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「これよりクの国との盟約により、ラウの国へと攻撃を掛ける」
ドレイク軍の戦線参加は、ラウの国が思ったよりも早かった。
これ以上おびき出されたら危険というよりも前であり、ラウ側が警戒するラインの遥か手前だ。心理戦と言えばそれまでだが、一度の侵攻で必ずラウを滅ぼす必要も無いのだ、あえて意表を突くタイミングを狙ったと言える。ドレイク・ルフトは気負った様子はなく、何時でも勝てるとばかりに笑っている。
「ドレイク閣下。いずこであろうと我らで落して御覧に入れましょうぞ」
「頼もしき言葉だな、バーンよ。目標はラウの南東にあるカラカラ山岳地帯にある砦群である。そこであれば民草に被害は出ぬだろうとラウには申し入れを行っておる。腕比べと洒落込もうではないか」
恭しく勝利を誓うバーン・バニングスに対してドレイクは大仰に頷く。
カラカラ山岳地帯は幾つもの山が連なる山脈で、付近の砦が連動できることもあり地形としては攻め難く守り易い。ラウの伸びている戦線を考えれば、この場所を指定するのはいっそ奇妙であった。日本で言えば関東から近畿へ行くのに、ワザワザ甲信地方の様な山側から行くと宣言する様なものである。
「こちらから場所を申し入れたのですか?」
「不満か? だが本命は別、戦力を引き付ける為と言えば納得できるであろう」
「そういう事なら。ただ部下たちも、意図をお聞かせ願えれば安心できるかと」
「よかろう。我が軍で建造しておるウイルウイプスと言う大戦艦を皆も知って居ろう。アの国が開発しているのにラウの国には無いなどと言う事はあるまい。それを何処で行っておるか突き止め、次の戦いで戦火に巻き込む為よ。自分たちはこれを守り、敵には使わせぬようにすれば戦い易くなろう」
ドレイクはラウの兵を引かせるために、あえて古式に則り場所を指定した。
何処を攻めるか分からない状態の方が有利なのに、あえて指定した事には意味がある。砦が連なる場所ということは、維持するための最低数も増えているものなのだ。少な過ぎれば敵に奪われて根拠地にされてしまうので、ラウは戦力をそこに集める必要が出て来る。そして将来に対する布石を打つのであった。
「タータラ城を攻める為ではないのですね」
「守りを固めた場所に馬鹿正直に攻めても被害が出るだけよ」
「御見それしました、流石はドレイク閣下。ご慧眼であられます」
「我が国がそうしたように、ラウの国も機械の館を幾つかに分けて居るはずだ。例えタータラ城を囲んでも、あわよくば落そうとも、大戦艦建造の地を落さねば同じ事よ。だがその場所を先に叩ければフォイゾンも心が折れようて」
ドレイクはかつてゼットが語った話を戦略レベルに高めた。
民衆に被害が出ない場所を攻めると宣言することで、相手の戦力を誘引・拘束。同時に人々へ『ドレイク・ルフトは信用できる男だ』と広めておくのだ。それが何の意味も無い行為であればドレイクも採用などしない。だが、まだ見ぬ大戦艦を探す為であり、確実に叩く為であれば話は別だ。結果的にクの国も救えるし、未来の強敵を叩けるのであれば採用しない方がおかしいであろう。
「バーンよ。そなたにオーラバトラーを二十機預ける。打ち破って見せよ」
「ははっ! 存分に打ち破り、カラカラ山岳地帯を抜いてみせましょうぞ!」
「ガラリアには足の早い機体ばかりを五機ほど預ける。ひとまず援護だ」
「承知しました。敵の後方を扼し、前線を援護すると共に本命を狙います」
騎士団長であるバーンには前線を任せ大部隊を与える。
そこにラウの国の目を引き付けて、更に後方を突く構えを見せたガラリア隊を配置する。バーンに与えられた機体と合わせて七個小隊二十一機が正面対応。同じようにガラリアに与えられた機体を含めて二個小隊六機が場迂回進軍を試みるという構えである。ラウの側も少なくとも三十機から四十機のオーラバトラーを用意する必要に迫られるだろう。タータラ城を守る兵も考えれば、クの国へこれ以上は攻められないものと思われた。おそらくはクの国もそれに合わせて反攻作戦を行うであろう。
「ゼットよ。この作戦はお前が要だ、最後の駄目押しを任せたぞ」
「承知しております。そのためのスキーズブラニルですからね。乗り手の騎士さえ無事なら可能な限りオーラバトラーを復帰させてみせまさあ」
ドライクは最初からお行儀のよい勝負など挑む気はない。
ゼット・ライトが考案した工房艦スキーズブラニルによって、壊れたオーラバトラーを修理して再投入する予定であった。カラカラ山岳地帯の砦に籠るラウの軍勢が、数に任せて消耗戦を挑んだら予定よりも早くドレイク軍の方が早く戦線に復帰するであろう。『民草の被害を抑えるためにカラカラ山岳地帯を攻める』と伝えたのは、印象を操作するためでしかない。
「ゼット殿も前線へ出られるのか? それは心強い」
「あくまで修理担当だけどな。暇な時は試作機を弄ってると思うぜ」
「ふふふ、問題ない。我が隊には七機ものビアレスがあるのだからな」
「そうなることを願うぜ。ただの損傷ならすぐに直してやるからよ」
新たに二十機もの大軍を与えられたのかバーン・バニングスは得意げだった。
支援のガラリア隊も実質的に指揮下にあり、しかも後を考えて温存するために抜け駆けしないことが分かって居る。まさに得意の絶頂であろう。余程の想定外が無ければ彼の栄達は約束されたものなのだから仕方があるまい。ゼットは仕上げ段階に入っているズワァースが忙しいと、彼の傲慢さには気がつかないようにしたのであった。
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「今日もいっぱい戻って来てんな。ズワァース弄る時間もねえや」
「この山は複雑怪奇ですからね。御味方もなかなか進めないご様子」
ゼット・ライトはカラカラ山岳攻略戦で後方配置されていた。
工房艦スキーズブラズニルで損傷したオーラバトラーの修理を行っている。持ち込んだズワァースは最初の頃に多少弄った程度で、今では時間のかかる生態反応を見るくらいなものだ。それくらいに忙しい。
「悪い事ばかりでもねえけどな。調子に乗って進まないから撃墜もされ難い」
「そういえばそうですね。遠間から撃ち合って損傷したような傷が多いです」
(原作よりも侵攻が遅いが代わりに撃墜数も少ねえ。練度が低いから動けてねえ反動かなこりゃ)
カラカラ山岳地帯はラウの南東に連なる山脈である。
東に海を湛え湿気を含んだ風が吹き込むこともあり、霧が深い場所もあれば怪しげな森が佇んでいる場所もある。奇妙な岩が林立し、あるいは大型の強獣が居た頃に砕かれた穴などが存在もする。そこらかしこに隠れるのに向いた場所があるので、待伏せがし易いのだ。
「四方八方を飛び回る技量がねえから後ろから撃たれてねえ」
「そうですね。正面からの向こう傷を直すのは楽ですがずっと続くと思います」
(侵攻は遅いが奪っている砦もある。奪い返される場所もあるが基本的にはタータラ城に向かって侵攻している。これは砦群という仕様上の問題と、ゴラオン建造を隠しておきたいラウの都合かな。ドレイクの方も都合がいいから気がつかないフリをしているのか……いや、二面作戦かもな)
原作のドレイク軍は数に任せて侵攻していた。
早い段階で育てた者を聖戦士たちに付けて投入し、あちこちの砦を同時進行で攻略していたのだ。それは制圧という意味ではスムーズになったが、砦群という仕様からラウ側には大きな損害では無かった。後ろから撃たれたり飛び出したところで横入りされて多数の撃破者を生んでいた。挙句の果てに同士撃ちを恐れて腕利きの聖戦士が射撃を控え、それを見たお偉いさんが地上人だから遠慮しているのかと寝返りを懸念したくらいだ。そのくらい泥沼な戦いであったが、この世界では良くも悪くも地道にそして着実に進行していた。
「このまま行くとタータラ城へは行けるが次期生産分が出て来るな」
「うちと同じくらいの規模かによりますがラウは大きな国ですかね」
(コントロールされた着実な防衛線……首都を囮にしての戦いとは剛毅な王様だな。しかもこのまま戦っても次期生産分の数次第では勝てる可能性が高い。策士としても一流ではあるがドレイクの方が一枚、ビッショットは二枚上手だな。この差がどう響いて来るか)
ドレイク軍は広大なカラカラ山岳地帯を斜めに抜けている。
タータラ城を目指す直線コースであるが、そのコースならば問題ないからこそフォイゾン王も無理に守ってはいない。タータラ城へ到達するまでの時間を稼ぎ、その間に生産した機体で城を護ろうとしている……そう見せかけているのだ。実際にはカラカラ山脈の奥側中腹以降にある深い森の中でゴラオンを建造しているのだ。完成が間に合えば挟み撃ちにする気だろうし、間に合わなければ最後の脱出拠点にしてナの国と提携しながら籠城する気であろう。そしてドレイクはその作戦を分かって付き合っているし、その間にビショットは悠々と反攻作戦を成功させるに違いなかった。
「おそらくだが予定が早まるぞ。クの国は新型のオーラボムで出て来るとよ」
「オーラボム? 珍しいと言えば珍しいですが、だからこその新型ですかね」
(そこは原作と同じだが本当にクの国単独なのかね? うちは技術漏洩に気を付けてるが……ルーサの女狐がショットに声をかけたかね? あいつはあいつで新型を考えているみたいだし、バイストンウェルを手に入れる軍勢を作るなら予算はいくらあっても足りねえだろうからな。ルーザに釘を刺すなり、女でも政治を動かせる議会の話でもすべきだったか……それはそれとして逢いたいとは思えねえんだけどよ)
上層部の会議で聞いたところによると、クは反攻作戦に打って出た。
クの国仕様のビアレスが製造され始めた他、新型のオーラボム『タンギー』の投入でラウの攻撃を留めたらしい。そしてドレイク軍の侵攻に合わせてラウの腰が引けたところで、整えた戦力で大々的な反撃を開始。今はミの国を守るための戦力との合流を目指しているという。このまま行けばラウへの逆侵攻もあり得るので、ラウの戦力は二分され、それだけドレイク軍の侵攻予定も早まるであろう。その背景にはルーザだけでなくショットの暗躍も見込まれていた。
「繰り上げた予定に合わせてウィルウィプスを就役。こっちの次期生産分とライネックの試験型を合わせた増援を使って、一気に侵攻するって感じかな。そうなるんだとしたら俺もそろそろズワァースを見切らねえとな。ズルズルと微調整にこだわるのは性に合わねえ」
「例の小型機はかなりの性能でしたし、下敷きにした分だけ期待できますね」
ドレイク軍では既に新規製造の生産が行われていた。
部門制にして生産効率を上げたことと、総旗艦ウイルウィプス建造に合わせて各所の生産ラインを小規模化。開発などの余剰業務を早めに切り上げて、浮いた人員を建造に回していたのだ。そのために少数精鋭化したし新型の性能向上も見切りをつけてしまったが、今更弄り続けても変わるような段階でもないと言える(だからこそ原作のショットはオーラバトラーを見切ったわけだが)。戦いは早くも次の段階に移ろうとしていた。
「あたぼうよ。専用武装も出来上がって来たし、作業台を空けねえとな」
そう言ってゼットは専用にしている作業台に目を向けた。
そこにはシンプルな顔をした黒い頭部と、その脇に角や牙の様な新型バルカンを備えた装備が鎮座している。専用の分割型コンバーターにはノズルが特殊なフレイムボム。そして右腕の装甲はバックラー型で左腕はシールド型、共に三連オーラショットが備えられていた。中でも凶悪なのは……股間部から臀部まで一体化した蛇腹式のショット・クローであったという。
という訳でラウへ侵攻しま、予定通りの苦戦をする話ですね。
ドレイク軍は正々堂々と言う名の看板=ハッタリを掲げました。
『ズワァース』オーラバトラーxyz
第三世代後半に登場する拠点殲滅型オーラバトラー。
その豊かな機動力は敵を倒すのではなく、防衛隊を突破して目的地に到達するための物。到着し次第に全火力を叩き込んで殲滅する悪魔の様な機体である。なお8メット8ルフトンと原作よりも体形は悪く、最高速度が360リルとやや遅いが、代わりに限界オーラ力は18に上がっている。
装備。
・新型FCS。
原作頭部からバルカンを除去し三つ目に。メインカメラは口部分。
最も大きな差は、視線に追尾モードと全力火力用の範囲モードがある事。
・バルカンファランクスVF-1。
頭部に外部装着する牙型・角型の試作型対空バルカン。
一門ながら大型の1D、二門でオート射撃の1A、四連装試験用である1Sの三タイプが存在する。ちなみに当たれば軽装甲のボチューンを倒せるだけの火力を維持するために撃ちまくるので、どれも直ぐに弾切れする。
・掃射型フレイボムIFX-3.01。
分割型オーラコンバーター内に設置されたフレイボムでノズルが特殊。
弾数はドラムロより少ないという意味ではビアレスと同じだが、燃料を大量消費して火力を増せる。このため全力を発揮すると速攻で弾が切れる。(トリガーによる油の消費なので人に寄るがドラムロ15~20回、ビアレス・通常のズワァース10~12回として、掃射一回で3~6消費するイメージ)
・三点バースト式オーラショット。
左右の腕に備えられ、あえて三か所に散るように設定された武装。
使い手の腕前で直撃を狙うよりも、自動的にそれなりの被弾を目指した武装であり、当然ながら直ぐに弾切れを起こす。なお当初は股間にも設置される予定であったが、両手で交差射撃すればまず当たることから見送られた。ガラバの為の試作でもある。
・蛇腹式ベロウズリム・クロー。
股間部から臀部に掛けて存在する新型の刺突型ショットクロー。
当初は腕で二重関節にする予定だったが、「オーラバトラーの相対距離は広いし意味がなくね?」とゼットが気がつき、こちらに変更された。何気にこの武装が一番重いので千切れば軽くなるが、止めて差し上げてください。
・分割型コンバーターUniversal。
分割型コンバーターにオーラ制御の可動式ノズルを備えたもの。
原作よりもゆったりと滑らかな移動を保証するが、副コンバーターと重量が変わってない、まだまだ新しい技術。ガラバの段階になって完成する。
・二連ショットクロー、オーラソード。
いつもの。
・オーラガトリングガン。
開発中。