●
「いったん小型化してからビアレスと同じにするのか。いいんじゃねえの」
「ナの国と交渉するって聞きまして、新しい技術が入るかもと思いまして」
「他に修理目的でビアレスと手足を交換できるようにしとこうかと思いやす」
幹部の鍛冶師たちに任せたライネックの草案が提出された。
9メット9ルフトン以下を目指してみろという目標をそのまま受け入れるが、最終的にビアレスと同じサイズまで拡張することを視野に入れていた。その原因は協議されていたナの国との交渉が好意的だからである。これが決裂するようなら話は別だが、今のところは受け入れてお互いにちょっといた交流を持つことで方向性が決まったらしい。
「乞食じゃねえんだ。土産が無くても恨まないようにしとけよ」
「そこは工房長のやり方を真似させてもらう事にしました。試験型式ですね」
「基本はあくまで性能向上用。何も得られない場合は三号機のオーラ逆流問題対策で予備回路でも詰めておくか、繋ぎの装甲を噛ましておいて腰へランチャーを三連か四連にして詰もうかってとこです」
ナから技術提供が有る無しに関わらず大きさは固定らしい。
試験型として師匠であるゼット・ライトのように二号機・三号機を用意。二号機はハイパー化対策で予備装置を追加する方向として、三号機は追加装甲と追加ランチャーによって原作に近い形でアーマード化することに決めたようだ。この事から考えると、あくまで第三世代の機体としてパーツを得してオーラ操作を高めるという方向で固まったようである。装甲を厚くして武器を付けても、オーラバトラーではそれほど有効ではないことが分かって来たのもあるだろう。
(量産機だからオーラ係数は16でいいかと思ったんだが、この様子だと18くらいになりそうだな。攻撃面ではナの国の技術が手に入るか次第だが、限界を弄るのはこっちでも出来るからな。こいつらも随分と成長したじゃねえの)
ゼットの見たところ原作に近い形でライネックは仕上がりそうだった。
腰のミサイルや足の投擲剣は有効打になりそうにないので削ったが、限界オーラが高い事を目指すか、それとも量産性重視かを悩みはした。だが弟子たちは一度小さくしてからビアレスと同じ大きさにすることで、限界オーラを無理なく高くする方法に辿り着いたようだ。限定生産で腰にミサイルを増設した機体が生産されるとしたら、殆ど変わらない能力を持てるだろう。これを歴史の揺り戻しと呼ぶか、原作デザインの秀逸性と呼ぶかは人それぞれであろう。
「認めてやるぜ、お前らは俺と同じことができるようになった。後は知識と実戦もだが、『守』『破』『離』って言葉を覚えとけ。型を守って同じことを繰り返せば成功する。だがそれじゃあ何時もと変わらず同じ欠点も持つから、破天荒で一風変わったことをやってみる。そして師匠や仲間とは少しずつ違う方向の得意分野を見つけて離れていくこと。って意味だ」
「なるほど『守』『破』『離』ですね! 直ぐには無理ですがやってみます!」
「邦で家事の師匠から似たようなことを聞いた覚えがありやす」
「どこも同じような考えになるのは面白いですのう」
ゼットの言葉を若い者は知識として感じ、年老いた者は懐かしさを覚えた。
これまでの傾向から試験型でゼットがそのやり方を実践してきたことは分かる。基本形はあくまで地味に確実に、試験型で突飛な能力や別タイプの能力を試している。その事は伺えたし、言語化されたことで知識であり師匠から弟子へ伝える伝統なのだと理解したようだ。
●
「ガラリアが使節の護衛だったのか!? マジで?」
「仕方が無いだろう。相手は女王だし、バーンがミの国でやった事も問題になったしな。次はおそらくミュージィが担当になる筈だ」
暫くして姿を見ていなかったガラリア・ニャムヒーが帰還した。
何処に言っていたのかと思えば軍務ではなく外交使節の護衛として動いていたらしい。どうやらドレイク軍が出陣するまで時間が掛かると思われたのと、ミの国で町を焼いて略奪が起きた事に起因するらしい。騎士団長であるバーン・バニングスの方が身分があるのだが、それらの問題があるのと、相手がシーラ女王であることもあって女のガラリアが選ばれたとの事だ。
「なるほど。最初にガラリアで次がミュージィか。戦闘の可能性もあるし順番的にも妥当だな」
「その件で聞きたい事もあるが……先に報告がある」
「なんだ? 報告を受ける身分じゃねんだが」
「茶化すな。お前の提案書の話だ」
当面戦闘しないが、時間が経過すれば可能性は増えていく。
抜け駆けしかねないくらいに焦っていたガラリアだが、演習などで最近は尖った部分が減っていた。その事もあってガラリアに外交経験を積ませておくというのは無駄ではないだろう。そして戦いの機運が高まれば突撃隊長である彼女は元の配置に戻し、実験部隊所属であるミュージィ・ポウの機体が出来上がるまで、今度は彼女を外交使節に加えるというのはあながち間違いではなかった。
「提案つーと巨大戦艦の話か?」
「女王より御褒めがあった。それと……護衛機の件で許可が欲しいと」
「くれてやった設計に許可なんぞ要らねえだろう。だいたい欠陥機だしな」
「それが……。ナの国ではお前が提案した機体に酷似した機体が存在したのだ。それはラウの国と共同開発中とのことでな……。あの設計書を見た後に、無許可でラウへ派遣するのも憚られるということになった」
ドレイクの提案で土産として外見重視の組み合わせで設計図を描いた。
大戦艦は盾艦を翼に見立てた優美な設計であり、護衛機は旧式コンバーターではあるが機動力全振りな零戦みたいな仕様であった。『防御力と母艦性能に特化した戦艦なので、護衛機は空中戦を重視して見た』という言い訳で、ボチューンに似た設計書を送りつけたわけだ。これにナの国の人間が驚かなければ嘘だろう。
「俺に内通疑惑が掛からなきゃ何でもいいぜ。つーか、今の内から知れて良かったんじゃんよ」
「そうは言うがな。あれはちょっとした衝撃だったぞ。よくも此処までと」
「人間の考える事はよく似てんだよ。ボゾンと組み合わせるなら限られる」
「そういうものなのだろうな。私が見た感想は後で記しておく」
これはある種のゼットなりの策略であったとも言える。
ドレイクの稚気からナの国へ『微妙に仕えない美術品』の設計書を土産として送るという事になった時、『ボチューンそっくりな設計書が有ったらどうだろうか?』とゼットは思ったのだ。アの国の軍人たちにその設計なら強敵にはなり得ないという理由でデータを見せて予習させることも出来るし、ナの国にアの国から送られた設計図があるということを、ラウの国の人間が知ればどう思うだろうか? と考えたのである。もちろん分割コンバーターによる最新型は渡せないので、ある程度ソックリで収まる筈であったが、ゼットは賭けに勝ったと言える。
「その辺は技術交流とか理由付けるだろうよ。で? 他に何を聞きたいって?」
「ラウの国との戦いはどうなっているんだ? もう始まっているんだろう」
「一応はクの国が喧嘩売られたって話しだからな。暫くは向こうが主戦場だ」
ボチューンもどきに関しては適当に決着がつく筈だった。
しょせんは軽戦闘の高速機で防衛用の大戦艦の護衛用として設計したという触れ込みだ。大した能力が無い設計なのでアの国の人間はこだわらないだろう。それはそれとして、外交的なポイントを稼げているならば何らかの成果と共に許可を出すことになる筈だ。何しろ類似の設計をした機体をすでに開発中なので、断っても強行されたら何の意味も無いのだ。それならむしろデータが分かる物を製造された方がいいまであった。
「ラウは戦争向きに簡略化した機体で数に任せて攻め込んだ」
「そこまでは分かる。だがビアレスなりビランビーがあるだろうに」
「それはミの国の国境に配置して意地でも守ってんのさ。政治ってやつだな」
「保護という名目はあっても他国ではないか!? いや……これもまた大義名分とやらか? 自国を焼いてまで行うこととは思えんが……」
ラウの国はクの国へ斜めに進行している形になっている。
それはミの国の国境へ配置した、赤い三騎士の乗るビアレス隊の活躍が原因だった。他にも騎士が乗るビランビー集中的に配置して、精鋭部隊によって一歩も引かぬ構えで戦い抜いている。ガラリアが分からないのは、本国が危険なのにどうして他国を守るのかである。
「だからワザとさ。これでミの国の人間は信用する。そして戦線が伸びる」
「む……ラウの戦力が長く蛇のようになって……。脇がガラ空きなのか」
「そういう事。もしこのままいけば、アの国が参戦すると同時に断ち切れるって寸法よ。それがクの国の王であるビショット・ハッタの戦略だ。同盟軍の責務として、戦力を引き付けてるわけだな。そのついでにミの国の人間を掌握しようとしてやがる。大した策士様だよ」
クの国の王であるビショット・ハッタは戦力に偏りを持たせていた。
意図的に勝てる部分と、勝てない部分に分けている。ミの国を命懸けで守っているとミの国民に思わせておき、同時にクの国へとラウの国の軍勢を引き付けているわけだ。当然守り易い場所で守って居るだろうし、後方拠点も近いから補給も潤沢にある。クの国のケミ城が山城で守りが硬かったように、大陸中央にあるクの国は元から防備を固めている場所だ。早々落ちることは無いとの判断であろう。
「ではどうして御屋形様は動かない? クの国の面子とやらか?」
「それもあるが実はラウには、エレ・ハンム以外に血族が残ってねえらしいんだ。もしクの国とラウの国が和解したら、ビショット王の一人勝ちになっちまう。今進んでいるリムル様とビショットが結婚話もあるし、このままクの王族の一人がエレと結婚したらどうなるよ? かくして三つの国が全てビショット王の手に入りましたってな」
現在の番面ではビショットが不利だが、今後はそうではない。
暫くすればドレイク軍が動いて逆転することは約束されていた。現在はあくまで一つの国同士の戦いで、クの国が意地を見せている状態だ。それが終われば『戦争向きのオーラバトラーでラウの国が侵略して来た。援軍を頼む』と言い出してドレイク軍を呼び込むことになるだろう。そうなったらミの国やクの国へ直接向かうわけにもいかないし、戦略的にもラウの国を直接叩いた方が効率が良い。攻守逆転して防備の整っている場所へ、ドレイク軍が殴り込みに行って損害をこちらが受ける事になってしまうのである。
「だが協力せぬわけには……これでは何をしても骨折り損ではないか!」
「その辺もあってナの国を動かして同盟関係を組み替えるんじゃねえかな。そんで『戦いはこれまで、話し合いで決着を付けましょう』ってな。そうなりゃ同盟を信じきれなくなったラウの国は降参するしかねえし、リムル様の婚約話が立ち消えになっても問題ない程度の時間は稼げる。ラウの国だってフォイゾン王が親族の誰かを養子にして後継者問題を何とかする時間も出来るだろうさ」
ビショットの姦計は一歩抜きん出ているが、対抗できないわけではない。
時間と後継者問題を利用しているわけだが、それはあくまで『このままズルズルと戦争し続けた場合』の話だ。仕切り直して平和になり、後継者問題を秘密裏に指摘いてしまえば何とでもなる話である。原作でも戦時下だからエレがラウの後継者になり、ゴラオンで指揮を執って象徴となっただけだ。親族を養子に迎え、周囲に告知する時間さえあれば話は変わったであろう。
「それならこの場は何とかなろう。だが、それでは我らの勝利は何の為に……」
「例えば何年かに一度、国主なり大使たちが集まって会議で政策を決める時の発言権とかだな。何処かの国が十年ほどバイストンウェルのリーダーになるとか面白いんじゃねえか? そうすりゃあドレイク閣下、次がビショット王、そしてシーラ女王という感じで流れが出来ると思うぜ。その後は選ばれた騎士たちだけが戦う、誉ある戦いで決めればいいさ」
戦いに生きる騎士にとって話し合いで決着など拉致の外だ。
混乱するガラリアに対してゼットは地上の仕組みを簡単に例えていった。その上で中世世界観での王朝性で、主導者が変わっていく約束ごとの話を組み込むことで、彼女にも理解し易いようにしたのだ。
「最も強い騎士を育てた王が次の十年を担うと? 分からなくはないが」
「それとな、この方式なら寿命が関係なくなる。閣下もよい御年だからよ」
「っ! そうか。無理をしてバイストンウェルを手に入れても時間が無いと」
「しかもリムル様を犠牲にした上で、ビッショット王の為の道ならしにしからんわけだ。だが話し合いで世界のリーダーになれば今から十年は現役でいられるからな。戦わなきゃもう少し寿命も伸びるだろうよ。どっちが良いかと言われたら、性格次第で敵味方の関係次第というっきゃねえけどな」
ゼットは説明しながらバイストンウェルの感略図を書き始めた。
アの国やリの国より南部分にある数か国や、ラウの国とナの国全てを併合してようやく中央大陸全てを手中に治めたと言えるのだ。地球に例えると地形が違うので難しいのだが、ローマ時代にローマ中心で東欧やアラビアを舞台に戦っていると思えば良い。ナの国はインド亜大陸の統一国家であり、東西にはまだ見知らぬ国家が広がっている。その全てを併呑するのに着実に行っても十年、反乱の可能性を無視して戦力を増大し続けたとして五年程度は絶対に掛かる。空飛ぶオーラシップが前提でもそのくらいは掛かるのだ、ドレイクが自分の年齢を鑑みれば政治的決着に舵を切るのも無理はあるまい。
「全てが順調だった筈なのに……どこで間違えてしまったのだ」
(おそらく攻略による時間差の影響で、イケイケな覇王モードが終わって賢者タイムに突入しちまった影響だろうな。冷静に考えて『行ける所まで行く』って野望に縋って居られるはずがない。原作の場合はドレイクの伸張が早い代わりに内情はボロボロだった。ビショットはドレイクが健在な数年だけ下風に立てばいいと割り切った。それが今回はドレイクが内側を固めて足踏みしているから、中途半端に同格の存在になっちまったせいで頭が下げられなかったんだ。結果から見ればビショットの自業自得だな)
原作ではミの国攻略から、アの国とラウの国攻略までが早い。
その代り勝ったり負けたりの紆余曲折が多く、居城のラース・ワウが襲撃されたことも一度ではないのだ。それがゼットの介入もあって生産計画は順調。何時まで待てば何機のオーラマシンが用意できるというのも数字にして表され、オーラバトラーの能力や使い道まで書類で送ると、演習に合わせてドレイクが確認に来る事もあった。そうした経緯もあってドレイク軍は盤石の勝利を重ね続けた代わりに、原作よりも進行が遅い。おそらくはビショットが話を聞きつけて『手を組もう』と言ってきた時期は同じでも、お互いの勢力の大きさが原作と違って拮抗してしまった影響であると思われる。その結果ビショットが頭を下げられなかったり、彼の野望が透けて見えたりしたのが問題であろう。
「とりあえず次の使節団到着と前後して戦いが始まる可能性があるぜ。今からじゃ間に合わねえだろうが、俺が提供した設計図の機体を作っといてやるよ。そいつをナの国に渡すかは別にして、いずれ出て来る強敵との練習台に戦ってみろ」
「そ……そうだな。その時は頼む」
ゼットは呆けているガラリアを励ましてやることを決めた。
ズワァースを作る前に7メット5ルフトンの小型機として練習台にする予定だった。コンバーターは分割ではなくただの大型にして、中に対空バルカンを付けただけの護衛用だ。材料さえ揃えば作るのは簡単なので、ドレイクへの上申書込みでさっさと用意してしまうことにした。
という訳で舞台裏で策謀が行われてます。
この段階で謀議に強いビショットが優位に立ってる感じですね。
『ライネック』ライネック・キャノン、アーマード・ライネック
オーラランチャーがミサイルポッドに改良され第三世代後半に登場。
特別攻撃機として精鋭が乗った機体が投入されることになる。
腕は装備が大型バルカンという部分も含めてビアレスと互換性があるのも特徴。ゼットの思惑と違い限界オーラは高く維持された。
試験型二号機がオーラ操作特化型で、以前よりも優先度が上がっている。
また装甲とミサイルを追加したアーマード機が三号機として登場。
これは第三世代機が能力向上・オーラ操作を主眼としている為、入れ替わった形である。
「ライネック・キャノン」+ビルケナウ
ミュージィ・ポウらテストチームの為に用意された試験型二号機。
オーラのオーバーロードに備えて耐久度の高い複線が用意されている。
装備は三連バルカンが複数用意され、コンバーターと両腕に四つ装備。
基本的には外付けのロングバレル・オーラキャノンで狙撃する為の機体である。
(特徴的な肩のハードポイントにはオーラ調整装置が存在している。なお、随伴する対空砲装備のウイングキャリバーは量産されてビルケナウと呼ぶとか)
「アーマード・ライネック」スパルタン
装甲と装備の追加実験というか、任務の性質上、被弾率と消耗が早い。
激戦区をこじ開ける存在であるため、少しでも機体を維持して、弾薬も可能な限り載せていくための拡張機。ある程度は量産されたが、そのハードな任務からスパルタンと称される。
装備は当然ながら追加装甲と、標準機ではオミットされた腰のミサイル。
他にも装甲の形状が色々と試され、装甲も拡張スロットとして使い捨ての追加ミサイルなどが搭載されることになる。
『偽ボチューン』アグレッサー
ゼットが提供用の設計図として用意した外見上の優美さだけの機体。
7メット5ルフトンで大型コンバーターに対空バルカンのみの装備。
零戦を意識して高速で飛び回るだけの機体として味方には紹介された。
原作知識を利用した悪戯であり罠の一種で、ラウの国とナの国が共同開発していたボチューンとソックリな機体であることから、ナの国の外交官は非常に驚いたとか。いくら何でもこの設計図を提供して黙ったままという訳にはいかないので、秘かにアの国の施設へ伝えて事態の収拾を図ったとの事である。
後に少数が生産されて教導隊が操りアグレッサーとして空を翔ける。
完全にボチューンソックリに偽装した白い機体があり、白騎士と呼ばれる地上人が乗ったとか乗らなかったとか疑惑が存在する。
ズワァースの開発はどれでしょう?
-
①現行置き換え案(次が早くなる)
-
武装徹底修正案(一番強くなる)
-
行動尖鋭案(一番速くなる)
-
巨大化案(ズワウス改良型が登場する)