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「性能は申し分ねえが、流石に残弾が……な!」
ズワァースがオーラショットを浴びせて態勢を崩す。
そこへ飛び込んで斬りつけるだけでボゾンならば難なく倒せた。これを逆にして、斬りつけてからオーラショットを放って離脱したとしても同じ事だ。問題なのはそれだけで残弾が心もとなくなってしまったことだろう。
(戦い慣れればこんなもんだが、大判振舞いしちまった序盤が痛いな。残りの弾はイザという時に取っておくとして、どう改良したもんかなあ)
そう言ってゼット・ライトはメーターを眺めた。
頭部に備えたオーラバルカン、コンバーターのフレイボム、両手のオーラショット。殆ど使い尽くしていて武装の見直しが必要に思えるのだが……必要かと言われればどれも必要で、削って他を増やしようがないのだ。一斉射分残ってるオーラショットは盾内分に自動給弾器を隠したので勝手に補充するが、その代りに戦場へ弾倉を持ち込んで補充し続けることが出来ない。性能が良いから増やしたいが、サイズ的に入れられるのはコンバーターくらいとなり……このフレイボムの掃射は破壊力や範囲という意味では群を抜いている。何しろ油を投射して火を点けるだけだから便利なのだ。一発撃ちすれば弾が長持ちするが、今ほどの火力が出せないので悩みどころではある。
(ともあれ七機だか八機は倒した筈だし、今日はもう隠れて十機を目指しながら、ダンバインが来たら足止めに徹するくらいでいいのかね)
ゼットの役目はガラリア隊の支援である。
突撃しているガラリアの後方を守り、続くトッドの突入を導いている。その意味では既に役目を果たしており、残る任務はゼラーナ隊が出て来た時に、ショウまたはマーベルのどちらかを足止めする事であった。そのくらいならば剣一本でやれなくはないし、変則的な攻撃であるクローと尻尾を用いればまだまだ戦えるであろう。
「おっ。本格的な戦いが始まったな……。という事は本丸に辿り着いたのか、俺も駆けつけるとするかね」
暫くすると天高くそびえる樹海の中で炎が燃え盛った。
察するにガラリアが連れているビアレス・マリーネ達が一斉にフレイボムを発射したのだろう。そんな事をする理由はゴラオンを守部隊との接触以外にあり得ない。ゴラオンを重視して一方向に放ったか、さもなければ周辺施設ごと守備隊を狙ったものと思われる。
(砦群を使った多層構造。それがラウ側のメリットでありデメリットでもある。連携して戦えると言えば聞こえはいいが……分散配置と言えなくもねえんだよな。しかも、自分たちの使っている地形を相手が使とは思っても居ねえ!)
ゼットは周辺地形を見ながら別の場所から駆けつけている敵を見つけた。
巨大な樹や岩を利用した複雑怪奇な場所に籠っている。だが、逆に言えば守っている側がその地形を守るのに浪費させられているのだ。しかも離れた位置で何が起きているかを即座に看破できるわけでもない。こちらの使った煙幕弾や、先ほどの火焔でゴラオンが危険と判断して駆けつけてきたのだろう。移動する場所が限られるからこそ、その姿も見つけ易かった。本来はそれが防御側有利に働くはずが、ゼット達に利用されているのだ。
『敵がここにも? わあ!?』
「そらよ! 尻尾もくれてやらあ!」
ゼットはズワァースを巨大な樹に隠して上昇させた。
トッドに倣った地形に随伴するというテクニックである。とうのトッドが使っているのを見たことはないが、もしかしたらこのレベルの相手に使う必要が無いのかもしれない。とはいえ剣だけで戦うならば使って損はないだろう。剣で斬りつけた後、斜め情報に移動しながら尻尾を叩きつけたのである。
『馬鹿な。クローだけで破壊されただと!? なんてパワー!』
「あん? 腕に注意してる? あー。クローだと思ったのか。ご苦労さん、お前も落ちて良いぜ」
ゼットは二機目に視線を向けながら急降下を掛けた。
そして強烈な斬撃を浴びせつつ、今度は回し蹴り気味に回転。尻尾の動きを制御して二機目を葬ったのである。これで都合、十機は倒した筈だ。消耗戦が続いて敵は三十機を下回っているものと思われた。ゴラオン専属で戦わなかった機体が居る可能性は高いが、それでも既に敵戦力は半減しているであろう。
「ゼット! 聞こえるか? ショウだ! ダンバインが駆けつけた!」
「ちっ! やっぱタータラ城方面に居たのか。だったらずっと向こうを守ってりゃあ楽だったのによお!」
不意にノイズ交じりの粗末な通信が耳に飛び込んで来た。
見れば赤い機体がこちらにやってくる中、緑色の機体がそれらを守るように飛んでいるのが見える。時折に火線が宙を焼き、代わりにミサイルの爆発が見え隠れした。おそらくはダンバインのオーラショットとライネックのミサイルであろう。
「紺色のボゾン……マーベルか! トッド。俺はマーベルをやる!」
「はっ! 手柄を譲ってくれるってか? 終わったら援護頼むぜ」
「任せな」
効率で言えば、ミサイルを残しているトッドがマーベルだろう。
いっそのこと残りの全弾を利用して吹き飛ばし、その時間稼ぎをゼットが担当すべきだ。だがそれをやったら相手の入れ替えでトッドに隙が生まれてしまうし、周辺ごと爆破なんて無残な殺し方をしたらショウが二重の意味で修羅と化しかねなかった。倒すとしても見えないところで殺すか、もっと品の良い殺し方にすべきだろう。それにミサイルはゴラオンに取っておくべきというのもある。
『貴方も地上人ね? ドレイクに力を貸す危険な男!』
「知恵も貸すこともあるさ、お嬢さん! 悪しきオーラ力を拡散させる訳にはいかねえからな!」
オーラに乗って放たれる強烈な意志。
統一された精神はショウよりも静かで、そして穏やかに燃えるような反応だった。ゼットはそれを見ながらこの時期のマーベルの揺るぎなさを思い出す。禅をかじって精神修養に当てており、浮き沈みの激しいショウよりも強敵である部分もあるだろう。
『オーラバトラーは危険よ! それを分かって居ながら!』
「既に広まっちまってたからな! だから提案したぜ。大半を捨てて、名誉で戦う酔狂な騎士共だけが死ぬべきだってな! いいか東部の金持ちお嬢! ギブン家が間違えたのは対話と論理を忘れた事さ。ドレイクは頑固だから、きっと説得には応じない! だからテロをしても許される! そんな馬鹿な理屈を信じたてめえらも同じ穴のムジナさ!」
剣と剣がぶつかるが大勢はズワァースの方に傾いて行く。
そもそもスピードが違うし、ドラムロを追い掛けていたところに横入りされたのもあった。マーベル機はフレイボムを有したドラムロに近い仕様で、ガッシュを持って居なかったこともある。牽制射撃で近寄らせないのが難しいのもあっただろう。ゼットの方が射撃ではなく白兵戦を選んで突っ込んできたので、剣を構えて対応してしまったのも失敗であったかもしれない。
『何を詭弁を! ドレイクが攻め込んでいる現状を弁えなさい!』
「てめえらの頑張り過ぎだ! テロを延々と繰り返して、挙句の果てに百機以上のオーラバトラーを量産してクの国に攻め込んだのは何処のどなた様だ? 傍から見ると戦いをしたいのはフォイゾン王なんだよ! てめえらは知らねえだろうが軍縮しようって話は既に出してんだ。男子三日逢わざれば刮目して見よ。あのドレイクが『戦わない方が有利』と見て無理に攻め続けると思うか? 今ごろは城攻めなんて中止してるよ」
ズワァースが斬り込むたびにボゾンが軋みをあげていく。
二合・三合と斬り合い、途中で離れて右回り、あるいは左回りで虚を突くだけの余裕があった。そこで射撃すれば用意に倒せそうではあるが、残弾が少ない事もあってゼットは射撃を行わない。かといってショットクローや尻尾で戦うほどの余裕はなく、仕方ないのでマーベルを追い詰めている様子をショウに見せつけて彼の動揺を誘うことにしたのだ。掛けている言葉は嘘ではないが本当ではない。ドレイクが当初侵略しようと思っていたのは確かだし、その頃のペースでドラムロを量産して居たらこっちもかなりの数になっただろう。ナの国が軍縮案に関心を示したから、要求機体を揃える戦略に舵を切っただけである。
『ではカラカラを攻め続けているのは何なの? 森を無為に燃やして!』
「はははは! そうか、てめえらは知らねえのか。時期的に教える必要はねえもんな。なら教えてやるよ。あれがフォイゾン王の正体だ!」
言葉では不利と見てマーベルは話を替えて来た。
オーラの具合的にはまだ乱れていないが、戦いで追い込まれているのとテロリズムに関しての問題が気不味いのだろう。クの国に関して気にもしていないのは、おそらく霊地から浚われたエレ・ハンムのことが関係していると思われる。公式的に受け入れているみたいな表明があるが、ミの国の事を思えば断る筈がないと理解しているからだろう。あるいは女の身としてエレが政略結婚をするのが気にくわないのかもしれない。
『何を言って……っ!?』
「暫く寝てな! もう直ぐ面白いもんが見られるからよ!」
話題的にチャンスだと見たゼットは機先を制した。
マーベルが操るボゾンの左側にシールドを掲げて突進し、素早く右回転。最速の左回り右向きからの横薙ぎを浴びせたがそれは囮。マーベルが後ろへバックしたところで尻尾を叩きつけて一時的に地面の方向へ叩き落としたのだ。
『ショウ! 何か変! おおきなのが!』
『炎が!? 切裂かれる! 何か出て来るぞ! まるでクジラだ』
「おっ。ガラリアが追い詰めたみてえだな。巻き込まれてなきゃいいんだが」
燃えている樹々を薙ぎ払うかのように光が放たれた。
おそらくはゴラオン出撃の為にオーラノヴァ砲で正面を薙ぎ払ったのだろう。だが原作と違い満身創痍であり、炎に巻かれて飛び出して来ていた。ヨタヨタとしながらも浮かんでいるのは流石だが、オーラバトルシップの中で最速を誇る筈の姿はそこにはない。おそらくは出撃前に損傷を受けたのと、十分なクルーが居らず疑似オーラ発生器がうまく回っていないものと思われた。
『なんだ今のは!?』
「あれがラウの国のオーラバトルシップ。それも攻撃用の砲撃艦なんだろうよ。大戦艦を持つだけで悪と言う気はねえ、アの国だって持ってるからな! だがアレを見てもフォイゾン王が正義だと言えるってのか!? パルプコミックよろしく正義の陣営と悪の枢軸が対決してると思ってるのかよ。王侯貴族の戦いは、国と国の戦いには互いの正義があるもんなんだぜ!!」
ゼットは最後の最後まで真実だけで殴り続けた。
けっしてドレイクが正義、アの国が正義など胡散臭い事とは言わない。大戦艦を持つことを悪と言わず、ゴラオンの性質を指摘しただけであちらの方が凶悪だとだけ説明した。アレを破壊に来ただけであり、ラウの国を攻め滅ぼしたいわけではないのだと匂わせたが、決してラウを制圧しないとは言っていない。そんな事をドレイクがいない状態で保証できないので、あくまでドレイクの側にも言い分があるとだけ告げた。
「おいこらショウ・ザマ! 俺に女を撃たせんなよ! 殺しちまうだろ!」
『ゼット・ライト! また貴様か! マーベルを人質にして言うことかよ!』
「てめえの女なら返してやるよ! トッド、お前はあっちに行け、ダンバインは俺がやる! お前の機体の方が適任だからな! ガラリアを助けてやってくれ」
ここでゼットは撤退用に取って置いた最後のオーラショットを放った。
マーベルなどいつでも殺せたのだと思わせつつ、ショウ・ザマの精神を揺さぶって自分の方に引き付けた。そしてまだミサイルを残しているであろうトッドのライネックをフリーにすると、ダンバインが落下したボゾンの方へ移動できるだけのラインを空けるように空中を移動したのである。
(これでゴラオンは落ちるな。問題は座礁して中破から大破で収まるって事だ。もう少し時間を稼がねえとな)
ゼットは飛んでいくライネックを見ながら、その場に乗ってダンバインを牽制し続けた。カラカラ決戦は終わったも同然であるが、ゴラオンが座礁を覚悟して何処かの砦に逃げ込んだら面倒な事になるからである。
という訳でゴラオンに突撃隊が攻撃を掛けました。
炎上してボーボーですが、まだ火が消えれば使えなくもない程度です。
まあ六機で突撃して、後続を待ってるので仕方ないですね。
ラウ側も守備隊が居る筈なので、ドレイク軍が勝利したけど逃げる事が可能な段階というわけです(座礁して砲台になることは直ぐにでも可能なレベル)。
●今週のNPC
マーベル。精神ド安定。ボゾンのせいで強くはない。
チャム。「うるさい!」
ショウ。まだメンタル低いです。でも強いです。
トッド。「何で撃たないだ!?」弾がねえんだよ。