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「申し訳ないが地上人の御方。お名前と職をお教え願えるだろうか?」
「ゼット・ライトだ。コンピューターを開発している技師だ」
転生と言うべきなのか憑依と言うべきなのか、あるいは死んだ時に魂が入り混じってしまったのだろうか? この奇妙な状態自体に違和感があるが、もっと強烈な違和感を覚えていた。
(ゼット……ダンバインに登場するキャラだったか? アニメの世界に転生……そんな事があり得るのか? それともアニメを元にしたゲームの中なのか? くそっ、分からねえ)
聖戦士ダンバインというアニメは好きで、特殊性もあり色々と覚えていた。
ゼット・ライトという男は重要人物の一人ではあるが、この世界のロボットであるオーラバトラー開発にしても操縦にしても、一通りできるのだが器用貧乏さからパっとしない男だ。どうせ転生するなら主人公のショウ・ザマとは言わないが、もっと凄い奴に転生したかった。ゲーム転生だとしても色んな主人公が居るはずだ。どうしてゼットなのだろうと頭を抱えたくなった。
「ゼット殿? その、大丈夫なのか? 顔色があまりよろしくないが」
「おっと、すまねえな。いきなりこんな所へやって来て何が何やらでな」
「オーラロードを通られたばかりです。今日のところはお休みください」
いかにも中世の城といった風情の建物へ案内されていく。
周囲に重臣の屋敷がある中で城に通されるという事は、それなりに重要視されVIP待遇なのだろうとは判る。だが、案内人との会話や周囲の光景に対して違和感はどんどん大きくなっていった。
(この光景と台詞、覚えがあるぞ……。原作でも近い光景はあったが、こりゃあVRゲームのダンバインじゃねえのか? 随分とやり込んだもんだがなあ……まさか本当にゲームの世界へ転生したのか? アニメだけだと台詞と一致する筈ねぇもんな)
デ・ジャ・ヴというにはあまりにも記憶と一致している。
ス-パーロボット好きならスパロボは必ず買うし、ギレンの野望の為にセガサターンを買った奴も多いだろう。俺は中でもダンバインが好きで、プラモは発売予定だった未発売のバストールを探したくらいだし、シミュレーションゲームのプレイステーションは当然のことながら、高額なVRゲームもその為だけに買ったようなものだった。だからこそこの光景はよく覚えていると言えた。ここで重要なのは、アニメには登場しない台詞や光景が見受けられる事だろうか。
(もしあのゲームと同じなら確か……老化したジャコバに『転生の為の試練』を与えられるんだったか……)
ゲームと同じとは限らないが可能な限り思い出そうとしてみた。
フェラリオの長であるジャコバ・アオンはオーラ・マシン排除の強行で力を失って死ぬのだが、その最後の力で色々な事を行っていたというのがゲーム内の設定だ。原作主人公のショウはフェラリオに協力したので、約束された優しい未来へ旅立つために心残りを解消する手段として、罪人であるゼットは罪を償うために試練を課されるのだ。ちなみに元凶であるショット・ウェポンが死ぬことも転生することも出来ない罰を与えられたのに対して、ゼットは無限に『同じ時』をやり直すという刑であるという。
(そう言えば婆さんに何かを言われた気がするな。あれがフェラリオなら老婆なんて居ないと思うから、死ぬ直前のジャコバなのか。そういえば俺はショウ・ザマじゃねえって口にしちまった覚えがあるなあ)
VR版ダンバインでは周回ごとに選べるキャラが解放されていく。
老婆の質問に答えるたびに、キャラが選択されたり、ボーナスとして強化される能力が変わっていくという形式だった。知っている者にはガンパレードマーチを元に、ナムコの三国志やラングリッサーの開始時点の質問を足したのが近いというべきだろう。最初はチュートリアルのショウ・ザマ、二周目からは『お前はショウ・ザマか?』と問われて、『そうだ』と答えたら強くてニューゲームのショウ。『違う!』と答えたら小隊長プレイのバーンか技師スタートのゼット。『誰だそれ?』と無関係を貫いたら、プレイステーション版の主人公のシュンジ・イザワで国王スタートという風に変わっていくのだ(VR版オリジナル主人公もこちらからの派生)。
(確かゼットに与えられた試練はこの世界の混乱を鎮める事だっけ。面倒くせえとは思うが……『無限周回の刑』なんて味わいたくねえからなあ。仕方ねえなんとかするか)
この世界であるバイストン・ウェルは混乱の極致に陥ることになる。
それは半ばジャコバ・アオンの失敗であった。元凶であるドレイク・ルフトやショット・ウェポン達と共にオーラマシンこそ排除したものの、バイストン・ウェルの大戦乱自体は直ぐには収まらなかったし、作れる技術者などは一部が残ってしまった。また物語の終了時にシーラ姫の浄化=帰還によって、大量の魂が流れ込んだのもあるだろう。これらを何とかするためにゼットは無限の転生でやり直しをさせられているのだという。
(それにゼットとしての未練も果たしてえし、俺個人の目的も試してみてえよな。ゲームに近いだけのパラレルワールドで無関係って可能性もある。そん時に使命だけやってたんじゃ人生損ばかりだ)
良くも悪くも、ゲームの世界に入り込んだとは限らない。
ゲーム設定に忠実に行動した挙句、よく似たパラレル・ワールドだった場合には意味が無いだろう。仮にゲーム世界そっくりの世界であったとしても、行動でゲーム以上に変化するなど普通にあり得る。そして自分がそう思い込んでいるだけであった場合、無駄に人生を過ごすことになってしまう。飛行機事故に遭ったのに転生出来てありがたい……そのくらいのつもりで人生を楽しむ方が良いと思えた。
難しい設定のストーリーに「俺が熱中したあのゲームと同じ?」と
ゲーム設定を混ぜれば、主人公が強かったり先の展開を知っても不思議ではない。
ならご都合で動いても問題ないんじゃないかなーと思って書いてみました。
今回はプロローグとして一話、オマケで捏造ネタ紹介としてもう一話をUPしますね。
ちなみに「VRゲーム異世界転生ダンバイン」なんて存在しませんのでご注意ください。