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「本当に二回目の和平交渉でショットが動くの?」
「ああ。ビショットが和平に応じて戦わなくなるからな」
「この間まで戦争してたのにいきなり方針を変えられるの?」
「乗って来るさ。君主にとって戦争は手段の一つに過ぎねえ。これまではソレが決定打になるからやってただけだ。先が見えなくなり、決定打に成りえない以上は乗らざるを得ねえ。そこに今まで以上の得が有るなら猶更な」
マーベル・フローズンの質問に答えながらゼット・ライトは機体を弄った。
一回目の和平交渉が無事に決まり、ラウの国の重臣たちもそれを呑んだのだ。アの国やナの国が援助するとした影響も大きく、国王が討ち取られて敗戦した以上は、これ以上の条件は望めまいと思っていたこともあるだろう。そして約束の履行が保証されているからこそ、クの国も矛を収めたという。
「連中の野望には勝利条件があるんだ」
「こうなったら勝ち。そこを目指して戦い続けるかどうかって話しよね?」
「そうだ。そもそもの話、クの国単独では中央諸国を征服する事すらできねえ。ボードゲームでいうとそうだなあ……他の国にくっついてそのおこぼれを狙う寄生するタイプか、無害な振りをして一気に勝利を狙う様な潜水艦みたいなタイプ。そういう『勝ち筋』で考えると、ドレイクに世界征服を志してもらって、リムルと結婚するなり、ドレイクの寿命を待ってから勝利宣言するっきゃねーんだ」
クの国は有力国であるがそれ以上ではない。
中央諸国の中央にあり、攻められ易く交易し易い。豊かな資金を軍備につぎ込んでも貴族や国民から文句を言われ難く、それどころか戦うことも舌先三寸で丸め込むことも褒め讃えられる恵まれた国だ。しかし国土の広さではラウの国は及ばず、もっと広いナの国には遠く及ばない。ラウから国土を削り、ミの国を保護国に置いてようやくナの国を越えるレベルだろうか? 仮にドレイクが敵対せずに見守るとしても、クの国単独では諸国に対して勝利し得ないのである。
「ドレイクが戦略戦争を諦めた以上は、ビショットも手を引かざるを得ない?」
「ああ。本質的にはそこの判断が問題になる。ビショットはまだ何度でもやり直せるが、ドレイクはここが最後の方針転換だ。戦争状態になれば戦っても良いし、次は自分が調停に回っても良いとビショットは考えるが、出来ればドレイクの後継者となって世界の全部を狙いたい。だがドレイクが戦わないならば野望はこれまで、重臣たちも止めるだろうさ。って言うか、愚かだとは思われたくないから側近以外には野望を説明して無いだろうから猶更だろうな」
単独では動き難く、動く為の理由も不足してしまっている。
そしてビショットにはドレイクを突き動かすカードが存在しておらず、開拓に関する技術と知識という大きな利権問題が黙っても転がり込むことになっている。国力だけなら以前の倍くらいには到達できるのだ。ここで健全な未来を選んで名君として讃えられるか、それとも勝ち目のない火遊びにベットして覇王を目指すかという話になる。この状態でどうするかすら定まっていない可能性があった。
「ならショットの方は? 諦めないんでしょう?」
「あいつは勝利条件を投げ捨ててるからな。覇王の重臣から始まって、開拓地をまとめて小王に。オーラマシンの開発者様だぞ? 望めば大概の地位も身分も手に入る。だが地上で酷い目に遭ったという過去が、オーラマシンで何でもできるという自負が混ざり合ってそれをさせてくれねえ。行ける所まで行くって気持ちなんだろうよ……少なくとも今な」
ゼットは答えながらも機体の再調整を続けている。
ショットならばドレイクの腹心として大貴族に成ることもできただろう。開拓地を率先して開墾し、自らが王を名乗ることも出来た筈だ。しかし『ドレイクさえ倒せば』という気持ちは、『オーストラリアでの重労働』がショットにそれを拒ませる。リの国の様な例があれば当面の王として招かれる事すらあったと思われるが、彼のプライドがそれをさせないのだ。
「今は? いつか諦めるって事?」
「奴が王になるには諸王が消えて、自分がそれを収めにゃならん。何時?」
「そんなの無理よ。でもそうね、誰かが虐殺して自分が討ち取れば……あるいはということかしら。そうか、今ならビショットって言う小物が居る。不満だって口にしているでしょうし丁度いいわ」
ショットが合法的に王と成るのはハードルが高い。
王たちに扶余が重なるような偶然が起きるとは思えないし、一部が親だからと言ってそれを理由に攻め込んだりはしないのだ。そして数いる重臣の中から自分が王へ推挙されるためには抜群の功績と、出来れば遺言も必要だ。しかしそんな物は怪しくて仕方が無いので、理想を言えば何処かの王様が諸王を討ち取る陰謀を企むくらいは必要だろう。
「そうだ。奴が王に成るには今を置いて他にねえ。だが火が燻ることもある」
「だからその機体がショットの最高傑作を打ち破る必要があるって事ね」
「ああ。自分ならやれるって思いがある内は駄目だ。だが同じ程度の人材がいっぱいいて、そいつらと腕を競い合ってる方が楽しいとなりゃ、あいつも少しは目を覚ますさ。つーかなんだな。これから天才技術者が生まれるたびに、『綺麗なショット・ウェポン』と呼ばれて反面教師扱いにされるのはどうかと思ってな」
ショットにとって王に成れる千載一遇の機会は目の前にある。
今ならばビショットに『自分がオーラバトラーを用意するから黙認してくれ』と言って陰謀を担がせておいて、一緒に始末して責任を押しつけてしまえばよいのだ。だが、これに対策して使者と書類で済ませたりした場合、ショットが隠棲と称して素材を集め、凶悪なオーラバトラーをたくさん用意してから再起する可能性がある(マッチポンプで自分が鎮める可能性すらあった)。だからこそ、『自分がオーラマシンを一番扱えるんだ』という気持ちを何とかする必要があった。
(原作のショットとゼット。ラウの国に居てボゾンやゴラオンを作った奴と、ナの国でボチューンやビルバインを作った奴。凄腕の技師は何人も居るもんさ。まあこの世界のゼットは俺だし、ゴラオンを作った奴とビルバインを作った奴は同じかもしんねえけどな。とりあえず……こいつなら何とかなるはずだ)
ゼットは原作に登場した様々な技術者を思い浮かべた。
ゴラオンという高い攻撃力と機動力を持った大戦艦。量産性に優れたボゾンや、機動性と限界オーラに優れたボチューン。そしてビルバインという主人公機を作った技術者がいるはずなのだ。ゴラオンとグランガランは国情を考えれば逆な気もするので、もしかしたら同じ技術者が作ったのかもしれないと思いつつ(技術協力しているという話だったので十分あり得る)。そんな状況で、腕を磨く方がショットには面白い様な気がするのだ。そして何より、腕比べをする為に機体を仕上げる。その事はゼットが楽しいと思っていた。
「悪いがこいつは危険物になっちまった。暫くオレが動かすぜ」
「別にいいけれど、この間まで勝てないとか言って居なかった?」
「まともな運用だったらな。暴発とか暴走しかねん代物に御客人を乗せるわけにはいかんだろうよ。射撃の場合は火薬の力は大気中で制限され、当たった瞬間でも抑え込まれるから山ほど詰め込む意味が無い。ならオーラを注げば威力が上がる筈って実際に成功したが、機体が壊れかねねえ。そこにコンバーター直結にすればチャージは早いが、壊れる可能性は同じで威力の上限がそれほど上がらないのも同じと来た。だから最終的に、分厚い装甲の機体には勝てないんだ。そんな奴は滅多にお目に掛かれないだけでね」
数値化した場合、火力の線は先に高くなるが防御力より前にカンストする。
装甲と耐久性を合わせた防御の線は機体が大きくなればなるほどに高くなるのだ。これを突破するには剣で勢いよく斬らねばならないが、白兵戦の上手いバーンが相手の場合、白兵戦能力が低い者だと倒せないのである。正攻法で上回るにはオーラを高くして限界突破状態か、助走をつけたチャージで攻撃を浴びせるか、地上で火薬の制限が無い状態で戦う必要があるだろうという。
「じゃあ、これはその辺りの対策を危険な域でやってるってこと?」
「おう。暴発して機体が壊れたり、暴走して空中分解しかねねえな。ただし、そういう方法でよければずっと昔の段階で出来たんだ。ビランビーを空中分解させるよりも、ビアレスやライネックを目指した方が早かっただけでね。俺はそういうの嫌いなんだけど、今回ばかりはそうもいかねえだろうよ」
極論を言うと、ゼットは限界を超える作業から逃げていたと言ってもよい。
それよりも様々なパーツを組み替え、素材を吟味してより良い物を作れば良かったのだ。だからこそ、技術の極致まで達した段階で、相性の悪い相手を倒すために無茶をする羽目になったと言える。
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「おお……ウイングキャリバーとは戦うだけではないのだな」
「はい。ビショット陛下。地上ではあの様に楽しませる行いもしております」
第二回の平和交渉にビショット・ハッタが訪れていた。
事前にシーラ・ラパーナも到着しており、その来訪を確認してからという塩梅であった。無駄足を避けたとも言えるが、おそらくはショットとの取り決めで、彼が襲撃を掛けた時に合わせて行動するためであろうとゼットは考えている。
「見よガラミティ。五色の尾が色鮮やかに天を彩っておるわ」
「然様ですな。しかも一糸乱れぬ動きは相当に訓練したと見えまする」
「流石はガラミティ殿、短い間によくお気づきになられました。音に聞こえし三騎士の方ならば即座に似たようなことをやってのけられるでしょうね。民には曲芸で不満を和らげつつ、腕利き達にはその活躍の舞台を与えているのです」
ビショットは武骨なガラミティ・マンガンに視線を送っていた。
ゼットはそれに合わせて赤い三騎士を持ち上げながら、その脅威を考慮していないわけではないと告げた。空中を飛ぶバラウの群れは、色をつけた煙幕を垂れ流しながら飛んでいるだけだ。だが並んで飛べるという事は、距離を空けて一斉に爆撃できるということでもある。そしてオーラバトラーではなくウイングキャリバーで行っているというのは、広域警戒態勢を敷いていると見せる為でもあった。
「それはそれとしてオーラバトラーを見せても良かったのか?」
「はい、陛下。時には競い合う事も重要でしょう。それに一機を除いて、どの試作機も特殊な鍵無くしては動かぬようにしております。ご安心くださいませ」
ビショットを案内している中庭には今までの試作機が置いてあった。
流石に封印しているサーバインは隠したままだが、ビランビーの試作一号機から三号機。ビアレスの試作一号機と二号機などが置かれ、疑われないようにコックピットを開いたまま膝を着いて招待客ならば誰でも見られるようにしてあった。
「ほう。一機だけ……試運転でもするのだろうか?」
「模擬戦でもお見せするのも良いかと思いまして。勘違いで無ければ、我が友ショット・ウェポンが自信作を用意している筈でございます。おそらくはどちらかが次世代の機体になるでしょう。いえ……似たようなことを考える仲ですので、案外、似たような能力やもしれませんね」
探るような目つきのビショットにゼットはあっけらかんと答えた。
ここで隠し意味は無いし、正直に『お前らの陰謀に気がついて居るぞ』などと言えばビショットが破れかぶれに成りかねないからだ。あくまでショットが悪戯心を起こし、プレゼンテーションをやってきても、即座に対応できるだけの準備をしているという風に答えたのである。
「……どの様な物か聞かせてもらっても?」
「はっ。オーラバトラーを動かすのには最低限のオーラ力と、これ以上は力が発揮できない限界のオーラ力がございます。これはその限界を可能な限り取り払い、推奨オーラ力とでも呼ぶべき、高いオーラがあれば動く装備を設置した物になります。後は設計者の個性でありますね。私は9メットにこだわりましたが、ショットはおそらく大型化して今と同じ速度を持たせるのではないかと推測しております。後は……ナの国辺りでは同じ条件で、特殊な機体を目指すと聞いております」
陰謀に関しては口出ししなかったが、性能に関しては正直に語った。
技術者としてありえる行動であるし、ショットの方で『こういう強さを持っているから、必ず勝てる』と言っていたとしてもビショットは不安がるだろう。少なくともショットが勝利を収めるまで動かなくなる可能性が高い。そして稼働しないという説明は聞いていても、他の試作品に鍵が有るならば動かす事も可能な筈だ。ウイングキャリバーが時間を稼いでいる間に準備をされたら、連れてきている騎士たちでは制圧が出来ないと思う可能性があったからである。
「おっ……陛下。あそこをご覧ください。ナの国の最新型がやって来たようです。我が国のガラバと模擬戦を繰り広げるのかもしれませんな」
「む……そうかもしれんな。しかし、ウイングキャリバーの模擬戦か……」
ゼットが彼方を指さすとビルバインらしき赤い姿がやって来る。
反対側からはガラバがやってきており、城から見える位置で模擬戦を行うものだと思われた。そのスピードにビショットは驚きつつも、オーラバトラーではなくウイングキャリバー同士の戦いだとホッとした表情で見守る心算のようだ。もっとも随伴するガラミティの方は、400リル以上の速度で滑空する両機に驚いたようであるのだが。
「陛下! あれをご覧ください!」
「なんと。ウイングキャリバーがオーラバトラーに!」
「どうやらナの国は聖戦士が戦場に到着する時間を重く見たようですね。確かにこの方法であれば、最強の騎士が二か所に存在することも可能かもしれません。ですが我がガラバも負けてはおりませんぞ」
暫くしてビルバインがオーラバトラー形態になった。
それに合わせてガラバは足だけを変形させ、高速飛行とホバリングを兼ね備えた最低限の変形を見せた。そして両機は狭い範囲での高速戦闘を繰り広げて見せたのだ。
(ショウのビルバインは保険用を兼ねて見張っていただけの筈だ。てーことはショットの奴が重い腰を上げやがったな)
ゼットは夢中になる客人をしり目にこの後の流れを警戒した。
そして合図を出して万が一の準備を整えながら、自分も動き出すことにしたのである。そう……本命機であるゼット流ヴェルビン『グアザング』の出番であった。
「ビショット陛下。時間が来たようですので、私は友人たちの相手をせねばなりません。案内の途中でありますが、失礼いたします」
「……そうか。楽しみにしておるぞ」
ゼットは可能な限り丁寧な口調と仕草でその場を辞去する。
そしてグアザングの下に移動し、出撃体勢を取ったのであった。やがて彼の機体が空を舞うころ、彼方より漆黒の機体が飛来したという。
という訳で、今回は和平交渉の二回目と合わせてオーラマシンショー。
ビショットが戦わなくなる理由と、ショットの戦う理由の解説です。
次回に戦闘して大筋終了、その次くらいで終わるのではないでしょうか。
『ズワウス』ver2
破壊神ズワウスの名前を冠するオーラバトラー。
猫背での身長13メット、直立すると15メット近い巨大サイズ。
もしズワウスが勝利すれば、14メット前後が次世代の基準となる。
正副四枚のコンバーターで稼働しオーラ操作で基礎力を上げた戦闘。
長距離移動する時は、オーラを阻害する装置で隔離している浮遊装置をフル稼働して、体重を相殺して300メット以上の速度を出せる(常時浮遊しないのは、重量も武器であり反撃時に吹っ飛びかねない為)。
『モンスターアイ』
煙幕・夜間その他の視覚問題を解決する、オーラで識別するセンサー。
いわゆる心眼で物を見るという行為であり、集中すると遠視も可能。
『グレートシャムシール』
オーラ操作で威力向上が可能な曲刀。折れ難く重いので威力が高い。
『拡散型カイトシールド』
オーラ操作でオーラバリアを局所的に張り易く巨大なシールドと成る。
このため、身構えて居れば遠距離砲撃は殆ど無効にできる優れもの。
『短砲身連装オーラショット』
外伝では壊れていた股間部のオーラキャノン。
速射できるが射角的に弾幕用であり、同時に対地襲撃用である。
『ドラゴンテイル』
試作型ズワァースについていたモノとは違い、蛇腹構造ではないがオーラ操作でそこそこ動かせる重量物。
『ドラゴンショットクロー』
手と足にある太い二本爪でちゃんと伸びる。
オーラ操作できないが、オーラを阻害する素材で出来ているので、咄嗟の時に使用可能。
グアザングのver3は次回。