〜ナツルSide〜
「あーさっぱりした」
イベントリから取り出したタオルで乱暴に髪を拭きながらシャワー室を後にする。
三回戦終わってすぐにガソリン臭を落としに来たんだが、思った以上に時間がかかってしまった。
見回りサボっちゃったな…桐条先輩になんて言われるだろう。問答無用で氷漬けにされっかな。
「仕方ないんだ…だってデバイス全然外れないんだもん」
ありったけの力込めたのにビクともしなかったよ。引っ張りすぎて俺の腕と指の方がダメージ受けたし。
利き手と逆だからってのを差し引いてもどうなってんのコレ?
最終的に諦めて腕につけたまま湯を浴びた。…まったく問題はなかった。
耐水性抜群だねっ!
数十分格闘したのがバカみたいだろ。腹立たしい。
「これ本当に高性能だな」
思わずそっと液晶部分を撫でる。
これだけ長時間装着してたら、普通不快感とかいろいろな不都合出てくるんだが、そういったものがまるでない。
外したら逆に違和感覚えそう。ちょっと怖いな。
ていうか外せるんだろうなこれ。悟空の輪っかみたいな一生装着とかないよな。
自力で外せなかったからちょっと不安だ…呪われてるみたいで違和感より恐怖感が沸いてくる。
「あっナツル!やっと見つけた!」
「あん?」
時計を確認するとそろそろ次の試合の時間が迫っていたので、会場へ行こうとしたらいきなり大声で名前を呼ばれた。
誰だ恥ずかしい…と思ったら直江が人混みをかき分けて近づいて来てた。
「探したぞまったく…てなんだその髪型」
「紆余曲折がありまして」
詳しくわ訊かんといて。
シャンプーで洗っても落ちないってどんな成分使ってんだこのワックス…
「それで、なんか用かよ」
「ああそうだった」
くだらない用だったらビーフケーキハマーかますぞ。
「実はクラスに飾ってあるお前の人形を売って欲しいって人がいるんだ」
「……売る?」
俺の、人形を?
「どうしたナツル。いきなり顔押さえて天を仰いだりなんかして」
しくったぁぁぁぁ自分で作った人形学祭で売ればよかったぁぁぁ。
イベントリの肥やしになってるもん放出すれば整理はできるし金は稼げるしの一石二鳥じゃねーか。なぜ俺はあのとき気づかなかったんだ!
しかし今さら気づいてももう遅い。もう手遅れだ。
事前申請したもの以外は取り扱っちゃいけない決まりになってる。
昔無断で川神水売って大騒ぎになったらしい。匂いもアルコールもゼロで酔うからなあれ。
「…まあ嘆いても無意味だな。規則で無理っつって帰ってもらえよ」
俺はこの後召喚大会があるから対応すんのは無理だ。
そういやまだ昼飯食ってねーや。軽くでもいいからどっかで食えないかな。
「似たようなことは俺も言ったけど、諦めてくれないんだよ。製作者と直接交渉するまで動かないって居座り続けてるんだ」
直江の横をすり抜けて移動しようとしたが、そうはさせまいと回り込んで目の前に立ち塞がれた。
「追い出せよ。営業妨害だろ」
「それがその…その人の連れが料理のほとんどを食い尽くして、売り上げに超貢献してくれたから…」
悪い方じゃなくて良い意味で迷惑な客かよ。厄介な。
「人形の買取も、百枚までなら出すそうだ」
なんだ百って。硬貨百枚か?
最大でも五万円。元手がタダだからぼろ儲けだな。
「大袈裟だなオイ。そこまで琴線くすぐるようなもんあったか?」
似たようなのばっか作ってた気がする。半ばトランス状態だったから覚えてないんだよね。
「見た目一緒だけど微妙に違うのが沢山あったろ。ほらあの…トカゲみたいな珍生物の木彫り人形」
「ああ、アレか」
あれを選ぶとはお目が高い。
ヒーローらしくもない。けど何にでもなれる。
無限の力を持った伝説のヒーロー
空と星の戦士
「その名もカー"ビィ"くん」
「なんだいきなり…」
「ちなみに俺の推しメンはスマブラだ」
バリエーション豊かなのが気に入ってる。
ただ無敵状態になるダッシュ技と、遠距離攻撃ができないのが不満だな。
「訊いてないし…それにソレ多分壊れたぞ」
「バカなァァァァぁッッ!!」
直江の両肩を思わず掴む。
「一応は俺の私物だぞ!それを無断で破壊しやがって!どこのどいつだ!?」
「さっ、さっき言った居座ってる人が…」
欲してるものを自分の手で壊すって矛盾してない?ストレス発散の某ウサギのぬいぐるみみたいな感じで買取を希望してるんじゃないだろうな。
それとも傷つける程愛してるってやつか?ヤンデレじゃねえか。そんなのにうちの子はやれません!
オイラはカービィ!とかいう感じで、ソードやハンマーといったコピー能力状態のビィくんが教室内に所狭しと置いてあります。
ぐらぶるっ!とニンテンドーでコラボ商品出してくんないかなぁ。