気が付けばゼットだった件【完】   作:ノイラーテム

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ゼットの到達点

●

「ラウとの戦いは続くみたいですのう」

 

「そりゃな。ただ無意味な話し合いだったわけじゃねえ」

 

 ゼット・ライトは年嵩の鍛冶師と何処かでした会話をしていた。

 

既視感を覚えて思い返せば、以前に若い鍛冶師としていた内容とほぼ同じ内容だった。ラウの国との戦いが続くかどうかは鍛冶師にとって重要な関心事だ。新しさについて行けずラースワウ城に留まる老鍛冶師にも、活躍の機会を求めて工房艦に乗っている若い鍛冶師にも同じことであろう。

 

「うちが五十でラウが多くて八十。新型を考えればうちの勝ちですね」

 

「まあな。それとクの国がそろそろ出て来る。あっち方面にもラウのオーラバトラーが居る筈だが、時間を稼ぎながら戦うからボロボロだろうよ」

 

 ラウに持ち掛けた和平案は当然のように蹴られていた。

 

その時間を使って双方がオーラバトラーの補充を行ったが、数だけならばラウの方が多い筈だ。しかしドレイク軍は新型のビアレスに比重を移しているし、ビアレスの騎士型であるグルビデンスや攻撃型のライネックも微量ながら増やしている。戦力面では互角、戦術面ではドレイク軍の側が有利であろう。更にクの国が重い腰を上げる為、戦略面でも有利に立つのは間違いがない

 

「なら直(じき)に戦争は終わりですわ。忙しいのもこれで最後ですかのう」

 

「だといいんだがなあ。このまま行くなら和平を受けた方が良かったんだ。もう一波乱あるかもしれねえぞ」

 

 和平案など最初から両者の時間稼ぎに過ぎなかった。

 

クの国が美味しい所を持って行くのが嫌だから、ドレイクはビショットを引っ張り出して矢面に立たせようとした。大義名分的にアの国が速攻でタータラ城を落しても領土の大半を奪うなど出来ないし、だったらクの国が主力になるべきなのだ。逆にフォイゾン王が意地を引っ込めて和平を結べるならば、賠償金と砦の幾つかレベルで済んだはずだ。それをしないのだから数の勝負や意地の張り合い以外でも、それなりに採算があるのかもしれない。

 

「まっ、そうなりゃいつもの様にオーラバトラー造るだけでさ」

 

「それもそうだな。お前らはナの国に送っても良いパーツを選んどけ」

 

「「へい!」」

 

 和平案の余禄として最も効果が大きかったのがナの国との提携である。

 

ドレイクに積極的な野心がないと見たナの国の重臣たちは、女王シーラ・ラパーナを説得。ラウの国と行っていた相互技術提携を見逃す代わりに条約を結んだのだ。この事によりナの国はラウより発注された上級機ボチューンの受け渡しを行い、開発に必要な技術もタータラ城へと送った。それを見逃す謝礼として、一部技術をアの国でも受領。返礼としてアの国側も一部技術を、『ナの国にだけ』渡すことになったのである。

 

「おっ……。工房長、見てくだせえ! ガラバが!」

 

「もう戻って来やがったか。すると500リルは出てんな」

 

「装備付けてませんし、んなところでしょう。上に乗ってるか次第ですね」

 

「乗ってあの速度だと嬉しいんだが……。武装付けたら420か430ってところだろうと思っとくか。期待し過ぎるとガッカリしていけねえ」

 

 そうこうする間にガワだけ作り上げたガラバが戻って来た。

 

コックピットにコンバーターと後部パーツをつけて、前後の脚だけを搭載した形だ。長距離を飛んでいって戻る事しかできず、全備重量ではないので実戦での参考にはならない。標準的なウイングキャリバーとして運用するとして400リルのズロンが450~460リルになった程度、目的のオーラファイターとしては420~430が限界であると思われた。

 

(と、まあ。馬鹿正直に作り上げたらこの辺が限界だろうな。とはいえ、後の技術や概念を源流に持ち込んだらいけねえって話はねえんだ。しっかりと活用させてもらうとするかね)

 

 ゼットはここから更に改良する気でいた。

 

機動力を強化・制御する技術に関して、『聖戦士ダンバイン』の時代は機体の変形によるノズル集中と主器・補器による出力強化くらいしか概念が無かった。ゼットが考案したようにノズルの方向を制御して軌道を滑らかにさせたり、その発展系としてノズルの存在する部分だけを伸ばして活用するガンダムGP01系・EMS-04ヅダ系の技術概念など無かったのである。面白いのはガウォーク形態の足によるノズル制御など、近い概念そのものは存在していた事だろう。

 

「ガラバが降りてきたら所感聞いてオーラバリア取り付けんぞ」

 

「へい。何処主体にしますか? やっぱ本体の前面に盾みたいですか」

 

「いや、鼻先からコンバーターに発生用のブレードを付ける。体当たりに使うって意味じゃねえぞ。本体の前に出すのは同じでも、三角形か円錐になる様に斜めのバリアを造るんだ。どうやら俺らが吸ってる空気ってのは、速く飛ぶと邪魔になるみたいでな。風を横に受け流す」

 

 空気抵抗の概念は昔から存在した。

 

航空力学が存在するのだから当然だが、この当時はバリアをあくまで防御用としてしか考えてなかったのだ。ビアレスやズワァースもあくまで防御用としてのみ使用しており、機体の空気抵抗を減らすという意味では使って居なかったのである。そして後のロボットにおいても、それを行うのはΞ(クスィー)ガンダムまで待たねばならず、しかも音速の壁を突破するために使うのみであった。空中戦を前提とする聖戦士ダンバインの世界であれば、上級機体は普通にマッハを越えるのでオーラバリアがあれば有用であろう(250リルでマッハ1)。

 

(ブブリィが600リル出せてるのは、単純な本体出力もあるが流線形の形状と強力なオーラバリアがあるってのも理由かもしれねえな。途中から足を止めて浮き砲台になっちまうが、そこは砲撃戦の為に火力集中するって状況なら仕方ねえ。そん時は耐久力上げるために使ってるんだろうし、オーラバリアは使い道次第ってことだろうよ。どちらにせよガラバで二種類のオーラ制御をシームレスに切り替える技術を確立しときてえ)

 

 ゼットは最大加速を出す時や突撃時に限定してバリアを使うつもりでいた。

 

ただしそれは可能というだけであって、常時行うという訳でも誰もが行う訳でもない。使い分けというか複雑な動きに対処できるのは飛行機乗りであったトッドくらいだろう。そこで突撃の為に最大加速を得たり、長距離移動用に巡航速度で移動し続ける時にオーラバリアを張り、普段はノズル制御に使って回避専念するくらいのつもりでいたのであった。

 

「伝導用のブレードを設置したら移動速度をもう一度チェック。アレは?」

 

「回転機構の組み上げに成功したそうでさあ。何本か今日明日には上がると」

 

「よし。二本は中脚として設置、余裕があればガトリング砲として取り置きだな。オーラキャノンはその辺を済ませた後でいい。何だったら二号機は武装を含めて、てめえらに試験型として任せたっていいぜ。ひとまずは基本機能の完成を目指す」

 

 ガラバは順調に制作されつつあった。まずは飛行試験、次いで艤装の完了。

 

ただしオーラを伝導し易い素材を使ってオーラバリアを導くのは良いが、それを使った時に後ろ足にしたノズルの操作と命令が混同しないようにしなければ完成にはならない。一応はコードのような物も存在するが、オーラマシンはオーラで漠然とした操作もやってしまうものだ。場合によってはオーラを通し難い素材を途中に噛まし、それがバリアにだけ作用する様にもしなければならなかった(マシン事態に効いたら事故だし)。以前から素材の使い道は理解していたが、ナの国で実用していると聞くまではワザワザ使おうとは思わなかったパーツである。

 

●

(たぶん、こいつを上手く使ってビルバインの変形に持ってったんだろうなあ。俺らは知っていても使う気は無かった、変形することに価値を見出さなかったからだ。さて……この機構を使うとしたら何に使うべきかね)

 

 ゼットはオーラを伝導し易い素材と、伝え難い素材を眺めた。

 

ビルバインは可変するが飛び易い形状という以外にあまり意味がない物だと思っていたのだ。仮にゼット達が同様の機構を作り上げてもそんな性能であっただろう。だが飛ぶ時は手足への伝導を下げ、エネルギーロスを少なくして長距離移動をやり易くする。人型形態の時は武装へとオーラが集中し易くまるとしたらどうだろうか? ビルバインはオーラ限界が無い事に加えて、武装の方でオーラが高くないと起動できないが強力な装備を用意している。その状態で更にオーラが集まり易いとしたら、オーラビームソードのような奇妙な武器が出来上がってもおかしくはないのかもしれない。問題は今更になってビーム兵器を開発しても遅いので、別の使い道を考える必要があることだろう。

 

(判り易い使い道としては蛇口のホースなんだよな。そいつで威力を増すが、そうでない時は普通の状態にする。後は要所のカバーとして使っておいて、パーツがオーラの暴走で破壊されるのを防ぐわけだ。仮にオレがショットならそういう使い道でズワウス本体を守るし、長距離移動用に制御系を切り替える。基本的には無敵のスーパーロボットだが、相手が逃げ始めたり、ヤバめの大火力を見たらチャージ中に移動しちまう訳だ)

 

 想定する敵の能力が段々と輪郭を帯びて来る。

 

ナの国との技術協力そのものは浅く、それほど目新しい事があったわけではない。相手方もそういう技術ばかり選んでいるし、こちらも似たようなものだ。だが概念的には別で、こちらが基礎能力の向上や強力なバリアないしオーラキャノンの火力向上。そんな事に使っていた能力を、相手は使い分けていたと聞いた意味は大きい。この技術が確立していた時ならば、そこまで気にもしなかったろう。オーラ制御を確立するまでは、バリアすら任意で張ることは不可能だったのだ。せいぜいが威力を増したり、防御力を高める程度であった。

 

(漫画や小説でありがちなのは相手の攻撃を無効化する剣や拳だが……。オーラマシンの特性上そいつは難しい。なんたってオーラソードに流すオーラが散ってしまうからな……やるとしたら没にしたライネックの投擲剣あたりか? あれなら多少は意味があるが……オーラ制御の切り替えと、ホースの穴を細くする方法だけで済ませるべきか……ガラバで試せるのはそのくれえだしな)

 

 ゼットはやるべき事への義務に対して欲求がストイックなタイプである。

 

ガラバを早々に完成させつつ、組み込める技術のテストも早めに見切りをつけた。ガラバは現段階で原作以上の完成度になるのは分かっているし、オーラ制御技術の切り替えも組み込めばそれ以上になるのが分かって居るくらいだ。本命ではないという意味で、焦らずに可能な事だけをやる事にした。

 

(俺がショットの予想をするように、あいつも俺の予想を立てている筈だ。これまでの俺のことを考えれば、ガラバの二機目・三機目で大胆な試験型を用意して来る。そいつの中にミサイル主体のトッド機が二号機、オーラキャノンのチャージ型またはランスチャージの突撃型が俺の本命だと考えそうだな。んでズワウスにそいつを回避し易いようにすればいいわけだ)

 

 ゼットは自分が出来ることを相手も出来ると想定して見た。

 

実際にゼットは彼に野望を表に出さないように気をつけろと忠告したことがある。積極的に邪魔する気はないが、ドレイクが要請すればあちら側に協力するだろうと考えると思われた。もちろんショットに協力する可能性もあるのだが、そんな都合の良い事を考えないのが科学者というものだ。その上で今まで以上の機体を考える上で、ゼットを目標にした方がやり易いのも確かだろう。

 

(ガラバのような一撃離脱型の機体は雑魚を倒すには便利だがそれまでだ。ズワァースもあるにはあるが、強いが素早くて武装が沢山あれば強いと考える奴の理想を体現したような機体でしかない。うん、だいたいの方向性がつかめて来たぞ。スーパーロボット……いや、Gガンダムみたいな機体を奴は目指すつもりだろう)

 

 ゼットはショットの思考をトレースしながら相手方の能力を見切った。

 

それで倒せるわけでもないが、能力さえ予想できれば対処も可能であろう。ガラバや今のズワァースでは倒せないようにセッティングされ、可能な限り強力になるように仕上げられた機体であると思われた。その傾向に関してゼットは転生前の知識から近い能力の機体を思い浮かべていく。

 

(バーンの野郎はこのところ焦ってやがるから手下ではなく同盟者なら引き込めそうだ。ゴラオン狙う時の戦力独占も、ガラリアに手柄を渡さないためだったと考えれば分からなくもないし、狭量な態度が自軍の勝利を阻害していたと思えばドレイクだって気分が悪くなる。いずれどこかで関係にヒビが入ってショットが引き込むってところかな? そんで奴にズワウスを……何なら試作機を傑作だと言って渡せばいい。一機目は剣と盾を持った試験機で盾にオーラを阻害する素材を盛り込み、二機目は射撃可能にしてバーンを切り捨てられるようにするってところか)

 

 ゼットは原作や外伝の知識も含めて想定を進めていく。

 

勝利しているからまだよいが、今のバーンはあまり立場が良くないのだ。ミの国を荒したこともあるが、そもそも作戦の組み立てが上手くない。原作ではそのせいで負けた事も多かったし、ガラリアに与えられるはずだった余剰戦力を独占して渡さなかった事もある。もしあれでガラリアが失敗して居たら、彼女よりもバーンの方が叱責されていたはずだ。ショットも庇う理由がないので原作の様に一介の兵士に落されるほどではなくとも、綱紀を乱した罪も含めて普通の隊長職への降格人事もあり得た。

 

(これに対してこっちは見せ札としてガラバを用意する。なんだったら弟子共に任せてトッド用の二号機も用意するか。その上で俺用にズワァースの改良で実験しつつ本命機を用意する。普通の剣とオーラを阻害する投擲剣とガトリング……いや、ハルバードってとこかな。基本はオーラの切り替え主体で、コンバーターを強化して火器は積めたら積むってとこかね)

 

 最終的にゼットはダンバインに近いコンセプトに戻していった。

 

出来るだけ性能を高くして白兵戦でトドメを刺す仕様だ。最初はガトリング砲を持たせようとしてみたがシックリ来ない。バイストンウェルの仕様とオーラバリアによって火器は通じない可能性があるので火器は最低限。場合によってはミサイルが飛んでくることを含めて対空砲で良いくらいだった。

 

(ん? 待てよ。いまんところ俺は緑色の機体に乗ってて……。複数のコンバーターで高速機動する白兵戦の機体? そりゃヴェルヴィンじゃねえか。ヒントにするにしたって少しくらいは独自要素を出さねえとな)

 

 そしてゼットは集大成となるオーラバトラーの方向性に気がついてしまった。

 

オーラファンタズムというプラモデル規格に登場する、出渕裕版のビルバイン。それが緑の騎士ヴェルヴィンであった。




 という訳でそろそろ大詰めです。
ナの国とは敵対しないことを前提にした緩い提携。ラウは窮地に追い込まれました。後はビショットやショットが動くかどうかでしょう。

『ガラバ』
 後部パーツで補器追加で400リル越え。
オーラ操作でノズルとオーラバリアを使えば、Ξガンダム並みの速度に。
ただし装備は基本的に変わらず、オーラ操作しやすいだけです。
(関節改良により、おもちゃのガラバ並みには動きますが)

『オーラを通し易い素材と、通し難い素材』
 次なる設計の為に導入した概念ですね。
原作では語られないだけで、存在はしてると思います。
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