戦士たちの非日常的な日々   作:nick

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※今回の話には、とても不快なシーンが含まれます。あらかじめご了承ください。




11時間目 召喚大会③

「こんなの無効よ!ズルじゃない!」

 

戦闘が終了して、お互いの召喚獣が消えた途端に相手側の女が噛みついてきた。

 

終わってから抗議とか、遅すぎだろ。せめて試合中にやれよ。

 

「ズルって言うけど、具体的にどんなことを誰がしたんだよ」

「白々しい…!あんたが…改造ツールみたいなもの使って、召喚獣に細工したんでしょ!」

 

話にならんな。

 

「試験召喚獣と召喚システムはこの学園の根幹の一つと言ってもいい。それを一学生の俺がどうこうできると思ってるのか?」

 

それもFクラスの、と最後に付け加えると、とても分かりやすく苦虫を噛み潰したような顔をされた。

 

「あんた、生徒会の役員でしょ?だったら機会なんていくらでもあるじゃない!」

 

しつけえなこのクソアマ。機会があっても技術がないっちゅーねん。

 

 

「それは私に対する批判と侮辱かしら?」

 

それまで黙っていた会長が急に口を開いて会話に割り込んできた。

 

「…え?」

「瀬能君は私が生徒会に引き入れたのよ?そんなくだらないことをする人を私が選ぶと思っているの?」

「え…えっと……」終始高圧的だった女が、一気にオドオドと萎縮し出す。

 

…褒められてるのか?

俺は今褒められたのか?

 

まっったく、そんな気がしなかったんだけど。

 

「第一、私だけならまだしも桐条会長が身内の不正を見過ごす訳ないでしょう」

「ああ、それはある」

あの人の目を誤魔化してシステムハッキングとか大それたマネするの、ちょっと今の俺じゃあ無理かな。

 

「でも…だって……」

 

色々理由を並べられたにも関わらず、小山とかいう女は納得せずに渋る。

 

めんどくせえなぁコイツ。結局のところ自分が手も足も出ずにFクラスの奴に負けたのを認めたくないだけだろ。

 

会長が味方についてるし、口論で屈服させるのは簡単だけど、こっちもいつまでもつき合ってやれるほどヒマじゃあない。

 

早々に納得させなきゃいけないんだが…さてどうしたもんか。

 

「もう一度試合をする時間はないのですけど…」

「試合する必要なんてねえ!瀬能が反則行為をしたのは明らかだろう?この勝負は俺たちの勝ちだ!」

 

教師の言葉に根岸が食ってかかる。

 

コイツ妙に敵対心出してくるな…しかも俺だけに。なんかやったっけ?

 

…………………………………………あ、思い出したかも知んない。

 

「おい、そこの…根岸とやら」

「ああ?なんだよ」

 

一人だけを呼んだのに、全員が注目してくる。まあいいけど。

俺はイベントリから一本のDVDケースを取り出した。

 

「どっかで見たことあるかとずっと引っかかってたけどお前、これの主演男優だろ?」表紙がよく見える様に軽く掲げる。

 

そこには四つん這いでボンテージ服を着た男のケツを踏みつける、バニースーツ姿のガチムチのオッサンの姿が写っていた。

見るからに吐き気を催すこの作品のタイトルは

 

 

『ネギシーヒルズ青春白書〜イタイのがイイんだろ?〜』

 

 

言うまでも無いが、四つん這いになってる方が根岸だ。

 

「うわああああああああああああああああ!!?」

根岸が絶叫した。

 

無理もない…プロレスとかをよく見る俺でも忌避感を覚えるからな。

 

「なっ、なによ。それ…」小山が唖然とした様子で、指先を震わせながらDVDを差す。

 

「中学の時の友人が一時期、突っかかってきた馬鹿で悪趣味なビデオ作るなにハマってな。その押し付けられたやつの一つだ」

 

全員(根岸はいまだ絶叫中)ドン引きだった。

 

「瀬能君…あなたの交友関係に口煩く言うつもりはないのだけれど……」

「そいつとは中学卒業以来連絡取れなくなったよ」

全寮制の学校に進学したらしいから、そのせいかもしれん。

 

 

懐かしいな。当時(中学時代)は茜も入れた三人組で、色々な事をした。

 

他校の生徒なんかと喧嘩する際は、まず最初に俺が絡まれては正当防衛でボコり、途中から茜が混じってボコり、最後に友人がもう二度と刃向わないように(精神を)ボコボコにするっていう抜群のチームワークを見せていた。

 

そこで頭抱えて震えてる根岸も、フルボッコにされた一人なんだろう。

奴主演のDVD。そのケースの背面には『新しい世界を体験した、生まれ変わった私をミテ!!』と書かれている。

 

根岸のアヘ顔ダブルピース(ほとんど意味がない薄い目線隠し入り)のどアップにでかでかと。

 

 

俺が言うのもなんだが性格ゲスすぎやしないかい?

 

 

実家が有力財閥で、そこの次女らしいんだが…好き勝手に生きすぎだろ。

その上飽きたからって大量の作品を俺の家に送ってくる始末。

 

こんな精神汚染物質、捨てる姿を見られたら嫌だしかといって置いとく訳にもいかないから、今日までずっとイベントリに封印してきてた。

 

…あ、そうだ。

 

「小山とやら、素直に負けを認めるならこいつはお前にやろう」

ポータブルDVDプレーヤー(昔友人がくれたやつ)付きで。

 

「…断ったら?」

「学園中にばら撒く」

 

イベントリから取り出した、少し型落ちしたDVDプレーヤーにディスクをセットする。

 

「俺の負けだぁぁぁぁぁっ!!それだけは勘弁してくれぇぇぇぇー!!!」

根岸が詰め寄ってきた。

 

こんな映像、音声だけでも流出したら自殺もんだな。

 

「てことらしいので、この勝負俺らの勝ちでいいっすか?」教師に確認を取る。

 

「あ、はい。…もともと生徒会チームの勝ちでしたから」

 

そうね。それなのにゴタゴタで一話使うとかありえねーだろ。

 

「というわけで…ほらよ」

 

DVDプレーヤーを小山に押し付ける。

 

「ちょっ、瀬能!?なにを!」

「いや約束したし」負け認めたら渡すって。

 

 

『イッターイノガイインダロッ?ブンブン!』

『ア”ーーーーーーー!!』

 

 

あー、しまったー。渡す際ー、再生ボタンを押してしまったー。

これは俺のミスだー。めんごめんごてへぺろっ。

 

「テメーわざとだろ絶対わざとだろ!!なに済ました顔で舌出してんだ!!」

「言いがかりやめてくれない?あとあっちはほっといていいのか?」

 

 

『ブットイノォークレテヤルヨッ、ブンブン!』

『ンぎぼぢぃいいい!?』

 

 

俺の襟首をつかんで怒りを露わにする根岸に、冷めるを通り越してもはや死んでいる表情で動画を見ている小山を指差す。

 

聞いてるだけで脳みそが腐り落ちそうだ…誰か俺の鼓膜を破壊してくれ。

よくあんなの見続けられるな。

 

「ゆっ、優香!?見ないでくれ!!」

「近寄らないで。…別れましょう」

「なっ…!そんなっ!?」

 

慌てて駆け寄ろうとした根岸を、小山が冷たくバッサリと切り捨てる。

 

おお、なんということでしょう。あれほどまでに仲が(表面上は)良かった二人が、あっという間に修羅場ムードに。

 

「瀬能君という匠の手によって…」

 

会長がなんかぼそっとつぶやいたけどよく聞こえなかった。

 

 

「まっ…まってくれっ、あれは俺の意思じゃ…信じてくれ!」

「次私の許可なく5メートル以内に近づいたら、この映像ネットにばら撒くから」

「やめろ!頼む、考え直してくれ!!」

 

 

さあさあ盛り上がって参りましたよ。

 

不快なバックミュージックをシャットアウトしさえすれば、非常に愉快な見せ物だ。ポップコーン片手に観戦したいね。

 

が、しかし。この後校内の見回りをしなきゃならん。ままならないもんだ。

 

「それじゃあ、俺らはこの辺でおいとましますか」

「そうね。先生、よろしいですか?」

「そうですね。あとは彼ら二人の問題ですし」

 

めんどうくさ…空気を読んだのか、教師の人も一緒に出口へと足を進める。

 

そして気づかれないように、そっと修練場の扉を閉める。

その時に中の様子を窺ってみたが、DVDプレーヤーを片手に冷めた目をした小山と顔に『絶望』を貼り付けた根岸が激しく言い争い…いや、一方的に根岸が騒いでいる光景が目に映った。

 

アイツら付き合ってるみたいなこと言ってたな。ついさっき破局したが。

 

ザマァ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

…数日後。『某Bクラス代表、華麗にフラれる!』との記事が学園新聞の一面で大きく報じられることになるのだが、どうでもいいことなので割合させていただく。

 

 

 




副題:渡る世間はゲスばかり

書きながら自分の作品に不快感覚えるって初めての経験をした。ちょっと新鮮。

あまり何度も体験したいと思わないけどね。
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