気が付けばゼットだった件   作:ノイラーテム

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総力戦

●

「ラウの国が勝つ方法は少ない。それは戦場で儂を討ち取る事だ」

 

「ならば御屋形様。相手をする事はありませぬ。戦いは我らにお任せください」

 

「そうしたいのは山々なのだがな。フォイゾンならば城を捨て、自ら剣を抜いてやって来よう。全てを犠牲にしてお主らを足止めし、必ずや儂の元を目指すであろう。城を捨てて逃げ回れば愚王であるが、戦い続ければ不屈の戦士と強弁できる」

 

 イメージ戦略に過ぎないが王が陣頭に立てば士気が向上する。

 

王が城を捨てれば逃げたと言われるが、前に出て戦うために飛び出せば美談になる。それだけでラウの兵士たちは奮い立つであろうし、オーラ力は精神力の影響を受けるから小さな差でありながら長期のスパンでは無視できない事になるだろう。だが、それは小さなことに過ぎないのだ。ゴラオンが落ちた以上はタータラ城など風前の灯火に過ぎない。ならばフォイゾン王が出撃することで、ゲリラ戦を非常手段ではなく勇者が魔王に挑むかのような構図にしてしまえばお釣りがくるという事であろう。

 

「それを考えれば儂自らが罠となるのが最も倒せる可能性が高い」

 

「ですが御屋形様。それは危険ではありませぬか? ご再考を」

 

「ふふふ。バーンよ、ワシは罠となると言うたのだ。囮ではない」

 

「では勝算を持ってフォイゾンを迎え討つということなのでしょうか? では、このバーンだけでもお傍に控えさせていただきたい。必ずやフォイゾンめを討ち取りましょうぞ!」

 

 王であるドレイク・ルフトの言葉に意を唱えてでも心配する忠臣。

 

それはバーン・バニングスの分かり易い演技であり、功績を稼いで若手ナンバーワンの騎士としてリムルの婿候補としてのアピールであった。ビショットの登場により優先順位は下がってしまったが、これまで騎士団長として部隊を率いていたのは彼である。ここでフォイゾン王も討ち取ってしまえば一気に婚約者に躍り出ることが出来るかもしれないと判断したのだろう。

 

「よかろう。次の戦は儂が直接指揮を執る。バーン、トッド。それぞれの指揮権を一度取り上げるぞ、すまんな」

 

「……いえ、構いませぬ。元より御屋形様のもの」

 

「オレは指揮するとよりショウと決着付けたいですね」

 

「その意気やよし!」

 

 ドレイクの方が役者が上というべきだろう。

 

バーンがどう出て来るかを承知の上で、ドレイクは合法的に指揮権を取り上げてしまった。これまで勝利して来たのはバーンではあるが、用意された戦力をそのまま投入したに過ぎない。それは功績ではない、むしろ損害の方が多かったと言われてしまえば頷く者も居るだろう。勝利ではあってもドレイクの意図を台無しにしたこともあり、先ほどの『傍で戦う』という言葉を目立ちたがり屋として処理せずに、指揮権を奪う理由として利用されてしまったのである。

 

「ズロムよ。正面は任せる、タータラ城を目指すと見せよ」

 

「はっ! さながら時間の勝負と見せるわけですな?」

 

「そうだ。後ろから迫る前に城を落すかのように装え」

 

「おまかせあれ。陛下はフォイゾン王の意図を見抜いたと触れ回りましょう。今ごろ決戦である、勝者に従えと申す伝えます」

 

 ズロムは家老であるが指揮権に関してバーンと同程度である。

 

理由としては政治的な理由もあって、独自の行動権を付与されているからそちらに力を割いているのだ。初代旗艦であるブルベガーを乗艦として交渉を任されたこともあり、特使としての性格もあって世に知られていた。そして何より、彼は今回の作戦を事前に聞かされていた一人である。彼が多面的に軍事を見ているからこそ、バーンは戦いの専門家としてこれまでは重宝されていたのだろう。

 

「いかにしてフォイゾンと対するか、御屋形様の存念をお聞かせ願いますか?」

 

「基本案は、後ろから迫る敵に対し厚い左翼で受け止め、右翼を回り込ませる」

 

「ということは敵が右翼を薄いと見て攻め掛かった場合は左翼で叩き潰すと?」

 

「皆まで言わせるな。その場合はいちいち回り込まず、挟んで押し込んでいくだけだな。戦場がこちらの思惑通りに行かぬのであれば、その場で修正するだけだ」

 

 バーンが確認するがドレイクはシンプルな迎撃案を用意していた。

 

カラカラ山岳地帯はラウの南東部なので、そこからタータラ城を目指すとどうしても西側がラウの勢力圏になる。だから左翼に厚みを持たせることになるので、これでフォイゾン王の突撃を受け止めると言ったのである。その間に右翼が回り込んでいくが、東側に敵が潜んでおり右翼に突っ込んできた場合、グルっと囲んだりせずに手を叩くように単純な半包囲で済ませるという。完全勝利としての殲滅ではなく、フォイゾン王の心をへし折ることが目的なので、慌てずに敵の策を叩き潰せればそれで良いのだろう。

 

「ミュージィとショットのライネック隊は本陣右翼、ガラリアとゼットのズワァース隊は右翼先端となって、後ろから迫るラウの更に後ろへ回り込め。バーンのグルビデンス隊は本陣左翼の中核とする。残余の機体と共にフォイゾンの攻勢を受け止めよ。そしてトッドは好きにいたすがよい、ゼラーナ隊に対して挑むことを許す」

 

「「はっ」」

 

 ドレイクは緑備えだけでラウの強襲部隊を潰す気でいた。

 

上級機体だけで構成された部隊での電撃戦である。左翼は装甲の厚いバーンのグルビデンスが万が一の護衛を担当し動かずに受け止める予定であった。その間に火力の高いライネックと高速のズワァース隊が後ろから回り込んで、包囲網を締めく来ることになっていた。予定通りにいかなくとも、バーンのグルビデンス隊とミュージィのライネック・キャノンはオーラキャノンでの支援砲撃が出来る為、互いに支援することも本陣を守りながら戦う事も可能であろう。

 

(実質、ガラバとズワァースで逃げる敵を追い散らして戻って来る形だな。戻って来るかいまいち信用できないバーンとショットは手元に置いて監視するわけだ)

 

 ゼット・ライトは陣容を見てドレイクの思惑に気がついた。

 

確かに右翼は火力偏重になっており、それぞれの役目に合わせて機体も選んであるように見える。だが勝手な事をしがちなバーンと、何を考えているか分からないショットは出来るだけ監視し易い場所で、思惑と違ったことをしても何とかなる様に配置したのだろう。

 

(それにしても……ショットの奴。この作戦の肝がスピードだと理解できるだろうにスプリガンの能力を隠しておくつもりか? 艦の調子が悪いんだか、それとも謀反を起こす時まで隠しとく気かな)

 

 ゼットはショット・ウェポンが乗るオーラシップを見ながら仮説を立てる。

 

原作で見たままの姿であり、火力重視型や防御用とは思えない。ビランビーの試作三号機やライネック・キャノンでオーラ操作に研究の比重を移したとしても、ショットの性格が大きく変わっていないのだ。スプリガンの形状が同じならば能力も同じだと思われた。野心を隠す気ならばここでスプリガンの能力を晒して功績を立てて、『謀反する気は無くなった』と思わせるべきなのだ。ゼットからはショットの思惑が掴めずにいた。

 

(とはいえこっちも本命の機体は出来上がってないし、保険のズワァースも前に改良したまんま放置したやつだからな。お互いに忙しいから様子見してると思っておくか)

 

 ショットの動きが鈍いとは思ったが、ゼットも人の事とは言えなかった。

 

白兵戦を主体としたオーラバトラーを設計しているが、ガラバの完成を急いだ為に素材の吟味やパーツの使い道を再計算しているところで止まっている。9メット9ルフトンで製造しようと大枠は決めているし、装備に関しても決定しているが、肝心の組付け作業には取り掛かれていない。それどころかズワァースもバースト式オーラショットをコンバーターに設置した駆逐仕様のままであった。ゴラオンを落した後に改修した時以来であり、変わっているのはガトリング砲を構えていることくらいである。

 

●

「始まったようだな。囮だけで三十機は居るぞ。グナンもそれなりに居る」

 

「流石はラウ。数だけは揃えたじゃねえの、この戦いで最後にする気かねえ」

 

 ある程度の距離を進軍するとラウの軍勢らしき陰が現れた。

 

左翼側より三方から分かれてこちらに向かってきており、オーラボムを含めると相当数の軍勢を構築してウイルウィプスを追い掛けていた。ガラリア・ニャムヒーはゼットを含めたズワァース隊に準備を促した。

 

「御屋形様の読みならばフォイゾンは……む? バーンが動いただと?」

 

「予定より早ええぞ。あの野郎、何考えてやがる。左翼は相手の攻撃を受け止める筈だろうに」

 

 驚いたことにバーンは早い段階で敵を迎え討ちに掛かった。

 

彼の乗騎を始めとしたグルビデンス三機が敵の中で正面に位置する方向へ進み始めたのだ。性能差でボゾンやグナンを圧倒し、自分の手で早々に決着を付けようという考えに思われた。確かに性能差ならば可能であるが、これまでのラウの軍勢は勝てない場所では引いていたのだ。場合によっては引っ張り回されて無駄足になる可能性もあるだろう。あるいはそれを狙って、次の敵に向かうつもりなのかもしれない。

 

「幸いにもラウは戦う気の……いかん! 少なくない味方がバーンに続くぞ!」

 

「あいつのオーラ力に影響されたんだろうよ。それとも『我に続け』とでも言ったかもしれねえ。だが、この戦いで功績上げなきゃ確実に頸だぞ、負けでもしたら物理的にズバンだ。それをあいつ分かってんのか?」

 

 正面に居る敵部隊はバーンのグルビデンス隊と交戦した。

 

そいつらが動きを止めて殴り合った事と、バーンの勇姿に引き吊られる形で数機のオーラバトラーが追随する。左翼より迫る残り二体の内、一隊は下がっているがもう一体は挟撃を試みた様で接近を続けている。それまでにバーンが正面の部隊を倒すのは無理だろう。手薄になったところで左翼の残りがその部隊を足止めする物と思われた。

 

「いかんな。ショット様に何機か回してもらうか?」

 

「そいつは無理な様だぜ。そこらに敵の姿が見えらあ……地上に隠れてたみてえだな。だが……この数はどういうこった?」

 

 援護に回そうにも右翼先端にはズワァースだけしかない。

 

ガラリア隊の三機とゼットの機体だけだ。後は右翼を構成するミュージィのライネック隊と、ショットが連れてきた数機だけである。それでも回さないよりマシだろうとガラリアが提案するが、ゼットは此処に居てはいけない物を確認した。ラウの軍勢が地上に隠れていたのは用。ゼット自身、そうするだろうと考えたことがあるからだ。だが、その数が異様であった。

 

「敵機発見! オーラバトラーだけで五十機は居ます!」

 

「なんだと!? ラウはタータラ城を完全に捨てたというのか?!」

 

(どういうことだ? ラウの製造数から逆算して残りは八十前後。ナの国に発注していたボチューンを含めたって九十が良いところだ。それなのにここで残り五十ってのは多過ぎる。それじゃあ俺たちが食い止めちまったら、フォイゾンが切り込める余裕がねえ。……何処で計算を間違えた? それともラウの機械の館や隠し工場での生産数が、密偵が探れるよりも多かったってのか?)

 

 ラウの全軍と聞いて、ガラリアですら部下からの報告に驚愕していた。

 

確かにこの戦いが決戦になるだろうとの予想はしていたが、まさかタータラ城の守備隊まで連れてきているとは思わなかったのだ。あるいはビショットと交渉して、クの国へ派遣している戦力を既に呼び戻してドレイクに充てたというのだろうか? そう考えれば何とかなりそうな気がしてきたが、純戦術的にはそれでも駄目なのだ。こちらの右翼が奮戦すれば足止めくらいは出来てしまう。それではドレイクの元へ辿り着いて艦橋を破壊するなり、ウイルウィプスを撃沈する程の戦力にはなり得ないのだから。そしてタータラ城方面に守備隊がいなければ、ズロム率いる正面の攻略部隊が戻ってきてしまうだろう。

 

(どんなペテンを使いやがった。俺達みたいに修理……それともクの国からドラムロを手に入れて……無理だな。こないだまで戦争してて、『安全な撤退を保証する』くらいはともかくとして『戦力を貸し与える』とこまで提携を組める筈がねえ。エレの婚約者が、リムルとニーくらいの仲だったらまだあり得るが、そんなのをフォイゾンが認める筈もねえしな)

 

 今見ている数が見間違いではないとして、もう五機か十機は必要なのだ。

 

足の遅いボゾン主体ならば十機はオーラバトラーが必要だし、機動性の高いボチューン主体……できればビルバイン込みで五機ほどあればドレイクを倒せるかもしれない。だが、見ている限りラウの国は限度いっぱいの戦力を連れて来ていた。『ドレイクを討つから見逃せ』とクの国と交渉していたとしても、それでタータラ城方面で遅延戦闘を行うのが限界であろう。でなければ正面のズロムが戻ってきてしまうので、戦力が足りないのだ。だからら何らかの方法で戦力を水増ししているものと思われた。

 

(何をやったらオーラバトラーを揃えられる? グナンやオーラシップの生産数でも減らしたのか? だが空母型のグリムリーを増やさないと自前の戦力を運べないし、ナの国に提供する代価としてボチューンを貰える筈がねえ。グナンに至っては見てる通りだ)

 

 ゼット自身が苦労したこともあってオーラマシンの生産数は把握できる。

 

仮に諸島部の秘密工場以上の工房を設置したら密偵の網に引っかかる可能性があるのだ。それこそ、かつてのドレイクのような上級領主が持つ城を接収する無茶をしたら問題にならないわけがないからである。そして工房を増やしたとしても、作り手や乗り手の方はそうもいかない。ラウの国は量産性重視の機体を作りはしたがオーラ増幅器の開発は得意では無かった。ならばオーラシップやオーラボムを減らしたかというと、空母型のグリムリーを生産してナの国へ先払いの代金として提供してしまっている。十分な数のナムワンとグリムリーを見ているし、グナンは既に見ている通りの数が存在する。それを考えると総数が合わないのだ。

 

「御屋形様がフォイゾンの手を呼んだように、奴も同じ事をしたというのか」

 

「落ち着け、言う程のピンチじゃねえ。問題は何処に本命が潜んで居るかだ」

 

「落ち着けだと!? あの大戦力は飾りではあるまい。しかも山や谷を砦にして待ち構えているのだ、作戦通り回り込んでも勝てるかどうか判らん。いっそ後退を願い出て、追撃する敵の数を減らすことに終始すべきか……」

 

 緊張がピークに達したのかガラリアの癇癪が聞こえてきた。

 

敵と戦うこと自体は覚悟しているようで、五十機もの大群に対して奮起はしていても恐れはしていないようだ。以前と違って闇雲に突っ込むのではなく、ドレイクの安全を守りつつ敵の数を減らせるような作戦を考えている事は成長を伺わせた。だが、ゼットが刮目したのはその部分ではない。

 

「飾り? あの敵は飾り……そうか! だから動いていないんだ!」

 

「何を言っている。五十ものオーラバトラーが飾りな筈はあるまい!」

 

「谷はともかく山の方は飾りなんだよ! そうだ! ガワだけ偽装した偽兵戦術だ! 対空砲くらいは用意してるだろうがな……それで説明が付く。なら本命はウイルウィプスの後退ルートか、さもなきゃ守りを固め易い場所の足元だ!」

 

 ゼットはガラリアの言葉にヒントを見た。

 

何を言っているか分からないというガラリアの反応だが、おそらくは地上での戦いと違って『偽者の旗を立てる』という偽装工作は存在しないのだろう。あるいは空中だけではなく山中にオーラバトラーの姿が見え隠れしていることや、自分たちが予想している最大数の数が出てきたことで、まさかそんな筈はあるまいと考えを固定化しているものと思われた。

 

「馬鹿な。ガロウ・ランとの戦いではないのだぞ?」

 

「ガロウ・ラン相手にゃやるんだな? なら連中はドレイク閣下をカオ・スの権化と思ってるのさ。だいいち国が亡ぶかの戦いだぞ? 試しに俺が突っ込んでみれば判るさ。お前さんは今の話しを閣下にでも伝えな。お前が考えた案込みでなら無駄にゃあならんぜ」

 

 ゼットが相手の作戦を看破すると、ガラリアは少し落ち着いたようだ。

 

本当にそんな偽装戦術がガロウ・ラン対策に存在するかは別にして、明確な指針を聞いたことで自分が何をすべきかを考え始めたのだろう。実際にこのままボーっとしているよりは、『撤退して追撃する敵を討つ打開案』と、それを見越したかもしれない『待ち伏せ作戦』に関する話をドレイクにする意味はあるだろう。ゼットがズワァース改を移動させる間に、伝令としてズロンを一機飛ばしたようだ。

 

(くそっ! 俺としたことが偽物に気がつかねえなんてな。自分でオーラバトラーを増やせるからこそ、相手も工夫すれば出来ると思って気がつかなかったってところかな? ……まあそれはいい、飛んでる見せ札を掻い潜って山の陣地を叩かねえとな!)

 

 おそらくだが、敵は空中に居る二十機ほど+@だとゼットは判断した。

 

クの国との交渉が成功することを前提に、無理やりタータラ城の守備兵を連れ出したとは思えない。そして山に居る敵が偽兵であるならば釣り合いは取れるからだ。ラウの勢力圏に近い左翼側に三十機用意し、足止めと脱出援護を兼ねた部隊。右翼で見えている二十機は足止めと脅しを兼ねた部隊。そしてドレイクを狙おうと潜んでいる十機ほどが本命ではないかと思ったのだ。それならば数が合うし、ラウの国内事情にも見合うであろう。

 

『包囲して討ち取れ!』

 

『これ以上は行かせんぞ!』

 

「てめえらに付き合っていられっかよ!」

 

 山中に進もうとするとボゾンとグナンの編隊がやって来る。

 

ゼットが陣地であるはずの山に突っ込むのは自殺行為であるはずだ。それなのに阻もうとするのは、やはり偽兵であると思われた。ゼットは急上昇を掛けて敵の射線から逃れつつ、コンバーターのフレイボムから変更したバースト式オーラショットを発射。ボゾンの現在位置から回避方向に対して、腕に抱えたガトリング砲をぶっ放したのである。

 

『ぐわっ!?』

 

『馬鹿な。あの数が一瞬で!?』

 

「やっぱ雑魚相手にゃこの手が効くな。問題は強敵には効き難い事だが……今はそれを言ってる場合じゃねえか。ショットがこの戦闘を見て、俺の本命を勘違いしてくれたら御の字だ」

 

 足の遅いボゾンは次々と撃墜。グナンも一部を除いて撃ち落とされた。

 

無事だったのは弾が広域に散布されたことで、密度の薄い場所に居たグナンくらいである。ガンダム08小隊で『倍返しだ!』と放った連続射撃が動かない敵に大して外れた様に、弾丸を広範囲にばらまくのはむしろ直撃を損なうのかもしれない。

 

(後はゼラーナが怖いところだが……その辺はガラリアとトッドに任せるべ。俺はこいつらを蹴散らさねえとな)

 

 ゼットは山に突撃する途中で横滑りに移動を行った。

 

それで相手が調整しようとしている対空砲の射角から離れつつ、向かって来る何機かのグナンの方へとガトリング砲を向けた。思えばこのグナンの数が居たことで、少ないオーラバトラーでも誤魔化せていたのであろう。偽装を含めてオーラバトラーは最大数が此処にいて、相応の数のグナンが居るのだ。大戦力が此処にいると勘違いしてもおかしくはないであろう。

 

「おらよ! 本当にオーラバトラーならこの程度で落ちはしねえだろ? 避けて見ろよ!」

 

『うわあ!? 撃て、撃て! 撃ち落とせ!』

 

『間に合いません!? 退避ぃ!』

 

 地面に向けてオーラショットが見舞われ、次々と吹き飛んでいく。

 

特に回避したような様子はなく、残骸だけがその場に残った。中には強引に旋回させて対空砲を放った場所もあるようだが、ガッシュでもなく圧搾空気砲でも無かった。そして援護に駆けつけてきたグナンはフレイボムを放てるだけ幸いであった。ズワァースに回避機動を取らせた事が戦果と言えるならばの話しであったが。

 

「ん……? 信号弾が二発? 片方はラウの側か! という事は始まりやがったな!」

 

 そして空中に信号弾らしき特徴的な軌跡が描かれるのが見えた。

 

奇しくも同じ方向であり、ウイルウィプスの居る辺りであった。おそらくはフォイゾン王が最終突撃指示を出し、それを見たドレイク軍側も『フォイゾン王発見』の意味を込めて信号弾を放ったと思われた。

 

「てーことは……そうなるよな。左翼も右翼も突撃を開始しやがった。総力戦だねえ、こいつはよお!」

 

 信号弾を見た右翼のオーラバトラーが移動を始めた。

 

偽兵がバレて山の陣地を守る必要が無くなった事と、フォイゾン王がウイルウィプスに取りつくのを援護するためであろう。そして山中に居たグナンと、偽装ではないボゾンがその場に残ってゼットを倒してから駆けつけようとしている。今ごろは左翼側でも同じように突撃が始まったものと思われた。ゼット自身もガトリング砲の弾を使い切るつもりで撃ちまくりながら、ウイルウィプスへの合流を目指したのであった。




 というわけで読み合いからの総力戦となります。
なお、バーン馬鹿過ぎない? という行動ですが、今回は流石にワザとです。

●だいたいの構図
←ラウの領域↑ タータラ城側 →→(遥か東が海・ナの国)
ボ10→・← ブルベガーと30弱↑
ボ10→ バーン他10+@ ウイルウィプスと+@ ミュージィ・ショット・ガラリア他10
     ↓                   ゼット
     ↑                 ↑  ↓
    ボ10               ボ20+@ 偽兵30

補足事項。
1。トッド・再生機体。ゼラーナ隊・フォイゾン王とその親衛隊の位置は不明。
2。ドレイク軍の南部は基本的に緑備えの上級機体
3。上記の数字にオーラボム・ウイングキャリバー・火砲・対空砲は含まれない。
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