元一般人、妖術師達の戦争で敵側ヒロインを襲い犯し奪い、褒美としてヒロインを抱きまくる、略奪ハーレム、現代バトル、主人公最強、現代ファンタジー 作:三流木青二斎
それは「波」と形容するに相応しい蛇の群。
単体で言えば普通の蛇と変わりは無いが、密集すれば一つの塊、強大な大蛇の顎を開き対象を飲み込む。
(腕、いらんね)
蟲翅伴は自らの腕部を自切し、地面を強く蹴り上げる。
如何に蛇の群が多かろうと、攻撃範囲外から逃れれば問題は無い。
(『蟲胞』―――『
背中から生える翅。
通常の肉体の重量では軽い翅二枚では飛翔など物理的に不可能。
しかし、理論上不可能である飛行を可能とする自然界の熊蜂は技術と工夫を以てして飛翔を可能にする様に、蟲翅伴も同様に飛行に対する可能性を模索し続け、飛翔するに至る。
それでも密室空間の地下施設の訓練場では天井スレスレまで飛行する事出来ず、本来ならば制空と言うアドバンテージはこの状況では意味を成さない。
それでも蟲翅伴が欲するのは、蛇の群から逃れる逃走速度、加えて縦横無尽に駆ける機動性の確保である。
大きく密室内を旋回しながら、隻腕に妖力を分泌させ組織を編成。
(『蟲胞』―――『
細長い腕部が柄の様に、手首から伸びる刃が死神の大鎌を連想させる。
左右へと飛び出た妖術師達の陽動は、裏を返せば戦力を分散した様なものである。
二列に組まれた龍家の妖術師達、予定では一列目が並列した状態で相手が遠距離からの攻撃を備える防御の態勢を取り、二列目による水印の妖術師達が『咬威』を放つ算段であった。
だが、壁の端を沿う様に移動する蟲翅伴の対面では、列の先頭に向けて疾走している。
龍艶媚の組織した部隊は厳格な指導の元構成されたマニュアル通りの部隊であり、逆を言えば不測の事態には弱いと言う弱点を持つ。
当然……この様な相手の行動は予想の範囲外、しかし、一丸となり行動する彼らの思考は敵を排すると言う共同の目標が残されている。
先頭の妖術師が強く壁を叩き付けると共に水印の『咬威』を流し込む。
流動の特性により壁の表層を滑走する咬威の流れが道標になるかの様に、先頭の妖術師の行動を模倣し、水印の妖術師が同じ様に妖術を壁に発した。
無数の『咬威』が軌跡を描きながら、蟲翅伴の動向、速度を予想し着弾点を演算。
壁から放たれる咬威の穿孔が蟲翅伴を捕捉する、だが。
(この速さが全力じゃないんだよ、悪いねぇ)
妖力操作による妖力の噴出。
速度を加算され、瞬間的な加速を行う事で『咬威』の予測着弾点と大幅にズレる。
そして、大鎌と化す蟷螂の刃で前列の妖術師を切り裂き、右方に分裂した妖術師達の上半身と下半身が切断される。
述べ十人抜きの切断術に、しかし。
「っ!?」
妖術師の中に一人混じる理外の行動。
唯一人、『咬威』を発動せずに相手の動きを読んでいた。
それは即ち、仲間が攻撃に失敗し、尚且つ、己の命が奪われる事を前提にした、捨て身の一撃。
相手の加速する動きに対応できないが、相手がどの様な行動を行っているかは分かる。
腕部の大鎌でこの隊列を一網打尽にする事、それが分かれば後は待つのみ。
相手が自身の肉体に触れ、切断すると言う事は、自身は相手に直接触れていると言う事。
『水印』の『咬威』は間接的に相手に流し込み妖術を発動させる。
肉体内部で弾く『咬威』の顎が、三枚翅・蟲翅伴の心臓部を穿った。
妖術の解除と共に大量の汗を流す龍艶媚。
妖力の消耗は激しく、気絶し掛ける程に意識が揺らぐ。
「はぁ……はあッ」
呼吸を整える様に、大きく息を吸い上げると共に、彼女の元にやってくる残された龍家の妖術師。
24名も居た龍艶媚の部隊は僅か半数以下となり、10名程しか残されていない。
(部隊が三分の一になれば撤退が鉄則、或いは他の部隊と合流する事、これ以上の犠牲を出すよりかは、撤退を行うべきだが……)
撤退は恐らく難しい。
榊家の領土に侵入し、入り組んだ迷宮の中から撤退するのは至難。
更に敷地内から出れば榊家の結界の範疇に突っ込む事になり、結界範囲から出る迄に肉体の妖力を吸われ尽くされてしまう。
結局、残される道は『進む』か『他の部隊と合流』の二択に迫られる。
「艶媚様」
妖術師の一人が声を掛けに来る。
その言葉に反応し顔を挙げると他の妖術師達が判断を待ち続けている。
「……今後をどうするか考えている、一度、休憩だ、一部警戒を続け、小休止だ」
額の汗を拭いながら、龍艶媚は仲間の死体に視線を向ける。
名は名乗らなかったが、恐らくは榊家・蟲家にとっての主力となる存在。
その内の一体を斃したと言う功績はかなり大きいと思っている。
(仲間の死体は、手厚く葬ってやらねば……?)
ふと、意識が消耗していて忘れていた。
蟲翅伴の心臓を貫き、そのまま地面に伏している。
だが、蟲翅伴が死んでいるかどうかの確認はしていない。
(ああッ、バカか私は、妖術師の死が真であるかなど、確認するまで分からないッ、まだ戦闘は終わっていないんだ)
即座、仲間の死体に駆け寄ろうとする妖術師に向けて声を荒げる。
「確実に妖術師の首を切断しろ、それまで警戒を怠るなッ!!」
その言葉が発せられたと同時。
狸寝入りは意味が無いと判断した蟲翅伴は飛び起きた。
全身の筋肉を使い飛び上がると共に片腕に生える蟷螂の大鎌を振るい、様子を確認しようとした妖術師を切り裂く。
(やはり、まだ動くッ、だが手負いだッ!!畳みかけるッ!!)
呼吸を整えた龍艶媚は腕を構えて妖術を使用する。
だが、その寸前に彼女の肉体を拘束する蠢きがあり、豊満な肉体を雁字搦めに拘束する。
「ッ!?」
強く引き締められる肉体、巨乳が圧迫され、乳房が張り出した。
窮屈な感覚を覚える龍艶媚は何が起きたかと思い視線を下に向ける。
それは、土印の妖術師達を殺した具足百足が、自立して動いていた。
(『蠱胞』・『
蟲翅伴は自らの胸元に手を添える。
当然、心臓部分を狙われた為、欠損された心臓は動く事は無い。
(そして『蟲胞』・『
説明に齟齬があるが、複数の心臓の役割を持つ構造をしているゴキブリと同じ要領である。
これにより、蟲翅伴は本来の心臓を潰されても活動する事が出来る。
(ッ、私の判断ミス、緩まった空気の中、強敵に再び挑めと言っても、彼らは十全なパフォーマンスを出す事は出来ない……ッ、次作があるとすれば)
口を動かして、龍艶媚は妖術師達に叫んだ。
「貴様らッこの場から離れ、撤退ッ!!他の部隊と合流し、出来なければ出口を目指せッ!!一人でも多く生き残り、この男の能力の詳細、情報を伝えるのだッ!!」
大将首である龍艶媚を遺しての撤退。
それが、彼女に出来る唯一の策であった。
龍桜尾の妖術は龍家相伝の『鱗紋』。
母親である龍憂媚の血筋ではあるが胤が違う。
故に龍家には属さない妖力特性を宿している。
「『鱗紋』、『
龍桜尾の妖力特性は『雲』、その特性は『
詳細な理由は、自らが生成した妖力を切り離し自動的に浮遊させる事が出来る。
この妖力特性により、龍桜尾は妖力を発すると、小指程のサイズを持つ魚群が生成される。
龍桜尾が生成した『滄溟群』は、周囲の大気を泳ぐ様に移動し、接触すると同時に肉体が霧散し妖力が分散される様に設定されている。
同時に、独立はしているが、龍桜尾との感覚は繋がっている為、霧散し妖力が分散されると微粒な胞子と化した妖力が周囲に張り付き、エコーロケーションの映像となって龍桜尾の脳内にインプットされる様になっている。
『滄溟群』を生成して、約1000体の魚群を解き放つ事で、この迷宮の内部を早々に攻略しようとしていた。
当然、集中力を要する為に敵陣のど真ん中で座禅を組むのだが、それは彼が選りすぐりの『土印』の妖術師が迎撃の手筈を取っている。
「……良し」
時間にして1時間。
敵軍からの攻撃を迎撃するに成功した第三波を終えた後の事。
龍桜尾は立ち上がると共に周囲のモノ達に声を掛けた。
「……地図は完成した、攻略を始める」
屋敷の隅々を探っても、人らしい姿は何処にも無かった。
ただ、多くの敵を前にして無双を始める男の姿は認識していた。
それが龍家に力を貸す、屍人骸である事は察していた。
指先に妖力を込めて生成する『幽魚』を使い一応は屍人骸に情報共有を行うメッセンジャーとしての役割を持つ妖力遊魚を放った所で、彼が向かうのは榊家の本拠地である地下施設であった。
「……既に争った形跡、妖力が分散された物体の形状からして、龍家の妖術師である可能性が非常に高い」
「全滅、ですか?」
一人の妖術師が心配する様に聞いた。
全滅と言う事は、その部隊を率いる龍艶媚も殺されたのでは無いのかと、誰もが最悪の想定をしていたのだが、龍桜尾は首を振る。
「……妹の姿は、無い、恐らくは捕虜として、連れ去られた可能性がある」
他にも、撤退する妖術師の姿も発覚していた。
何かを道標に移動している様子で、このまま歩き続ければ合流する事が出来る。
「後に、妹の部隊の生き残りと合流する、其処から話を聞くぞ」
その宣言通りに、龍桜尾を含める部隊は、龍艶媚の部隊に属していた者たちと合流する。
そして何が起こったのか、どうして部隊が壊滅状態であるのか、その理由を龍桜尾は確かめる様に伺った。
情報を共有した後、龍桜尾は静かに妖術師達に告げる。
「このまま前進する、地下施設内部にて『滄溟群』を扱い、情報を得る、捕虜となった妹は、我々は無視をする」
その言葉に妖術師達は絶望する。
妹である龍艶媚を見殺しにすると言う発言。
士気に大きく関わる内容だが、渋々了承する他無い。
だが、龍桜尾は言葉足らずだったと、すぐに一言付け加える。
「我々は、妹を助けない、より確実な者が、救出すると思っている……妹の事は、人骸に任せるぞ」
あくまでも、龍家の目標は当主、及び、当主が契約する式神の討伐。
妹を救出する役目は、屍人骸が引き受けるだろう。
新たに別の『幽魚』を放ち、其処には自らの言葉を込めた妖力遊魚を放ち、屍人骸へと向かわせる。
これで手筈は整い、龍桜尾は部隊を連れて地下施設へと向かい出した。