戦士たちの非日常的な日々   作:nick

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4時間目 地獄へGO!

「まあ100均の本に書いてある内容なんて信じていいか微妙だろ。気にするな」

「それもそうだな」

 

なんか面倒くさくなってきたからもうそれでいいや。だいぶ時間使ったし。

 

 

「…………(ぐしぐし)」

「む。起きたか、ムッツリーニよ」

 

木下に言われて気づいたが、通路を挟んで逆側の席。吉井の隣に土屋がいた。

 

まったく気づかなかった…忍者の如く気配薄いからなこいつ。寝てたら余計分からん。

 

「おはようムッツリーニ。よく眠れた?」

「(コクリ)……空腹で目覚めた…」

 

土屋は寝ぼけ眼を擦りながら吉井の方を向いて―――ギョッとした様子で固まる。

 

どうした?

 

「あ…明久……首が逆に…!」

「ああそうだった」

 

ついさっき俺が回したんだった。

 

逆転してすぐは騒いでいたけど、ちょっとしたらもう慣れたらしくなにも言わなくなったからな。忘れてたよ。

 

このままなのも不気味で気持ち悪いから戻しとこう。ゴキっとな。

 

「(ゴキッ、)ひぎっ!ちょっとナツル、もっと優しくやってよ!」

「優しくって」どうやって?

 

脱臼みたいなもんだぞ。痛み無くして直せるかよ。麻酔でも射てってか?

 

まあいいや、めんどくさい。それよりも昼か。

飯にしよう。

 

イベントリから昨日のうちに用意しておいた(イベントリ内は時間が止まってるっぽい)五段の重箱弁当を取り出す。

座席に座り直して、同じくイベントリから取り出した折りたたみのテーブルを開いて、その上に弁当を広げる。

 

「じゃあ食うか」

「(こくり)……いただきます」

 

手渡したおしぼりで丁寧に手を拭き、箸で料理をつまんでいく呂布ちゃん。

 

うんうん、もりもり食べなさい。丁寧にいっぱい食べるきみが好き。

 

 

「ナツルって主(あるじ)だよな?」

「そうだよ?」

 

 

ウチのあり方になにか?

 

「お主(ぬし)が従者のように見えるがのう」

「給金替わりだと思えばおかしくないだろ」

「うーむ…」

 

ぶっちゃけ引っかからないと言ったら嘘になる。なるが…

 

めんどくさいからまあいっかっ。

 

 

「あ、私もお弁当作ってきたんですよ。よかったらみんなで食べましょうっ」

「 いやです」

即答した。

 

 

「テメー学祭でなにも学んでねーじゃねーか。いい加減にしねえと引っぱたくぞ」

 

思わず立ち上がり、通路に出て姫路に向き直る。

 

さっき振り返った時にはなかった重箱が姫路の太腿の上に置いてあった。窓から捨てろ。

 

「言っとくが俺と呂布ちゃんはすでに用意してるからお前の弁当は食わないぞ」

「すまんの、わしもじゃ」

「……同じく」

「悪いな姫路、俺も必要ない」

「えっと…実は僕も惣菜パンを…」

 

見事に全員逃げ道を用意してきたな。当たり前か。

 

大丈夫そうだから呂布ちゃんとのモグモグタイム再開しよう。もう半分くらい食われてるから。

 

「そんなっ、困ります!誰かが食べないと――」

 

無視だ無視。

 

 

 

「誰かが食べないと私の料理…周囲にある食品も私の料理と同じ味にするんですっ」

 

「なんでやねんな」座ろうとしたのをやめて再び立ち上がる。

 

 

 

なんでやねんな。

 

「なんでだよ(なんでやんど)!!意味わかんねーぞ侵食する料理とか!」ゾンビか!

 

 

 

ム"ーーーッ

 

 

 

メールだ。

 

『■姫路瑞樹

  能力:特級事案(ポイズンハザード)

  効果:調理器具と食材を使い、擬似生命体(クリーチャー)を作ることができる。作り出されたクリーチャーはステータスと能力を持っており、現在のクリーチャーの能力は他の料理を自分と同じにする"侵食"』

 

「最悪の能力!!」

知りたくなかったアナライズ結果来た。動くポイズンクッキング?

 

 

「うわあああああ!?」

 

 

吉井がいきなり叫び声を上げて立ち上がり、席から逃げるように離れる。

 

見れば奴が手に持っていた惣菜パンが毒々しい深緑色のスライムに――

 

「呂布ちゃんゴメン!」

 

咄嗟に自分の弁当をイベントリに仕舞い込む。

マジでポイズンクッキングじゃねーか!?

 

 

「姫路に吉井!手に持ってるのを通路に捨てろ!焼却する!!」

 

通路に飛び出ながら、アルカナカードを召喚していつでもペルソナを呼び出せるよう準備する。

 

車内で火を使うのはかなりヤバイが、あの物体Xを放置しておく方がヤバイ。

『オ、オデ ガンバルっ』とか言い出す前に俺の経験値に変えよう。

つーか吉井、お前通路に逃げてもブツ持ってたら意味ねーんじゃねーの?

 

 

ム"ーーー

 

 

またメールだ。

 

『■物体X(仮称)

   HP:5

   SP:2

   スキル:くいしばり

 

物理:耐性

火炎:耐性

氷結:耐性

電撃:耐性

疾風:耐性

念動:耐性

核熱:耐性

祝福:無効

呪怨:吸収

 

力:3

魔:6

耐:89

速:91

運:0

 

備考:攻撃してきた者の口に猛スピードで滑り込み致命的なダメージを与える』

 

 

ダメだ。アギラオ撃ったら俺が死ぬ。

 

 

『何もしなくとも後数秒ほどでマスターの口に飛び込みます。姫路瑞樹がマスターに食べさせたいと強く思って作ったので』

 

 

何もしなくても死ぬんかい。理不尽すぎる。

 

 

――――――まてよ?

 

 

「吉井…お前俺に借りがあるよな…?」

「いやいやいやいや!ちょっと待って!!」

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

『ダメだよナツルそんな借りだなんて!こんな場面で使うようなものじゃないでしょ!?"それを使うだなんてとんでもない!"ってメッセージ出るよ!』

『リスナーは言っている。今です吉井、死ぬのです!と、』

『なにさリスナーって?!』

『ぐちゃぐちゃとうるせーんだよ、とっとと食え。そもそも俺に食わせようってのがおかしいんだよ』

『意味がわからないよ!!』

『大丈夫だ。お前以外の奴はわかってる。つーかお前が食わなかったら姫路に処理させるぞ』

『ちょっ、それは危険でしょ!姫路さん身体弱いんだから!』

『だったらお前が食うしかねーよなぁ?いやもう面倒だ。こうしよう』

『なっ、なにをする気っ?』

『掌底をぶち当てて顎の骨を外し、姫路弁当の中身を全て流しこむ。走馬灯に酔え』

『いやー鬼畜外道!!』

『さわやかなゲスだ!』

 

 

〜〜〜〜〜〜(この間1秒)

 

 

「くたばれ吉井!!」

「やだーーーーーー!!!」

 

左腕を腰だめに構えながら縮地で距離を縮める。

同時に右手で姫路の弁当を奪い、攻撃をしながら吉井の口にねじ込む!

 

これで完璧!――そう思っていた。

 

 

ゴッ、トンッ

 

 

「あ?」

 

 

足に力を込め、動き出した瞬間に、大きく地面――電車が揺れた。

 

 

「きゃっ、」

 

 

身体全体がブレたせいで手元が狂い、姫路の膝の上の物に掌底がぶつかる。

 

 

「「「「「あ」」」」」

 

 

―――それが意識を失う前に聞いた、最後の言葉だった。

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

〜吉井Side〜

 

 

≫物体Xは さいごのちからをふりしぼり

ナツルのくちに とびこんだ!

 

 

姫路さんの持っていたお弁当箱から飛び出した真っ黒なスライムみたいなものが、猛スピードでナツルの口の中に滑り込んだ。

 

それと同時に倒れるナツル。

 

 

バタンッ

 

 

派手さはなく、崩れるように床に身体を投げ出すその姿に恐怖しかない。大丈夫だよね?生きてるよね?

 

ま…まぁ大丈夫でしょっ、ナツルだし。それよりっ

 

「雄二、僕生き残っ」

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

〜強化合宿1日目の日誌〜

 

・坂本雄二

 

 ナツルが倒れたすぐ後、明久も似たような経緯で倒れた。

 持っていた惣菜パンを強く握りしめたら、そのパンが吉井の口に飛び込んで…

 自分が用意してきたカツサンドも動くんじゃないかとしばらく身動きができなかった。

 

・教師のコメント

 なにを言っているのかよくわかりません。電車内でなにがあったのでしょうか?

 





瀬能ナツル(ついでに吉井)死亡。次回から"瀬能ナツル地獄編〜ムチャブリすぎます閻魔様〜"が始まります。

嘘です。普通にナツルの日常続きます。

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