気が付けばゼットだった件   作:ノイラーテム

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勝利下の敗戦報告

「ゼットさんよ。一号機をまた作ってくれ! ダンバインに勝ちたいんだ!」

 

「分かった分かった。作ってやるから、どんな武器で戦ったか。調子はどうだったかを教えてくれ」

 

 調整作業も波に乗り、残るは戦艦でっちあげる段階で来客があった。

 

何処かで聞いたセリフと共に聖戦士のトッド・ギネスが詰めかけて、オーラバトラーの都合をねだって来たのだ。とはいえここで一つの問題がある。

 

「うん? あんたが作ったんじゃないのか?」

 

「一号機は設置火器の試験用だったんだよ。何を積んでた? 役立ったか?」

 

「あ? ああ……ええと肩と腰に多連装ミサイルで、腕に左右で種類の違うバルカンと剣盾一式だ。馴染みのある武器だから助かったぜ」

 

 一号機は設置火器をテストするために、様々な武器を付けていた。

 

キブツ・キッスがトッドに射撃戦の経験を聞くために前線に移動した際、ついでに持ち込んだのだろう。話に聞く限りキブツはトッドに一号機を貸し出し、それなりに役に立ったらしい。

 

「はん? というと仕様はライネックに近い形か。四つの爪は?」

 

「ミサイルが無くなった後で使ったな。最初は有効だったんだが……」

 

「というと牽制攻撃としては使えたが、絡めてから切られた感じか?」

 

「いや。搦めて振り回すところまではいったんだが、途中で逆にこっちが振り回された。ダンバインの方が軽い筈なんだがな。バーンの奴は旧式だと罵ってたんだぜ」

 

 ゼットは肩からコンバーターに掛け、ミサイルポットを描いた。

 

その絵を見てトッドは頷き、両足に短剣がしまってあると聞いて驚いていた。この様子だと剣を探す前に損傷するか、ダンバインの方が帰還するかしたのだろうか。

 

「機体のオーラ限界差だな。車でいうとダンバインはリミッターが無いんだ」

 

「小さくて軽いから小回りが利いて、イザという時はパワーも出せるって?」

 

「とはいえ増幅器も無ければ武装も少ない。試作機の限界ってやつよ」

 

「なるほどねえ。っと、それで拘束したダンバインが抜け出ちまって、ガラリアが叩いていたゼラーナを落としそこなったんだ。ドラムロとバラウがあと数機組……せめてバラウだけでもあれば落せたんだぜ。それをバーンの奴、ケチりやがって」

 

 ひとまず、これで戦闘能力そのもののバランスは分かった。

 

全武装を動員すればダンバインを圧倒できるが、地力の勝負に持ちこまれたら負けるというバランスらしい。ビランビーベースの機体ではこれ以上難しいと言えるが、原作では『ミの国が落ちた段階』ではゼラーナを追い詰めて居ない筈だ。その辺りの詳細なんて覚えてはいないが、そこは機体と生産性を改良した分だけ成果が出ているという事なのだろう。

 

「戦いに関しちゃ分かった。後はどんな作戦を採ったか教えてくれ」

 

「ゼラーナを追撃するって話が出た時、ガラリアのバス・トールとドラムロの生き残りが二機、それにバラウが一機しか居なかった。そこにキブツのオッサンがやって来たんで、頭を下げて一号機とバラウを借りたんだ」

 

 ミの国を落して戦力再編する段階で作戦が決まったらしい。

 

バーンが事務仕事をやってるところでガラリアが口出しをした。そこで『ならば自分の力だけでやってみろ』とガラリア隊の生き残りと、彼女が面倒を見ており賛同者であるトッドだけの作戦を許可したらしい。バーンからしてみれば直ぐに再編できるのだシゼラーナは根無し草でしかない、数日後に追撃を掛ければ問題ないというものだろう。一方でガラリアからしてみれば、厄介なゼラーナが生き残っており、自分の部隊もトッド込みで無事ではある。追撃するのは当然であるという見解になるのは当然と言えた。

 

「どっちの言い分も分かるが、中途半端なのはいけねえなあ。んで?」

 

「とはいえ戦力は足りてないのは同じだし、バス・トールも一号機もバラウを載せたら重過ぎるからな。囮作戦として、最初は一号機とドラムロだけで正面から攻めることにした。ダンバインとダーナー・オーシーさえ引きつければ、後は何とかなるからな」

 

 ゼットが続きを尋ねると、トッドは駒になる適当な物を取った。

 

中くらいの物を隠れて移動するゼラーナに見立て、一号機とドラムロを示す二つの駒を正面に設置。一応は『新鋭機を含む一個小隊』としての様相を作って偽りの襲撃を掛けたらしい。

 

「ミサイルとフレイボムで牽制しながら回り込もうと見せて、特にダンバインを引き付ける。そのタイミングで本命のバス・トールがバラウを連れて襲撃を掛けたんだ。短距離ならバス・トールの足は早いし、対空砲座を攪乱するだけならバラウでも問題ないしな」

 

「なるほどねえ。お前さんの提案としてガラリアも随分と素直になったな」

 

「ここで随分と絞られたんだろ? 作戦を練るのに熱心だったんだぜ」

 

 本命は機動戦用のオーラバトラーとウイングキャリバー二機の襲撃。

 

これが決まった段階でゼラーナの運命は風前の灯であったと思われる。作戦としては間違いではないし、実際に上手くいったようだ。全力比的にダンバイン次第でひっくりかねないが、ゼラーナを叩いてダメージを与えるところまでは確約されていると見て問題はあるまい。

 

「問題は幾つかあるが、ダーナ・オーシーをドラムロ一機と引き替えに落としたところで、あっちのウイング・キャリバーがパイロットを拾いに行った。残りのドラムロはオレとの間に割って入って背中を守っててくれたんだが、ウイング・キャリバーはゼラーナを助けに行っちまった。その隙にドラムロが落され、オレはダンバインを損傷に追い込んで……と一周巡った感じだな」

 

「ドラムロからしてみれば難しい判断だったろうな……どこにも行き難い」

 

「オレが落ちてもひっくり返るしな。そこで爪を使って拘束したんだ」

 

「そして振り回されちまったと」

 

 絶妙なバランスの推移で迷った挙句、オーラ力の勝負に負けたようだ。

 

フォウに乗っていたのがニーなのかキーンか分からないが、マーベルを拾いに行った判断は間違っていない。そしてドラムロがトッドを守りながらダンバインを牽制しようとしたのも間違いではないだろう。一号機の火力と数で優位に立ったとはいえ、相手は聖戦士の操るダンバインである。かといってトッドが守りに入ってドラムロがゼラーナに向かったとしても、辿り着けない可能性もあれば、ダンバインが追い掛けて来る可能性もあったであろう。フォウが当初の予定通りにダンバインを援護し続けていれば、むしろドラムロ乗りもトッドもやり易かったはずだ。ここはフォウを操っていたパイロットと、ショウのオーラ力を褒めるべきところだろう。

 

「おおよそ分かった。確かにお前さんの言う通り敗因は数ってとこだな」

 

「それで撤退したんだが、悔しい事に一号機はバーンに奪われちまった」

 

「そこまで追い詰めたから完成してるって思われたのか。バーンも阿漕な」

 

「同じ状況なら勝てる筈だ! だからゼットさん、一号機をオレに頼む!」

 

 一機落しても二機落され、逃げられたら追撃作戦は失敗であろう。

 

ゼラーナを追い込んだことも含めて失点には成らないとしても、追撃作戦の手綱はバーンに移ったものと思われる。また騎士団長として再編成の権限は彼にあり、正式に与えられているガラリアのバス・トールは別にして、教導隊から借りている試験中の一号機は『もう完成したのだから納入しろ』と言われたら否定はできない。そこにゼットが居れば別だが、居たとしてもショットくらいだ。彼からすればレプラカーンの改良機である。前線で活躍させることに異存はないだろう。

 

「その辺は任せとけ。その上で確認があるとすれば、改良点は何かあるか? もちろんオーラ限界は無理だぞ」

 

「そうだな。特に不満はないが……あえて言うなら弾数か、一発の火力だな」

 

「あれだけミサイルが合ってもダメなのか?」

 

「所詮はロケランだからな。全部飛んじまう」

 

 ゼットはその要望を受け入れたが、そこからが難しい。

 

現状の一号機は既にミサイルの試験用として、オーラランチャーの改良型をこれでもかと持たせている。両肩と両腰に配備しており、これ以上の火力は難しいだろう。

 

「仕方ねえ。最初の一回だけでいいなら追加できなくもない」

 

「一斉射分ってことか? それでもないよりはマシだと思うぜ」

 

「決まりだな。立派なアーマード・ライネックを作ってやるよ」

 

 いくつか悩んだあげく、ゼットは改装案の一つを試すことにした。

 

こうして第三世代で名作機と呼ばれる機体の原型が、この段階でお目見えする事になるのであった。




 というわけでガラリアとトッドの追撃は失敗しました。
厳密には原作よりも成果を上げたけれど、途中で打ち切られた感じ。
バーンがその後任に就くことで、功績を奪われた代わりに失態も消えた感じですね。

『ビランビー試験型一号機』ライネック
 ビランビーをベースに火器の追加を前提にハードポイントを試験中。
両肩と両腰にミサイル試験用のポッドが設置され、右腕に大型バルカンで左腕には三連バルカン+シールド+剣。両足に投擲剣となっている。
(股間のキャノン・両腕のオーラショット・フレイボム・コンバーターの大型バルカンは入れ替え)
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