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「ゼット・ライトだな? ギブン家のダーナー・オーシーについて確認する」
「そりゃ構いませんがね。今更ダーナ・オーシーの話が何の様でしょう」
「ゲドより新しい技術であり、ビランビーより古い技術。相違ないか?」
ビランビーを献上して暫くの事、機械の館に国王の使者が訪れた。
もう直ぐ謀反が起きる可能性もあり、ゼット・ライトも最初は大人しくしていた。いつもの伝法な口調を少し改め話を伺っている。
「ビランビーよりは? まあそうですが」
「ゲドより強いのか? 相違ないかと聞いておる! 早く答えよ!」
「ええ。その通りです。ギブン家が開発し何機か作っていた筈ですね」
気のない返事を返したのがマズかったのか、使者は語気を荒げた。
思えば質問の内容に対して、重要な部分があったのだろう。もしゼットが迂闊であったとすれば、『ビランビーの献上』が政治手段であったことを忘れていた事だろう。あえていうならば味方の策謀だからこそ、この程度のミスは見逃されたと言える。
「ミの国で見られた事を考えれば怪しいという他ありませんな」
「重ねて問う、ラウで見かけられたオーラバトラーは知って居るか?」
「ボゾ……。そんな感じの名前だって忍び込んだ奴が言ってた筈です。バーン殿に見せてもらった絵で見た装甲の形や腕の構造を考えると、ダーナー・オーシーを改良したんじゃないですかね」
それが最後のピースであったと言えるだろう。
ゼットは知らぬ間に策略のワンセンテンスに組み入れられ、まんまと『上』の考えているレールに組み込まれてしまったのだ。ゼットには仕上げ段階に入ったビアレスの完成や、起きるかもしれない、『ダンバインの襲撃』に備えることで手一杯というの影響しているかもしれない。
「これで間違いが無い。ギブン家は他国と繋がっておったのだ」
「しかも最新型を陛下に献上することなく他国にですぞ。許せませんな」
(こいつら何を今更言ってやがんだ? ギブン家が謀反起こしたから取り潰したんだろうに。それでミに逃げて……いや、ダーナ・オーシーの提供はもっと前からだっけ? でもドレイクだってオーラバトラー他国に売ってるしなあ。まあ、ビランビーで最新型は上書きされたけどもよ。いや……これで罪が確定すんのか、しかもドレイクの忠臣ぶりが再確認されたと)
最後の最後でようやくゼットにも意味が理解できた。
アの国の重臣たちが全てを知ってはおらず、『一部の重臣は』ドレイクと裏で繋がっているのだ。ここで確認されたのは、ギブン家が『コモンにも動かせて、他国に射撃が可能な機体を提供した』ということだ。ドレイクはちゃんとフラオン・エルフにビランビーを提供したので、忠臣ということになる。同時に『他国が強力なオ-ラバトラーを配備している』という情報も提言されたはずだ。原作を知るゼットには今更であるが、ここで流れが再確認されたのは大きい。
(馬鹿殿には何度言っても無駄だ。実際に反乱が起きなきゃダメだろうな。その上で『他国の危険性をドレイクが提言した』って前置きがあるんじゃあ、重臣全員に馬鹿殿っぷりが知れ渡った事になる。ゲームだとリの国とも話をしてる最中の話だから、事に寄ったら中立じゃなくてドレイク側になるかもな。そして……それをショウ達が知ることになる)
要するにこれでニーもフラオンも詰みになったということである。
エルフ城に忍びこんで説明してもダメ、重臣を説得する手段もダメ。ドレイクが攻め立てたところで救援に向かっても、重臣がドレイク側について城門を開く可能性すらあった。まさか此処まで追い詰められるとは思わ無かったが……それだけに機械の館への襲撃は可能性が高まったと言える。ここで館を火の海になれば、反乱計画を中断する可能性が出て来るからだ。
(まいっか。どのみちここでダンバインを迎え討つ気だったしな。タイミング的には……ビアレスを出荷して新しい材料を入荷し、トッドの一号機が弾薬を使い果たして帰還する辺りか? ガロウ・ランで調べてるならその辺だよな)
原作との差はかなりあるが、重要なのはエルフ城攻防戦である。
おそらくやったが最後、あっという間に戦闘が終わるだろう。場合によってはドレイクに従わない重臣とフラオンのみを射撃して終了という事もあり得た。それが分かるからこそ、機械の館襲撃がドレイクの野望を阻止するための可能性として浮上するのだ。この陰謀の裏にあるのは確実に勝利したいショット・ウェポンあたりの策謀か、それともライバルとして見なし始めたバーン・バニングスあたりだろうか?
(ここを火の海にはしたくはねえが、そうなると考えて差配しとくべきだよな。三号機関連の人員だとか職員は自然に減らすようにしてるし、重要物資は特にねえ。新しく入荷するのもドラムロやバラウの分くらいだしな。あとは二号機も少し武装を弄っておくか)
ゼットは指示書を見ながら少しずつ調整をしておいた。
ビアレスの製造と残り二機の搬送、変わって行われるドラムロやバラウの製造。それら認可を出しておき、フレイボム用の油などは後回しにして、製造用の資材やら装甲版の予備を先にする様に調整しておく。理由としては量産を早めたいからで、弾薬補給は他でやれば良い……で済むだろう。エルフ城攻略を急ぐのであれば、それで充分な理由になる筈だ。
「訓練としてガラリアとミュージィにビアレスの予備機を移動させる」
「仕上げに入っている一機目ではなく、二機目と三機目ですか?」
「そうだ。ここで仕上げる理由もねえし、工房船でやらせる」
「スキーズブラズニルが完成しましたね。了解しました!」
理屈を付けて指示を出すと鍛冶師たちも動き始めた。
若い鍛冶師は工房船を任せられたと喜んでいたし、ビアレスは完成すれば一機目がバーン、三機目の突撃仕様がガラリアの担当になる筈だった。不自然な流れではないし、トッドが一機目を動かすのだと考えてしまうのもおかしくはないだろう。実際にはその前後でバーンが受領西来るはずだが、この場で指示してダンバイン襲撃までにガロウ・ランなりミ・フェラリオが聞きつければよいのだ。仮に聞かなくとも、その輸送指示に矛盾がないと傍から見えれば問題無かった。
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「一号機! 射撃試験終了。弾薬を使ったので帰投するとのこと!」
「ようしっ。今日の作業はここまでだ! 俺も二号機の上爪を替えてあがる」
「「はいっ!」」
使者の訪問から暫く、人数の減った機械の館で灯が消えていく。
エルフ城攻めを準備する傍ら、最低人数で回すという形だ。その間もトッド・ギネスは射撃用のマニュアル整備に明け暮れており、ドラムロ乗りを鍛えた後で試験型一号機のみを伴って戻ってくるはずだった。
「工房長。こいつ、無理に付ける程ですかね」
「それも実験ってやつよ。それにクロー用の心算で、ランチャーの誘導用に出来ちまうかもしれねえだろ?」
ゼットは持久戦に備えるためにコンバーターを換装していた。
ライネック用の大型コンバーターに変更し、四本爪と大型バルカンだけという実験専用の仕様であった。それはダンバインを呼び込む為と言うのもあったが、四本のクローを誘導するためのフェロモン的なオーラ伝導の高い素材が見つかったので、試験したかったのもある。高いオーラがあれば、二本以上のクローで掴めるという触れ込みであった。原作でゼットがビアレスで器用にトマホークを掴んでいた技術に通じるモノなのかもしれない。
「工房長。最近は物騒だって聞きますぜ。もうちょっと……」
「それ以上は言うんじゃねえよ。ショットに聞いたのかバーンに聞いたのかは知らねえけどな」
最近になって広がり始めた噂があった。
ゼットと上層部の一人が仲が悪くなったという話だ。ショットに関しては野望に対してつれなくした覚えがあるし、バーンに至っては誰でもライバル視するような男である。ゼットは気にせずにいたし、むしろダンバインというかショウ・ザマと話せる良い機会だと思う程だった。どちらにせよ、追い込まれた彼らに残されたチャンスが少ないのは確かだった。
「一号機着陸! 弾薬は一種ずつ確実に補充しろとのこと!」
「これも常在戦場の訓練じゃ! 手を抜くんじゃねえぞ!」
(実際の余裕はまだあるが、向こうは今日・明日が限界だろうな。俺も配置に付く準備するか)
一号機が着陸し、いつでも出られるように座り込むような態勢になった。
そこに鍛冶師と彼に従う徒弟たちがまとわり付き、腕の装備を先に給弾してから肩のミサイルに移る段取りを取った。ゼットはそれを眺めながら、普段ならば万全の調整をするところを切り上げ、問題点が無いかだけ確認するといつでも出られるように装甲版を閉じた。そして乗り込めるようにキャノピーを空けておくか、それとも奪われないように閉じておくか? 悩んでるうちに外から兵士が飛び込んで来る。
「ダンバインが現れました! あちらです!」
「俺が時間を稼ぐ。一号機は最低限の確認しとけ」
「はいっ! 対空砲。回せ―!」
報告が来ると同時にゼットは二号機に飛び乗った。
徒弟たちもゼットが二号機のテストパイロットをやっていることと、あくまで『時間を稼ぐ』という表現であったので納得して送り出している。もしこれが『手柄を上げるチャンスだ。絶対に落してやる』と言えば止めたかもしれない。
(確か……。トッドが言うにゃあ馬鹿正直に上がるな、だったか。囮かもしれねえし、注意しねえとな)
ゼットは二号機のキャノピーを閉じると、二号機を発進させた。
その際に回転するような動作で天へと登り、真っ直ぐ天頂を目指さない。そして機械の館の周囲を簡単に確認して、視界を遮るラース・ワウ城そのものと周辺施設の向こう側を警戒した。どんなに高速で飛ぼうとも遮蔽物に隠れて射撃されては撃墜されかねないからだ。
「こちら二号機、ダンバイン以外の機影を確認してない。一号機は出れたとしても周囲を確認しといてくれ、ガラ空きになるのを狙ってる可能性がある。まっ逃げる為かもしれねえけどな」
「了解、任せとけ!」
ゼットは半周しながら距離を調整し、ダンバインと同じ高度に上がった。
一足飛びに襲い掛かる事は無く、一号機のトッドに通信を入れてからレバーに力を入れる。指はボタンに掛けて加速し、ダンバインの手前で斜めに切り上がったのである。
『来たか、悪いがここで落ちてもらう』
「そうはいかねえよ! 撃ったのはそっちが先だかんな!」
一瞬、二号機の通る先をダンバインのオーラショットが通り抜けた。
それを尻目に両手の大型バルカンを放ち、ダンバインの周囲へ撫でるような連射を行っていく。もちろんダンバインの方でも加速して躱したので、ゼットは右手でオーラソードを抜きながら左手の大型バルカンでの牽制射撃を続けた。
(このまま太陽の方角へ……って、言うほど眩しかねえんだよな。とりあえず、もう一発くらい撃たれるのを覚悟するか)
ゼットはトッドが作ったマニュアルを踏襲しながら射撃を避けていった。
射線を外して『こう動けば戦い易い』という教本に則る機動だ。それはある意味で正しくゼットの生存を助け、ある意味で正しくなくダンバインを追い込むことが出来ていない。この点は戦場で戦い続けたショウが優位であり、特に知識が無いからこそ体験で動けたと言える。
「そんじゃ、今度はこっちから行くぜ!」
『思ったよりも速い!? ビランビーじゃないのか? やはり新型!』
二号機は暫くダンバインの斜め上方を推移したが、あるところで降下。
斜め下方へ移動しながら斬撃を浴びせ、オーラソードの煌めきがダンバインを揺すった。あちらも念のためにオーラソードで受け流しながらの回避であり、それでも受け流さざるを得なかったのは二号機の加速が思ったより……いや、体感では二段階ほど速かったからである。それは降下しながらだと加速し易いのと、分割型大型コンバーターの性能であろう。
「バルカンじゃ所詮は牽制だよな。しかも避けやがる……なら本気で行くか」
『こいつバルカンしかないのか? チャンスだ。当たってもこの程度なら!』
ダンバインの周囲をバルカン砲が掠めるが大したダメージにはなってない。
どちらかと言えば先ほどの斬撃で生じた衝撃の方が強いとショウは思った。お互いに高速で飛び回り、しかも実戦経験の差を散らすように連射しているので当たったとしてもダメージが低くなるのだ。ゼットの殺気を感じない事もあって、ショウには余裕が見られた。それはゼットが時間稼ぎと累積ダメージ狙いであるのに対して、ショウが乾坤一擲の爆撃狙いという差でもあるだろう。
『今度はオレの方から行くぞ! 接近戦からの連続攻撃で』
「白兵戦か? そいつは俺も望むところだ! ただし、こいつを喰らいな!」
二機のオーラソードがすれ違い、一瞬の光を生じさせた。
内側に回り込みながらもう一度繰り返し、ダンバインは鍔競り合いからの蹴り、隙あれば追撃にオーラショットを食らわせてやろうと連撃を狙う。だがゼットは上昇機動で推力をあえて浪費すると、僅かなりとも高い位置からショットクローを連続してはなったのである。
「あらよっと! これで腕が使えねえだろう!」
『爪が伸びる!? くっ……やられた、こいつはトッドと同じ……』
二号機が上昇に力を費やした分だけ、ダンバインの横薙ぎが宙を切った。
もちろん二号機の斬撃も外れるが、それは腕のクローを放つための前振りに過ぎない。最も命中し易いオーラコンバーターからの二本爪がダンバインに迫り、それを返す刀で迎撃。しかも腕のクローも射出された事で、四本のクローを全て受け流すことは出来なかったのだ。オーラソードを絡め取られ、奪われまいとする内にもう一本が腕に絡まってしまった。
『だけど同じ状況なら、同じ方法でやれるはず。振り回して……』
「おい! ショウ・ザマ! てめえ、何でニー・ギブンに協力する!」
『っ!? コックピットを開いただと!? しかもあいつ、確かゼット……』
ショウは咄嗟の判断で、過去の記憶を頼りに二号機を振り回そうとした。
だが事もあろうにゼットがキャノピーを展開し、コックピットから大声を上げたことで面食らってしまったのだ。その姿が垣間見え、しかも兜を外したことで驚きが助長される。まさか工房長ともあろうものが、オーラバトラーに乗って戦っているとは思わなかった。しかもコックピットを解放して話しかけて来るとは思わなかったのである。
『お前こそなんでドレイクの野望に協力するんだ!』
「義理と人情だよ! 俺は飛行機事故の最中だったんだ! 結果的に助けられて、雇ってもらったなら義理を果たさにゃなんねえだろ。ま、お前さんが拉致られたと思うのは仕方ねえがな! それでもテロやってるギブン家に協力する手はねえだろうよ!」
思わず反論してしまったショウに対してゼットはニヤリと笑った。
自分の身の上を離すことで、ショウの満ち溢れたオーラを散らしたのである。そして正義漢として突き動かされているショウに対して、ゼットは客観的な事実と正論で殴ったのである。
『ドレイクは有りもしない陰謀でミの国に攻め込んだ!』
「それはフラオン王の判断だろ。第一、フェラリオ使って野心家のバーンを引っかけたのはロムン・ギブンが先だろうが! ダーナー・オーシーの技術をばらまいた事には文句言わねえよ、こっちもゲド売ってるからな! だけど聞け! 領主ってのはそういうもんだ。お互い様なんだよ! バーンならドレイクを陥れて自分が成り代わってもいいから、話を大きくして証言を口にするはず。それをロムンは分かってやったのさ!」
尚も反論するショウにゼットは事実だけで殴り続ける。
ギブン家もおかしなことをやっていて、ドレイクのルフト家を陥れるためにやった。それは嘘ではないし、ドレイク個人の野望は置いておいて、ドレイクすら陥れようとするバーンの人格を口撃しながらショウを揺さぶっていく。それらは嘘ではないからこそショウに衝撃を与えた。領主の立場、王国の立場を見てどうかと言われたらギブン家だって戦火を拡大させていると言えるのだ。
「日本には宗教的な正義とか民主主義とか共産主義の正義に合わせて綺麗ごとを言ったりしねえのか? 同じだよ。これ以上は言わねえが、てめえも自分の頭で考えて戦いな。ラウの王様でもナの王様でも正しいと思った奴を頭に付けろ。そうするんならてめえも立派な戦士って奴さ。聖戦士候補同士、勝負しようぜ」
『お……オレは……』
ゼットは言いたい放題で喋りまくるとコックピットを閉じた。
そして時間稼ぎは終わったとばかりに、周辺確認をしながらショットクローでの拘束を解除する為の操作を準備し始める。
「俺だ。ダンバインに予備の弾があんま積んでねえ。もみ合いで撃ちまくって脱出しようとしてねえのはそのせいだ。おそらくウイングキャリバーの方に爆装してやがるぞ。カミカゼに注意しな」
「ゲエっ。ということは、あいつに火薬が山盛りなのかよ」
「おっ。ということは見つけたな? じゃ、こっちも離れるぞ」
ゼットが通信を入れるとトッドから呻き声が聞こえた。
適当な言い訳としての説明を聞いて、彼方からやってくるフォウをどう仕留めるか悩んだのだろう。ゼットはその意見を聞きながら、ショットクローの解除ボタンを押した。
「あばよ! 俺は機械の館を守らにゃならねえからな!」
『待て! ゼット! 話はまだついて……くっ!?』
ゼットはオーラショットに絡んだクローのみ残して引き千切った。
強引に完勝しながらオーラバルカンを連射。ショウは咄嗟にそれを防御しながら向こうでも引き千切り、オーラショットの火薬が盛大に火花を散らす。そしてその動きを見て地上方面でも動きがあり……。フォウが建物の影を使って急上昇するのが見えたのだ。
「……確か、地形を使った爆撃テクだっけ? ま、分かってりゃあ何とかなるわな。近くにいる奴が無事ならいいんだが」
急上昇したフォウは機械の館への直撃コースへ。
そこから離れるグライウイングに誰か乗っているのだが、人が安全の為に離れたという事は横から狙撃できるという事でもある。トッドの一号機がそれを吹き飛ばし、咄嗟に隠れるのが見えたのである。フォウが大爆散したのはその直後であった。
という訳でダンバインは損傷を受けて撤退しました。
それ以上にショウは精神的に動揺したので、仮に負けても修羅(ゲーム版の再利用キャラ)には成らないと思います。つまり、次で負けたら終了。ちなみにチャムはフォウに乗ってるニー・ギブンのフォローしてます。