ゼロの使い魔・ドラゴンクエスト外伝 ~アバンと異世界のメイジたち~ 作:アバン流口殺法はご遠慮ください
タバサとギーシュの訓練、そして、ルイズとキュルケのやり取り。
そんな夜の中庭で起きた一部始終を、植え込みに身を潜めて見守っている者がいた。
最近巷で噂になっている、『土くれ』のフーケと呼ばれる魔法盗賊である。
彼女は少し前から、このトリステイン魔法学院の宝物庫を襲おうと計略を練り、学院内に侵入していたのだ。
正規の出入り口にある扉や鍵は強固な『固定化』で守られていて、『錬金』による分解は不可能だった。
ならば外壁を巨大ゴーレムで打ち破ろうと考え、夜の間に検分していたのだが、これほど厚みのある壁では物理的な強度も高く、到底破壊できそうにない。
時間をかけてじっくり取り組めば何とかなるかもしれないが、なにしろここは魔法学院で、メイジだらけである。
巨大ゴーレムで外壁を打ち破るような目立つやり方を選ぶなら、どうしても速やかに終えてずらからなくてはならない。
もたもたしていたら取り囲まれて、一巻の終わりだ。
「ここまで来て、お宝を諦めるってわけにゃあ、いかないしね……」
外壁に張り付いたままどうしたものかと考えていたら、誰かが近付いてくる気配を感じたので、地面に降りて植え込みに身を隠し、様子をうかがったのである。
(なんだい。学生どもが休日のこんな時間に、戦闘訓練?)
勉強熱心で結構なことだが、今の自分にとっては邪魔だ。
さっさと終わってどこかに行ってくれないと、身動きが取れない。
フーケが軽く苛立ちながら待っていると、今度は別の学生が魔法の試射らしきことを始めた。
何やら見慣れぬ魔法だと思ってその学生に注意を向けると、彼女が二度目に唱えたのは『エア・カッター』だったにもかかわらず、本塔の壁が爆発した。
一体どういうことだろうと怪訝に思ったものの、見れば、その爆発のために壁にヒビが入ったようだ。
自分のゴーレムでも厳しそうだった壁に学生メイジの魔法ごときが傷をつけるなんて、いささかプライドが傷つけられたが、そんなことはどうでもよい。
(何だか知らないけど、ありがたいね!)
フーケは周囲の学生たちに気取られないよう気を付けながら、長い詠唱をはじめる。
もう少し辛抱して、ルイズらがいなくなるまで待ってから事に及べばより安全だっただろうが、彼女は千載一遇のチャンスに気が急いていたのだ。
呪文を完成させ、自分の足元に向けて杖を振る。
音を立てて地面が盛り上がり、巨大な土のゴーレムがあらわれた。
「きゃぁああああああっ!?」
真っ先にゴーレムに気付いたキュルケは悲鳴を上げ、あわてて逃げ出した。
何事かと目を向けた他の者たちも、ゴーレムの存在に気が付く。
「……!」
「なっ。なんだ、あのゴーレムは!?」
ギーシュが目を丸くした。
材質はありふれた土のようだが、それでもあんな巨大なゴーレムを作るには、少なくともトライアングル・クラスの実力が必要なはずだ。
一体だれが、何のためにあんなものを作ったのか。
「わ、わわっ!?」
ルイズも、急いでその場を離れた。
さっきまで彼女やキュルケの立っていたあたりに、重い音を立てて、ゴーレムの足がめり込む。
特に自分たちを狙っているというわけではなさそうだが、しかし、こちらの安否を気にかけてもいないようだ。
周りの安全も確かめずに学院の敷地内であんな巨大ゴーレムを作るだなんて、普通の学生や教師では考えられないことである。
「ど、どこの誰の仕業よ!」
ルイズの抗議するような声に、答える者はない。
フーケは巨大な土ゴーレムの肩の上に立ち、フード付きの黒いローブで顔を見られないようにしていた。
ゴーレムは本塔に歩み寄ると、ヒビが入った壁……ちょうど五階の高さにある、宝物庫の外壁部分……に向けて、拳を打ちおろした。
その拳はインパクトの瞬間に鉄に変えられ、壁を叩き崩す。
フーケはにやりと微笑むと、ゴーレムの腕を伝って、壁に空いた穴から宝物庫に入り込んだ。
学院の宝物庫には様々な宝物があるが、彼女の狙いはただ一つ、『破壊の杖』と呼ばれる品である。
(さあて。お宝はどこだい?)
視線を巡らせると、様々な杖が壁にかかった一画があった。
その中に一つ、壁にかけずにガラスのケースにしまい込まれている、いかにも特別そうな品がある。
それは、成人の背丈ほどもある長杖だった。
全体的には黒鉄色で、ところどころに象牙のような白い斑がある。
上端にはシャチが球形の大きな宝玉を抱えているような形状の装飾的な打撃部があり、下端には尾びれを思わせる扁平な石突がついている。
ケースには、鉄製のプレートが付いていた。
『破壊の杖。持ち出し/取り出し禁止』
フーケは笑みを深めると、ケースに向けて杖を振る。
ガラスのケースを砂に変えて破壊の杖を取り出してみると、予想以上にずしりと重い。
(……? これ、何でできてるんだい?)
外見からすると鉄と象牙か何かを組み合わせて作られているようにも見えるが、こうして触れてみると、明らかに違うのがわかった。
これは何か、まったく未知の金属でできた杖だ。
(『土』のエキスパートである私にもわからないとはね。さすがは学院秘蔵のお宝ってことか)
まあそれは、あとでじっくりと調べるとしよう。
今は、さっさとずらからなくては。
フーケは最後に、手近の壁に向けて杖を振り、メッセージを刻んだ。
『破壊の杖、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』
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「ルイズ、タバサ。キュルケに、ギーシュくんも」
「アバン!」
フーケが宝物庫の中を物色している間に、悲鳴を聞きつけたアバンが到着した。
彼はまずその場にいた面々を見回して全員の無事を確認し、安堵する。
次いで、本塔の壁を殴り崩した巨大なゴーレムに目をやった。
「こんな時間にみんな揃って、どうしたんです。あれは一体?」
「いや、彼女はここで訓練をしていてね。僕は、頼まれての付き合いだが」
「そこへいきなり、あの大きいのが出てきたわけよ」
ギーシュとキュルケの説明を聞いて、アバンは首をかしげる。
「壁を壊したようですが……工事などではありませんよね。何の目的でしょう?」
「盗賊。だと思う」
タバサがそう言うと、ルイズもはっとしたような顔になった。
「そ、そうだわ。あのあたりは、確か宝物庫よ!」
「ふむ? そうすると、もしかして町で噂になっていた、フーケとかいう怪盗さんですかね……」
アバンがそんなふうに呟いたあたりで、巨大ゴーレムがまた動き出した。
全員が身構えるが、襲ってくるような様子はない。
壁から手を放してくるりと振り向き、ずしんずしんと地響きを立てて歩き去っていく。
その肩には、黒いローブを着込んだメイジが乗っていた。
「逃げるわ! 追いかけなきゃ!」
ルイズがそう叫ぶが、ギーシュは首を横に振る。
「それは無理だよ。あんな大きなゴーレムが相手じゃ追いつくのも難しいし、第一勝ち目がない」
「でも。シルフィードで追いかけて、みんなで何とか……」
「危険なことをさせる気はない」
「そうね、盗賊を捕まえるのはあたしたちの仕事じゃないし。先生か誰かに報告を回して」
少年少女らがそうして論じ合っている間にも、ゴーレムはどんどん離れていく。
このままでは、じきに学院の城壁をまたぎ越えてしまうことだろう。
「……そうですね。盗賊は、いけないことには違いない」
アバンは少し考えて、頷いた。
人間を殺して回ったり町ごと焼き払ったりするようなモンスターだの魔族だのと戦ってきたアバンにとっては、盗賊くらいは正直言って感覚的にあまり大した犯罪には思えなかったりもする。
もちろん、アバン自身は盗みなどはたらかないが、マトリフあたりなら時と場合によっては割と平気でやりそうな気もするし。
とはいえ、犯罪は犯罪。
こうして目の前に犯人がいるのなら、捕まえるに越したことはあるまい。
「では、皆さんはここにいてください。私がなんとか捕まえられるよう、努力してみましょう」
「なんとか、って……」
剣で、だろうか。
いくらなんでもあんな大きいのを、どうやって。
ルイズがそう疑問を呈する前に、アバンはものすごい速さで駆け出した。
「あ、アバン!?」
巨大なゴーレムに駆け寄りながら、この間買ったデルフリンガーを抜く。
相手は明らかに高位の『土』メイジのようだし、念のため固定化のかかっていない武器を抜くのは避けておいたほうがいいと判断したのだ。
「おっ? 相棒、あのゴーレムと戦う気か?」
「向こうに戦う気があるかどうかは、わかりませんがね」
言いながら、今にも学院の城壁を越えようかとしているゴーレムの足元に迫っていく。
ゴーレムの側では、アバンの存在など気に留めた様子もない。
そもそも気付いていないか、気付いていたとしても何の脅威にもならないと考えて無視しているのだろう。
(跳び上がって頭から両断するには、少々体高が高すぎるか……ならば!)
アバンは駆け寄りながら、剣を大上段に構えた。
「大地斬!」
ゴーレムの右の足首のあたりを力の剣で斬り付け、両断する。
足首を砕き斬られたゴーレムが、ぐらりと体勢を崩した。
「なっ!?」
肩に乗っていたフーケがよろける。
何が起こったのか、にわかにはわからなかった。
慌てて視線を巡らせて、眼下のアバンに気が付く。
彼女は、それが誰だか知っていた。
(アバン? まさか、あいつが……)
あいつがあの剣で、ゴーレムの足を斬ったのか?
剣身より、足首の方が太いはずだ。
いくら土製だからって、そんなことができるものなのか。
ゴーレムは膝をつき、かろうじて転倒を免れる。
「……よし」
体が前傾して、頭部がいい位置に来た。
アバンは軽く助走をつけて跳躍し、ゴーレムの頭上に跳びあがる。
そのまま、頭頂から一気に斬り下さんと、大上段に剣を振りかぶった。
フーケは目を見張る。
(き、斬られる!?)
実際にアバンが狙っているのはゴーレムの方だが、フーケからすれば術者である自分が狙われていると思うのは無理もないだろう。
身の丈三十メイルもある巨大ゴーレムを一刀両断にしようとしてるだなんて、普通は思うまい。
「このっ!」
彼女は咄嗟に杖を振るった。
ゴーレムの体を構成する土の一部が固まって岩に変じ、肩のあたりからいくつもの散弾となって、アバンに襲い掛かる。
「くっ……」
無視するわけにもいかず、アバンは迎撃に切り替え、剣を立て続けに振るってそれらの散弾を斬り落とした。
ゴーレムを斬り付けることまではできず、そのまま着地する。
(あいつ、今のを全部、あの剣で防いだってのか?)
フーケは驚きながらもゴーレムに指示を出し、追撃をかけさせた。
膝をついたままの体勢から左腕を振るい、アバンを弾き飛ばそうとする。
「大地斬!」
彼は剣を大きく横薙ぎに振るい、その腕を斬り落として防いだ。
「なっ……!?」
フーケは愕然とする。
しかし、アバンの側でも、なかなか思うにまかせないと感じていた。
腕を斬ったはいいものの、先ほど切った右の足首は地面の土を吸収してもう再生しており、ゴーレムは再び立ち上がる。
「やっぱすげえな、相棒はよ!」
デルフリンガーがそんな感想を漏らした。
「しかし、向こうもなかなかの手練だな。ゴーレムだけならともかく、あのメイジが邪魔をしてきやがる。メイジの側を先に倒そうとしても、今度はゴーレムが横槍を入れてくるだろうしな……」
「……戦い方を変えてみますか」
アバンはそう呟いて、一旦デルフリンガーを鞘に収めた。
「……くそっ! あいつ、なんてバカ力なやつなんだい!」
フーケは自慢の巨大ゴーレムの腕を斬られ、肩の上で毒づいた。
あんな剣士、見たこともない。
この間の決闘もどきで学生の作った金属ゴーレムを投げ飛ばしたとか、叩き壊したとか、噂には聞いていたが、どうせ尾ひれがついているのだろうと思っていた。
まさか、ここまでとは。
(どうする……?)
このまま逃げようとしても、しつこく追ってくるかもしれない。
なら、先に倒して安全を確保してからにするか?
しかし、そんなことをしている間に他のメイジどもが集まってきたら、なおさら厄介なことに……。
そんなふうに思案を巡らせていたところに、声が聞こえた。
「――あいつを倒したいなら、あたしが協力してやろうか?」
「っ!?」
フーケはぎくりとして、その声の方を振り向いた。
誰もいない。
先ほど盗み出した『破壊の杖』があるきりだ。
「何をきょろきょろしてるんだ? あたしを探してるのなら、目の前にいるだろ?」
「……まさか」
「そうだよ。さっきから、あんたが持ってるやつさ」
声は、その杖から発されていた。
「……インテリジェンスウェポンだったとはね」
「知性のある武器ってことかい? ……ふふっ。まあ、その認識で間違っちゃいないと思うよ」
杖は手の中で、笑うようにかたかたと震えた。
「それよりも、あいつを倒すんだろ。あたしに魔法力を流し込んでくれ。長い間、よりし……持ち主がいなかったもんでね。燃料切れなのさ」
「おい相棒、なんで俺をしまうんだ? まだあいつを倒してねえぞ?」
「この技は、居合の形で放つ方がやりやすいもので」
アバンはデルフリンガーにそう答えると、すっと腰を落として意識を集中する。
鞘が、その中の刀身が、輝き始めた。
「! うっ、うぉぉお!? なんだ! なにか、強烈な力が流れ込んできやがる……!?」
「『闘気』というものですよ」
その時、ゴーレムの肩に乗っている黒ローブのメイジが、左手に持った長杖をこちらに向けてきた。
先端からバチバチとスパークする、輝く球体が放たれる。
「……っ」
アバンは、はっと目を見開いた。
咄嗟に背後に飛び退いて、攻撃をかわす。
その球体は地面に命中すると、小規模な爆発を起こした。
小規模と言っても、密集した集団の中に投げ込めば数人まとめて吹き飛ばせるくらいの範囲と威力はある。
(バカな。これは……
驚くアバンに、立て続けに二発、三発と、同じ呪文が飛んできた。
彼は右へ左へ跳躍を繰り返して、攻撃を避ける。
ゴーレムはその間に、城壁をまたぎ越した。
「はっ! すごいじゃないか。さすがに、『破壊の杖』だなんていうだけのことはあるね!」
フーケは逃げ惑うアバンを見下ろしながら、上機嫌でそう言った。
一方で、それを聞いた杖の方は、やや不服そうにする。
「あんたらはそう呼んでるみたいだけど、あたしはそんな名前じゃない」
「おや、そうなのかい? じゃあ、なんて名なのさ?」
「オルカ。『魔杖のオルカ』だよ」
しかし、アバンの側も避けながら、闘気の充填を終えていた。
一時の驚きからも、既に立ち直っている。
「……どうやら。捕らえた後でいろいろと、聞きださなくてはならないことができたようだ」
そう独り言ちると、何度目かのイオを避けた直後に、剣を鞘から抜き放った。
「空裂斬!」
「おぉおおっ!?」
驚きの声を上げるデルフリンガーの刀身から、収束した闘気の光線が放たれる。
光線はゴーレムの胸部に命中し、土の壁に穴を穿って、狙い過たず巨体を動かす魔力の核を撃ち抜いた。
空裂斬は物理的な破壊力を本分とする技ではないが、それでも、それなりの厚みがある岩板を貫ける程度の威力はある。
土でできたゴーレムの胸板を撃ち抜くぐらい、わけはないのだ。
核を撃ち抜かれたゴーレムはその場に膝を落とし、次いでがらがらと崩壊し始めた。
「な、なにが!?」
先ほどまで浮かれていたフーケは事態を把握できずに狼狽える。
オルカと名乗った杖は、ぽつりと呟く。
「……剣から、闘気を放った? あいつ……」
杖の先端についたシャチの目が、きらりと光った。
「おぉおっ、すげえ! あんな馬鹿でけえゴーレムが、一発で崩れていくぜ!」
「全身に魔力を伝達する、核になっている部分を撃ち抜きましたからね」
アバンはそう言うと、崩れ落ちたゴーレムの残骸の中にいるであろうフーケを確保すべく、城壁を跳び越えようとする。
しかし、その時、背後から声がした。
「アバンっ!」
背後に残してきたルイズらが、駆け付けてきたようだ。
「……っ、いけません! まだ、こちらに来ては!」
振り返ってそう言った途端に、ゴーレムの残骸の上空あたりに、たくさんの輝く球体が浮かび上がった。
(! あれほどの数のイオを!)
イオが雨あられのように、アバンに、そして背後から来たルイズらに襲い掛かる。
「くっ……!」
アバンは自分に向かってきたイオの連発を、すべて切り払って防いだ。
しかし、すぐにフーケを追いに行くわけにはいかない。
背後にいるルイズらを、守らなくては。
「……!」
「とんだ歓迎だわ!」
タバサとキュルケは、正体不明の魔法攻撃にもさほど動じた様子はなかった。
それぞれ氷の矢と炎弾を立て続けに放ち、自分たちに向かってきたイオの光球を迎撃する。
「う、うわわわっ!」
ギーシュは慌てふためきながらも、咄嗟に数体のワルキューレを出し、盾にした。
青銅製のゴーレムは次々に飛来したイオを受けて爆散する。
「ひぃっ!?」
最後の一発をどうにか防いだ、と思った瞬間、爆発で吹っ飛んだワルキューレの胴体部が、自分に向けて飛んでくる。
ギーシュは思わず目を瞑った。
「海波斬っ!」
アバンが放った斬撃が、間一髪でその残骸を斬り裂き、明後日の方向に吹き飛ばす。
「……た、助かった?」
ギーシュはへなへなとへたり込んだ。
「め、
ルイズは覚えたばかりの呪文で、イオを迎撃しようとした。
一発が高熱の火球と正面から衝突して空中で爆裂し、傍にあった残る二発も誘爆する。
迎撃には成功した。
しかし、複数のイオが同時炸裂したことによって生じた衝撃が、近くにいたルイズの華奢な体を吹き飛ばす。
「きゃあぁあっ!?」
地面に叩きつけられるかと思った瞬間、風のように走り込んできたアバンが、彼女の体を抱き止めた。
「! あ、アバン……」
「大丈夫ですか?」
「う、うん」
ルイズはいつになく素直に、こくりと頷いた。
その頬が少し赤くなっていたのは恥ずかしさのためか、あるいは。
「皆はここを動かないでください。何かあったら、自分の身を守ることを最優先に!」
アバンはルイズをそっと下ろし、全員にそう言い置くと、急いで城壁を跳び越してゴーレムの残骸があるあたりを捜索した。
だがフーケは、既に盗み出した『破壊の杖』と共に、その姿を消していた。
足跡などの手がかりも残っておらず、どの方角に向かったのかもわからない以上、追う術はなかった……。