The youth of the ruler of the DbD world 作:シェイプストーリー
「人間の目には偶然でも、神の目には必然である」-マザーT
私は黒服の背中を追いながら,思考を巡らせる。
もし、研究室をもらえるとしたら、"感情の探究"をするのも悪くない。
だが条件が、誰一人が攻め込んで来ないような場所、そして安定した環境・・・当てはまるのはミレニアムの廃墟だけだな。 他の場所は不良やスケバンが占領してるからここしかないからな~。 色々な整備は"菌根兵"*1と"ジェノサイド"*2に任せるか。
と考えていると黒服が声を掛けた。
黒服「着きました」
黒服が足を止めた先にあったのは重たそうな鋼の扉と、無機質な鉄の壁。薄暗い地下通路の奥に、それは静かに佇んでいました。
「なるほど、ここが」
黒服「そう、ここが我々『ゲマトリア』のアジトです」
「そうか‥‥黒服、もし変な質問をされたらどう返せばいいと思う」
黒服は少しだけ引き攣った笑みを浮かべながら、重たい扉に手をかけた。多分ベアトリーチェのことを思ったのだろう。
ギィ、と鈍い金属音と共に開かれたその扉の先
そこには、既に複数の人影があった。
閉鎖的で、地下独特の圧迫感がある部屋。空気は冷たく澱んでいていまして、人によっては寒気もするだろう。
まぁ、密室だから無理もない話だが。
そして、中央の丸く大きな机を囲むように並んだ4つの椅子。その幾つかに、異様な姿の者たちが座っていた。
その存在を全て見渡す。
まず目に入ったのはタキシードを着た存在。
マネキンのような無機質な身体に、木のような頭が二つ付いている。その両方が無言のまま微妙に角度を変え、私の方を見た気がした。
ギギギと軋むような音を立てて、静かに身じろぎするその姿。
確かゲマトリアの一人、【マエストロ】だったか。
そして、次に視界に映ったのは顔のない男。
身体の形は人間たが首から先が無く、薄暗いベージュロングコートを纏い、片手にはステッキを持っている。
そして私は彼の手にある額縁に写っている写真に目を向けた。
写真には、背を向けた男が写っている。シルクハットを被り、こちらに顔を見せないまま、写真の中に立っているだけ。だが、その後ろ向きの視線は何故か私を見ているような気がした。
アレが【ゴルコンダ】と【デカルコマニー】か。
正直な話、あれどうやって見えているのだろうか。というか目と口はあるか。フランシスなら一応あるのだが⋯⋯
そして最後の存在に目を向けた。正直関わっていく上で二度と関わりたくないと思ったのはここだけの話。
長身で、長い黒髪に赤い肌、白いドレスを身に纏っている。
あれは羽?いや翼と形容したほうがいいな。
目がついている翼で埋め尽くされた毛玉の様な頭部を持ち、口の中は乱杭歯となっており、禍々しい雰囲気を放つ女性。
アレが【ベアトリーチェ】ね。
黒服「では、ここにお座りください。既に貴方が新たなメンバーになることはここのメンバーには通達済みですのでお気になさらず」
「ありがとう、黒服」
黒服「⋯⋯さて。まずは、互いに名乗り合うといたしましょうか」
ここから先は本当の大人の場というものなのだろう。黒服が声を掛けた瞬間、気が張り詰め、一気に緊張感が高まる。そしてそんな中、黒服が話し始める。
黒服「改めまして⋯⋯我々はゲマトリア。キヴォトスの神秘を多角的に探求・研究を行う組織です。そして、先程も名乗りましたが、私の事は黒服、と呼んでいただければと」
黒服の言葉と共に、双頭のマネキンのような身体が動き、軋むような音が空間に響いた。
マエストロ「私はマエストロと言う。神秘に対する私なりの解釈を形にし、それを芸術として昇華する。それが私の探究である」
「ふむ、つまりその"芸術"が何かは分かりませんが⋯⋯その神秘を自分なりの芸術へと創ることが目的というわけですか」
マエストロ「貴下は、芸術をどう捉えている?」
そんな大雑把な質問に、私は声色一つ変えず答える。
「そうですね⋯⋯⋯表現の手法としては、非常に自由ですね。芸術の一言は、作品や表現に深みを、感情を入れ込ませる。たとえそれが意味のないようなものであっても、それには深い感情が込められている。これで良いでしょうか?マエストロ?」
マエストロ「⋯⋯想像以上だ。黒服の聞いたとおり、これは期待出来る」
満足いく解答だったのか、一際声量を上げてそう放つマエストロ
マエストロ「後に、完成した作品をお見せするとしよう。その貴下の持つインスピレーションを参考にしたい」
マエストロはギギギと軋みを鳴らす。その声は当に興味の二文字。芸術の観念は私でも理解できる。*3
「えぇ。私でよければ喜んで。」
それに私は是の声を出す。基本的に、こういう交友関係は広げておいて損はない。
マエストロが軋み終えると、今度は黒服の隣に座っているゴルコンダとデカルコマニーが口を開けて喋り出す。
ゴルコンダ「私はゴルコンダと申します。背を向けた状態での挨拶となる無礼、どうかお許しくださいませ」
ゴルコンダの支える写真が、声を発した。正直、アレがどういう原理なのかは前世では解らなかったが、今世ではその原理が分かる。
ゴルコンダ「因みに、こちらは私の体を代行してくれているのが『デカルコマニー』です」
デカルコマニー「そういうこったぁ!」
デカルコマニーは声を発する。あれ自体も口が何処にあるのかは分からないが、あれもゴルコンダと同じ原理なんだろう。そしてゴルコンダはそのまま続ける。
「私は記号とテクストを鍵として、この世界が孕む無数の物語を読解することを目的としています。ここキヴォトスもまた、解釈すべき書物。その項を解読し、読み進めることが私の探究です」
「なるほど、物語の数々のワードを鍵として物語を理解し深めようとする⋯⋯敢えて言うとすれば第四の壁から見て考察をすること、という解釈で良いでしょうか?」
「左様、貴方はテクスト⋯⋯もとい文学的なものをどう解釈していますか?」
なるほど、『文学的』か。
「『都市伝説』が文学的表現だとすると、『噂話・言い伝え』は事務的表現。で良いでしょうか?ゴルコンダにデカルコマニー?」
ゴルコンダ「素晴らしい⋯⋯⋯!!」
デカルコマニー「そういうこったぁ!!!!」
ゴルコンダとデカルコマニーが声を上げて拍手の音が聞こえた。研究者としてというか、新たなサークル仲間としてについてはちゃんとしているな、ここ。
そんな感じで歓迎ムードに入っていった時でした。その言葉が投げかけられる前まではちゃんとしたクラブになっていたんですよ。ある女が声を発するまでは。
???「⋯⋯気に入りませんね」
その冷ややかな声と共に、空気がぴたりと張り詰めた。
目が蠢く、禍々しい翼を顔に纏った異形の女⋯⋯もといベアトリーチェがまるで害虫を見るような視線で私のことを睨みつけてきた。
扇子を広げる仕草は優雅だが、そこに込められた悪意は隠しようもないな~。本当に組織に必ず1人はいる面倒くさいタイプだ。
???「はぁ⋯⋯」
「む?」
黒服、マエストロ、ゴルコンダ「「「⋯⋯⋯⋯」」」
私は素っ気なく返す。
流石に出会い頭に、それもクラブの歓迎ムードの時にそんな事を言われれば空気が凍りつくのは無理もないことだな⋯⋯南極でもこんな寒くはならないぞ。
???→ベアトリーチェ「本当にこの者⋯⋯エンティティを本当にこちらに加えるのですか? どうにも、信用に値しないように見えます。態度も、言動も、まるで取り入ろうとしているかのように」
取り入るというのは少し違う気がするな。サークルなどの先輩からの質問に後輩が答えるのは当然の摂理だろ?お門違いもいいところだ。
ベアトリーチェ「貴方においての全てが癇に障ります。ええ、とても、とても不快です。汚らわしい。受け入れるなど私には到底理解できません。いえ、理解したくもありません。大人であろうと、子供であろうと。私が否定します。気持ち悪い」
ベアトリーチェは吐き捨てるように言い放ちました。その翼に生えている目はその全てが私を睨みつけていて本気で私を気に入らないようですね。しかも言ってることが自分勝手の滅茶苦茶な言葉。流石に私のでもイラっと来るね。
というか、これは俗に言う嫉妬って言う奴なのか?いや、絶対違うなこれ。明らかに怒りのベクトルが違いますもん。
それはそうと、何をどうしたらそんなに暴言が出てくるんだ?というか子供ですかこいつ、そんな甘チョロい暴言では私なんて動きませんよ。
今さっきまでの歓迎ムードがまるで嘘のように空気が一気に凍りつきましたよ。貴女のせいで。
数秒の沈黙が、場にいる誰にも手出しできないなんかこう⋯⋯重さや圧としてのしかかりました。
どうしてくれるんだこの殺伐とした空気⋯⋯
その重々しい空気の中、私は声を出す。何か話題を出さなければ、空気的に私の精神的にストレスが溜まりそうだ。
「すいません、まだこういうものには慣れていなくてですね。お名前をお聞きしても?」
ベアトリーチェ「貴方のその姿勢が気に入らないと言っているのですよ。その取り入ろうとする癪に障る姿勢が特に」
「ふむ?こういう場では先輩方の問いを素直に答えようとすることが貴女にとっては癪に障ることなのでしょうか?」
ベアトリーチェ「⋯⋯」
「⋯⋯」
ゲマトリアの全員「「「「「「⋯⋯⋯⋯」」」」」」
せっかく立て直そうとしたのに⋯⋯さらに空気が悪化しちゃったじゃないですか⋯⋯⋯
ベアトリーチェの扇子がパチンと音を立てて閉じられる。怒りは静かに、だが確実に彼女の身体から立ち昇っていた。その蠢く大量の目と私の目はバチバチと火花が散っているようにも見えた。
ゴルコンダ「落ち着いてください、2人とも。私たちは敵ではなく、エンティティはゲマトリアの一員としての仲間になるのです。貴下、エンティティを刺激するのは止めた方が賢明かと。非があるのは貴下ですよ」
その瞬間、ゴルコンダが割って入りました。
椅子に深く腰を下ろしていたデカルコマニーに支えられたゴルコンダが、写真から声を発しました。
顔は無いのに今さっきまで拍手していた筈ののデカルコマニーが、静かに落ち着いているのを見て、ゴルコンダのその言葉に重みを加えていました。
本当に先輩、有難いです⋯⋯
私は心の中で思った。やはり持つべきものは理解ある先輩方なんですね。
声はこの密室にはよく響きます。それだけで張り詰めた空気が和らいだ気がしましたが、それでも険悪な空気は変わらないです。そして、それだけではベアトリーチェというものは終わらない。
ベアトリーチェはそのゴルコンダの言葉を聞いても納得していない様子で、腰かけていた椅子から立ち上がる。
その後、ベアトリーチェにある翼の中で蠢く多くの目が私を睨見つける。まるで何か汚らわしいものが見えたかのように。面倒くさいものだ、特に根っこからクズの大人は。
ベアトリーチェ「⋯⋯気に入りません。本当に」
吐き捨てるように繰り返すと、ベアトリーチェは背を向けてそのままアジトを出ていた。鉄の扉がバタンと閉まると、残された空間に、ただ無音だけが残ってしまった。
気まずい、とはまさにこのことなんですね。
それに対して黒服は口を開く。
黒服「すいません、エンティティ。彼女はああいう方でして」
だが、その顔は何処か怒りか、悲しみか⋯⋯少しだけ焦燥感が漂っていた。そして黒服は一呼吸置いて話し始める。
黒服「まず始めに、彼女の名前はb」
「ベアトリーチェで合っていますか?」
マエストロ、ゴルコンダ「「!?」」
デカルコマニー「そういうこったぁ!!」
識り得るはずのないベアトリーチェの名前を黒服より先に出したことに 黒服を含めた者たちが驚いた。そして私は立ち上がり話し始める。
ベアトリーチェ以外の方々には私の経歴⋯⋯神という肩書きと霧の森の支配者というのは言っておいたほうがいいですね。
「ベアトリーチェ⋯⋯確かアリウスを支配し、自らを崇高へと至らせるために色々としている方で合っていますか?黒服」
黒服「えぇ⋯⋯何故、知っているのですか?」
「そもそもの話で、この場にいるもの⋯⋯もとい黒服、マエストロ、ゴルコンダ、デカルコマニー⋯⋯そしてベアトリーチェについては全て先に知っていました」
黒服「ほう?」
マエストロ「なに?」
デカルコマニー「どういうこったぁ??」
その言葉にゲマトリアの皆さんは困惑の声を漏らす。だが、それを意にも返さずに私は話し始める。
「ここから先は、ベアトリーチェには決してバラさぬようお願いしたい」
黒服「それは一体どういった理由で?」
「知られると困ることが多いということです」
そうして黒服はマエストロ、ゴルコンダ、デカルコマニーに目配せすると渋々といった感じで了承を得たため、私は話し始める。
「まず、前提として私は別の世界で信仰されてた神であります」
その言葉に一番最初に驚きの声を上げたのはゴルコンダとデカルコマニーであった。
ゴルコンダ「なんと、まさか人々から信仰されし神だったとは。それでもってのここまでの広い解釈。理解がいった」
デカルコマニー「そういうこったぁ!!」
マエストロ「なる程、ここまでの広い解釈は神だから⋯⋯というのは少し違うような気がしますね。貴下が言った芸術の解釈ならば神にしては人間味がある。まだ、話すことはあるのだろう?」
「ええ、そうですね。先に伝えておくとすれば私は霧の森の支配者しております」
黒服「ほう?」
マエストロ「霧の森の支配者‥‥‥それはどういうものなのだ」
「そうですね‥‥‥まず、霧の森とは私が私のために創った世界で、そこでは色々な平行世界から集めた人々・・・サバイバーと私が元々選んでいた殺人鬼などのキラーで儀式をするんです。その儀式でサバイバーとキラーから生まれた苦痛と希望を私の力にする所です。そしてあなた方を知ったのは予知の能力を力を使って観たからです」
マエストロ「なる程、それならばその多角的な芸術観念にも理解が行く。その並行世界の知識を新たなインスピレーションに加えられそうだ」
「そう言ってくれると幸いです。そして私は物語の変数を自覚しています⋯⋯だからこそゲマトリアに入ろうと決意したわけです」
そうして話していると談義が始まった。やれ、これの解釈はどうかなど、やれこの者についてはどう解釈するなど⋯⋯別世界からの視点というのも非常に大切なのだろう。
だが、敢えてここの世界がゲームであることや色彩関係については話さない。もしこれが伝わって筋書きから違う風になったら私が困るからね。
そういう風にゲマトリアメンバーで話し合っていると、黒服が仕切り直して私に問う。
黒服「改めて⋯⋯ゲマトリアでは学園都市キヴォトスにおける神秘の探求・研究を行い、崇高へ至る事を目的としています。各自、過程は違えど最終目標を共にする同志でもあります」
ゲマトリアの最終目標、崇高へ至ること。その目的などを黒服は改めて言い始める。そして私に問う。ゲマトリアに入っての目的を。
黒服「だからこそ聞いておきたいのです。貴方はキヴォトスで何を成し得るつもりですか?その力と解釈を持って」
それに私は答える。本物のエンティティでは成し得なかったことをこの世界で成し遂げる。
「私は神、つまりは人間ではありません。ならば、神秘を入れることが可能でしょう」
「ならば私は神秘を持って『本物の人』となることを『崇高』にしましょう。それは神を証明すると同じくらい難しい、ですが人を、神秘を、感情を、知ることが私の探求です」
私は言い終えた後に1度目を閉じて開く。その顔は黒服曰く、決意に満ちていたと言うことらしい。
「改めて、新たにゲマトリアに加わることになりました。神の『エンティティ』と申します。以後、お見知りおきを」
その声は、その重みはゲマトリアの会議室に響き渡った。
「私は私だ」-『HELLSING』少佐