公僕辞めた(辞めさせられた)奴の話 作:見切り発車マン
色々捏造祭り開催!
今月を持ってSRT特殊学園は閉鎖、所属生徒はヴァルキューレへの転校を命じる。
「…マジ?」
突然伝えられた、寝耳に水な言葉に思わず素で聞き返してしまった。
「連邦生徒会は我々を見捨てるつもりか」
淡々と、怒りを抑えた口調の同学の戦友達。
「こんな事、許して良いんですか!?」
一年も喧々諤々と騒ぎ立てる。
いつもなら制止に回る上級生達も今回ばかりは呆然としていた。
それだけ大事だった。
SRT特殊学園の閉鎖が決定した、という布告は。
私達の母校が無くなると言う事で。
今までの努力も、共に窮地を乗り越えた戦友達とも離れ離れになると言う訳で。
其々の胸中は慮る事も出来ない程に色んな感情が渦巻いていることだろう。
「…相馬。どうする」
生徒会長とも親しかったお前ならなんとか出来ないか?と問われるが…
「会長が居ないんじゃ無理だと思うけど…」
SRT特殊学園はその成り立ちからほかの学校とは気風が異なる。
普通なら生徒会があり、生徒会長が全権を握るのが常だがSRTに於いてはそれを連邦生徒会が代行しているのだ。
在籍している生徒は全員が戦闘要員…後方支援要員もいるが…のため意思決定は全て連邦生徒会が行うという文民統制を敷いている。
最初期組の一人である私は会長の一存で入学が決定した生徒であり、その縁も有ってか少しだけ会長と親しかった。
まぁあの人がそう言う所で贔屓してくれたことは無いが。
SRTに於いて唯一、単身での作戦行動も許されているとは言え立場としては他の生徒達と何も変わらない。
その運用上作戦での自由はある程度許されているが、あくまで現場でのみ有効なそれは政治的な要素が一ミリも含まれていない。
文民統制を徹底した結果だから当たり前の事ではあるが。
「でもま、ちょっとお話聞きに行ってみようか」
このままじゃ皆納得出来ないでしょ?と全員を見渡して続けた言葉に同意の声が多数上がった。
「…会長不在の今、話が通じるかは五分五分だからね?」
一番話の通じる…というか私達を盛大に振り回してた張本人が居ない今、SRTに対する責任の所在が宙に浮いている。
…多分、その辺が問題になってるんだろうし。
そうでなければ私達を捜索隊に含めない理由が無いし、そもそもこの馬鹿騒ぎに出動が掛かってない訳が無い。
五分五分とは言ったが実際には一割も無いだろうなぁ…と内心で呟きながら見渡すと、それでも声を上げるべきだと決意を固めた子達と目が合った。
「オーケー。じゃ、行ってくるよ」
やるだけやってみるけどあんま期待しないでよー。と後ろ手に手を振って歩き出す。
…それにしても、連邦生徒会は何を考えているんだろう?
自分達の好きに動かせる実働部隊を手放すって事が何を意味しているか本当に分かっているのだろうか?
「キヴォトスが火の海になるぞ…」
連邦生徒会による抑止が無くなれば。
押さえつけられていた鬱憤は容易く爆発して連鎖するだろう。
まぁ、それでも…
「生徒会長様の考えは判らんからなぁ」
引き継ぎも無く消えた連邦生徒会長を思う。
何をするにしても常に一歩どころか十歩先を見据えていたあの人の事だ。
あの超人が考えぬいた結果なら誰にも言わずに姿をくらました事にも何かしらの意味があるんだろう。
…そう思うだけで納得できるかは別の話だが。
「SRT特殊学園所属、相馬リョウ、入ります」
ノックもそこそこに連邦生徒会の執務室へ入る。
入口でワタワタと止めに入った受付の子達には悪いが、今はそれどころではないのだ。
「…相馬さん」
いつもなら生徒会長が座っているはずの席は空席で。
臨時代行の七神リンが切羽詰まった様相で書類を捌いている所だった。
その他の官僚も自身の机に向かって何かしらの書類と格闘している。
生徒会長が失踪して既に数ヶ月。
捜索の手を伸ばしているものの手掛かりすらないと聞く。
「七神代行。会長はまだ?」
「現在、捜索中です」
この数ヶ月、何の進展もないまま。
私達を使うでもなく、閉鎖を決定したって言うのか。
せめて捜索の足しにするくらいはしろよ…と呆れと怒りが湧いてくる。
…落ち着け、私。今はそんな事を考えている場合ではない。
「…では、貴女で良い。SRT特殊学園の閉鎖についてお聞きしたい」
本気で閉鎖するつもりなのか?と睨みつける。
「…えぇ。会議で決定した事です」
「会長の指示もなく?」
連邦生徒会の決定ならばあの女なら困ったように笑いながら許してしまいそうだが。
それでも連邦生徒会の刃を自ら捨てる等正気とは思えない。
「これ以上の維持は現実的ではないからよ」
財務室の…扇喜アオイが横から口を挟む。
「年間どれだけの維持費が掛かっているか知らないとは言わせないわ」
…確かにSRT特殊学園はその性質上とても金が掛かる。
最新の装備を身に纏ってアドバンテージを稼ぎ、個人プレーではなく連携を重視するから訓練するのにも時間が必要でその訓練にも金が掛かっている。
「だとしても閉鎖は早急に過ぎます」
予算の削減でどうとでもなる話ではないか、と反論するも
「最新鋭の装備無しで同じ効果を齎せられると?」
「それは流石に無理ですが…貧乏になったならそれなりに工夫はしますよ」
大鉈としては振るえなくなるだろうが…他学園を掣肘する刃は残せる。
ただでさえ暴徒と化したヘルメット団やら不良生徒共が暴れ回っているんだ。今私達が消えたら火に油を注ぐ様なものだぞ?
「私達は実質的な連邦生徒会の暴力装置です」
ヴァルキューレの子達にそれを要求するおつもりか?と睨みつける。
別にヴァルキューレを下に見ているという訳じゃない。
事後に火消しとして全てを平らに均す私達と、未然に防ぐ事で平穏な日常を維持する為の彼女達。
単純に役割が違うのだ。
「だからヴァルキューレに統合すると言う話です」
百戦錬磨の貴女達が加われば問題は無い。と続ける。
「装備が無くともやりようがあると言うのならそれで良いでしょう?」
「それでは軋轢を生むだけです」
今まで全く別の仕事をして来た連中を纏め上げて上手くやれ?
トリニティの二の舞になるのが目に見えているだろうが。
SRT派閥とヴァルキューレ派閥で喧嘩しながら仕事をしろと言うのかこいつらは。
「SRTの看板そのものに意味があるでしょう?」
余りにもヤバい状況になれば連邦生徒会が手を出してくる。
その切っ先としてSRTの名は世間一般では強者の代名詞だ。
存在するだけである程度の抑止力になっている…今となっては"なっていた"、だが。
「その看板の維持が出来ないと言う話でしょうに…」
予算を減らしたら今までの様には行かないと言ったではありませんか?と続けるアオイ財務室長。
「例えそれが張り子の虎でも使い様ですよ」
連携を良しとするSRTの戦い方ではないから気は進まないが…最悪、私が一人で暴れ回ればそれなりに威を示せる。
もしくはリソースを一点に集中させれば一部隊か二部隊は十全に作戦行動を執れるだろう。
ローテーションで出撃すれば今の馬鹿騒ぎを完全に鎮火するまでは行かなくとも下火程度までは抑え込める。
「SRTにはそれだけの価値が有ります」
学校さえ残るのならば装備など旧式に落ちても構わない。
多少不満は出るだろうが学園存続と比べれば大したことではないと全員が納得する。させてみせる。
「再考を。まだSRTには使い道がありますよ」
そもそも閉鎖するにしてももっと時間をかけるべき案件だ。
たった一ヶ月で覚悟を決められる奴がどれだけ居ると思ってるのか…二年生以降の連中はまだ良い。
春に入って来たばかりの一年生にはキツすぎる。
設立されてから間もない学校に、狭い門を乗り越えて入ったばかりのアイツらには。
最初の篩を乗り越えてさぁこれからだ!と言う時に足元を崩された様なものだ。
「…すみません」
やはり、無理です。と告げられた。
「生徒会長が不在の今、貴女達を十全に振るえる責任者が居ません」
これは権限の問題です。と苦々しい顔で続けるアオイ財務室長。
「だれもその責任を取れる立場に居ない」
もしもの時に誰が責任を取ると言うのか?と言いたいわけだ。
バカバカしい話だ…いざという時に責任を取れないから弱小学区には滅んでもらうとでも言うつもりなのかこいつらは。
…荒れ狂う内心を押さえ込み、口から出かけた罵倒を飲み込んで
「……ならばさっさと次の生徒会長を決めてしまえばよろしい」
超人が居なくなってからはや数ヶ月。
インフラすらグダグダになっている今、超人に拘泥する意味も余裕も無い。
「新たな生徒会長の元であの人を探せば良いでしょう?」
ぶっちゃけあの人が危険な目にあっている状況は想像出来ないけれど。そんな事になっていた場合、手助け出来るかも怪しいが。
「そのついででも良い。私達で各地の火種を消して回ります」
兎に角さっさと動いてこの馬鹿騒ぎを収めなければ、連邦生徒会の権威は失墜する。
「前生徒会長にこだわってキヴォトスが崩壊するのを座視するおつもりか?」
居ない奴に何時まで縋るつもりだ?…なんて口には出せないが。
必要なのは今、この場で指揮を執れる責任者だ。
「私達は誰が生徒会長になろうと従うのに否はありませんよ」
私達はそう言う風に作られた学園だ。
連邦生徒会の剣として。
断じてあの人個人の私兵ではない。
「それは…出来ません」
それでも頑なに首を横に振る七神リン。
…もう何を言ってもダメか、と連邦生徒会への期待が薄れていく。
最後の確認として問いを投げかける。
「…D.U.の有様を見ていない訳じゃあないよな?」
取り繕っていた敬語が外れた事にも気付かずに続ける。
ここに来るまでにも何度か襲撃を受けた。
都市部でだ。それも連邦生徒会のお膝元で。
それが何を意味するのか分かってないのか?
「治安の崩壊は既に始まっている。もたついている時間はもう無い」
連中は私達が出張ってこないと確信し始めている。
舐められてるんだよ、連邦生徒会が。
仮にもキヴォトスを運営する元締めであるお前達が。
その辺の不良生徒に取るに足らずと。
「既に強制的な介入と火消しが必要な段階に来ていると、赤子でも分かるだろうが」
ここでその有様では周辺学区でどれだけの暴動が起きているのか…この騒動が自然に落ち着くのを待っていてはいくつ学区が潰れるか分かったものではない。
「このまま放置し続けたら潰れた学区が新たな暴徒を生みだすぞ」
それで連邦生徒会を襲うならまだ良い。それならただの自業自得だ。
でも実際に狙われるのは違う。
キヴォトスに住む者ならインフラを管理している連邦生徒会を機能停止させては自分達の生活水準が大きく落ち込むのは重々承知している。
恐らくは他の学区を襲って取り戻そうとするだろう…自分たちがやられた様に。
暴徒に飲み込まれた学区はまた別の学区を襲う。
そんな悪循環に対抗できるだけの力を持った学区のみが生き残り、キヴォトスの覇権を掛けた闘争の時代に入りかねない。
「強い学区以外の全てを見捨てるつもりか?」
「それでも…」
あの人が帰る場所を守らなければ…と目を逸らしながら続ける姿を見て
「…そうか。それがお前の、お前達の総意ならば仕方がない」
もう何を言っても無駄だと理解した。
七神リンは頑なに超人の影を追い続けるだろう。
いつ戻ってくるかも判らない女を健気に待つ。
それは友人としてなら素晴らしいが…為政者としては落第だ。
「私は降りる。もう付き合ってられん」
私は沈みゆく泥舟に乗り続ける趣味は無い。
目を見開いて私を見る官僚共に笑いながら別に構わないだろう?と問いかける。
「私はSRTだったから此処に居た。…それを残すつもりがないのなら此処に残る意味は無い」
胸元に着けていたSRTの証を外して机に置く。
どうなっても知ったことか。
皆には悪いが…この腑抜け共に期待するのは不毛に過ぎる。
「失礼する」
最期に一礼して扉を出る。
背後から掛けられる声を無視して見慣れた廊下を歩く。
もう二度と目にすることはないだろう。
「…あら、相馬さん。お久しぶりですね?」
エレベーターを待っていると後ろから声をかけられた。
振り返ると桃色の髪と特徴的な目を持った女…不知火カヤ防衛室長が立っていた。
「あぁ…久しぶり」
手に持った書類を見るに何らかの決裁を受けに行く最中なんだろう。
前会長の元で動く手足の中で唯一、超人を越えようと研鑽していた不知火防衛室長とはそれなりに話す仲である。
思えば会長を除けば一番話していた気がする。
いつもなら世間話の一つでもするんだが…今はそういう気分じゃない。
少しの沈黙の後、疲れた顔をしたまま私に頭を下げてくる。
「…SRTの件は、すみませんでした」
突然ではあるもののコイツが知らない訳もない。
SRTの権限は生徒会長に帰属するが、その運用体制については不知火室長も一枚噛んでいるのだから。
「アンタが謝ることじゃないでしょうよ」
防衛室と言いながらもほぼ治安維持活動の全てを担う現場主義者。
ヴァルキューレを指揮下において辣腕を振るう姿は私の記憶に新しい。
今の連邦生徒会の中で唯一信じても良いと思える人物だ。
「それでもです。私は貴女達を高く買っていますから」
その重要性も。
「それだけに残念です…ヴァルキューレにいらっしゃる予定は?」
「何人かは行くだろうね…私はパスだけど」
急に集められて、急に解散させられる。
連邦生徒会に振り回されて尚治安維持に携わろうとする連中は残念ながら少数だろう。
その中でもやる気を維持できるのは一握りだと思うが。
「そっちに行った子達は頼めるか?」
「勿論…と言いたい所ですが、難しいでしょうね…」
連中は私に力を持たせるのが相当不安な様で。
「ヴァルキューレ内に即応部隊…SRTの生徒で構成された特殊チームを構成する案は却下されました」
全体的な底上げを行うため、とか言う日和見な意見が通ったんですよ。
吐き捨てるように呟く。
「誰もが現状維持に回っている。それが許される段階は既に越えたというのに」
既に治安崩壊が始まっている現状、一度強制的にリセットしなければならない。
「その為の力を手放すのは余りにも…」
そこまで口にして押し黙った。
目の前にその張本人が居るからだろう。
そう言う所で気が回ってしまうから貧乏クジを引きやすいんだろうなぁ…と苦笑してしまう。
正直、今の防衛室は針の筵だ。
治安維持を目的としたヴァルキューレを擁しながらその職責を果たせていないと槍玉に挙げられているのはニュースを見ればすぐに分かる。
「あー…ご愁傷さま?」
不知火室長も大変だなぁ…と思っていると
「…貴女が来てくれれば大分マシになるんですが?」
私のポケットマネーで雇われません?と真剣な顔で聞いてくる室長に苦笑を深めながら答える。
単騎で戦力になって、適当に放り込んでも何とかしてくれる魔法の鍵みたいな扱いだったしね私。
暴力で押し通れる時に限るけど。
「悪いね、もう彼奴等に付き合うのは御免なんだ」
不知火室長が生徒会長の後釜なら考えなくもなかったけど。と続けるが
「私では務まりませんよ…今の体制で曲がりなりにも運営出来ているのは七神代行の手腕ありきですから」
超人に劣るとは言え、残されたピーキーすぎる生徒会をギリギリとは言え破綻無く回せているのは間違いない。
それだけに注力してようやく、と言う状態だから現状に対応出来ていないとも言えるが。
「いっその事クーデターでも起こしちゃえば?」
アンタが旗頭になるなら手伝っても良いよ?と冗談っぽく続けると
「今、連邦生徒会を改革なんてしたらそれこそ全てが終わります」
インフラの一部麻痺では済まなくなる。と額を抑える室長。
「だよねー…いっその事一緒に辞めちゃう?」
沈む泥舟にいつまでもしがみつく趣味はないでしょ?と問いかける。
「魅力的な提案ですがお断りしますね。まだ出来ることもありますし…なにより、こんな私でも信じて着いてきてくれている部下達を見捨てられませんので」
綺麗な笑顔で断られた。
「残念。振られちゃったかー」
ま、そう言う人だから信じられるんだけど。
「私はもう降りるけど。力不足で困ったら連絡してよ」
アンタのためなら気が向いたら手伝うのも吝かじゃないし。
そう言うと同時にエレベーターが到着した。
「…ではお言葉に甘えて」
開く扉を前に室長が冗談っぽく呟く。
「一度盛大に叩いて均して頂けますか?」
「ん。オッケー」
やれるだけやってみるよ。と軽く答えたタイミングで扉が閉まった。
最後に見えた少し間の抜けた驚き顔に笑いながら。
ま、出来るだけはやってみようじゃないか。
「……てな感じ」
学園に戻って皆に話した所失望の声が多数、怒りの声が少数出た。
「…最早これまで、ですか」
「そうなる…ごめんね」
布告通り一応ヴァルキューレに編入する口は設けてくれてるみたいだけど…と続けるも
「今更ヴァルキューレになれって言われても…」
まぁ道理ではある。
同じ治安維持とはいえ役割が違いすぎて困惑するよな。
…数人はそれでも構わないか、と話しているのが聞こえるが。
「貴女はどうするので?」
同じ部隊に居た相棒から軽い口調で問われる。
思うところはあるだろうに、その心遣いが有難い。
「そうだなぁ…適当にバイトでも始めてみるかな?」
今まで任務やら訓練やらでやった事ないし。と呟くと
「先輩はそれで良いんですか!?」
一年の…RABBIT小隊か。その班員が噛みついてきた。
「SRTの誇りは無いんですか!?」
誇り、誇りか…
「無いわけがあるか」
ボソリと呟くと辺りがシン…と静かになった。
それに気づかず口を開く。
「二年と少し。一般学生が青春を送る時間のほぼ全てを捧げた」
淡々と。
「どれだけ辛かろうが、私が、私達が負けるわけにはいかない」
私達が、連邦生徒会の最後の盾にして矛だと。
「そう思っていた…当たり前の事だ」
私が、私達が行けば解決するだろう混乱が目の前にあるのだ。
少なくともD.U.で好き放題暴れてるマヌケ共は容易に鎮圧出来る。
それでもSRTとして動く訳には行かないんだよ。
「ならば…!」
「それで動いてしまえば暴徒と変わらん」
興奮する一年生達に冷水を浴びせる相棒。
言い方はキツいけどその通りなんだよね…
文民統制を徹底していたからこそ、SRTの存在は恐怖ではなく希望として見られていた。
武器が自らの意思を持って動いたらそりゃ怖いわな、と。
「…ま、そう言う訳だよ」
耳にタコが出来るほど言われた言葉を後輩に伝える。
「私達は連邦生徒会が引鉄を引いた時にだけ放たれる弾丸で、狙った得物だけを仕留める優秀な道具であるべきなんだ」
だからその主が使わないと決めたのなら終わりなんだよ、と続けると
「私は…私は!納得出来ません!」
そう言い残して走り去ってしまった。
必死に勉強して、訓練して。
ようやく突破した狭き門の先で夢の続きを見れると期待した矢先の事だ。
私は二年と少し、SRTをやれたから一年達の気持ちが真に理解できることはない。
それでも慮る事は出来る。
「やるせねぇわな…」
何にせよ全てがご破算になるのは時間の問題だ。
連邦生徒会にはかつての力は無い。
実行部隊の私達を散り散りにし、牙を引き抜くというのだから他学区への牽制も不可能になった。
群雄割拠の蚊帳の外でただインフラを整備するだけの機構と化すだろうよ。
もし会長が戻ってきたとして、この有様を見てあの超人が何て言うのか見物ではあるが。
「…で?本当は何をするつもり?」
そんな事を考えているともっとも付き合いの長い相棒から問われる。
やっぱりバレてるよなぁ…と苦笑して
「まぁ、もうSRTじゃないし?」
個人としてなら自分の意思で力を振るっても誰にも咎められんだろ、と笑う。
口には出さないが不知火室長にも頼まれちゃったし。
「ちょっと暴れてくる。…あぁ、何か言われたら"相馬はもうSRTでは有りません"って言っといて」
これ、制服…まぁ上着だけだが…と身分証明、あと銃器。
二年と少しを共に駆け抜けた小銃を机の上に置く。
「…拳銃は貰ってっても良いかな?」
自費でカスタムしまくった結果、殆ど元のパーツ残ってないし。と呟いてホルスターに収まったままの相棒を軽く叩く。
「お好きにどうぞ…今更誰も咎めやしませんよ」
最後まで仏頂面を崩さない戦友に苦笑を返して。
今までありがとねー、と軽く手を振って窓から飛び降りる。
着地の際に関節を順番に折り畳み、衝撃を逃がす。
手慣れた動作で殺した衝撃を前方への推進力に変えて飛び出した。
「どっかで会ったら飯でも食おうなー!」
慣れ親しんだ校舎を後に走り出す。
此処で過ごした二年間の思い出を振り切りながら。
さて…取り敢えず片っ端から制圧、束縛して転がしていくか…!
その日、キヴォトスに暴力の嵐が吹き荒れた。
壊滅したヘルメット団は十を越え、負傷者は三桁を超える大惨事。
一般市民には一切手を出さなかったものの、暴動に加担していたと見られる生徒たちには容赦のない暴虐が加えられた。
その全てが後ろ手に拘束あるいは両手の骨が圧し折れた状態でヴァルキューレや各学園の風紀委員会に確保されるも、暫くの間は安静にしていなければならない程の大怪我である。
ようやく話を聞ける状態になった者達から事情聴取を行った結果。
「覆面を着けたチビにやられた」
全員がそう証言したことから事情を知る少数の者以外は新たな脅威の出現にしばらくの間頭を悩ませる事になる。
ハイパー見切り発車、レッツゴー!