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「楽しそうですね工場長。オーラシップの設計はそんなに面白いですか?」
「重要なのはそこじゃねえよ。そいつで戦いに勝てるようになるってこった」
ゼット・ライトは工房用オーラシップの設計に取り掛かっていた。
ドレイク・ルフトから計画段階までは許可が下り、実際に建造するかは別にして計画書を描いてみろと言われたのだ。ゼットが楽しそうなのも、戦場で修理が出来れば戦いが楽になるのも確かだ。若い鍛冶師は茶化すだけに留めてそれ以上尋ねはしなかった。
「しかし、実際に作れたら工場長が艦長でやすか? 質問難くなりますなあ」
「その辺は適宜にやるよ。おそらくこの工房の長と工房艦の艦長、その二つをおめえらの中から出して、俺はその上で監修ってことになるな。ショットの奴がオーラマシンを設計する責任者、俺は作る側の責任者ってとこだ。ま、ショットも偶には作るだろうし、俺もこの通り設計をするがね」
ゼットは年嵩の鍛冶師に応えながら、大きな木の板に全体図を書き込んだ。
機械の館を複数用意する案から、工房艦を建造して両用する計画に変更。それぞれ長を置き、大きな城を落とせば大きな機械の館を建築、そうでなければ工房艦を増やす可能性がある……と主任級から工房長級に格上げする者を増やしていく予定だと示したのである。その上で、幾つかのーラバトラーを建造する計画を、小さなマーカーで示しておく。
「そいつは遠慮したいところですなあ。あっしには此処が一番でさ」
「オレは艦長やってみたいですね。そうでもなきゃ自前の工房は遠いですし」
「どっちでも構いやせんが、それまでに腕を磨くの忘れないようにしますわ」
「まあ、この計画もドレイク閣下やショット次第だしな。腕を磨くのは悪くねえ。もしかしたらドラムロやバラウを大きくする話みたいに、でかい戦艦を作れって言う話も出るかもしれねえからな。そうなったらその中にも工房が出来るだろうさ」
鍛冶師たちの反応を見ながらゼットは後の話を混ぜて置いた。
現段階では巨大艦であるオーラバトルシップ建造の話は出ていない。ショットの構想があり、ドレイクの侵略計画が入り混じりあって達成されるものなのだろう。ミの国を併合し、アの国の国主の座を奪い、拠点を移す段階で形になるものと思われた。そこで自然な形で展望の一つとしては無し、計画書の中にも混ぜたのである。
「あー。やっぱり工房艦で修理するのはオーラバトラーまでで十分だな。戦艦でもちょいと直すだけならクレーンがあれば事足りる。でっかい戦艦が出来る可能性があるなら、大きな施設にしても意味はねえし、現場で二機・三機をぶった切って、一機にまとめ直せりゃそれでいいか」
「オーラバトラーは一機が強いですからねえ。それで十分かと」
「戦艦が落ちるような戦いはそうないでしょうよ」
ゼットは考えをまとめながら、捨拾選択を済ませていった。
作業台を兼ねたV字の飛行甲板を艦中央に用意して、その脇に更なる飛行甲板を可変式で用意。V字部分の向こう側に移動しつつ、上下にも高さを調整できるようにして作業し易くしたのだ。艦橋や鐘楼もあるし翼があるように見えるが、飛ぶためではなく全てが作業するため。クレーンも複数が同じ場所を持ち上げられるように可動域が計算されており、全てを展開したら空力的にとても邪魔であろうことが伺えたのである。
(折り畳む形式だしスキーズブラズニルとでもしとくか。確かプレステ版にゃあヨルムンガントとかあったしなあ)
最後に『武装は不要、付けるとしても対空砲』と締め括り名前を記した。
戦う前は飛行甲板にオーラマシンを載せて移動し、戦いの途中では修理のみに専念する戦艦であると決定付ける。オーラシップの修理は出来なくはない程度、やるならばより大型の国家母艦を用意すべしと意見を添えて、計画書を完成させたのであった。
「そういえばキッス家に渡すオーラバトラーはどうします?」
「ドラムロでいいんじゃないのか? 戦う事もあるじゃろう」
「ゲドをさらに弄ってダーナ・オーシーを真似るのも面倒じゃしの」
「……次のビランビーからまた二機、骨格にガワを被せた試験機を用意する。一つは体のあちこちに火器を仕込む為の試験機、もう一機はオーラコンバーターを取り替えるための試験機にしよう。ドラムロはその後でいい」
若い鍛冶師が気を利かせて提案したが老鍛冶師たちはいつも通りだった。
それは『寝返り組に火器を持たせた機体を渡しても良いのか?』という不安と、領主である『ドレイクがちゃんと渡してやれ』と言った話の問題である。矛盾と言う訳ではないが、あちらを立てればこちらが立たず。渡せば重臣のみならず騎士たちから反乱幇助と文句が出かねないが、渡さなければドレイク軽視という事になりかねない。
「火器設置とコンバーターの試験機ですか?」
「まず火器の方だが……。ビランビーから9メットになって図体がでかくなってあちこちに仕込める余地が出来た。その上でこれ以上は大きくする理由がねえから、実験するとしたら今だな。両肩・腰周り・両足にコンバーターと、あちこちに火器を仕込めば扱えるだろうよ。とはいえ火器は火器でオーラを食うし、弾薬や油もしまう必要が出て来る。沢山付ければいいってもんじゃねえよ」
ゼットは骨のような内骨格を備えたオーラバトラーを描いた。
あえて隙間を作ったスケルトン構造で、その上からカバーとなる装甲を付ける仕様だ。既存の両腕を含めて無数のハードポイントを設置することになり、豊富な火器を持たせることも可能であるし、オーラクローなどの補助武装や追加の盾を持たせても良いだろう。
「おお! それは良い案ですね! 問題も無くなります」
「確かに付けりゃあ良いってわけでもねえでしょうしなあ」
「んで、コンバーターの方はまた増幅器みたいなのでも?」
「そう言う事になるな。つーか、オーラバトラーを作る部品の中で大きく弄れるのはコンバーターくれえだ。アレを大きくしたり、ICや配線の位置工夫したり、そもそも取り替えても機能するように工夫しとく。火器を仕込むとしたらコンバーターだけでいいな。こいつを実験しておけば今後、どんな新しいパーツが作れたとしても、問題なく試めせるようになるだろうよ」
次にゼットは説明しながら様々なオーラコンバーターを描いた。
邪魔そうなくらい大型のコンバーターに始まって、翼状で優美だがさらに巨大で被弾し易そうなコンバーター。あるいは二つから三つに分かれて複雑な代わりに、基本部分と追加部分を作り分け出来そうなコンバーターを描いて行く。これらを火器試験型と同時に試さないのは、単純に複雑になり過ぎるからであろう。こちらも製造簡略化の為に上記の機体と同じ内骨格フレームを使うが、基本的に本体はちょっと良くする程度と記載してある。
「おそらくだが、その二機の実験でオーラバトラーは真の完成を迎える。後はビランビーベースにこだわらず、一から『一つの目標』に向かって組めば能力が上がると思うぜ。ビランビーなら足りねえと言われる武装を二倍から三倍付けても遅くならねえように工夫して、バス・トールならとにかく機動力、場合によっては8メットや7メットで作り直すってな。ショットとドレイク閣下にもそう伝えとく」
「「おおっ!」」
ゼットが計画書を描いた板切れを清書用の羊皮紙の隣へ置いた。
今言った話はあくまで草案に過ぎないが、ゼットの説明は十分に理解できるものであった。鍛冶師たちは自分たちが手掛けたオーラバトラーが徐々に強くなり、『真の完成品』という言葉に彩られたことに興奮した。バイストン・ウェルの歴史を進めようと奮い立ったのである。
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(とはいえ……失敗作気味なレプラカーンを一段飛ばしでディーモッシュ……オーラバトラー戦記版のズワァースにするだけなんだよな。ショットが設計するのを誘導するだけだし、俺が独自に作るマシーンじゃねえ。だが工房艦が完成すれば原作だけじゃなくてゲームとも乖離できる。こっから積み上げていかねえとな)
ゼットはオーラバトラーの案ではなくオーラシップの方へ視線を移した。
原作でレプラカーンは火力志向で製造されたが、一つ一つの火力が低いとされたのを覚えていただけだ。コンバーターを二つに分けるという案も、先ほど絵を描いている間に思い出したに過ぎない。ただ、この時計の針を早回しにしてオーラバトラー戦記版の登場を目指しているだけあり大きな影響はない。世界に与える影響にしても自分の作品という意味でも、最初に描いていたスキーズブラズニルの方が近いだろう。原作のガラバを越える機体を作るのは、何時になるか知れなかったのである。
(ガラリヤがチームワークを覚えたし、トッドの乗り気次第ではゼラーナ隊に勝てなくもない。だがラウの国もナの国も結局はやる気だから、向こうの宣伝が出来ない以外に意味はねえんだよな。大戦乱を収めるにゃあ、ドレイクに勝ってもらわねえと)
こういうと何だが、ゼラーナ隊は無敵でも何でもない。
能力の高い聖戦士が居て上限値の高い機体に乗り、それに準ずる聖戦士が援護しているだけ。そこにオーラバトラーとウイングキャリバーどっちにも乗れるサポーターが二人居て、後は高性能オーラシップが一隻という構成である。色んなゲームでも自分が隊長になって操作するとアッサリ倒せる作品は多いし、戦力を増やすなど他の要因でも倒せる事はあるのだ。しかし原作では攻める側が強者のワンマンプレイに陥ったり、他国からの戦力提供でひっくり返されたりするのである。そういった流れはゲームでも同じで、ゼラーナ隊を沈めたとしても他国が戦力供与ではなく『残党を引き取って再結成』を行うだけで、戦争が起きるのはあまり変わらない。ゼットに転生した男としては、自分の目的以外にもドレイクに勝ってもらう必要があった。
(だから序盤で邪魔しても意味が無かったし、むしろゼラーナ隊のテロ能力をドレイクに理解してもらって、統治後に上手く収める必要性を理解してもらう必要があった。後はジャコバ・アオンたちエ・フェラリオが介入して、邪魔な地上人だけでも地上に送り返す可能性を示唆しとけば、原作よりマシになる展開はあると思うんだよな。そういう意味じゃあ、今回の計画書提出に関しては悪くねえ流れだ)
ゼットはゼラーナ達を潰す気は最初からなかった。
原作知識をすべて覚えているわけでもないし、特に機械の館関連はスパイが入り放題だとかテロされ放題くらいしか印象に残っていない。だから生産性向上しか目指さなかったし、オーラバトラーの改良も中間機を出来るだけなくして世代の交代を早めようという程度でしかなかった。だが工房艦の登場により戦争が早回しで行えることに加えて、ドレイクに『オーラバトラーを使った反乱・テロの危険性』や『フェラリオ達が自主的にオーラロードを開く危険性』に付いて示唆できるチャンスを得たのであった。
(その上で……オーラシップの設計はスキーズブラズニルで打ち止めだ。オレは艦長として戦うタイプでも独自路線を狙うタイプでもないし、変形させることで工業力と隠蔽力の工夫を試せれば十分過ぎる。とはいえオーラバトラーを捨てるにゃまだ早いか。いずれガラバタイプに舵を切るにしても、俺が試したいことをやってからでもいいよな)
そこまで考えてゼットは考えを整理していくことにした。
対空砲用の鐘楼をクレーンに変更し、艦橋や飛行甲板ともども可変させることが出来れば、工業力の向上と隠蔽力は実現できる。そう思えばオーラシップに盛り込みたい機能は特にないので、残るオーラマシンの構想を進めておく。
(スケルトン型の設計報告を出して、その試作機で得たデータをショットに渡すとすれば、設計中のレプラカーンの製造を先延ばしにして完成させるだろうよ。ならこっちはコンバーターを弄る方を試して、出来るだけ本体性能を向上させた次世代機としてビアレスにあたる機体でも作るかね)
オーラバトラーの草案を見返しビランビーベースの試作機を見つめ直す。
まずはショットに渡す内骨格で配線と仕込み武器をチェックするスケルトン・トールとでも言う機体。もう一機はオーラコンバーターを弄る事を前提に、本体性能も出来るだけ強化した試験型のエグザミネイション・トールとでも言うべき機体。それらのデータを使って、何を用意するか考えたのだ。順当にいけば大型化したコンバーターで機動力が強化されるので、本体性能も向上させればビアレスに当たる機体が出来上がるだろう。
(問題はそこに俺独自の技術として何を仕込むかだが……原作通りビアレスやライネックでも面白くねえよなあ。ここは永野護デザインや星刻デザインでも流用しとくか。デザインだけならエスカフローネやコードギアスも……ま、後発を原点に回帰させたらいけねえって事はないよな)
外見的にはそれほど悩まなかった。
レプラカーンがカブトムシなので、こちらはクワガタにしていくと途中で永野護がデザインしたグルビデンス(クワガタの一種)を思い出したのだ。よく覚えていたなあ……と考えていくと、グルビデンスは採用されずにファントムという骨型モーターヘッドにリデザインされたという関連記憶を思い出し、スケルトン型の実験機が記憶を呼び戻すキッカケになったと思い出しスッキリしたのであった。
(こっちはコンバーター以外は弄らないつもりだから、大型コンバーターにクローと適当な武器でも付ければいいだろう。問題があればコンバーター自体を変えれば済むしな)
最終的にビランビーを順当強化した機体にすることにした。
硬い代わりに遅めなギ・トールとの平均を取り、それを大型コンバーターで前線に移動させる。コンバーターに搭載したクローと両腕を合わせて四つのクローで武装をコントロールし、四本で拘束しても良いし、武装を振り分けたり集中させて火力を増しても良い。火力はわずかに増える程度であろうとも、ビランビーよりも増えれば十分に評価されるだろうと判断したのであった。
という訳で今回は長期スパンを考慮した設計回です。
『スキーズブラズニル』
対空砲座を兼ねた鐘楼が大型クレーンになり、艦橋共々稼働する。
作業台を兼ねた飛行甲板が四枚存在し、上下左右に動くことで畳める他、平衡化して作業し易くなる。
着地用の足も当然のように稼働するので、着地し易くなっており谷などに隠れ潜むことも可能。
竜骨は友邦であるクの国に引き渡すナムワンの物を使用しており、同タイプとしては若干良い物になっている。
『試験型内骨格式フレーム』
ビランビーベースなのは同じだが、改装し易いように設計し直されている。
スケルトン・トールとかエグザミネイション・トールと呼ぶのが正しいのだろうが、みんな面倒がってスケ・トールとかゼク・トールと呼んでいる。
一号機は内部搭載型の武器を仕込む試験型であり、コンバーターはやや大きい程度の物。
二号機は大型化したコンバーターを弄る事を前提に、本体は多少良い程度の物となっている。
原作であればレプラカーンやビアレスにあたる機体に当たる。
『ディーモッシュ』
レプラカーンは火力志向であったが、一つ一つの威力が低い事から失敗作に近い。
これを上記の試験機で試す事により、ショットが設計に修正を加えて完成させる事になる。
名前はオーラバトラー戦記におけるレプラカーンであり、ズワァースに当たる機体の名前から想定されている。なおカブトムシデザインで色は黒いが、別にビームは撃たない。
『グルビデンス』
永野護デザインのオーラバトラー案より外観を決めたクワガタ頭のオーラバトラー。
こちらも上記の試験型で得たデータを元に完成する予定の白兵戦重視の機体で、装備はクロー四本で相手を拘束し剣でトドメを刺したり、バルカン四門で牽制しながら接近することになる。モータヘッドではなくナイトメアフレームじゃないかと言われたら否定はできない。
『ゼラーナ隊は邪魔しないし、邪魔する意味もない』
倒せないわけではないのですが、ドレイクは殊勝にならないし、どうせラウの国なりナの国が支援しますよね。なので放置、原作よりもドレイク陣営を強化する事で勝てるように誘導する程度です。
『ゼットの目的』
1:ドレイクが原作より殊勝になり、覇王になった後で戦乱を収めることを期待。
2:オーラシップ・オーラバトラー・オーラファイターそれぞれを設計、原作に何らかのかかわりを持たせる。
くらいですね。