戦士たちの非日常的な日々   作:nick

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19時間目 Fate

「流石にきつかった…」

 

一限目終了のチャイムが鳴り終わると同時にノルマを達成し、バケツを地面に下ろす。

朝からバケツ二つ持ってスクワット千回する高校生って全国で何人いるかな…

 

「お疲れナツル。よく水を零さなかったな」

 

汗だくのまま一息ついていたら直江が話しかけてきた。

 

「…お前か。あー、一年ぶり」

「昨日も会っただろ。なに言ってんだ」

 

そうだったっけ。

 

「坂本と吉井はどうした?」

「二人とも入院中。吉井はともかく坂本は自分の手で病院送りにしたんだから覚えとけよ」

 

あー…あー、そうか、昨日血祭り食らわせたんだった。

吉井も間接的にだが俺がやったようなもんかもな。別になんとも思わんが。

 

「しかし結構激しく動いてたのに全く跳ねなかったな…なにかコツがあるのか?」

「あー?気で固定化したんだよ」

「…そんなことできるのか?」

 

普通は無理なんじゃないかな。

 

なんか…波紋みたいな感じで使ってみたらできた。コップの水面に振動膜を作って、水を協力に固定してプリンみたいにするアレ。

使えば使うだけ幅が広がるな。そのうち物質具現化とかできるようになるかも。

 

「相変わらずタイガはすごいわね。アタシもできるかな…」

「おいおいワン子、前に言わなかったか?"できないと決めつけるのは…"」

「…!"やれることを全部やってからでも遅くない"ね!うん、アタシも頑張る!!」

「おーガンバレガンバレ。できたら教えてくれ」

 

やる気に満ちた目で闘志を燃やす少女に、軽い気持ちでエールを飛ばす。

できるかどうか、そもそもどうやって試せばいいのか検討もつかんが言うだけならタダだろう。

 

「できないと決めつけるのはやれることを全部やってからでも遅くないねえ…それもなにかのネタか?」

「俺が実際に言った言葉だよ」

 

確か…ワン子が気を習得した時だったかな。

 

 

〜〜回想〜〜

 

「川上波ーーー!!」

ドガーン!

「うーむ…やっぱりあんま遠くに飛ばせねえな。離れると威力が落ちる」

「それでも飛ばせるだけすごいわよ。アタシなんかできないし…」

「出してみりゃいいじゃねえか」

「ムリよ、お姉さまやタイガみたいにはできないわ」

「本当に?ホントのホントの、ほんと〜〜〜〜にできないのか?自分はできないって思い込んでて可能性に蓋してるだけなんじゃねえのか?」

「えっ…?」

「できないって決めつけんのは、やれること全部やってからでも遅くないんじゃないのか!?」

「タイガ…うん!アタシ、やってみる!」

「よし、じゃあまずは丹田に力を集めろ!丹田の場所はヘソ下三寸だ!」

「うん!」

「まだだ!まだまだ、もっと集中しろ!!」

「うにゅにゅにゅにゅにゅにゅにゅ…にゅ〜〜〜!!」

「もっとだ!もっと熱く!熱くなれよ!!」

「にゅわーーーん!!」

「(変な掛け声…)よし、今だ!これを唱えろ!」

「うん!ベホマズン!!」

 

……………………

 

「タイガ…?」

「うわぁ…ホントに唱えたよ、しかも大声で」

「っ、…タイガの……!」

 

「ぶぁかあぁぁぁぁぁぁっっ!!!(ボッ!!)」

 

「(ドゴオッ!!)うぐえ!?」「…え……あれ?今…」

「ぐふ…なんだ…できるじゃあ……ないか…」

ドシャ!

「たっ、タイガーーー!?」

 

〜〜回想終わり〜〜

 

 

うん、なんで使えるようになったのかさっぱり分からない。

 

なんであんなテキトーなことでぱっと使えるようになるんだよ…やっぱり天才なんじゃねえかワン子(こいつ)。ハラたつわー

 

 

「中々熱いセリフだな」

「ほっとけ」

 

あの時はなんか…気を連発したせいかな、松岡修造っぽくなっちまった。

基本熱血だから体温上がると体育会系になるんだよな…気をつけよう。

 

 

「でもナツル、よく千回もスクワットできたな。お前なら適当に流すかと思ってた奴結構いたぞ」

「鉄人が見てたからな」

 

授業の合間合間で、俺のことをチラ見していた。

少しでもペースが落ちたり水が零れたら注意が飛んだだろう。結局普通に授業進めるだけで一言もダメ出しくらわなかったけど。

 

メンドくせー説教されるくらいなら千回やり切った方が楽だ。

 

「なんだ、トップランカーの自覚でも出てやる気になったのかと思った」

「? トップランカー?」

「これのことだよ」

 

モヤシがファミ○…いや、最新号の神月通信(報道部発行の学校新聞)を差し出してくる。

 

いたのかお前。

いや、いるのはいいんだよ。同じクラスだし、でもなんかサラッと会話に入ってきたな。

 

「それの裏・神月ランキングのところ、ナツル(お前)十位に入ってるぞ」

「えぇっ、マジ!?」

 

慌ててページをめくると…ホントだ。10位に"瀬能ナツル"って書いてある。

 

「昨日ランキング入りしたばっかなのにもう二分の一に…」

「知らなかったのかよ…」

 

全然知らんかった。

 

直江が呆れた面して見つめてくるが、そんなこと全く気にならないほどびっくりだ。

 

裏・神月…いや表もだが、ランキングは入れ替え制だから、下位ランカーの俺が上位の奴を倒してその座を奪ったてことになる。

 

心当たりと言えば昨日のあ…あ……名前なんつったかな、あの似非エリートの高慢ちきオールバック。

 

あー…あー……アクジ?

(※阿久津障司。ある意味ドンピシャ)

 

てかアレ10位だったんだ…見掛け倒しにも程があるだろ。こっちの17位…桐条超会長の方が強く感じたんだが。

 

……ん、特集に俺の事が書かれてる。

 

『彗星の如く現れ、瞬く間にランキングを駆け上がった"人畜有害"瀬能ナツル!見た目と雰囲気に騙されるな!触れるな危険』

 

ははっ、好き勝手言ってら。書いたのは二年生の奴か。

三年には癌で二年は有害か。一年生にはなんて呼ばれるかな。

 

………ん?

 

 

〜〜神月学園☆イケメンランキング〜〜

 

1位 京極彦一

2位 葵冬馬

3位 瀬能ナツル

4位 源忠勝

5位 風間翔一

 

 

(見出し)権力、武力、そして頼りなさそうな見た目とは裏腹に凶暴な侠気を兼ね備えた男。瀬能ナツル!他の上位陣にはないドSな部分が人気を呼び第三位にランクイン!!

 

 

…………見なかったことにしよう。

 

俺はぱたりと雑誌を閉じた。

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

「お主ら次の授業の支度をせんでいいのかの?」

 

直江たちと話している最中に、木下が声をかけてくる。

そういえば休み時間になってから結構経ったな。次の授業ってなんだったっけ。

 

「次って選択科目でしょう?アタシは武道で、次はグラウンドだからもう少しくらいは大丈夫よ」

「へへっ、俺様もー。武道は着付けからが始まりだから準備する必要がないのが楽だぜ」

「ああ、次は選択か」

 

選択科目は被ってない限り皆別々の所で授業するんだよな。

 

俺は音楽を選択したから、次は…次は―――

 

「音楽室だよちくしょう!!」急いで鞄から筆記用具を取り出す。

 

音楽室は二年棟の最上階だ。今から行って間に合うか?

 

「ナツルはホント身体張って笑いを取りにいくな」

「芸人の鏡じゃ」

「ボケじゃねーよ!!」

 

しみじみと感心した表情をする直江と木下に大声を返し、校舎へ大急ぎで走る。

 

砂利が食い込んで痛い…そういえば素足だった。購買で新しいの買わなきゃ。

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

走る、走る、

俺たち。違う。

 

ほとんどの生徒が移動し終わったのか、無人の校舎内をひたすらに駆け抜ける。

目的地は最上階最端。ちなみに二年棟は6階建てだ。

 

なんでうちの音楽室こんな離れた場所にあるんだよ。こういうとこだけ無駄に普通の学校みたいな間取りさせやがって。

敷地広いんだからコンサートホールみたいな専用棟作れよ。

 

階段を二段飛ばして駆け上がり、6階に到着。ギリギリ間に合うか?

 

「……ん?」

 

再び走ろうとした矢先、床に一枚の紙…カードのような物が舞い落ちた。

 

思わず立ち止まり、拾って眺める。

なんだこりゃ、トランプか?

 

カードから目を離し周りを見回すと、一人の女性の立ち去ろうとする後ろ姿が見えた。

他には誰もおらず、風もなかったのでこの落し物はあの人の物だろう。

 

…渡すだけならそう時間もかからんか。

ここで見なかったフリをするのは人としてどうかとも思うし。

 

「あの、お姉さんちょっと!」

少し強めに話しかける。

 

 

どうでもいいが俺は(名前を知らない)歳上の女性を大概"お姉さん"と呼ぶ。

 

理由は…実は俺自身もよく分からない。

ガキのころは普通に「おばちゃん」とか呼んでたはず…そういえば最後にその言葉使ったのいつだったっけ。

 

確か、幼なじみの母親に言ったのが最期だった気がするが…記憶がない。

まあ別に困らないからいっか。

 

 

「あのちょっと!」

「はい?」

 

近づいて再び声をかけると、女性が足を止めて振り返る。

 

なんか知的美人って感じだな。

 

「コレあなたのでしょ?落としたっスよ」

「ああ、これはご丁寧に…あら?」

 

女性はカードを見て受け取る―――かと思いきや、俺の顔をまじまじと見つめる。

 

なんだ?顔になんかついてたか?

 

「これはこれは、誰かと思えば瀬能様でしたか」

「…そうですがどこかで会いましたっけ」

「ああ…そういえばまだ顔を合わせたことはございませんでした」

 

なんだ、ただの電波か。

 

「…瀬能様。あなたは"運命"を信じますか?」

「は?」

なんだいきなり。

 

「ええと…うちは仏教なのでそういうのは…」

「宗教の勧誘ではございません」

 

ああなんだそうなのか。まあ仏教云々は嘘だけど。

 

「あー…俺はアレっすね。見て殴れるもんしか信じない主義なんで」

(拳)交じり気のないものしか、信じないよ!

 

「ふふっ、貴方らしいですね」

 

さも愉快そうに薄く微笑むブロンドさん。

 

「では瀬能様、もしも目に見えてどうしようもなく悪い運命が迫ってきたら、貴方はどうなさいますか?」

「殴って変える」

「…ご自分にそれだけの力がある、と?」

「運命ってのは変えられるんだよ。てめぇの力でな」

 

てクロヒョウの右京龍也が言ってた。

 

「大なり小なり、人間誰しも足掻くだけの力は持ってるもんだ。でもタチの悪い運命を変えられるかどうかはその時になるまで分かんねーんだよ」

「…貴方ならどのような運命にも抗い、変えることができそうですね。不思議な人です」

 

よせやい。んな大層な人間じゃねえよ俺は。

穴あきの教室を最高級設備に変えられなかったからな。

 

「せっかく拾っていただきましたが、そちらはお納めください」

 

そう言って俺が持ってるカードを手で示す。

 

「いいのか?」

「はい。少しでも瀬能様の助けになれば幸いですので。ですが、どのような結果もそれは貴方が選び抜いた末に起きるもの。後悔だけはなさいませんよう、お気をつけください」

 

こっちがなにか言う前に、ブロンドの女性は一礼をして去っていった。

 

「……ああまできっちりされるとツッコミ辛いな」

 

女性の姿が完全に見えなくなったころ、ぽつりと口を開く。

 

見た目はハイレベルな知的美人なのに相当の電波だ。もしくは中二病。

いやまあ、それが悪いとは言わんが。

 

「こんなん貰ってもなぁ…」

正直反応に困る。

 

少しでも助けになればって、そもそもこれ白紙じゃん。なんの役に立つんんだよ。

あれか?あなたの可能性は無限大ですっていうお守りか?それともメモ代わりにでもしろってか?

 

「…まあ栞に使えばいいか」あんま本とか読まないけど。

 

カードを胸ポケットに仕舞い、今度こそ歩き出す。

 

そういやさっきの人初めて見たな。

教師全員を知ってる訳じゃないけど、一体なんの科目の先生なんだ?

 

 

 

 

数分後、すでにチャイムが鳴っていたことを忘れてた俺は堂々と遅刻して音楽室に入った。

 

一日に二度遅刻したのは生涯で初めてだぜ…

 




〜〜おまけ〜〜


ガクト「しっかし、遅刻の理由に天啓はねえんじゃねーか?こんなものまで用意してよ」
ナツル「あー?ああ…今朝のか」
クリス「授業に遅れるのはよくないぞ、冴島殿」
ナツル「不可抗力だよ。あと俺の名前は瀬能だ」
モロ「これ(鮭を咥えた木彫りの熊)、遅刻の言い訳にするためだけに買ったの?しかも普段から持ち歩いて…重くないの?」
ナツル「こんな訳の分からねーもんに金かけるわけねーだろ」
モロ「え、て事はこれ自作!?クオリティ高くない!?」
大和「店で売れるレベルだぞ…製作にどれくらいかかったんだ?」
ナツル「あー…20秒くらいかな」
モロ・大和「「20秒!?」」
ガクト「オイオイ、流石にウソだろ?」
ナツル「あ、疑ってんな?じゃあ証拠を見せてやるよ」

ゴソゴソ…(←懐を弄るナツル)

ナツル「(ズボっ)さーて、それじゃあ軽く―――」
大和「ちょっと待て今それ、どこから出したんだ(ナツルが持つノミと丸太を指差す)」

ナツル「どこって…上着の内ポケットから」
大和「内ポケットってお前、その丸太俺の頭ぐらいあるじゃないか!?どうやって出したんだ一体!」
ナツル「マスターキートンだってスーツん中に色々隠し持ってんだろーが」
大和「片手で持てるものをな!」
ナツル「(無視)今朝使ったからまた補充しないと…」
モロ「あれ?タイガ、ノミしか持ってないけどハンマーは?」
ナツル「イベントリ一つ潰すのもったいないから家に置いてきた」
大和「イベントリってなんだ!?」
ナツル「はーーーー!!(ガッ、ガッ!)」

ガクト「すげえ!ホントに削ってやがる!」
モロ「しかもノミ一本で!」
クリス「プリンをスプーンですくってるみたいだな…」

ナツル「天啓が…天啓が……!」

大和「なんかつぶやきだしたぞ」
ワン子「タイガ凄い!」
大和(凄いか?)

ナツル「あかん、なにも沸かへん」

ガクト「完成したのに!?」
クリス「小さな犬(ワン子)が!?」
モロ「ネンドロイドプチみたい!?」
大和「マンガ肉咥えてる!?」

ナツル「仲いいなお前ら(ポイっ)」
ワン子「ちょっとタイガ!すて「一子を捨てんじゃねえ!!」(←放られた木彫りのワン子をダイビングキャッチ)」

大和・モロ・ガクト・クリス・ワン子『源さん(源殿)(タっちゃん)!?』
ナツル「お前ら本当に仲いいな」
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