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「おっ。ようやく完成したのか! オレに使わせてくれるんだろ?」
「つーか、お前さん以外は使いこなせねえと思うぜ。今のうちに教範をつくってくれよな」
ゼット・ライトは新型機を伴い再び前線へやってきた。
オーラファイターであるガラバの試験運用をトッド・ギネスに託し、自身は改良型ズワァースを操ってのことである。他にも通常仕様のズワァース三機が生産されガラリアたちに突撃隊に、数機のライネックが緑備えの麾下に渡されることになっていた。
「しかし、よくあれだけ持って来れたな。オーラシップの数が足りねえだろ」
「ショットの奴がバラウやズロン用の自動操縦装置を作ったんだ。勝手に飛ぶ」
「へー。流石はオーラマシンの生みの親だな。まだまだ他の国には負けねえな」
「自前の部隊も作ってるみたてえだし、人員のやり繰りも必要なんだろうさ」
ゼットが前線に出てきたのは上からの命令である。
ショット・ウェポンにも動員が掛かっており、ラウの国との本格的な戦いに突入しようとしていた。ショットはそれに先だって自動操縦装置を発表したのだ。なんでも強獣の中でも群生生物の性質を利用したものと、光源への定行性を持つ習性があるモノを利用した装置らしい。元はミサイルの誘導装置を開発しようとして、上手くいかなかった技術を焼き直したという事である。
(ここでこんな技術を公開したって事は謀反を起こす気はないのか? いや、その気配を消す為かもしれんな。どのみち、今のショットの戦力じゃあ単独で謀反なんざ無理だ。情勢待ちと戦力育成を兼ねて時間稼ぎ用に技術を公開したのかもしれねえな)
ゼットは自動操縦という微妙な技術に裏を見た。
ここのところショットが何を開発しているのか分かって居ないのだ。一応はライネック・キャノンとオーラ操作技術の面倒を見ながら、今回の自動操縦やら一部の技術開発をしていることになっていた。もちろん野心など持たずに普通に技術開発をしている可能性もあるが、戦力増強にはなっても決定的な戦闘力向上技術ではなく、オーラバトラーの開発でもないことに怪しさを感じたのだ。ショットが『直接』手掛ける技術として似合わないのもあった。
「その辺の事情は知らんが助かったよ。ラウの国は数を活かして攻勢に出たり下がったりを繰り返してるんだ」
「こっちが有利な戦場では下がり、そうでない所は出る? 随分と常識的だな」
陰謀に関してゼットもトッドも関わる気はないが、対処については別だ。
ゼットは念の為に対処することを考えるタイプだが、トッドは端からその手の話に加わる気は無かった。それらしい話が出て来ても気にすることなく、目の前の話題にだけ関わろうとする。軍人という者はそんなものだし、首を突っ込んで一緒に始末されるよりは、対処できるならするし無理なら長い物に巻かれるくらいのつもりなのかもしれない。
「とはいえ作戦としては正しんじゃないか? だからガラバは凄い助かるぜ。ガラリアの奴もマリーネが痛んで来たんで、首を長くしてズワァース待ってたんだ」
「そいつはすまなかったな。でもトッド専用機造るか悩んでたんだぜ」
「おっと、そいつは惹かれるな。ま、一号機が痛んだ頃に乗り換えるよ」
トッドは軍人らしく必要なら乗り換えるというスタンスのようだ。
原作でも気に入っているビアレスと新鋭機のライネックを何度か行き来している。ビアレスの方が相性が良く、『ショウに勝ったことがある』という思い出補正もあったが、最終的には性能の高いライネックの方を選んでいた。おそらくはガラバも必要なら乗るし、専用機があれば嬉しいと思いつつも、仮に更なる新型が出たらまた乗り換えて任務として挑むのだろう。そういった部分は何のかんのと言って軍人として鍛えられた部分なのかもしれない。
「基本機能は見れば判るな?」
「そりゃな。一撃離脱すんなら、大砲よりミサイルの方がありがたいね」
「そいつは一撃離脱じゃ駄目な時用だよ。ロングレンジで牽制でもしな」
ガラバ一号機は原作に忠実なのでオーラキャノンが最も火力が高い。
しかし戦闘機乗りだったトッドとしては、ミサイルを翼下にぶら下げる方が馴染みがあるのだろう。弟子たちが作っている二号機はそんな感じの武装だが、一つ問題がある。この世界のミサイルはオーラランチャーの発展系でしかないので、速度が遅いのである。言ってるほど加速時には使えないだろう。
「だが基本機能って事は、そうじゃない能力があるのか?」
「オーラバリアを標準的に使えるんだが、それを使って空気抵抗を越え易くする。お前さんに判り易く言うと、トムキャットは翼を畳んで加速するが……ガラバは三角錐のオーラバリアを機体前面に展開して加速する。そんでドッグファイトをする時にゃあ後ろ脚に集中させて急旋回がやり易く成るって寸法だ」
トッドはその話を聞いた時に思わず口笛を吹いた。
アメリカでF-14トムキャットとF-15イーグルと言えば花形の戦闘機である。トッドも憧れた事はあるし、乗りこなしてエースパイロットになる夢があったものだ。そのために日夜訓練していたし、機体としては別物であっても乗ってみたいという気持ちには変わりなかった。
「スピードは? ウイングキャリバーより出んのかよ?」
「武装無しまたはバリア展開時は500リル……マッハ2ってとこだ」
「そいつはスゲエ。バリア展開しながら撃てんのか?」
「理論上は撃てるぞ、威力が減衰するだけでな。お前さんが慣れればバリアを外してぶっ放し、また再展開も出来なくはないだろう。ただ……慣れって意味じゃあ、バリア張って突撃してドックファイトしながら撃ちまくる方が意識的に切り替えれると思うぞ。そっちの場合は足に集中するから、特に干渉せんしな」
バリアを能動的に展開できるからと言って瞬時には出来ない。
普通にそのまま射撃したら、お互いの攻撃が減衰してに牽制弾を撃ちまくることになるだろう。その意味ではオーラキャノンで相手の編隊を牽制するか、ガトリング式のオーラショットで少しでも削りながら突入するくらいだろう。だが、そんなことをするくらいならば加速モードから機動モードへの切明に馴れた方が早いのだ。その場合は勝手にオーラ操作の位置を入れ替えてくれるので、無駄なく戦闘できるのである。もちろん意識を切り替える練習は無駄にはならないが、そこまでやっても宇宙戦艦ヤマモトヨーコに登場する様な必殺技に到達するのは難しいであろう。
「そんで今の戦線は何処まで行ってんだ?」
「あんまし砦を落せてねえな。拓けてる分だけ山ん時よりマシだけどな」
「は? ウイルウィプスで進撃中に後ろから狙われるんじゃなくてか?」
「そうだぜ。信じられんことに砦を落としたり取り返されながら、前時代的な戦闘を続けてんのさ。成功体験ってのは怖いねぇ」
ゼットは最初、タータラ城までの領域を空間要塞にしているのだと思った。
山野に潜み、奇襲こそしないが好きな位置から強襲していく。迎撃に出てきた部隊が多ければ引き揚げ、その間に別部隊が襲うという戦術だと思ったのだ。それがトッドの話では、カラカラ山岳地帯と同じように地道に都有にある砦を落としながら進んでいるという。
「するってーと何か? 五つも六つもある砦を維持しながら進んでると?」
「そう言ったろ。びゅーんって相手の城を落すんじゃいけないのかねぇ」
(アホだ……アホの所業だ。この作戦を立てたアホは何処の誰だ!? って指揮官バーンの奴か! 原作だったらこの時期にはバーンが放逐されてるからな。こんなところで原作との差が出てんのかよ)
前にも言ったかもしれないがバーンの指揮は上手くない。
場当たり的に正面からの作戦を実行したり、今までの作戦の延長戦で行動するのだ。流石に『きっとこうなる』みたいな過信はしていなかったと思うが、作戦を読まれたり、相性の差などで押し負けたりして何度も負けている。おそらくはミの国やエルフ城で負けていないのと、カラカラ山岳地帯でやった地道に砦を落としながら進む作戦の成功体験で同じことを繰り返しているのだろう。
「道理でガラリアの突撃隊まで消耗してるはずだぜ。戦力分散じゃねえか」
「だから戦力呼び寄せたんだろ。お前さんの船まで傷ついてたからな」
「スキーズブラズニルがか!? あれは艦隊運用に参加する船じゃねえぞ」
「知るかよ。例外はねえってバーンの奴が使える船やウイングキャリバーは全部動員したからな。流石にドレイクの奴も怒って、それならウイルウィプスも動員してやろうと実質的な最後通牒さ」
ラウの国が砦に戦力を置いていたので、こちらも戦力を置いたらしい。
カラカラ山岳地帯の様に無数の砦があるわけではないが、それでも一つや二つではない。タータラ城を目指す本軍と、カラカラ山岳地帯入り口を守る砦。そしてその間にある幾つかの砦全てに、三機一組の小隊なりドロを中心とした治安部隊を置いたとしよう。80機近いボゾンとそれに見合ったグナン(ドロの派生種)を持つラウの国と、上級機体は多くてもオーラバトラーは五十機のドレイク軍。さらに襲撃側は場所を選べるのだ、どちらが有利になるかは一目瞭然である。ドレイク軍は手元の緑備えを出して火消しに回って損傷を重ねたのだろう。
「アホ過ぎるが……だからこそ罠だな。おそらくドレイクはバーンを更迭して一気にラウを押し込める気だぞ」
「おっ? ようやくかよ。バーンの旦那もこれまでだな」
「あいつは好き勝手やり過ぎた。自業自得だよ」
視野狭窄的する作戦だったが、それはバーンが采配を振るっているからだ。
戦闘力の高い優秀なドレイク軍を預かって、パワーで押し込んで来た戦い自体は間違いではない。だがゲリラ戦に近い様相を呈して来たのに、その対策をせずに延々と同じことを繰り返すには問題が多過ぎた。原作の様に作れる物を片っ端から造っているわけでもないのだ。バーンの対応は前時代過ぎたと言える。それに対してドレイクの対応を見ると、意図的に戦力を集中させたと思えるのだ。
「おそらくは砦に籠めてる戦力を呼び戻し、増援込みで一気にタータラ城を目指す作戦に切り替えるはずだ。その上で緑備えは、砦にはこっちが居ないと気がついて後方に回った敵を叩き潰す作戦になると思うぜ」
「ん? ああ、そうか。こっちが付き合わないならそうなる作戦だったのか」
「ドレイクもバーンの作戦じゃマズイと分かってもやりようが無かったんだろ」
「作戦じゃラウの方が一枚上手、策略じゃドレイクの方が上って事だな」
ラウ側の作戦が厭らしいのは、仮にバーンが砦を無視しても良かったことだ。
大軍を率いての米帝戦術で一気にタータラ城を目指すならともかく、互角の相手がウイルウィプスのような目立つ目標を連れてゆっくり移動しているのだ。ゲリラ戦を仕掛ける側としては、砦から山なり谷に切り替えて潜むだけである。その場合はドレイク軍側に砦を維持しない自由度が生じてしまうが、彼我戦力が一目で判り易いので勝てる相手にだけ強襲作戦をすれば良い事になってしまう。だからこそバーンは悪手と判って作戦を変えられなかったのだ。そしてドレイクはその失敗を既定路線として、戦力を一気に呼び集め、様相が変わってもおかしくない舞台を整えたのだろう。
「敵はこっちの補給線を分断しつつ、カラカラの入り口を抑えてから来る」
「こっちから見える敵は三か所から四か所、ウイルウィプス行きを入れて五つってところか。んで必要最低限に絞ってオレらが行くか、ウイルウィプスごと引き返す感じってわけだな」
ドレイク軍にとって必要そうな場所を襲う格好を見せつつ、多面展開。
ラウ側の戦術としてはそのどれでも良く、本命など存在せずに勝てる場所で勝つ戦術である。対してこちらはその作戦に取り合わず、いっそのこと補給路も捨てて、カラカラ山脈の入り口にだけ十機程度から多くて二十機の戦力を配置。残りを手元に置いて、緑備えだけで敵部隊を叩くものと思われた。
「補給線も砦も必要なら、そん時に抑えればいいのさ。それがオーラシップには出来る。いや、オーラバトルシップに載せた物資だけで当面戦えるんだ。砦に執心するバーンの戦い方は細心過ぎだ。まっ、直ぐにでも停戦して陣取りゲームで領土が決まるなら話は別なんだが」
「何の冗談だよ。それで済むならベトコンは居ねえっての」
「ただ中世はずっとソレで、しかも成功してたからなあ」
バーンの戦い方は国境線を変更する古い時代の戦いである。
不満をぶつけて戦いに勝利し、領土を奪って我が物とし、その変更を相手に呑み込ませるための地味で長い戦いだ。しかしソレをオーラマシンで一気に国土を制圧する様な戦いに導入して上手くいくはずがない。あちこちで不満の種が続出し、レジスタンスが戦い続けることになるだろう。事実、原作ではラウが陥落しても戦力は国外に逃避して……結局『浮上』で地上に追放されて全滅するまで戦い続けたのだから。
「当て推量で言えば、ここでビシっと相手が折れる様な戦い方をした上で、カラカラ山岳地帯だけ接収して町や都市は奪わない。ラウに花を持たせて停戦ってハラだと思うね。全土を制圧するのは、そこで『遠慮するとはドレイク・ルフトという男は案外、話が分かる人かも』って思わせてからで十分だ」
「何が遠慮だよ。国境の資源地帯が目的なんだろうに」
「気がつかない奴が悪い。それが政治ってもんだろう」
バーンとドレイクの差は目的意識の差であると思われた。
妥協できる範囲で国境線を変更し、次が有るならば次に備えるやり方だ。カラカラ山岳地帯さえ抑えれば次回の侵攻時が楽になるし、無理に一回で占領しなくて良いのである。バーンにはそこまでの政略的な知識は無いし、そもそも停戦交渉などの内容を左右できる地位にはいないのである。これが同程度の地位であっても、騎士団長であるバーンと、家老であるズロムの差であろうか。ドレイクはズロムより更に上の視野を持ち、バイストンウェルをも睨んでいるのだから役者が違うと言えばそれまでの話であろう。
「そういうのは別にいいんだよ。結局、オレらは敵倒せばいいんだろ」
「そうだな。ガラバ、ズワァース隊、それと上級機体がもう一隊くらいか。それで『相手を包囲する』か『全員で二十機か三十機』、さもなきゃ『フォイゾン王と聖戦士ご一行様』を一気に落とせば終わりだろうな。連中はタータラ城に籠らざるえお得ないし、そうなりゃ乾坤一擲の大博打にも出れなくなる。戦いは終りだよ」
ラウ側は極めて上手く隠しているが、勝利条件もあるのだ。
ラウの軍人やフォイゾン王が精神的に折れてもう戦えなくなれば良いのである。のこのこ出てきた来た敵を包囲しても終わるし、大多数を撃墜してもう戦えないと思わせてもいい、あるいはフォイゾン王と聖戦士が前線に出てきているならば彼らを倒しても戦争は終わるだろう。何しろ重要なのは精神的支柱をへし折り、停戦合意にこぎつける事なのだから。
「ならオレはショウと決着付けさせてもらうぜ。ガラバなら行けるんだろ」
「ダンバインのままか、ナの国が送ってよこした機体なら問題無いぜ」
「前に作った小型機くらいの実力って評価だっけ? ま、それ以上なら注意しとくよ。ダンバインで出て来たらショウの最後だ」
そう言ってトッドは掌に拳を打ち付けた。
このところの鬱憤を晴らす良い機会であり、ライバルと目したショウとの決着の日が来るのだ。新型の存在もあり、彼の気力はこれ以上ない程に充実していた。
という訳でラウの国との決戦です。
バーンがアホなのは、追放されて一皮むける前なので勘弁してください。
介入して助けてやろと言う気が起きなくなる性格なのもあります。
(追放されてクの国に流れた頃にはかなりだいぶ丸くなって、勝利の為に奮起出来る男になってますが)
ラウ側の作戦。ドレイクの元から戦力を引っ張り出して決戦に持ち込む。
ドレイクの作戦。あえてラウの作戦に乗り、精神的に叩き折る。戦力は用意する。
『ガラバの戦場特性』
倒せるのは一度に二・三機だが、一撃離脱で次の戦場に行ける。
『ズワァース隊の戦場特定』
到着した場所の戦力を壊滅させる。継続戦闘は困難。
『ズワァース改駆逐仕様の戦場特性』
通常攻撃が範囲攻撃で二回攻撃である。継続戦闘は難しい。
『ボチューンの戦場特性』
回避+1・高度変更コストー1(山や谷に隠れ易い)。