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「よくもまあ、信号弾一つでここまで動けるもんだ」
双方の合図で膠着していた戦いが動き始めた。
ラウの国の軍勢は全てがウイルウィプスを目指し、ドレイク軍の右翼からはズワァース隊が敵に突っ込んでいる。ライネック・キャノンとスプリガンは散発的に遠距離の敵に砲撃を続けているが、ライネックもズワァースに遅れて突っ込んでいった。優勢ながらも変化が無いのは左翼で戦闘を続けているバーン・バニングス達くらいのものだろう。
「いや……基本的な指示がシンプルだからこそか。最初から囮と包囲の戦いだったしな」
戦いは整然と第二段階に移行しているが、細かい指示があったわけではない。
それでも意図通りに進行しているのは、それぞれの王が思惑を読み切って上手く誘導したからだろう。フォイゾン王は自ら率いる切り込み隊が接近できるまでの時間が欲しかった。辿り着いてさえしまえば、後は時間稼ぎが出来れば良いのである。そしてドレイクの方はそれを読み切って、大多数のラウ兵を討ち取り、自らも生き残ることで大勝して見せるつもりであった。お互いに相手の戦術を読み切った上で、あえて思惑に乗って作戦を成功に導いているのだ。
「っ! ガラリアの奴、一気に焼き払いやがった! 思い切りやがったな」
暫くしてゼット・ライトの前方に赤い火線が走った。
ガラリア・ニャムヒー率いるズワァース隊が一斉にフレイボムで掃射したのだろう。そのまま散開して逃げ散ったボゾンを各個撃破し始めたのが分かる。初めての連撃だから目で追えているが、これを必殺の技として磨けば次々と敵を倒すフォーメーション・コンバットに消化できるかもしれない。
「ガラリア! 手は要るか!?」
「要らん! お前は御屋形様を頼む!」
「了解した。こんなところで死ぬんじゃねえぞ!」
「ふざけるな! ライネックも居る! こんな奴らに落とされるものか!」
無線の効果範囲に入ったところでゼットがガラリアに声をかけた。
予定通りにこのまま全員で殲滅してウイルウィプスに向かうか、どちらかが先んじて向かうかの差を確認したのだ。ゼットの機体も殲滅の高いズワァースなので参加すれば早期に終わるが、その間にウイルウィプスが大ダメージを負ってしまえば意味がない。そこで地上人であり改良機に乗るゼットが向かうか、三機一組で動いているガラリアが向かうかで悩んだのだ。屈強のゼラーナ隊がいるはずだが、フォイゾンも随伴機を伴って居るはずであり、どちらを取っても似たような効率というのもあった。
「なら遠慮は要らねえな!」
言うが早いかゼットは機体をウイルウィプスに向けた。
こんなところで悩むのも議論するのも意味がない。一応は隊長職であるガラリアに声を掛けたことで義務は果たしたと言ってもいい。行きがけの駄賃に移動途中に居るボゾンとグナンを撃墜し、弾が空になったガトリング砲を放り投げてオーラソードを抜いた。
(有用だが撃ちまくると尽きるのが早いな。ガラバの腕ほど長くないせいか弾倉が開発できてないせいか。その辺を覚悟するとして継続戦闘時間が長くなったと見えるか、バースト式のライフルくらいにして戦える時間を延ばすかってとこだな。さて……戦いの方はっと)
ゼットは新開発したガトリング砲に関して使用者目線で感想を整理した。
ガラバの腕に使うガトリング式オーラショットを流用した武器なのだが、ズワァースが両手で抱えるかバックラーに上着けする程度なのでそう大きくはない。それでもズワァースの抱える問題点である戦闘時間の短さは何とかなるだろう。後はこの火力密度を武器として残すか、それとも継続戦闘に主眼を置いてバースト式ライフルにするかで悩むところだ。そして程ほどに接近したところで周囲の状況を再確認する。
(右翼側は心配いらねえ。これで戦闘での敗北は無し、ドレイク個人が死ぬか、さもなければその後に暗殺されるかってところだな。問題なのは左翼か……こりゃ、一部には逃げられるな。このままじゃあバーンと一緒に居る奴ら以外は全滅しそうだぜ……問題は援護に向かう余暇、フォイゾン達を何とかする方が早ええんだよな)
ゼットが抜けてきた右翼は元が優勢でガラリアの活躍もあった。
二十機近い機体が次々と撃墜され、残る機体では奮戦しても幾らも保つまい。対して左翼側はバーンが攻め掛かった十機ほどに対して優勢。しかし、その間に遅れて接近してきた別の十機がフォイゾン王に加勢し、ウイルウィプスを守る為に残った数機を一方的に攻撃している。しかも今回ばかりは遠距離からガッシュを討つ地味な戦闘ではなく、抜刀しながら圧縮空気砲を撃つ積極的な白兵戦である。これでは数の違いで押し切られてしまうだろう。バーンが取って返せば足止めは出来るが、逆に言えばフォイゾンやゼラーナ隊が逃げようと思えば逃げられてしまうのだ
「やべっ。フォイゾンたちがウイルウィプスに取り付きやがった。トッド!」
「オレに任せな! 少なくともダンバインは止めて見せるぜ!」
増援が到着して守備隊を任せたフォイゾンがウイルウィプスに向かった。
ここで飛び出したのがトッド・ギネスが乗ったガラバである。彼はカラカラ山岳地帯の砦で待つか、ウイルウィプスで待つかを悩んだ挙句、ダンバインなら必ず抜けて来るとウイルウィプスの格納庫で待機していたのである。そして出撃時の不意打ちでボゾンを一機撃墜する活躍を見せた。
「ダンバイン、ボチューンが三機。後はボゾンか! ならやれるな!」
「ああ。問題ないぜ、まずは雑魚から片付ける! おおおおお!!」
ゼットがズワァースを突っ込ませるとトッドもガラバを一度外へと出した。
格納庫の中では十分な加速を得られなかった為か、あえて戦闘力の低いボゾンへとオーラショットアームを向けた。ガトリング砲が火を噴きたちまち撃墜。オーラキャノンで牽制弾をボチューンへと向ける余裕さえあった。これに対してラウ側は新型であるボチューンを三機揃えるのが精いっぱいで、フォイゾンとマーベルの他は騎士団長らしき者が影武者を兼ねて乗っているのだろう。ワインレッドが一機、青紫が二機という組み合わせである(ナの国がワインレッドを国王機、親衛隊カラーで贈っただけかもしれないが)。
「そんじゃ、まずはボチューンのデータを見ましょうかねっと!」
「陛下はやらさせ……うわあ!?」
「邪魔だっつーの」
ゼットはズワァースを操り斜めに降下した。
斬撃を浴びせるための機動であり、同時に割り込む敵のルートを絞らせるための移動である。剣を縦に構えたままシールド側のオーラショットを放ち、バースト射撃で割り込んだボゾンを撃墜してしまう。その間にボチューンは足に装備したバルカンを連射しながら切り上がっていった。
(切り返しが早えな。やっぱり空中機動を重視した機体か……。ゲームで言うと巡航速度も最高速度も高いわけじゃないが、次の行動に移るまでの行動力が低いってとこかね? 相手の目的を透かして自分が優位な状態で切り込む為の機体と見た)
ゼットは原作知識もあってボチューンの性能を理解した。
ダンバイン系の機体という触れ込みに間違いはなく、空中機動と白兵戦に特化した機体なのだろう。オーラ増幅器で操縦者のオーラを強化して、一般兵でも乗れるようにした上で、精鋭が剣でトドメを刺すスタイルだ。鳥のような逆関節の足にオーラバルカンだけという火力は、重量問題に妥協しつつ牽制の為の射撃用であると思われた(鳥足なのは白兵戦時に正面にも、飛行時に上へも撃ち分ける為だと思われる)。
(こっちは一回の移動力は長距離だけど切り返しに時間が掛かる機体が多い。うん、やっぱ原作はちゃんと研究者が最適解で組んでるってイメージだわ。でもまあ、有用なんだから真似させてもらうよなあ!)
原作のボチューンは非力に見えるがそうではない。
射撃戦を行うのはボゾンの役目だし、二種類あるうちフレイボムタイプはともかく圧搾空気砲には弾数制限がない。その状態で撃ち合い、ボチューンは切り込んでいったり相手の襲撃を防御する担当なのだ。限界オーラも高いので精鋭が乗ったらドレイク軍よりも性能が発揮できるだろう。ライネック量産までは基本的に白兵戦では主人公側の方が強いのである。そして、ソレを知っているゼットが切り返し性能を真似していない筈は無かった。
「まずはフォイゾン王といきたいところだが、そいつから潰す!」
『なにぃ!? 陛下、御下がりを!』
『くっ。護衛を先に潰す気か!』
ゼットも上空へと舞い上がり、そのままフォイゾン機に向かった。
だが本命はもう一機のボチューンだ。そいつは射撃しながらの突撃に対して、斬撃を防御しながらオーラショットの攻撃から逃れようとする。だがこちらはバースト式オーラショットであり、全てを逃れることなど出来ない。ましてやオーラソードの斬撃を受け流してからでは難しいだろう。剣を持たない方の腕を犠牲にして本体を守る。
「いい腕だ。俺とやるにゃあ百年早かったがな」
『抜かせ!』
剣と剣のぶつかり合いでスパークが生じ始める。
互いの攻撃がオーラ斬りと化しており、精鋭同士の一騎打ちと言わんばかりの攻撃だ。騎士団長か親衛隊なのか分からないが、三機しかないボチューンを任される実力者なのだろう。だがゼットの相手をするには色々な意味で惜しかった。
「そらよ!」
『なんとお!』
「……今だ!」
ゼットは機体を上昇させながら尻尾を叩きつけたが、更に先がある。
ショウ達がコンボを伝えている可能性があると予想して、上昇しながらコンバーターと腕のオーラショットを放ったのだ。都合四発の乱れ撃ちであり、辛くも尻尾を受け止めたボチューンは避けることも叶わずに何発かを喰らって大破。そのまま地面へと叩きつけられたのであった。
「ラウの精鋭、流石に強いわ。……しかし見た感じ、いつもの面子が残っちゃってるな。てか……原作に準拠せんでもいいと思うんだがなあ。いや、それぞれの思惑もあるしな、仕方あるめえ。バーンやショットの説得もやってれば防げた事態だ、俺の怠慢とも言えるな」
ここでゼットは周囲を見渡して状況を再確認した。
ボチューンを落している間にも戦闘は進み、ガラバがダンバインやマーベルのボチューンを翻弄しているものの倒せてはいない。一撃離脱で駆け抜けながら周囲に弾丸をばらまいて牽制しているだけだ。それで倒せるのはボゾンくらいで、それも数が減って来れば居なくなるだけである。その間にフォイゾン王はウイルウィプスに取り付き、切り込もうとしていた。
『ドレイク・ルフト! ワシの相手をせよ! でなければそのまま落ちるが良い!』
(詳細は違うが原作と似てる流れか。今ならば捕まえられるか?)
フォイゾン王はボチューンを操り艦橋にバルカンを撃ちながら降下。
先ほどまでトッドのガラバが居た格納庫へと向かう。おそらくは原作でやったように、中からウイルウィプスを落す算段であろう。ゼットはそれを止めるべく向かうのだが……。
『ゼット・ライト! フォイゾン王はやらせないわよ!』
「マーベル! 性懲りも無く来やがったか! フォイゾンを捕えたかったが仕方ねえ。この戦いはドレイクの読み勝ちだ!」
マーベルは巧みにボチューンを操り機動戦を仕掛けた。
決して一か所に留まらず、移動方向もランダムでオーラソードにもこだわってはいない。完全に翻弄するための動きであり、足のオーラバルカンですら撃たないことがあった。ゼットはその動きに翻弄されつつも、両手を広げて腕のバースト式オーラショットを回転しながら放つことでマーベル機の損傷を増やし始めた。その動きはマーベルを越えてフォイゾンを追う為ではなく、確実にマーベルをここで叩き落す為の動きであった。
『何を? 遊んでいるの!』
「そうだよ。フォイゾンにトドメを刺すまで待ってるのさ!」
『っ!? まさか罠でフォイゾン王を? 卑怯な!』
「お前らも偽兵士を使ったろうが! お互い様だよ!」
必死に避け続けるマーベルだが散布域の広い攻撃を避けるのは難しい。
次々に被弾していき、何とか直撃だけは避けて機会を待った。強引に脱出しようとしないのはその間に撃たれる可能性があるのと、フォイゾン王が罠に掛かったという言葉ゆえである。
『推参なり! このまま……』
「よかろう。貴様はこの儂が引導を渡してくれる」
『なん……だと!? 伏兵!? しまった読まれておったか』
格納庫に飛び込んだフォイゾン機に無数のバルカンが撃ち込まれた。
もしオーラシップの中でなければフレイボムで火達磨になっていたかもしれない。そう、そこに伏兵が隠されていたからだ。ラウの計算の外に隠された予備の機体ではなく……倒されたことになっている機体である。
『ドレイク……貴様……』
「驕ったなフォイゾン。貴様は大義を口にして兵を使い捨てた。だが、儂は傷ついた一人であっても可能であれば助ける。それだけのことよ」
何とか脱出しようとしたフォイゾン機にビアレス・マリーネが襲い掛かる。
それは以前にガラリア隊が使って居た機体であり、ズワァースの拝領と共に置いて居た機体だった。三機のうち損傷の酷い物を解体して他の機体を修理した物である。その脇には同様の措置で修理したドラムロなどが存在しており彼らは一斉に攻撃を放ったのだろう。
『無念……』
「フォイゾンは討ち取った! この戦い。我ら、アの国の勝利である! 降る者は全て助命せよ。もはや血は不要!」
その機体にドレイクが乗っているかは別にして、大々的に無線で呼びかけが行われた。剣を掲げて勝利を宣言したこともあり……誰もがドレイクが操っていたのだと信じたに違いあるまい。
という訳で『フォイゾン王死す!』という感じですね。
機体ごと地面に落下したと思うので死亡確認はしておりません。
●お互いの戦術
基本的にどちらも予備戦力を用意して、最後に使う感じですね。
ラウの側は少し戦力に不安があったので偽兵を用意。
ドレイク側は修理した機体とかガラバを使わずに隠しておいただけになります。
なお、原作に準拠していますが、主人公が言うようにバーンやショットのケアをして和気藹藹してれば修理機無しで勝ってたと思います。