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「ラウの将軍、ペタンにございます」
「ペタン殿。儂はな、フォイゾン王の遺命があると確信しておる」
「……それは、どのような内容でありましょうか? ドレイク陛下」
「自らの死により敗退は不可避。城下の盟を誓う前に、降伏を申し入れよという物だ。傷が浅いうちに交渉に入るのが妥当であろう」
降下したオーラシップ、グリムリーから一人の男がやってきた。
額に汗を流しながらも、侵略者に対して一歩も引かぬという気概を見せていた。その男に対してドレイクは軽く微笑み、それ以上を見せぬかのように窓の方を向いてしまった。
「タータラ城が落ちる前に……で良いのでございましょうか?」
「我らは同盟国ゆえに呼ばれたに過ぎぬからな、勝手に占領してしまう訳にもいくまいよ。それに……このままではクの国が一人勝ちであろう」
ラウにとって城を落され滅びる前と後とでは話が変わって来る。
占領されてしまえばラウという国家が滅びても文句は言えない。だがその前であれば『不利だから降伏の条件を決める交渉を始めた。無条件で負けたわけではない』と言い張れるのだ。ペタンとしては有難い限りであったが、ドレイクはそれに対する明確な理由を述べた。援軍であるアの国は、どれだけ貢献してもラウの大部分を奪うというわけにはいかないのだ。と成れば何らかの条件と共に引かざるを得ず、ミの国を保護領にしたクの国が、ラウの国も手に入れてしまえば抗えなくなる。そう言われてしまえば、ペタン将軍も理解せざるを得なかった。
「陛下の出される条件を呑む御方に話を持っていけばよいのですな?」
「そう言う事だ。領地は要らぬが、最低でもカラカラ山岳地帯は貰わねばならぬ。あそこの砦を一つ二つ抑えるつもりであったがな。これで何十年か先に和平が敗れた後、カラカラを巡る争いに成ろう。それならば町が焼かれることはあるまいよ。死ぬのは騎士だけでよい」
ペタンはドレイクが自分に都合の良い条約を押し付ける気だと理解した。
そのためにはフォイゾン王の後継者候補である血縁者の中で、彼の条件を呑む者を王に選ばなければならない。上位貴族の中でも親クの国派も居ればナの国派も居る、それこそアの国派だっているだろう。だがドレイクに採って必要なのは、思い通りに条約を受けてくれる者なのだ。その辺りをドレイクは知らないし、ペタンならば知っているだろう。それらの条件闘争を新王の功績として構わぬと交渉を持ちかけたのである。
「それと賠償金だがオーラマシンの技術や現物で代替して構わぬ」
「ボゾンやボチューン。それとグナンやグリムリーでございますな」
「もちろん我が国でも真似をすれば近い物は製造できよう、だが時間は有限なのだ。このドレイクが多額の金以上の価値があると認めたということにしても良い」
ドレイクはアの国で造れないとは言わなかった。
実際に調べてみれば、思い付かなかった技術があるかもしれない。だが、それを開発するための時間。そして製造するための時間という物がある。比較検証して新しい技術を作り、自らの技術に組み入れるためには時間が掛かるということにした。
「生き残っている機体。程度の良い物に関心を示していたと匂わせても?」
「構わぬ。それでビショットめは折れよう。自分達でも取り入れる為、そして万が一にでも、敵味方を取り換えて戦う羽目に成ったら困るゆえな。おそらくはミの国に面した場所を多めに与えるか、クの国も含めた係争地で引き合う筈だ。後はそちらの手腕次第であろう」
どれだけ友好的でも国家に永遠の友情など存在はしない。
クの国の王であるビショット・ハッタはドレイクが妥協した理由を邪推するだろう。そして稼働中のオーラマシンを回収することで、戦力を即時に増やしたいと考える筈だ。実際にドレイクがクの国と手切れをして攻め込むことは無くとも、国王としては警戒しておかねばならないことである。ましてエレ・ハンムを引き入れてミの国を奪ったも同然であり、同盟を利用してラウの国との戦いに引き込んだともいえる。後ろめたいのはビショットの方なのだから。
「ドレイク陛下。おそれながらお聞かせ願いたい事があります」
「儂がどうして滅びゆくラウの国へ肩入れするのかと言いたいのであろう」
「はっ。この非才の身にはここまで良い条件を用意される理由が分かりませぬ。むしろ不安ばかりがよぎる始末。不意打ちで滅ぼされぬように、眉に唾を付けて聞かざるを得ませぬ」
ペタン将軍は先ほどまでの伺う様な声を止めた。
むしろ今までにないくらい強い言葉で、そしてその目には力が宿っていた。ドレイクは視線を流して僅かに頷き了承の意を返したのである。
「オーラマシンの登場前からバイストンウェルには争いがあった」
「国家同士の争い、そしてカオ・スの跳梁ですな。国によっては強獣も」
「儂はそれらを何とかしたかった。初めはそんな思いであり、愚王の到来によりそれは益々強くなり、むしろ儂こそがと思うようにすらなったほどだ。儂を気に入ったシルキーが地上人のショットたちを召喚し、オーラマシンの開発を申し出た時などは天啓だと確信した。儂はロウの化身なのだとな」
初期のシルキー・マウはドレイクの愛人であり自発的に協力していた。
その頃の傾向として、知識人を次々と召喚してドレイクが周囲に影響を与えていたものだ。ドレイクの理想に共感したとも言えるし、理想と野心を両立する若き領主の在り様を好ましいと思っていたのだろう。
「いつしか世界を手に入れる。見果てぬ夢だとしても、行ける所まで行こうではないかと想いすらした。だがカオ・スの勢力を退け、強獣を服する内に様相が変化した。我が友と呼んだ男とその息子で娘婿にしようと思った男が、姦計を繰り返し更にはオーラバトラーで儂の居城を襲うようになったのだ。そして気が付けばシルキーは協力を拒むようになり、召喚したとしても戦士たちを呼び寄せ始めた。しかも、その結果は悪い方向へと進む」
「ギブン家と聖戦士たちによるゼラーナ隊ですな」
時系列的にはギブン家の行動が先に立っている。
おそらくドレイクはロムンを説得しようとしたのだろう。自分と共に愚王であるフラオン・エルフを討とうと。その果てに周囲の国家へ戦争を挑んで我が手にしようとすら言ったのかもしれない。だがその結果、ロムンは反発し強硬手段に出た。テロリズムを繰り返し詐術でバーン・バニングスを裏切らせようとしたのだ(保険として音声を保存するフェラリオすら用意した)。
「そしてギブン家に協力しようとした娘を謹慎させ、実際に愚王を討ち果たした辺りで虚しくなったのだ。何のために儂は起とうとしていたのか。十年掛けて世界を手に入れても渡す相手がおらぬ。だが国家の争いを治めるだけなら今でも出来る。もはや常の数でしかないなら強獣程度は恐ろしくすらない。次にカオ・スが跳梁するのは何十年も先だろう。そして儂は思い至ったのだ、戦いを終わらせて平和にしてしまえば良いのだとな」
「……」
いきなりドレイクの内情を聞かされて困惑したペタン将軍も段々と理解した。
もはやドレイク・ルフトという男に鮮烈な野心など無いのだ。その野心は別方向に向いており、戦って手に入れるのではなく別の方法で手に入れる必要があるから『ラウを利用しようとしている』ことに気がついた。だからこの状況は利用できる、ドレイクの言葉は信じても良いと思い始めた。ただ、内心の葛藤は別物である。理解できることと納得できるかどうかは別物なのである。
「取り留めのない事を申した。恥ずかしい限りだ」
「ならばラウと戦う前に行動を示していただきたかったですな」
「そのように申し入れたであろう。二度に渡って断ったのはフォイゾン王だ」
「ですから文句そのものは申しません。ありがたく協力いたしましょうぞ」
「ふふふ。よしなにお頼みしよう。儂も若き日の夢を果たしたいのでな。この中央大陸くらい、平和で民草が死なない世の中を作れよう」
実のところ、ラウ側が調査していたのは過去のドレイクである。
急激な軍拡や貴族たちへの働き掛けから、早い段階でその野心に気がついていた。カオ・スの跳梁や強獣が暴れた時に協力する相手と見なしつつも、それはそれとして警戒し、イザとなれば軍勢を差し向ける判断をしていたのだ。その価値観に囚われたままのフォイゾン王やその重臣たちが、和平路線に舵を切ったドレイクを信じられるはずもない。ある意味で、双方にとってこの戦いは自業自得の産物であった。そして……この戦いで一方的な利益を得たのは、クの国のビショット・ハッタであろう。
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「こいつとボチューンの飛び具合の差をレポートにしてくれや」
「ちょっと!? これボチューンじゃないの! なんでこんなところに」
「なんでってアの国とナの国が共同開発した機体だからさ。平和条約を準備してるって言ったろ。その土産」
ゼット・ライトに連れられてマーベル・フローズンが機械の館にやってきた。
そこにはゼットが開発した偽ボチューンが鎮座しており、『7メットサイズの飛行特化の小型機』として機動戦闘の訓練用に使われていた。ゼットとしてはボチューンに乗った事のあるマーベルの感想を聞きたいのであろう。
「なによ……それって裏で片が付いていたって事? 私馬鹿みたいじゃない」
「まっ。そう言う事だな。仮にフォイゾン王がウイルウィプスを沈めてもナの国が調停したと思うぜ。俺らは早い段階から『戦力制限して正々堂々と戦いましょう』『死ぬのは騎士だけで十分』って平和条約を締結しようと動いてたんだ。戦争ばかりはしてられねーよ」
マーベルはドレイクの野心を知ってから強烈に働いてきた。
だが、ドレイクは既に世界征服など諦めており、別方向への野心で動いているとは思うまい。そして平和のために命懸けて戦い続けてきた彼女の重いと行動が、全て裏目に出ているなどと聞けば馬鹿馬鹿しくなったのであろう。それでも色々と聞いて判断しようとしているのは、ゼットやドレイクの言うことが嘘かもしれないからだ。
「という訳で捕虜のマーベルさん。節度ある聖戦士として自由は保障するが
「嫌味な男ね! 判ったわよ!」
ゼットが笑って白いヘルムを渡すとマーベルは無造作に受け取った。
捕虜である以上は大人しくする必要があるし、機体を奪って逃げたところで撃墜するための目標にされるだけだ。そして『白騎士』というアイコンを作り上げ、適当な人物と入れ替わる事で表の身分を保証する。そんな事を言われたら文句を言う事はあっても黙って従うしかないだろう。
「ねえ……。この後はどうなるの?」
「軍縮条約でアの国とクの国が七、ラウの国とナの国は十くらいの比率で戦力を制限しようって話になる。うちとクの国は少ないように見えるが、ミの国やリの国を保護国に置いているからな。だいたいこれで釣り合いが採れるはずだ。問題は……平和に成ったら困る勢力が条約を邪魔しに来るだろうなってとこだな」
機体に向かいながら尋ねるマーベルにゼットはサービスしておいた。
本来は彼女が知る必要もない事だが、今後に仲間とするには必要な事だ。そして国家的なサイズを元にして、お互いの戦力比を調整する為の話し合いが行われると説明したのだ。アの国やクの国は国力が小さいのだが、上級機体が多めであるのと、保護を名目に戦力を別分けできるので釣り合いが採れる。今後を睨むならばまだ若く、ラウにも影響を与えられることになるビッショットにとっても、やり様次第で美味しい流れではあろう。
(バーンの奴は無事に放逐されたし、ショットは原作通り奴を傘下に収めたからな。かなりの確率で反乱を起こしそうだ……問題はビッショットが動くかどうかなんだよな)
あれからバーン・バニングスは独断専行の罪でドレイク軍から放逐された。
自らの手でフォイゾン王なりラウの軍隊を討てれば別だったのだが、そのために本陣を危機に陥れては本末転倒であろう。彼としては素早く左翼側の敵を片付けようとしたのだろうが、防戦に回られて倒しきれなかったのが命運を分けた。ショットの方はバーンの行動が良い方向に回り、『手薄にするわけにもいかず仕方なく様子見した』ということでお咎めなしであった。そしてバーンは放逐されこそはしたが、奉公構いという雇用禁止令が出てないない事もあって彼を雇った形である。反旗を翻す気ならば良い戦力と成ろう。
(とりあえず保険としてズワァースにオーラ操作の改良と、武装と一体型の腕やコンバーターにする改良を施すとして……。本命の新型機もそろそろ組み上げねえとな)
ゼットは先の戦いで使用したズワァースを改良して保険案とした。
ノズル操作だけに使用していたオーラ操作を改良、ガラバの経験を活かしてオーラバリアとしても使えるようにするつもりだった。そして腕とバースト式オーラショットを一体型にして、大型施設で無ければ弾薬補充が出来ない代わりに装弾数を多めにする改良を施す事にした。これはガラバのオーラショットアームを参考にした物である。そしてコンバーターをフレイボム型に戻して、対雑魚用の駆逐仕様から本来の殲滅型に戻そうとしていた。
(本命の主兵装はハルバードにオーラソード、そしてオーラを阻害する投擲剣として……。コンバーターは正副合わせて四つでいい。ナの国の技術じゃなくて、俺らの技術なら増幅器も強力だから五つも要らねえ。そこまではヴェルヴィンとだいたい同じだ。後は……空いた余力で何を取り付けっかな。左腕はズワァースと同じオーラショット付きのシールド付けるとして……右にも何か付けるか? コンバーターと腰は武装無しでいいと思うんだが)
ビルバインの発展系で装甲形状がバイストンウェルっぽい機体が存在する。
出渕裕が設計したヴェルヴィンであり、五つのコンバーターとオーラソードのみで戦う機体である。プラモデルの企画などではしばしばハルバードが装備されており、ゼットはそこにオーラを阻害する素材で出来た投擲剣を加える予定であった。これをガントレットや大剣に仕込まないのは、オーラを阻害するからオーラ斬りが出来なくなるからである。そしてズワァースの改良で作られる『オーラショットと一体化した腕』を用意することで、牽制用の武装としたのだ。
という訳でラウの滅亡は回避されました。
滅ぼしたらクの国が持って行ってしまいますからね。
「条件付き降伏の交渉を申し出られたんだ~仕方ないねー」とクの国へこの時点でウイングキャリバーが飛んでるでしょう。
●ペタン
降伏した武将でオリジナルというか、第二大戦時のナチスドイツに降伏した元帥がモデル。たぶん王族の血も遠縁程度には入っているので苗字はそちらに近いと思われる。
●ドレイクの申し出
なんか泣き言を言ってますが、別に改心はしてません。
征服でも和平路線でもどっちでもいいと気がついた。寿命考えると後者が有力。そう思っただけですね。ただ、ここではその辺の話をした方が説得できるので、嘘ではない話として語っているだけです。
●マーベルの扱い
フォイゾン王が死に、ボチューンがボロボロになったので降伏。
騎士とか領主が捕まっても自由行動できるように自由です。
しかし要請に従って身分に相応しい振舞いが必要なので、データ検証してます。ショウ? 彼はガラバ相手に不利だったけど普通に撤退しています。
●バーン
自分の手で戦いに勝利を! と作戦無視して突撃。
それでドレイクがピンチになっても、後で助ければいいや。のノリです。
騎士には自由行動の慣例があるので罪ではありませんが、そう言う奴を放逐するのも自由。誰も庇わなかった感じですね(ショットは庇った結果命は助かったと言い、雇いますが)。
『ズワース改二』緑令龍/ドラグーン
前に述べた通り、武装が腕やコンバーターと一体化。保険案で試作用。
大型施設でないと弾薬補充も出来ない代わりに、装弾数が増している。
また、オーラを伝導し易いパーツと、伝導し難いパーツの導入によりオーラの操作性が増している。具体的に言うとオーラバリアを使って防御したり、延長砲身でフレイボムが真っ直ぐ直線になっているなど。
『グアザング』ゼット版ヴェルヴィン。ver.1時点。
9メットで9ルフトンで設計されたダンバイン系の白兵戦機体。
コンバーターは正副合わせて四枚。少しでも高性能にするので武装なし。
ヴェルヴィンよりも高性能なオーラ増幅器がある為、五枚目はカット。
基本的にはオーラ斬りで敵を切り伏せる高機動の白兵戦機体である。
主武装。ハルバード・オーラソード。オーラを阻害する投擲剣。の予定。
固定武装。左腕。
バースト式オーラショットを内蔵・一体化。主に牽制用。
固定武装。右腕。
?。考慮中。思いつかない場合は左腕と同様になるか、オーラ伝導し易いパーツで殴る為の手甲になると思われる。