サブタイトル通りFクラスの一幕。
時系列的にはナツルの服がアイス食う直前くらい。
〜直江Side〜
・2-F 中華喫茶『ヨーロピアン』
人通りは良く、方向性も他の店舗と被っていない。
店内も、調度品・装飾品共に見栄えは良い。
出す料理のクオリティも高い。
売り上げ店舗1位とかは最初から狙ってないが、姫路の件もあるからそこそこの利益追求はしていた。
だから設備の向上は余裕でできるくらいの稼ぎは手に入ると思っていた。
しかし、その予想は裏切られた。
☆ ★ ☆
『どら焼き完売!』
『カステラもだ!』
『おい餡子もうないぞ!どうする!?』
バタバタと忙しなく動き回る
…一応客前なのでもうちょっと静かにして欲しいんだが、そうも言ってられないくらいの忙しさだ。
と言っても、店の中は比較的空いている…いや、人がいる事はいるんだ。ただ客と呼べるのはそんなにいない。
もっと言えば飲食しているのは、一人だけだ。
「はわわ〜、みんなすごく美味しいです〜!(ヒュゴっ)」
水色の髪をした少女が又しても、配膳途中の和菓子を乗せた皿をピンクの悪魔みたいな食事方法で空にする。
せめてテーブルについてから食ってくれ。
『うわっ!?またあの食い方か!?』
『掃除機みたいに吸い込まれたぞ、どうなってるんだ!?』
俺も知りたい。
この少女のこの食い方のせいで、見物人は多いのに客が全く入らないという謎現象が発生している。
さしずめ動物園のパンダと言ったところか…じゃあ俺たちは飼育員?
あまり歓迎したくない状況だな。
「大和…もう材料ほとんどないって厨房の土屋君が言ってたよ。どうしよう」
「まだ昼だぞ…!」
それも初日の。
こんな早くに閉店の心配するとは思わなかった。完全に予想外だ。
飲茶用の軽食とはいえ、あの少女の細い身体のどこに何十人分の食材が入るんだろうか。女体って不思議。
…というか。
「お客様。食事中すみませんが、支払いの方は大丈夫ですか?」
食券の作成は間に合わなかったから、後払い形式なんだよな。
俺の台詞に少女は食事の手を止めて、
「むぐっ、お支払いですか?」
「はい。こういうのです」
自分の財布から硬貨や札を取り出して少女に見せる。
そもそも日本円を持ってない可能性があるからな。見た目的に。
案の定 百円玉や千円札を見た瞬間、少女はあたふたと慌て出す。
どうしよう…こうまで好き勝手食い尽くされた挙句に無線飲食は勘弁願いたいんだが……
とはいえこんな華奢な少女相手に借金の取り立て屋みたいな事するのも、人としてどうかと思うし…くそ、こんな時ナツルがいればっ。
「あっ、あのっ…これじゃあ、ダメですか…?」
恐る恐るといった様子で少女がなにか差し出してくる。
その掌に乗っているものは、
金貨
「……………」(←あまりにも予想外な事態に思わず固まる大和)
「ダメ…ですか…?あっ、もしかしてもっと必要ですか?」
そう言って少女は、じゃらじゃらとポケットから次々と金貨を取り出し、机の上に置いていく。
見る見るうちに、かるくソフトボールくらいの小山ができた。
明らかに服に入る量を超えているんですけど…胃袋が四次元ならポケットも四次元か。
…今の
パッと見た感じ、机の上には50枚以上ある。店ごと食い尽くす気かこの
「だっ…ダメ…ですか…?」
俺が無言でいると、少女が泣きそうな表情で不安がる。価値が分かってないようだ。
騎士みたいな鎧着た女性とかと一緒に入店してきたから、どこかの国の貴族なのかもしれない。
ちなみにその騎士みたいな人たちは、店内の人形(ナツル作)に夢中だ。
「……どう思う?」
「これは…信じられませんっ、これが…木彫りだなんて…!」
「私も同じ意見だ…これは間違いなく、名のあるビィくん職人の仕業だろう」
「姿形は元より、身長や鱗の質感まで完璧に再現されている…!」
「木目を上手く、身体の模様に利用するなんて…」
「しかもただ現物をなぞるだけじゃなく、アクセサリーを持たせたりしてオリジナリティを出している…人間技とは思えない…!」
「あえて木目を際立たせる手法を用いたものも、これはこれで素晴らしい…」
「…っ、バカなっ、触感まで同じだと!?」
確かにクオリティは高いと思うけど、あそこまでのめり込むなんて…外国人のツボはよく分からない。なんだビィくん職人って。
人間技と思えないのは同意だけど。
まあそれは置いといて…どうするかな。
正直金額がデカすぎる。一介の学生が開く模擬店で扱っていいものじゃないぞ。金貨って。
とはいえ他に持ってないみたいだし…本当にどうしよう。
『受け取っておけばいいじゃないか。売り払えば大金持ちだぞ?軽食の代金は俺が立て替えればいいんだよ』
うぐっ…悪魔の囁きが…!
『見ろよあの金貨の山。あれだけあれば大抵のものは買えそうだな?ヤドンとカリンの住居とかさ?』
ヤドン…カリン…!
『ダメだッ、ちょっと待て!』
『ッ、』
悪魔の囁きが舌打ちのような音を小さく漏らす。
これは…天使か?助かった…
『金貨はとりあえず懐に仕舞っておいて、もっと
『なっ、なるほど!』
確かに、金の買取価格で最高は1グラム6945円…それを考えるともう少ししたらもっと値段は上がるかもしれない。
それにこれだけの量をまとめて売りに出したら値崩れを起こす。ここは慎重に――
「って違うだろ!!」
「ひうっ!?」
なんで横領が前提だよ!おかしいだろ!
「あの…?」
「あっ、いやっ、…すみません。発作です」
間近でいきなり大声を上げられたせいで、不安げな表情をより一層深めて目を白黒させる少女。
咄嗟の言い訳に別な意味で目を白黒させている。
若干かわいそうなものを見るような目をされている気がするのは気のせいだと思いたい。
「あの、えっとですね。できれば日本円で支払って貰えるとありがたいんですが…、これ(金貨)だと金額が大きすぎまして…」
為替取引の議論を始めた
「もし他に通貨をお持ちでないなら、お手数ですが両替を…」
してほしいんだけれど。そんな知り合いいるかな。
「あうぅ…そうですか…えっと……そうだ!シャロさんならなんとかしてくれるかもしれません!」
「シャロさん?」
「知り合いの商人さんです!えっと…呼んでもいいですか?」
尋ねるような視線に接客スマイルで「大丈夫です」と答えると、少女は席を立って、一緒に来店してきた面々に近づいていく。
2・3回なにか言葉を交わすと、集団から2人ほど抜け出して教室の外へと歩いていく。多分シャロとかいう人を探しに行ったんだろう。
とりあえず、タダ食いされる事態は避けられた…かな?
商人の人が無理だったら、天使の案を実行しそうで怖い。ナツル、早く帰ってこい。
「すまない、ちょっといいだろうか?」
遠い目をして、今この場にいない悪友のことを考えていると、金髪の女性に話しかけられる。
さっきまでナツル作の木彫り人形に夢中になっていた内の一人で、その中でもとくに熱を上げていた人物だ。
なぜか腕には数体の人形を抱えている。
「…お客様、調度品を勝手に持ち出すのはご遠慮ください」
「この子達を譲ってほしいのだが」
聞けよ。
「…申し訳ありませんが、そちらはスタッフの私物ですので」
作成自体は数秒しか時間がかかってないが、販売の提案をしなかったんだ。愛着はあるんだろう。
なんか似たようなの複数体作ってるし。
「本人の了承無しに勝手に売買などをするのは…」
「そこをなんとかッ!」
食い下がるなぁ。そんなに気に入ったのか?
「頼む!価値あるものだというのは百も承知だが、どうしてもこの子が欲しいんだ!」
いや、とんでもパワー使って作り上げた一品ですけど、元はタダで貰った木屑です。
「100枚までなら出すから!」
なにを?もしかして金貨?
執着が強すぎて軽く…いやかなり引く。
頼むから製作者本人と交渉してくれないかなぁ。
「
「お客様、お客様っ、それクラスメイトの私物なんで握り潰すのは勘弁してください!」圧迫されてメキメキいってる!
鎧込みとはいえ腕の力だけで木の塊凹ますってどんな力してんだこの人!?
なんか人形の口から出てはいけない液体が出てる!?なにあれ樹液!?どうなってんの?!
「お願いだから一緒に行かせてくれーー!!」
「先に逝きそうですけど!?」圧死で。
一難去ってまた一難。売り上げは結果を見れば初日完売だから、売り上げは問題なさそうだけど…明日以降客が来なさそうだ。
それ以前に営業できるのか?
…ナツル…お願いだから、一刻も早く帰ってきてくれ……!
ぐらぶるっ!より、ルリアとカタリナ。ビィくん友の会の面々登場。
これからちょいちょいと、直接ストーリーには絡まないけど、印象的なキャラとして参加する予定です。