〜ナツルSide〜
『さあ、長かった召喚大会もとうとう決勝戦!!数多くのペアの中から勝ち上がってきたのはなんと!二年生の最下級であるFクラスの二人です!!』
昨日今日と何度も足を運んだ特設ステージ。
最後の試合でテンションが上がっているのか、マイクを片手に熱弁する立会いの教師。
自分に酔ってるように見えるのは気のせいだと思おう。
『対するは文月学園生徒会チーム!副会長である瀬能君もFクラスです、これはFクラスが最下級という認識を改める必要があるかもしれませんね!』
呼ばれてリングの中央へ足を進める。
先に来ていた吉井と坂本が満足げな顔をしていたので、ニヤっと口角を上げて見つめ返す。
「ようお二人さん。待たせか?」
「いや?今来たところだよ」
坂本が軽口に軽口で返してくる。
余裕しゃくしゃくな感じだ。
「約束通りに決勝まで来てやったぞ」
「ああ、お前ならやると思ってたよ」
「会長さんもいるからねっ!」
吉井くん、あなたいつも一言多いのよ。
「そういえばその会長…三郷はどうした?」
坂本がチラチラと俺と俺が出てきたゲート先を見てくる。
教師の方も同じ気持ちのようで、観客に一方的な話を送りながら、視線を客席に向けながらも時折俺に「どうしたのか?」と目で語りかけてくる。
こっちは無視しよう。
「どう説得してもSクラス最高峰の会長がお前らに負けるのは無理あるから、ちょっと席を外してもらった」
本当なら俺もバックれたかったんだけど、流石に大会の締めが不戦勝・不戦敗だとバッシング酷そうなので仕方なくやってきました。
あぁ、俺ってばなんて真面目。
「…ちなみにどんな感じで?」
「ちょっとスーパーで飴買ってきてって」
「パシリじゃねーか!」
ハハッ、何をおっしゃる坂本さん。僕は人にパシリとかさせたことないよ?
みんないい人だから自分から行ってくれるのさっ。
『まだ少し時間はありますが、このまま三郷さんが来なかった場合生徒会チームは瀬能君のみで戦うことになります』
余談だが学園から一番近いスーパーまで歩いて片道三十分はかかる。
そして頼んだのは準決勝終わってすぐ。今頃どの飴買うか悩んでる頃かなぁ。
『……決勝戦開始の時間です。残念ですが三郷さんは不参加ということで、規定通り一人で戦ってもらうことになりますが…瀬能君、よろしいですか?』
立会いの教師が時計を見て、確認を取ってくる。
この大会のルールでは対戦者二人を倒して勝利が決まる。だから一人でやっても問題はない。
しかし俺は観察処分者。召喚獣がダメージを受ければ何割か還ってくる。それを考慮してのことだろう。めっちゃ棄権したい。
でーもー、それしたらー、八百屋疑惑とか向けらるだろう。いやするんだけどね。
Fクラスがただのバカの集まりじゃないってことは、こうして勝ち上がったことで証明できたと言っていいと思うんだが…疑惑の目を向けられたら姫路の親とか納得しないかもしれん。
何よりここでギブアップしたら会長や美鶴先輩に折檻受ける。拷問で自白を強要される。あの二人は絶対やる。
「やります。たとえ一人でも」
そういえば今回美鶴先輩いないみたいだけど、何かあったのかな。
☆ ★ ☆
『それでは、始めてくださいっ!』
教師の掛け声とともに召喚フィールドが展開される。
それを確認し、俺を含む三人が身構えた。
さてどうするかな。最終的に負けるとはいえそれなりに接戦とか演じる必要があるだろう。
でも俺演技とか……がっつり指導された上で合格点貰ったことはあるが、今は苦手ということにしておいて、(意味不明)
とりあえず相手を倒す気でやるか。
「二人いるから一人倒しても大丈夫かな…」
「ちょっと!?今なんか不穏な台詞聞こえたんだけど!!」
いかん、口に出てたか。
「な…ナツル…もしかしてまだあのこと根に持ってるの……?」
「あ?あのこと?」
「学園祭の出し物決めた日にやった野球できみにデッドボール当てたこと…」
……………
「そういやそんなこともあったな」
「忘れてたの!?」
最近色々あってさっぱりと。
「思い出したら腹立ってきた」
「馬鹿野郎明久!なんで余計なこと言うんだよ!」
「だっ、だって!」
そういやあの日、吉井には折檻したが坂本はやってなかったな。
「坂本はあとでやるとして、まずは吉井を
「なんで!?」
乗り。
「幸い今回の科目の日本史は俺の得意分野だ!高火力をお見舞いしてやる!」
「なっ」
「ぅえっ?!」
俺の台詞を聞いて坂本・吉井二人の顔色が変わる。
今まで披露する機会がまったくなかったから驚くのも無理はない。……それにしてもちょっと驚きすぎじゃない?
ちなみに最大火力は音楽。
「いくぞっ、
掛け声と共に浮かび上がる魔法陣。そしてそこから出現するのは雨合羽みたいなのを着込み、包丁・ランタンを装備した小柄な存在。
が、三体。
トンベリーズっ!
「ってぅえええぇなんで三体!?」
一人一体でしょ召喚獣って!?
今さら人型が呼び出せるとは思っちゃいなかったがこれは予想外だ、なんでトリオ組んでんの!?俺の中に知らない俺でもいんの?白でも黒でもない世界でパンダ先輩方式??
「ナツル…お前実は三人いるのか?」
「なに行ってんのお前も」
坂本もパニックに陥っているようだ。
俺が言うのもなんだけど、俺が三人とか悪夢でしかねーよ。誰得?呂布ちゃん得?
脱線し過ぎた。本題に戻ろう。
「いくぞナツルッ!」
「えっ!?いやちょっ、確かに本題はそれだけど!」展開急すぎない!?
なし崩し的に戦闘が始まり、坂本と吉井の召喚獣が突っ込んでくる。
いつの間に召喚した。
Fクラス 瀬能ナツル
日本史 274点
VS
Fクラス 坂本雄二
日本史 219点
&
Fクラス 吉井明久
日本史 165点
しかも何気に点数高いし。なんで?
「とっ、とりあえず応戦おぉっ!!?」
動かそうとしたらトンベリの一体が包丁で切り掛かってきた。俺に。
なぜっ!?
「っておぉい!!どこ行くんだお前!?」
残った二体のうちの片方は指示も出してないのにとことこと明後日の方向へと歩いてく。
勝手に動くのはこの際置いとくとして、びっくりするほどのろい。未熟児のハイハイの方がまだ早いレベルだ。
そのくせ武器を振るうハンドスピードは異様に早い。なにこのアンバランスな召喚獣。
「オラァッ!」
「くゥッ!」
容赦のかけらもない坂本の一撃が、立ち尽くす最後の一体に襲いかかる。
とっさに左手のカンテラを突き出させると、ガキッ!と鋭い音がした。
よかった、こいつは動かせる。
「そう簡単に俺はやれねえぞ坂もとおおおおっっ!!?」
またもトンベリが逆手に持った包丁で俺を刺しにきた。
しかも今度は飛び上がってからの脇腹狙い。
なぜだ!?なぜお前は必要に本体を攻撃してくる!?
攻撃してくるトンベリ―――面倒だ。コイツを1号として、無秩序に歩き回るのを2号。操作可能なのを3号とする―――に素早く近づいて羽交い締めに抱き抱える。
「暴れるなこら!」
1号が腕から抜け出そうとジタバタと体を揺すり――隙あらば包丁で俺を刺そうとしてくる。
危ない!怖い!力強い!さらにフィードバックで捕まれてる感覚もやってくるから試合に集中できん!
「食らえナツル、日ごろのうらみっ!」
その様子をチャンスと見て、吉井が寝ぼけたことを口走りながら呑気に散歩している2号目がけ、木刀を振り上げて背後から切り掛かる。微塵も躊躇が感じられねえ。
「図に乗んなカス!!」
「ぎょああああっっ!!」
とっさに1号を吉井の召喚獣に投げつける。と同時に近くにいた3号の丸い頭を掴んでスローイン。
すると2号が突然振り返り、包丁を天高く振り上げ他の二体と同時に吉井に斬りかかる。
トリプルソード!?
「頭がぁっ、背中が!!」
Fクラス 吉井明久
日本史 18点
三本の刃が綺麗に決まり、俺と同じくダメージのフィードバックを受けるために痛みでのたうち回る吉井。
地面を転がる馬鹿はとりあえず放置しよう。瀕死だし。
問題は―――
「オラッ!」
「げほッ!?」
いつの間にか2号の近くに移動していた坂本(の召喚獣)が、メリケン付き拳を使って勢いよくボディブロウ。
お…おんなじだ……ナナハン食らった時と、おんなじだ………!
これならイケるぜ!!
いやいけねーよ。めっちゃ痛いわ。
「少しは加減しろよオマェ……!」
「そんなのしたらいつまでも終わらんだろうが」
しれっと言い切りやがった。自分の事じゃないからって…
坂本の召喚獣の操作技術はかなり下手だ。さっきの坊主先輩に比べものにならないくらい拙い。
しかしこっちは足が遅く、
今も関係ない虚空をぼーっと見つめる2号にドカドカと無遠慮に拳を打ち付けられて、3号で必死に護ってる状況だ。
せめて一体ならまだ楽なのに…今回ハンデ多くね?
「オラオラオラ!どうしたナツル、お前の実力はそんなもんか!!」
「坂本キサマァ!!」
すごくいい
逆の立場なら間違いなく俺もそうするし、負けなきゃいけないってのは理解してるんだが…腹が立つのも事実だ。
なので反撃する。
「オラァッッ!!」
「何っ!?」
相手の右ストレートに合わせて3号のランタンを振るい、パリイの要領で攻撃を弾き返す。
ヒャッハー、敵一体、大きく体勢を崩したぜ!!ワンモアチャンス!
「テメーは俺を怒らせたワ"ーヲ!!?」
突然鋭い痛みが瀬能隊員の足を襲う!
反射的に目線を下げるとそこには、両手で俺の右足の甲に包丁を突き立てる謎のモンスターが!
でたーーー〜〜〜ッッ、トンベリだぁ!!
ゾッとしたわ。
実際にゲームで襲われたキャラクターはこんな気持ちなんだろうか。本気でビビっただろうが。
坂本に集中しすぎて存在忘れてたよ。
「おのれはいったい何がしたいんじゃぁ何がッ!!」
1号の雨合羽の襟元を掴み上げて、真っ向から睨みつける。
しかしこの魚類だか両生類だか分からない謎のモンスター、感情を感じさせない澄まし顔(※ナツル主観)でそっぽを向いて目も合わせない。
なんか言えや!クリーチャーみたいな声出たんだぞこっちは。
「くたばれスニファー!」
「ギャァァ!?」
またしてもメリケンサック付きの拳を喰らう(頬に)。
操作せずに止まってる3号じゃなくフラフラしてる2号を狙うあたり計画性が感じられる。(※そうか?)
って言うか、
「テメエ坂本!誰が舌が長いホースみたいな犬の化け物だ!俺は猫派なんだっつってんだろ!!」
マンダリンはいい。
ボイドでもロウショックでもスウォームでもいい。
ブラッドサッカーと呼ばれても構いはしない。
しかし、
「犬系に例えられるのだけは我慢ならん!!」
「虫や触手の化け物はいいのかよ…」
問題ない。俺にとっては犬こそが最下位だからだ。
幼少期に集団で襲い掛かられ噛みつかれまくって(しかも何かしらの病気を持ってたのか後に高熱が出て死にかけた)から、アイツらは憎むべき敵だと思っている。どういうわけか出会う犬全てが俺を噛むし。
ワン子?あいつは人間だろう。何を言っているんだキミは?
「そうか…お前にも色々あるんだ隙あり!!」
ごく普通の会話の途中なのに容赦なくボディブロー。
鬼か。
その攻撃に合わせるようにトンベリ1号が足に刺さっている包丁へランタンを叩きつけた。
悪魔か。
つーかマジなんなのコイツ。なんで執拗に本体を攻撃するの?バグ?混乱表記ないけど混乱してるバグ?最悪かよ。
『それまで!勝者Fクラス…あ、坂本くん・吉井くんペア!』
Fクラス 瀬能ナツル
日本史 0点
VS
Fクラス 坂本雄二
日本史 219点
&
Fクラス 吉井明久
日本史 18点
ああもう、なんかぐだぐだのまま終っちゃたし。まともに戦ってないのに。
言いたいこと沢山あるけど、直訴して「じゃあ仕切りを」とかいう流れになったら色んな意味で嫌だ。せっかく悪夢のような試合が終わったのにやり直しとか無理だから。精神的にも肉体的にも。
頬と腹と右足がすっげー痛い。特に足の甲がとんでもなく痛い。レベルが違う。(穴とか空いてないよね?)
ほんっとマジで最悪。会長まで騙したのに。
………本当になんで俺、こんな目にあってるんだろう……クラスメイトのために色々協力してやった結果がこれ?
たまに仏心見せたと思ったらこれだよ。世の中クソだな。
「この貸しは高いぞ坂本…」
「明久に言え」
それだけじゃ足んねーよ馬鹿。
■トンベリーズ
FFシリーズに出てくるいやし(嫌死)モンスター。トリオ組んでる奴らは一部の作品にしかいないけどね。
・1号:瀬能ナツルの中の反逆の意思。方向性が定まっていないのでとりあえず本体を攻撃する。
・2号:瀬能ナツルの中の奔放な部分。マイペースで天然、人の言う事を聞かない。
・3号:瀬能ナツルの中の協調性担当。割と素直で順応。しかし他の部分(性格とか)が邪魔をしてるため動きがぎこちない。
■パンダ先輩
ジャンプの呪い漫画に出てくる登場人物。一人三役なんだって。
お得だね!
■トリプルソード
ドラクエ8。仲間にしたモンスター呼ぶ特技で剣持ち三体を揃えた時に使えるコンビネーション技。
何気にFFとDQの共演が…!
■お…おんなじだ……ナナハン食らった時と、おんなじだ………!
これならイケるぜ!!
バキ。アイアンマイケル戦での柴千春の台詞。
750ccのバイクぶつけられるって凄い経験だよね。ナツル?…さあどうでしょう。
■クリーチャー
サイレントヒルの敵。どんな容姿をしてるかは名前からググってください。
ちなみクリーチャーみたいな声の元ネタはスニファーことスニファードック。どうやって出したんだろう。
前回のシリアスな展開との落差。でもメッチャ楽しく書けた。やっぱギャグだな。
ギャグだとすぐに特殊タグ使っちゃうのは…もはや仕様。
次回はあの人がナツルと接触します(予定)