘じゃない。
だから勝手に思ってた。物静かな娘だって。
1人が好きだって。大声を上げる娘じゃないって。
あんな―――
ポロポロと、顔を真っ赤にして涙を流す娘じゃないって。
『どうして分かってくれないの…?私はっ、貴方じゃなきゃダメなんだよっ……!』
『…………わかった。付き合おう』
「「「「………!!」」」」
私たち4人、全員が息を飲んだ。
『…!ホントに…?』
『涙流されちゃな…』
居心地悪そうに頭を掻く瀬能君。
…なにそれ。
しょうがなく付き合うってこと?最低…
そんな奴だったんだ…
『……いや、ダメだな。この言い方は卑怯だ』
え?
『なんていうか…胸に来たんだよ。今の言葉』
『先輩に告白したのもノリみたいなもんで、恋とか愛とか正直よくわかんねーし興味なかったんだよね。…トラウマ作っただけだったな…』
『好きって気持ちとは違うんだろうけどさ。知りたくなったよ。胸に響いたこの感情を…あんたと一緒に』
『だか――っていつまで泣いてんだよオイ』
ボロボロと勢いを増して泣き続けるマリーちゃんに、少し驚いた様子の瀬能君。
『てかさっきより泣いてんじゃねーか。なんで?』
『ちがっ…これ…パトスが溢れたの!』
『え、お前のパトスって水系なの?』
『もっと熱いもんだと思ってた…』と言いながら、居心地悪そうに乱暴に片手で頭を掻く。
そして―――
『泣くなよ…今さらだけど……その…お前の泣く顔はすごく…胸が苦しい』
『……!』
空いた手で、マリーちゃんの頭を優しげに撫でる。
『うぉっ、』
両腕が上がった状態の瀬能君の胴体に、マリーちゃんが抱きついた。
『…えっと……』
『…マリー』
『え?』
『私の名前。…
『そっか。そういえば自己紹介してなかったな。俺は瀬能ナツルだ。よろしくな、マリー』
『うん……ナツル』
………それからしばらく、2人は抱き合ったままで長い時間を過ごした。
なんか、ちょっと
彼はきちんと他人を思いやれる人だった。
「マリーちゃん…よかったね」
「うんっ」
「あ〜ん。私も悠先輩とあんな関係になりた〜いっ」
「ちょっ、りせちゃん?」
「りせちゃん、芸能人が気軽にそんなこと言っちゃ駄目だと思うの」
「ふ…2人とも怖いです……」
向こうはラブコメな感じだけど、こっちは怪しい雰囲気になってきた。
…どのタイミングで撤収しよう……
≫マリー と 恋人になった。
マリー「……(///)」
ナツル「……(パトスめっちゃ冷たい…)」
爆ぜろくそ主人公。
マリーの好感度が高い理由はいつか語られます。…多分…きっと……
…語られるまで続けばいいなぁ…(ヲイ!)