The youth of the ruler of the DbD world 作:シェイプストーリー
「おれっていつもそうだ・・・いなくなってはじめてわかるんだ」-『ジョジョの奇妙な冒険』第3部のポルナレフ
視点 小鳥遊ホシノ
照りつける太陽の下を小柄な影が駆け抜ける。短く切り揃えられたピンク色の髪をした少女は焦燥感に駆られた表情で声を上げる。
ホシノ「ユメ先輩! ユメ先輩! 返事を! 返事をしてください! ユメ先輩ッ!!!」
右目が黄色、左目が青の鋭いオッドアイの少女――アビドス高等学校1年「小鳥遊ホシノ」は声も駆れん限りにユメの名を叫んでは必死に周囲を探し回っていた。
ホシノ(私のせいだ、私のせいだ)
ユメ先輩が行方不明になって今日で4日目――ユメ先輩の装備を考えればとっくに生存ラインは過ぎてしまっている。
ホシノ「ユメ先輩! ユメ先輩ッ! いませんかッ!! ユメ先輩ッ!!!はぁはぁ……おえっ」
叫びすぎ……いや灼熱の太陽に照らされながら走り続けた事が原因で、込み上げて来た吐き気を必死に堪え、涙で歪む視界を制服の袖口でぬぐって前を見る。
ホシノ「はぁ……はぁ……ユメ先輩ッ!!」
呼吸を整えて再びユメ先輩の名を叫びながら走り出す。まだ生きているかもしれない、どこか安全な場所を見つけてそこで隠れているかもしれない、そんな一縷の望みに縋り必死に走る。
ホシノ(私が、私が全部悪い、ごめんなさい、ユメ先輩ごめんなさい)
切っ掛けは些細な事だ。普段なら聞き流せるユメ先輩の夢物語――それが無性に癇に障ったのだ。かつてアビドスで行なわれた砂祭り……度重なる砂嵐の被害によって借金塗れになった今のアビドスでは開催など出来よう筈もないかつてのアビドスの象徴。失われた過去に夢を馳せ、何の価値もないポスターを宝物のように差し出してきたユメ先輩に込み上げてくる怒りを抑えられなかった。渡されたポスターをビリビリに破り捨て、悲しそうな顔をするユメ先輩に背を向けて生徒会室を飛び出したのだ。ユメ先輩と顔を見合わせるのが気まずくて喧嘩して2日後に登校した私が見たのはユメ先輩の書置きと、宝探しのために準備していた荷物が収められたリュックが無くなった机だけだった。
『ネフティスと交渉してくるね。その後でネフティスがアビドス砂漠で高額アルバイトがあるっていうから働いてきます 梔子ユメ』
さぁっと血の気が引いた。アビドス砂漠は今も砂嵐の多発エリアで1人で行くような場所ではない、そしてアビドス砂漠で高額アルバイトなんてあるわけがない。また騙されたのだとすぐに分かり、私はユメ先輩を探してアビドス砂漠へと足を踏み入れたのだ。
ホシノ「はぁ……はぁ……うっ」
立ち眩みと頭痛に限界を感じ鞄から水のペットボトルを取り出して1口口へ含む。ネフティスにユメ先輩をどこにアルバイトに行かせたのを確認し、準備するのに1日、そして私がアビドス砂漠に突入して2日……そして今日で3日目だ。そしてユメ先輩はアビドス砂漠に踏み込んで恐らく5日目だと推測される。
ホシノ「休んでいる時間はない……探さないと」
私の持っている物資は水を除いて余裕があるが、不眠不休で動き続けているので体力は限界が近づいている。それにユメ先輩が持ち出した宝探し用の荷物は私とユメ先輩の分で2日分。単純計算で4日分はあるが、砂嵐が多発していることを考えるとその装備も失っている可能性が極めて高い。だから今の私には休んでいる時間なんてない。
ホシノ「はぁ……」
休みたい、もっと水が飲みたい。だけどそんな余裕はない、ユメ先輩が遭難して5日目――セーフティラインはとうに過ぎている。一秒でも早くユメ先輩を見つけないと……それだけを考え重い足取りで一歩踏み出そうと思っているのに私の手は水筒に伸びていた。
ホシノ「……駄目です、駄目。何を考えているのですかッ」
もう1本はユメ先輩の分だ……これ以上飲む訳に行かないとぐっと我慢し、水筒を鞄にしまい汗を拭うために顔を上げた時に瓦礫の山が視界に入り、その瓦礫に絡まっている緑が視界に入った。
ホシノ「ユ……メ先輩……?」
砂嵐が直撃したのか倒壊した建物――その崩れた瓦礫の絡まっている緑の髪を見てガタガタと奥歯が音を立てる。違う、違う見間違いだ。そんなはずないと自分に言い聞かせて走り出す。
ホシノ「あ……あああ……ああッ!!!」
瓦礫に絡まった鮮やかな緑の髪、乾いて変色した血が飛び散った瓦礫の山――そして拉げたユメ先輩のハンドガンとボロボロに千切れたリュックの破片を見て私はその場に崩れ落ちた。全ての状況証拠が物語っているユメ先輩がこの下にいるのだと……。
ホシノ「ユメ先輩ッ!」
太陽に熱された砂に両手を突きいれ掻き分ける。まだ生きてるかもしれない、見つかるかもしれないとありえない希望に縋って砂を掘り起こす。
ホシノ「ユメ先輩! ユメ先輩ッ!」
手を火傷しようが、爪が剥がれようが砂を掻き分けてユメ先輩の名を叫んで必死に砂を掻き分ける。
もう死んでるよ
ホシノ「うるさいッ!」
貴方のせいで死んだんだよ
ホシノ「うるさいッ!!!」
貴方がいれば助かったのにね
ホシノ「うるさいッ!!!!!」
分かってる。分かっている全部自分が悪いって分かっている、それなのに今さら何をしているのか。
最初からあんな事をしなければよかった。今は無理でもいつかは出来るかもしれない希望を抱いても良かったんだ。
ホシノ「つうっ」
ガラスが混じっていたのか手が切れて血が噴出す、痛みに顔を歪めながらもそれでも砂を掻き分ける。
「ホ……ちゃ……ん」
風の音で良く聞こえない、顔を上げて耳を澄ませる。だけどあの声は間違いないユメ先輩の声だ。
「ホシ……ちゃ……ん」
ホシノ「ユメ先輩! どこですか! ユメ先輩ッ!!!」
ユメ先輩だ。どこにいるのか、耳を澄ませてユメ先輩の名を叫ぶ。まだ遠い、だけど確かに声がする。ユメ先輩の声がするどこから声がしているのかと周囲を見渡すと・・・遠くの方に見慣れた影が見えた、それは・・・ユメ先輩だった。
ユメ「ホシノちゃん! ああ、大変手が……」
ホシノ「ユメ……先輩?」
ユメ「ごめんね! ホシノちゃん、ごめん。私がホシノちゃんを怒らせちゃったから」
ハンカチで私の手をしばりながら謝ってくるユメ先輩、違う、違うんです。
ホシノ「わ、私が、私が悪いんです」
ユメ「違うよ、私が私が悪いんだよぉ」
ホシノ「違います! 私が、私が悪いんです!」
ユメ先輩は何も悪くない、悪いのは全部私だ。ユメ先輩はユメ先輩が出来る事をしていたのに、それを全部無駄な事と思った私が悪いんだ。
ユメ「ホシノちゃんは悪くないよ、私が」
ホシノ「違います。私が」
と言い合ってたその時、私達を狙っていると言わんばかりに砂嵐が迫って来ていた。
ホシノ「! ユメ先輩! 逃げますよ! こっちに砂嵐が来てます!」
ユメ「あ! でもザインさんがまだ、あっちにいるから一緒に逃げなきゃ!」
ホシノ「ザイン? 誰ですかその人?」
ユメ「ザインさんはね、私の命の恩人でね、あの人が助けてくれなかったら私は死んでたの。」
ホシノ「私がユメ先輩を見つけた時、そのザインって人らしき影を私は見てませんよ?」
ユメ「え! そ、そんなぁ,さっきまで私と一緒にいたのに。」
ホシノ「それは後で聞くとして、早く逃げますよ!」
ユメ「あ! 待ってよ! ホシノちゃん!」
とユメ先輩と一緒にアビドス高校まで逃げ、その後にユメ先輩の話を元にアビドス砂漠近くの建物を見て回ったもののそれらしき建物が見つけられなかった。
視点 ホシノ END
「あれは本物のブギーマンなの?」-映画『ハロウィン』ローリー・ストロード(1978年)