気が付けばゼットだった件【完】   作:ノイラーテム

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他愛のない研究の日々

●

「これからのオーラマシンは大まかに分けて三つあると思うんだよな」

 

「今までのサイズを標準サイズとして大型化と、特殊形状の二つだな」

 

「今回の件でオーラバトラーそのものの限界は感じたね。今の技術だと素材そのものの限界を越えられないから巨大になるしかない。さもなきゃ特殊な形状であったり、ウイングキャリバーの様な用途別に特化するかだ」

 

 和平交渉が終了して世の中は一応の平和を迎えた。

 

もちろん表面上の平和であり、裏ではクの国のビショット・ハッタなどは陰謀を企んで居るだろう。だが開拓競争が始まってしまった以上は、何処かに戦国乱世と化している地域でもない限りは変わらないだろう。もちろんその時にオーラバトラーでの戦争にならないように何とかする必要はあるだろうが。

 

「今は……かブレイクスルーに期待するしかないな」

 

「小さくても農具や医療技術への応用は効きそうなんだがよ」

 

「君はその辺が柔軟だな。頭が下がるよゼット」

 

「ショットだって義手とかバーンに作ってやったろ」

 

 最後の戦闘に関しては司法取引が発生した。

 

バーン・バニグスは落下したズワウスに巻き込まれて瀕死、ショット・ウェポンの罪を喋る事で罪が軽くなった。そして追い詰められたショットは隠居を渋々認め、軍師兼オーラマシン開発の総責任者という地位を返上。表向きは『領土経営に専念する』という理由で、与えられた領地へと籠る形で半ば幽閉と成ったのである。ゼットからみれば欠片も信用できないので、隣に領地を貰ってちょくちょく相談に訪れているというわけだ。

 

「一度大きくして技術をフィードバックが先だな。ズワウスはどうだった?」

 

「能力が平均化するのが難点だな。理性に従うと個性がすり減ってしまう」

 

「特化すると能力が異常に下がる。だから無理をしたくなくなるってか?」

 

「そう言う事だな。試しはしたが途中で馬鹿馬鹿しくなったぞ」

 

 どうやら巨大化は巨大化で問題があるらしい。

 

能力が上がるのは良いのだが、何かを上げると他が下がるのは当然だ。その上で重量が増してしまうので、それを補うようにするとやはり別の何かが必要になる。バランスが取れたところで、ではどんな能力を持たせるかというと、どうしても常識に頼って『出来るだけ能力を落さないように、それでいて得意分野が作れるように』と変化の幅が小さくなってしまうのだ。

 

「さて。発想の豊かな君ならどう考える?」

 

「一つ目は夢を追う事だな。小型の場合はオーラで造った剣と盾で遊ぶ」

 

「ジェダイでも目指す気かね? だが面白くはある。可能かは怪しいがな」

 

「だけど夢はあるだろ? 確かナの国で近い事は研究だけはしてた筈だ。後はそうだな……闘技場みたいなルールと戦場を作って、飛ぶ能力を削ったオーラバトラー同士で戦うとかな。レギュレーションを決めれば、飛行に関する計算をうっちゃれるぜ。最終的に強いのは四本脚のケンタウルスになっちまうが」

 

 ショットは幽閉されているとは思えない快活ぶりだ。

 

ミュージィを内縁の妻として新婚生活を送っており、その内に結婚するだろうというのもある。それとは別に、やはりオーラマシンの話し自体は好きなのだろう。

 

「飛行能力が強いオーラバトラーで飛行能力を削るのか!?」

 

「そのくらいしねえと常識は離れられんだろ。つーかガラバ作った時に、俺もお前と同じことを思ったんだよ。ウイングキャリバーを大きくしても射撃武装のプラットホームにしか成らねえ。あれ以上の大きくして600リルくらいの速度を出しても、総合火力はともかく強さは少し上だろうな。スプリガンの戦闘能力もゼラーナより少し上くらいだろ? それとおんなじだよ」

 

 ゼットが提案した地上用オーラバトラーという言葉にショットが驚いた。

 

それだけオーラバトラーが持つ飛行能力は破格なのだ。そしてガラバのデータや、作ってこそないがブブリィに関して記憶しているデータを元に能力に関する限界線を提示する。それを越えるには、後はもう飛行能力を削るとか、大幅なパラダイムシフトが無いと無理だという。

 

「確かにそのくらいのことをやらねば変化は望めまい。だが戦力としては……」

 

「間違いなく下がるだろうな。だから戦争用ではなく、トーナメント……騎士の試合会場として場を整えるのさ。最大何機までで、総合的な大きさは合計で何メット何ルフトンまで。小さい機体や大きい機体が混ざる意義を別の部分で造る。あるいは移動中に目標を命中させる訓練を競技にしちまうとかだな。それならオーラマシンに与える能力には、大きな変化が付けられる。それに合わせて技術も発展する筈だぞ」

 

 ある意味でショットは戦争用という常識に縛られ過ぎていた。

 

大学ではロボット工学を研究し、それまではオーストラリアの開拓地で酷使されていた。世間一般に関わっていた様子も無いし、一部の知識はあるだろうが無意味な事をあえてやってみたことは無い筈だ。そしてゼットは転生前の雑多な知識を流用し、『ショットの知らない世界』を彼に与える舞台としたのだ。

 

「君は私に玩具を作れと言うのか?」

 

「オーラマシンはお前の才能を示す芸術品であると同時に、手慰みの玩具なんだろ? なら『戦争の道具が必要だった』という常識ごと書き換えてやれよ。戦争が終わった今なら、それが可能な筈だ。それらがもたらした新技術を経てからでも、これまでのオーラバトラーの延長線上のマシンは作れるだろうぜ」

 

 これまでのオーラマシンの常識は、これまでの常識の中で造られていた。

 

だから世界を広げる事で常識自体を過去の物にしていく提案をした。もちろん今までのオーラマシンだって必要とされるだろう。きっとメインはその辺であることは変わらない筈だ。だからこそ、凝り固まった思考を解きほぐしてショットの野心を和らげるのではないかと思ったのである。気分は『天下三分の計』を語った諸葛亮である。あれほどの大人物ではないし、諸葛亮には諸葛亮なりの採算があったはずだが。

 

「言いたいことは分かった。ただ、そうだな。大型や特殊型の話も聞きたいが」

 

「そうだな……語り合うなら14メット平均の方だな。18メット以上の方はもう、離れて撃ち合う以上には成らねえぞ。多分だが射撃戦が優れた連中の読み合いか、戦略特化の軍師が大砲構えて前線と戦艦との中間で指揮するくらいだ。俺としてもガラバ以上の存在を造るのは難しいな」

 

 誘導に気がついているのかショットは当初の話題から逸れなかった。

 

あるいは最初からそれこそが聞きたかったのかもしれない。だから自由な発想があろうが、18メット~23メット前後の機体は出口が決まり切っているのだと正直に話した。実際、ゼットがブブリィを越えようとより小さいガラバで試して、Vトール戦闘機以上の存在に成らなかったことからの思いである。火力を下げて600メットに到達するか、据え置きでオーラショットなりオーラキャノンが一門か二門増えるだけだという。

 

「私の機体に勝った君でもか?」

 

「止せよ。俺はお前の絵を額縁に入れただけさ。スパコン一つでお払い箱だ」

 

「そうでもないと思うが……いや。私もズワウスでそう感じた。出口は同じか」

 

「お前さんは目が見え過ぎるから先に気がついただけさ。その上で、14メット前後の機体はまだ先がある。今まであえてやらなかった内から、幾つか試せることはあるからな。重量的とパーツ的にもそこまでは何とかバランスさせられるのはお前さんも知ってるだろう? そう言う事さ」

 

 ゼットは別にショットより才能が有るわけではない。

 

少しばかり未来を知って居て、そしてショットよりも地道な作業に忠実だっただけだ。夢を追い掛ける部分と現実的に折り合いを済ませる部分を持っていただけのことである。そして終着点が決まっていたからこそショットの機体に勝てたわけで、もし才能だけで勝負して居たら話しは変わっていたに違いない。そういう意味でスーパーコンピューターによる演算と自動命令があれば、同じことをショットが作業を代理させて成し遂げただろうと言うのは間違いない。それにこう言うと何だが、地上の電子部品があればゼットの作ったエセICなど無用の長物なのである。その点、ショットは地上でも出来ない事を成し遂げた男なのだ。

 

「今までやらなかった……か。だがそれは能力の向上とは限らんぞ」

 

「分かってるよ。誰も思いつかなかったのではなく、しない理由があるからな」

 

「では聞かせてもらおう。ゼット、君は13メット以上の機体に何を見る?」

 

「考え付くのは二つ。一つ目は操作性に関する改良、二つ目は人間には不可能な挙動かな。ライネックの装備が増えたって大して強くはならねえ、だがドラムロが一回り大きいビアレスになっただけで戦闘力はダンチだぜ。その差は兵士から騎士に変わった事と、様々な機能が機体を強化した事だからな。ビアレスを13メット以上で作れば、もっと面白くできるだろうよ」

 

 ゼットはショットの問いに肩をすくめた。

 

古のネットミームに詳しい者は幸いである、『四次元殺法コンビの構文』というものを聞いたことがあるかもしれないのだから。そして四次元殺法コンビの構文とは、誰もしなかった事の中には思いつかなかった事や出来なかった事だけではなく、『問題があるから、あえてやらなかった事』がある。即ち、ただの欠点であるという言葉であった。

 

「ビアレスの順当進化で操作性と特殊性の強化か。能力を絞れば……」

 

「ズワァースでやった掃射型、ガーゴイルが持つだろう散布型。それを完全制御できるようにするか、なんだったら腕を増やしても良いよな。普段は使わないようにしておいて、どっちかを騎士が選択できるようにしたり、壊れたら予備の腕にすればいい。後は移動力が遅くならないように……できればドラムロ以上ってだけでいいんだ」

 

 明らかにショットは先ほどの会話よりも興味を覚えていた。

 

そこでゼットはメモ帳を取り出し簡単な絵を描いて、サイズの差の表示と共に脇腹と肩の上を丸く覆った。そこにハードポイントとして何かを付けるとして、フレイボムを示すように直線型と広い散布型の射線を描いて行く。

 

「今のは分かり易い強化だが、騎士が今までより操り易く成ったらどうだ?」

 

「ゼットの言いたいことは分かるがオーラで念じる以上は難しいと思うぞ」

 

「そいつはどうかな。拡張サイズが縦に4メットもあればコックピットを大きくできるだろ。そこで剣を握って振り回すとそのまま動くとか、予備の腕やモードの切り替えを担当する二人目が同乗したらどうよ。少なくとも元から強いバーンなら今より強く成るぜ」

 

 どうやらショットは『念じれば動く』のが最適解だと思っているようだ。

 

そこでモビルトレースシステムとは言わないが、もう少し扱い易い動作補助を考案した。その上で二人乗りにして面倒くさい作業を二人目に丸投げする方法も提案しておく。

 

「そんな馬鹿な。成功制御と操縦桿で十分な筈だぞ」

 

「追随性はコンマ数秒くらいだが、操縦に関する意識が変わるぜ。操縦桿だけだと椅子に座ったまま腕だけ動かしてる感じがするんだよな。お行儀よく枠の内側で戦ってるから押し切られるみてえな。まあ、騎士は指揮官でもあるから間違いじゃねえんだが……オーラ操作で剣にオーラ集中する方法も確立したわけだし、試すだけ試して計測すんのも悪くはないぜ」

 

 抗議するショットにゼットは親指と人差し指で示してみた。

 

右手で小さな差、左手で大きな差。『意識してから動く』のと『体感の差』が他にも随所に存在するのではないか、それが『オーラ操作のスピード』にも影響しているのではないかと説明したのだ。

 

「だとしても僅かな差だろう? これまでは問題無かった」

 

「可能性を追求するのが科学者だろ。それにこのまま平和になってみろよ」

 

「その僅かな差で勝敗が決まる試合になると言いたいのか? 他ならぬそれを主導した君がよく言う」

 

 仮に肉体の動作に追随する方が早くても、コックピットを広げる程ではない。

 

そう主張するショットに対してゼットは『試合形式』になったら話は変わってくると告げた。その論に一理を感じつつも、戦乱を治めて平和な世の中に誘導したゼットが主張するのかと苦笑した。

 

「そうしたから先に動けるのさ。戦争になっても一年は有利だが、今から研究すれば二年はまた有利で居られるぜ。それだけのことさ」

 

「……分かった。それは君が研究したまえ、それは止めないがね」

 

「素直じゃないねぇ。なら二人乗りの方は頼むぜ。同時にゃできん」

 

「私の方が多機能に成りそうだから考えてはみよう。それだけだぞ」

 

 可能性がある以上は開発する意味はある。

 

この後の流れを想像した上で、無関係だと言い切る程にショットの頭脳は緩くない。様々な研究をしてゼットと技術交換を行って、アの国に貢献することで幽閉処置を解こうというのだろう。その間に様々な事を同時に開発し、その果てに何かを為すのかは分からない。ただ、ショットにとって有意義な研究三昧の日々は特に苦痛ではないのだろう。

 

「それで、特殊な装備は何がいいと思う? 触手が軽くて良いと思うのだが」

 

「触手だけだと軽いし、ドロのフレイボムから少しでも火力UPってところか? ただ副腕は邪魔なのは確かだから射撃兵器としてはアリかな。俺としてはノズルと圧縮空気砲を兼ねた装備を、後ろ向きだったり足の裏に仕込んで加速装置にするのがどうかと思うんだ」

 

 ショットとゼットはそんな感じでオーラマシンに関する研究を続けた。

 

平和になったバイストンウェルで何が起きるのかは分からない。だが、ゼットに憑依した男が死んだ後、無限に生き続けたりループを繰り返すような地獄を味合わなくてよいのは確かであろう。原作よりも遥かにマシな世界になったのだから。

 

●オマケ。その後の情勢

『中央諸国連合』

 ドレイク・ルフトの御声掛りで中央諸国が協力し合う場として発足。

特に強制力はない筈であったが、ドレイク軍の強さと裏で暗躍したルーザの発言力でかなりの力を持ったという。ドレイク → ビショット → シーラの順で議長が変わっていくことになったが、ルーザはいつでもブイブイ言わせていたという。

 

『アの国』

 ルフト家は第二王家と成り、エルフ家と交代で王位に就く形で収束。

エルフ家の王が主導する間は、リムル・ルフトの元に贖罪を果たしたニー・ギブンが婿入りしており、その子供とエルフ家の子供で婚礼を行うことで一応の妥協が決まっている。

 

『クの国』

 従兄弟であり内部の対抗勢力を『ミの国』の王配やその側近として飛ばし、ミの国を保護国として扱った。このためにクの国は王権が強くなり、ビショットの孫の時代に絶対王権を目指して揉めることになる。それ以外は基本的に勝ち組であったのだが、ビショット王は何故か不満げであったという。

 

『ミの国』

 クの国の援助で復興。クの王族を王配として迎え、女王であるエレ・ハンムは半ば巫女として民を導いたという。小さな国のままではあったが、一度滅びた国としては奇跡的な復帰を果たし、王家は独自の立ち位置で政教分離的な状態で、皮肉にも後の世にも長く血を伝えることになったという。

 

『ラウの国』

 ゴウ家の本家は絶えたが、親戚筋の家が王家と成った。

敗戦将軍がアの国の後援と共に援助した為、その権力は安定せずラウの国は数代後に分裂して滅びたという。だが、それが原作よりマシであることを誰も知らない。

 

『ナの国』

 お忍びで飛び出したシーラ女王がガロウランに攫われる……。

という謎の事件が起き、同様の問題が何度か起きたが、何とか納めた。

その影に国内の反乱分子であるとか、他国の間者が消えることは無かった。だがそれ以外では何の問題もなく、病気療養の時以外は長い統治を行い善政を行ったという。生涯独身であったが、後の恋愛小説では彼女を助けた騎士ないし聖戦士との間に子供がいたという説が絶えない。ナの国自体は他国へ働き掛けることが少ない事もあって、可もなく不可も無く続いたという。

 

●有名人物たちのその後

 多いので気になる人物のみ記載。

 

『ゼット・ライト』

 ガラリア・ニャムヒーと結婚して引退(ドレイクが仲人)。

ショットの領地の隣に隠棲して、仲良く喧嘩しながら研究していたという。

 

『ショット・ウェポン』

 政治取引で幽閉を受け容れ、ミュージィ・ポウと結婚。

その後は嘘のように性格が丸くなり、妻や子供たちと研究の日々を続けたという。

 

『バーン・バニングス』

 一命をとりとめたものの瀕死の重傷を負った。

そのために義手を付け、やけどを負って生涯仮面をつけた。

各地で士官したり放浪を繰り返し、オーラバトラーの教官などを務め、尊敬の念から『La・バーン』殿とか、『黒騎士』と呼ばれるが……不思議と『このような物があるから世界は収まらぬのだ』と不満を漏らす矛盾だらけの日々であったという。

 

『ショウ・ザマ』

 平和になった後に元の世界に戻る方法を探そうかと思ったのだが、本当にドレイクが改心したのか不明であり、元に戻る方法も『無くはないぜ。危険だが』というゼットの意見を聞いて諦める。その後はナの国で女王シーラを助けたり、ラウの国やミの国でも協力する姿があったという。同様の行動をするマーベル・フローズンとの結婚の噂もあったが、なぜか結婚していない。

 

『白騎士ヴァルキュリア』

 女性騎士であったりオッサンだったり青年であったりする謎の人物。

基本的にはマーベル・フローズンを元にした創作上の人物とされる。

ただマーベルのみであったとすると、シーラ女王との恋愛譚がおかしくなるので、時々別の人物と入れ替わっていたという説が有力。

 

『ルーザ・ルフト』

 諸国連合で暗躍し、一番の発言力で不満分子を抑え込んでいる。

ドレイクやゼットの釘刺しもどこ吹く風。原作と比べてある意味で勝利者であろう。




 という訳でこのストーリーは終り、その後の話しを含めたオマケ回です。

平和になったというよりは『戦争より先にすることがある』
と他の事をし始めた感じですね。愛と友情を語る勢力は居ないので。
ジャコバ・アオンも全盛期のまま生きているから、もしかしたら『浮上』が先延ばしになっただけかもしれませんが……。大戦争が起きない限りは主人公たちが飛ばされることもないでしょう。
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