戦士たちの非日常的な日々   作:nick

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54時間目 召喚大会⑮

 

「…ふっ」

 

みんなの中には俺も入っている…か。

 

「なっ…なんだてめえいきなり笑いやがって…」

「前に知り合いが言ったんだ。一人のために一生懸命になれるみんなが好き、って」

「みんなって…お前のクラスか?最低辺のFクラスの連中が好きとか、頭おかしいんじゃねえか?」

「テメーより断然マシだ」

 

Fクラスが好きっていう姫路の考えは俺もよく分からん。どう贔屓目に見てもあそこはバカの集まりだ。

 

でもバカなだけだ。

 

 

俺は小学生の頃くらいに生まれ故郷である沖縄から本州に引っ越してきた。

 

こんな髪と瞳をしているためか、周りからつまはじきにされて…人間ってこんなもんなんだなと勝手に興味を無くして、自ら孤立した。

 

中学では幸い…と言っていいのかな?同じように孤立した奴らとつるむようになって、他人との距離感を改めた…と思う。

 

 

卒業して離れ離れになるのは少し寂しいなって零した時、つるんでいた奴の一人に言われた。

 

『人生で一番楽しいのは高校生の時だろ?これくらいで満足してんなよ』

 

 

……高一の時は信じられなかった。

 

でも、最近は学校が楽しい。

 

 

「ああ、」そうか。

 

 

嬉しかったんだ、俺は。

姫路にみんなの中には当然俺も入っているって言われて。

 

嬉しかったんだ。

直江に、「ナツルー野球やろうぜー」って言われて。

 

嬉しかったんだ。

坂本や吉井に頼ってもらって。

 

 

 

「そうか…そうだったんだな」

「あぁっ?なんだよいきなり…」

「いや…俺、相当なバカなんだなーって」

「はあ?お前なに今さら言ってんだ?最低クラスなんだから当たり前だろ!」

「クラスでしか語れないアンタはバカですらないけどな」

「んだと!?」

ちょっと黙っててよ。今いいとこなんだから。

 

 

 

 

 

 

本当は友達が欲しかったんだ。

 

 

 

(――ピシッ)

 

 

 

でも作り方が分からなくって、自分には向いてないって無理矢理誤魔化していた。

 

 

 

(――ピシッピシッ)

 

 

 

バカだよなぁ、ホント。…どうしようもないほどに馬鹿だ。

 

 

 

(――ペキッ)

 

 

 

今さら言えないけどさ。

 

 

 

俺も好きだよ、友よ。

 

 

 

――――ッキンッ

 

 

 

いつの間にかひび割れたタマゴのようになっていたナッツの身体がバラバラに崩れ落ちる。

 

そこからなぜか、俺と同サイズと言ってもいいくらいの大きさで、両手に一本づつ剣を装備した金髪で白銀の仮面で顔を覆った女が馬に乗った状態で現れた。

 

「…………は?」

 

坊主頭も展開についていけてないらしく間の抜けた表情を浮かべる。

 

ザシュッッ

 

思考が停止してる間に、騎馬女が左手に持っていた剣を坊主に投げつけ突き刺す。

 

ドシュッッ

 

間髪入れずに残った剣を顔面に突き刺し――変形した時に元々突き立てていた槍は消滅した――そのまま貫通・斬り捨てる。

 

 

 

Aクラス 夏川俊平 英語 0点

 

 

 

さらに帰す刀でもう一体の敵――会長が対峙しているモヒカンを、瞬間移動と言ってもいい速度で接近して斬り捨てた。

 

 

 

Aクラス 常村勇作 英語 0点

 

 

 

「…へ?」

「は…?」

 

………

 

唐突に起きた出来事にリング上だけじゃなく客席、いや会場中の人間が口を噤む。

 

『……はっ、しょっ、勝者!生徒会チーム!』

 

いち早く正気に戻った立会人の教師がマイク越しに大声で勝ち名乗りを上げる。

 

 

 

――なんだよ今の――

――変身だ!変身した!――

――召喚獣って凄いんだなぁ――

――日本の技術力はバケモノか――

 

 

 

徐々に客席も騒がしくなってきた。

面倒事になる前にさっさと立ち去るとしよう。

 

会長にサシでやろうとか言っといて結局俺が最後に掻っさらう形になっちまったな…あの戦乙女姿になってから操縦不能になったから仕方ないけど、嘘ついたみたいで後味悪いぜ。

 

…どうやって八百長の説得するかな……

 

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

〜〜〜〜

 

 

ざわざわと興奮冷め止まぬ客席。

 

ほぼ全てが人で埋まっている満席状態の中、一ヶ所だけ空白地帯があった。

その中心部に腰掛ける二人の男女。神月学園生徒会長の桐城美鶴とその父、桐城武治が先ほどの試合について話し合っている。

 

「…今のは完全にペルソナだったな」

「ええ…それも汐見・有里・鳴上が見せてくれたヴァルキリーと呼ばれる個体そのままでした」

「うむ……美鶴、本当に瀬能は影時間やペルソナに対しての適性はないのだな?」

「存在すら知らない筈です…しかし、」

「常人には不可能な行いも彼ならば出来てしまいそう、か?」

「っ…勉学以外でですけど……」

「ははっ、少し話をしてみたが確かにそんな感じだったな」

「笑い事ではないのですが…」

「先程の召喚獣の変化はペルソナの転生を見ているようだった。適性もなしにペルソナ能力に目覚めたのかもしれん」

「それはありえない…とも言い切れないですね……以前と違い今は黄昏の羽根を使っているデバイスを装着していますから」

「うむ。…早急に手を打ちたいが、急ぎすぎて良からぬ事を企む奴らに気付かれたくはない。昨晩の二の舞になるからな」

「しばらくは静観すると?」

「学園祭期間中は様子を見て、遠くからの監視に留める。デバイスのデータの解析も終わってはいないからな」

「……」

「心配か?」

「ええ…何かトラブルに首を突っ込んでいくのではないかと」

「巻き込まれるじゃなく首を突っ込むか、あり得そうだな」

「なるべく刺激しないようにお願いします」

「分かっている。…監視に気付いて攻撃しなければいいんだが…」

「……(これが"フラグ"というやつだろうか…)」

 




■ヴァルキリー
 P4、アルカナ剛毅のペルソナ。高速で動き、手に持った二本の剣で敵を斬り裂く。

関係ないけど坊主先輩の挑発無視して雫と二人でモヒカンを撃破、その後に坊主を倒すってルートもあったとか無かったとか。
それをしたら多分ヴァルキリーさんの出番はなかった上ひんしゅくを買った気がする。

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