※三人は仲良しです。
〜吉井Side〜
廃校舎でやっとナツルと周りに気兼ねなく話せる機会ができた。
時間もなかったから結論だけを簡単にわかりやすく言ったのに…危うく殺されかけるという酷い目にあった。
そのことでナツルに文句を言ったら「は?何言ってんのお前、冗談に決まってんだろじょ・う・だ・ん。なに本気にしてんだよ」って眉間にシワを寄せて馬鹿にされた。
ぜっっったいウソだ。100%やる気だったでしょきみ。
今後はナツルに八百長の話題を振らないようにしよう。
「で?転校や廃校ってのはどういうことなんだ?」
ボロボロのコンクリートの壁に背中を預けて、気だるげに尋ねてくる。
なんか異様に似合うのはなんで?
まあとにかく、ようやく経緯を説明できる。数分で終わる話なのにすごい時間かかったよ。
あとはなんとか協力してもらうだけだ!
「ことの始まりは島田からの相談だ。姫路が父親に転校させらそうだからなんとかしたいってな」
「……あー…まあ、普通の親なら現状を知ればそう勧めるわな」
直江君と似たような返事だ。
「でも意外とそういう話今回が初めてだな。他にも女子はいるんだし、不満とかもっとたくさんあってもよさそうなもんだが」
確かに。ナツルの話はもっともだ。
教室どころか校舎内にも入れずに机と椅子はダンボールにゴザ。床はブルーシートなのにクラスメイトたちからの大きな反発はない。
親御さんからの文句も聞いたことはない。一体なんで…?
「…
雄二が苦々しい表情で答える。
「? 俺のしたこと?」
「試召戦争終わった次の日、戦犯裁判とか言って俺に殺人技かましただろ」
「あー。あったな んなこと」
「……一応俺、しばらく入院したんだけど…」
僕も。
とくになにか悪いことした訳じゃないのに、なぜか気づいたら美波と姫路さんの二人から折檻を受けていた。
意味が分からない。
「あそこまでの罰則を与えられたのを目の当たりにしたからか、なし崩し的にクラス全員に許されたみたいでな。すぐに待遇のいい教室に移ってやるって感じで親とかに話したから問題にはなってないらしい」
「そうだったんだ…」
「『バカな息子がやる気になった』とかでむしろ学園の株が上がったとかいう話だ」
あの吊るし上げみたいな裁判でそんな効果が…
人生ってなにがあるか分からないなぁ。
「それら全ては、俺のおかげ」
「ただ姫路は別だ。どんなに本人がやる気に満ち溢れてても、身体が弱いからな」
「おい無視すんなや」
体調良くないのに外で授業させるとか、よく考えたら問題大ありだよね。
「ん?でも近頃姫路が調子を崩してるとこを見た覚えないけど」
「あ、確かに」
Fクラスに来たばかりの時はしょっちゅう咳をしてたり保健室に行ったりしてたけど、最近は元気そうにしてる。
「人聞きだけどナツルの側にいると体調がいいらしい。なぜかは知らんが」
「そうなの!?」なにその謎効果。
「側って…あんまりくっつかれた覚えもねーぞ」
「別に数cmまで近づかなきゃいけないって訳じゃないらしいぞ。同じ教室内に数時間一緒にいると何日か身体が楽とかなんとか」
「都合よすぎなんですけど…」
まったくだ。
「待てよ、じゃあひょっとして…最近姫路の性格がおかしいのってまさか……俺の影響受けてるから?」
「「………」」
辺りが静寂に包まれる。
学園祭で賑わっているはずなのに、人の声ひとつ聞こえない。なんでだろう。
「…姫路転校の件は分かった。次に学園が存続の危機に瀕している事について話せ」
「分かった。時間もないしな」
僕たちはそれ以上の追求を避けた。
今さら言っても意味がないし、姫路さんが元気になったのがいいことなのは事実だから。
何よりナツルにヘソを曲げられるととても面倒だから。
「こっちは結構複雑だ。まずは他校の経営責任者とかにとってこの学園が邪魔な存在だってことを知っておいてくれ」
「…世界中から注目されて人気が高い上に最新鋭の技術開発しまくってるマンモス校だから?おまけに学費も安くて希望者が多いからか?」
「大体そうだ」
なんですぐに理解できるんだろう。僕は分からなかったのに。
ナツルなんて腕力の強いだけのバカのくせに…バカのくせにバカのくせにバカのくせに!!
ゴキリっ
「みぎゃぁぁぁっ!?」僕の右腕が本来曲がらない方向へ!?
「お前今俺の悪口考えたろ。顔に出てんだよ」
「明久、さっきも言ったが時間がないんだから話を逸らして遊ぶな。迷惑だ」
「二人とも酷いよ!?」とくに雄二が!
「とにかくそんな訳で、
「物騒な世の中だな」
お前が言うなだよ。あと僕の腕直して。
「このタイミングで動きがあったってことは、そのチャンスが訪れたってことか?」
「ああ、召喚大会の優勝商品である『白銀の腕輪』に重大な欠陥があるんだ。それは――」
「あーいい いい。その辺の説明はいらん、時間の無駄だ。要は特大級のスキャンダルで学園長をただのババアにして、ついでに学園も無くしちゃおうっていう感じだろ?」
「…大体そうだな」
察しがよすぎてナツルが怖い…戦闘力がすごい目立ってるから分かりづらいけど、雄二みたいに悪知恵に長けてるタイプなんだなぁ。
「そうなると…さっきのアレはそういう意味だったんだな。年寄りのくせにかっこつけやがって」
なにかを思い返すように顎に手を当てて呟くナツル。
「どうした?」
「ついさっき学園長の台詞の意味がやっと分かった」
「そういえばさっき呼び出し食らってたな。なんの要件だったんだ?」
「昨日ちょっと拉致監禁されたんでその件で」
えっ!?
「拉致監禁
ゴキリッ
「ふもぉぉぉぉぉぉっっ!?」今度は左腕がぁぁぁっ!
「どうしてテメーはいちいち一言多いんだよ…」
「仕方ない、明久だからな」
「二人とも酷いよ!?」とくに雄二がっ!
「そんな感じでなんやかんやと謝罪をされたんだが、てっきり俺は無関係かと」
「広い意味で言えば 関係者だな。俺もお前も明久も、いや学園に関わってる奴全員が」
腕があぁぁぁぁぁぁっっ!!
「という訳で、不本意だろうけど協力してくれないか?」
「気が乗らねえなぁ」
「そう言うなよ。俺たちの仲だろ?」
僕の腕ぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!!
「何が俺たちの仲だよ。それに協力するにしても、俺のパートナーはあの冷血生徒会長三郷雫様だぞ。どう説得するんだ?」
「そこはナツルの手腕で…」
「俺頼みかよ、余計やる気無くすわ」
右もぉ左もぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
「うるせーぞ吉井!腕の関節外されたくらいでぴーぴー騒ぐな!」
「お前の代わりに説得してるんだぞ、少しは感謝したらどうだ!」
「少しは僕の心配してよ!」すっごい痛いんだよ!?
「ていうかナツル!関節外されたくらいで騒ぐなって普通騒ぐよ!一大事だよ!試合なら中断するレベルだよ!!」
「………そう、だよなぁ…」
『やっぱ
一体なにがあったんだろう。
「事情は分かったけどよ、そもそもなんで俺んとこ来たんだ?」
「もう準決勝なんだ。勝敗を待ってから勝者に交渉を持ちかけるのもアリだろう」
まさか知り合いだからってことはないよな?と言葉を締めくくり、どこからか取り出した掌サイズの長方形の缶から飴玉を一つ取り出して口に入れる。
「その理由は3つだ。1つはお前の言う通り知り合いだから。2つ目は同じFクラスの人間が決勝まで残れば姫路の父親に好印象を与えられるから。とくにお前はFクラスでも珍しく全教科の点数が高いからな」
「あくまでFクラスの範囲で見ればだけどな」
例外もあるし、と言って飴玉をもう一個口に放る。
「3つ目は俺たちと逆のブロック、つまりお前と三郷の次の対戦相手は今回の事件の黒幕、教頭の竹原の手先だからだ」
「…竹原?」眉間にシワを寄せながらも飴玉を一つ頬張る。
「どうかしたか?」
「一回戦が終わったあたりで接触してきた奴だ。…そうか、あれは俺の見た目を確認するためだったんだな。なぜか学内で俺の容姿が一定してないから」
「ああ、なんかお前色々な噂が飛び交ってていまいちよく分からなくなってるよな」
「背丈が2mを超える筋肉隆々な大男とか、その逆で1mあるかないかの小柄な少年とか実は地縛霊とか」
最後の部分のときだけ表情が険しくなった。
あと飴玉を二個同時に口に放り込んだ。
「こっちの事情は全部話した。…協力してくれるか?」
「…………」ナツルは無言のまま飴を口に入れる。
さっきから飴食べるスピード早くない?その割には頬が膨らんでる様子がないんだけど。
もしかして飲み込んでるの?
「八百屋は嫌いだ。するのもされるのも」
「そんな――」
「だが当人の望んでない転校もどうかとは思う」
…!それって!
「はぁ…メンドくせぇ、なんで姫路かなぁ〜〜〜。お前らのどっちかだったらよかったのに。それなら秒で断れた」
「失礼な。俺だってこの馬鹿やお前なら手を貸してない!」
「そうだよ!僕だってナツルや雄二なら見捨てたさ!」
「「「ああ…?」」」
三人が揃って他の二人にメンチを切る。
またしても学園祭の真っ只中だと言うのに物音一つ聞こえない静寂が訪れる。
「…この件については後でじっくり話し合おうか」←ナツル
「うん、そうだね」←僕
「異論はない」←雄二
姫路さんに料理作ってもらわなきゃ…何人前くらい必要かな?
「で、そう言うってことは次の試合ちゃんと戦ってくれるって事だよな?」
「疑り深いなぁお前も」
「きちんと言質を取っておかないと直前で反故をされかねんからな」
「はいはい…分かったよ」
「だ が 断 る …(cv.神谷浩史)」
「なんで!?」協力してくれる流れだったじゃん!?
「冗談だ」
「…直江君とも似たようなやり取りしたよ。ホントそっくりだねきみたち」
「この場合直江がナツルに似てるんだろうな」
「奴は私が育てた」
なんで誇らしげなの。
前にちらっと聞いたことあるけど、直江君や川神さんたちがナツルと知り合ったのは一昨年、中学校卒業間近のときらしい。
十数年来の友達みたいな印象を受けるんだけど。
「渋々ながらもしょうがないから決勝で熱戦演じて負けてやる。ただしお前ら勝ち上がって来なかったらコロスから」
「頼んだのを後悔する台詞だな…」
色んな意味で絶対に負けられない。
「あと坂本、一つ貸しだぞ」
「だそうだ明久」
「え、僕!?」なんで!?
「当たり前だろ。この話はそもそもお前が持ってきたんだ。それとも島田に支払わせるか?」
うっ…そう言われると……
「そういう訳で借りは明久が返す。煮るなり焼くなり好きにしろ」
「まあ吉井でもいっか。丁度やってもらいたいことがあったんだ」
なんでだろう、すっごい嫌な予感がする。
「なにを頼むつもりなんだ?」
「新技の実験台」
イヤァァァァァァァァァァ!!!嫌な予感的中!!
いっ、イヤっ!まだどんな技をするのか分からない!もしかしたら見た目が大袈裟なだけでたいした威力がないとか
「…使う技は?」
「アロガント・スパーク」
相手を必ず殺す殺意の塊!!
「意外だな。お前なら簡単に再現できそうだけど」
「飛び上がって空中のサブミッションがどうしてもな。テンション上がり過ぎなのか頭と両腕を引きちぎっちまうんだ。もう何体のダミー人形をダメにしたか…」
「しみじみと言う台詞じゃないよ!」
人間である僕が食らったら大問題じゃないか!
「技の実験台なら雄二の方がいいじゃないか!頑丈だし!」
「俺を生贄にするな!」
「いやー坂本はダメだわ。そこそこ格闘の心得があるだろ?技の最中下手に抵抗されると逆に危ない」
「殺人技かけられて無抵抗って無理でしょ!?」
「抵抗の値の差だよ。木を握りつぶすのと絹ごし豆腐握りつぶすのとじゃ違うだろ?」
僕は豆腐なの!?
「というかそもそも練習する必要ないでしょ!?あんなに連続して僕に仕掛けてたじゃないか!!」
これで今夜も安心して熟睡できるとか決め台詞言いながらも『フィニッシュがイマイチ』と4・5回休みなく技をかけ続けたじゃないか!
教室の床が粉々に破壊されて地面がむき出しになって僕の体中の骨も粉々になってもかけ続けたじゃないか!!
「何言ってんだお前?」
「大方夢でも見たんだろう」
「そんな訳ないー!!」あの恐怖と痛みが夢であってたまるか!
「それよりナツル、そろそろ会場行かないとヤバイんじゃないか?」
「あ、ホントだ。しょーがねーなー、頑張って試合に勝って超頑張って会長説得してくるか」
「悪いな。頼んだ」
「待ってー!行かないでーー!!」
ここで行かせたらなし崩し的に借りを作って僕が必殺技受ける羽目になってしまう。何か他に方法は…!
「次はお互いに決勝で会えたらいいな」
「何事もなかったかのようにフラグ立てて行こうとしないでよ!」
「うるさいぞ明久。ナツル、こいつは抑えとくから早く行ってくれ」
「了承」
了承じゃなーーい!!
雄二に掴まれて身動きが取れない状態にさせられた隙に、まるで忍者のようにその場からナツルが姿を消した。
文句を言う暇さえない!身体能力高いってレベルじゃないよ!?
「諦めろ明久。他に方法はない」
「本当に!?本当にそうなの!?」
「ナツルが決勝に進みさえすれば全てが丸く収まる」
僕の命の保証が入ってないよ!!
※仲良しです。
※類は友を呼ぶたぐいの
明久くんが言ってる事を理解したい方は五月の40時間目を見よう。