・前回のあらすじ:
姫路さんが自分の料理(っぽいナニカ)を食べて倒れた。
「こんなのを作ってたんですね私…」
気絶から目覚めた後、姫路さんはこれ以上ないってくらい落ち込んだ。
「姫路さん…」
「おかしいとは思ってたんです…なにかしらの記念日に、お父さんに手作りのクッキーとかをプレゼントすると顔を青くしてましたし…」
姫路さんのお父さん…苦労してるんだろうなぁ…
「吉井君たちも…知ってて、黙ってたんですよね?前にお弁当を作りましたから…」
「え?いや…あの…」
突然訪ねられて、思わず口ごもる。
誰かフォローを――って秀吉にムッツリーニ、露骨に目をそらさないで助けてよ!
「言い訳は嘘よりももっと悪くもっと恐ろしい。なぜなら言い訳は防衛された嘘だから。byアレキサンダー・ポープ」
違う。違うよ。僕が欲しいのはそういったフォローじゃないよナツル。
ていうかなんでそういう余計なの知ってるの君。
「…ごめっ、ごめんなさい…!そんなに気を使わせて…!!」
「ちょっ、姫路さん!?」
「泣ーかした、泣ーかした。せーんせいにーゆってやろー♪」
ナツルうるさい!ていうか泣かせたのナツルじゃないか!
『おい、聞いたか今の』
『ああ…吉井が姫路を泣かせたって…』
『なんて奴だ吉井…クズめっ!』
『吉井コロす。姫路さんのために』
やばい。聞き耳を立ててたクラスメイト達が殺気立って、黒フードの準備をし出した。
「ちょっ、まっ、待って!泣かせたのはナツルだよ!?」
『なに?瀬能?』
『あいつか…なら納得だな』
『いつも誰か泣かせてるイメージあるもんな』
『この前も騒動起こした他クラスのやつ泣かせてたぞ。パロスペシャルで』
『まあそれは別として吉井を制裁しよう』
『吉井コロす。姫路さんのために』
僕への殺意が変わってない!?なんで!?
「アイされてるネっ」
「ナツル黙れ!」いらないよそんな愛!
怒鳴りながら振り返るけど、本人はこっちを向いていなかった。
振り返った瞬間に身体の向きを変えたのか、そもそも僕に言ったんじゃなかったのか…後者だとしたらタイミングが良すぎる。
「みっ、瑞樹!瀬能の言うことなんて気にしちゃダメよ!料理の腕が悪いなら、改善すればいいじゃない!」
「そうですよ姫路ちゃん!私も委員長として、力になりますから!」
「うむ、自分も力を貸すぞ!」
「皆さん…!」
「友情のための最大の努力は、友人に我々の欠点を見せることではない。彼に彼の欠点を悟らせることだ。byラ・ロシュフーコー」
「絶妙なタイミングで割り込んでくるなお前…」←大和
このナツルめんどくさい。
「…どうせ割り込むんなら少し協力しろ」
直江くんはナツルと肩を組むように首に腕を回し、教室の隅に連れていってひそひそ話を始めた。
どうでもいいけど、頭から赤い煙は無くなったけど、緑の輪っかと紫の泡(あと目の周りの暗闇)はいまだに存在している。
アレ触れても大丈夫なのかな?
「……ていうのを彼女に言ってほしいんだけよ」
「オーケーおーけー」
なにを吹き込まれたのかは分からないけど、腕を外されたナツルは姫路さんに近寄っていく。
彼女を慰めている人たち(みんな女子)は咄嗟に警戒するが、それを気にした様子もなく姫路さんの目の前に立つ。
「姫路」
「っ、」
「…あきらめたら、そこで試合終了ですよ」
「…!はいっ! そうですよね!『出来ない』で済ませて努力しなかったら、いつまでたっても出来ないままですよね!瀬能さん、私、頑張ります!」
「信じれば、望みはきっと、叶います」
「はい!」
「うーそーだーよーー!セガなんていらないよー!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
姫路さんが再び泣き崩れる。
「ひっ、姫路ちゃん!?泣かないでください!」
「瀬能ー!!あんたちょっと黙ってなさいよ!10分でいいから!」
「絶好調、誰も僕をとめることはできない」
慌てて姫路さんを慰めるクラスメイト達に非難されるが、全く気にした様子がない。
このナツルホントめんどくさい!早くいつもの調子に戻って!
今もまだ紫の泡と緑の輪っかを頭に浮かべている(目の周りの暗闇は消えた)ナツルに、直江くんが怒鳴る。
「おぉーい!なにやってんだよお前!なにいきなりアドリブきかせてるの!?」
「人生はどうせ一幕のお芝居なんだから、あたしはそのなかでできるだけいい役を演じたいの!」
「毛皮のマリーかっ、寺山修治の名言使うな!!」
君も詳しいよね。
☆ ★ ☆
ガラガラっ「うぃーす」
突然教室の入口ドアが開き、ブサイクが我が物顔で入ってきた。
「ああ、坂本」
「今戻った…ってなにがあったんだ?」
「あはは…ちょっとね」
顔を覆って泣き続ける姫路さんと、それを慰めるFクラスの女子達。
それを遠巻きに見つめる男子達。
そして床にうつ伏せになって、ピクピク痙攣しているナツル。
「…本当になにがあったんだ。ナツルはどうして気絶してんだ?」
「いやぁ…ちょっと…」
正直に言うと僕も分からないんだよね。
なにせいきなり倒れたから。
「紆余曲折があってな。一言じゃちょっと説明できない」
僕が言い淀んでいると、すかさず直江くんがフォローを入れてくれた。
流石、どこかの問題視とは違うね!
「そうか。気にはなるが、もうすぐ清涼祭も始まるから時間がない。…できればナツルにも聞いててほしかったが…まあいい。直江、ちょっと協力してほしいんだが」
「了承」
早っ。即答?
「いいのか?俺としては手間が省けるから嬉しいんだが…」
「いや、流石に冗談だ。協力するかどうかは頼みの内容次第だな」
「…あまり話す機会がなかったから知らなかったが、お前中々面倒な性格してるな」
「直江くんナツルみたいだね」
「!!?」
人生で一番のショックと心外と、屈辱と絶望を受けた。
そんな感情が混ぜられた表情をされた。
気持ちは分かるけど、そっくりだよ?
■信じれば、望みはきっと、叶います
かなり昔、木曜の怪談とかいうドラマ番組があって、それの最終回で使われた(と思う)台詞。
作者が子どもの時の番組だからかなりうろ憶え。
■絶好調、誰も僕をとめることはできない
ジョジョ第四部。幼少期の吉良が書いた台詞。
最新作の吉良はかなりいい奴風に描かれてるから、正直ちょっと違和感ある。
※ナツルの状態(時間経過)
混乱・もうどく・暗闇 → 混乱・もうどく → 瀕死
もうどくを回復されなかったのが倒れた原因かと思われる。