ポケットモンスター EXCEEDS gun flame vengeance 作:テツノカシラ
夏風邪をひいてダウンしてしまいました…
いやはや辛かったぁ…
シイナは自宅に戻った。襲撃に遭い、家の中は所々荒れていた。
シイナは残骸や飛び散った窓ガラスの破片などを掃除する。
するとインターホンが鳴る。
「誰だろ…」
家のドアを開けると、そこにはハイドラが立っていた。いつもの飄々とした笑みが浮かんでいる。
「ドラさん……」
声が掠れた。
「よ!シイナ!」
ハイドラの足が軋む廊下を軽快に叩く。彼の視線が部屋の惨状へ泳いだ。壁の穴、家具の破損──激闘の爪痕が生々しい。
「いやぁこりゃすげぇな!熊にでも襲撃されたか!」
その茶化すような口調にシイナの眉がぴくりと動く。
「いいよ。気を使わなくても」
短い沈黙が流れた。窓の外で雨が窓ガラスを打ちつける音だけが響く。
「……そうか」
ハイドラの声のトーンが一段落ちる。青い瞳が真剣味を帯びた。
「セツナはどうした?」
単刀直入な問い。シイナは俯いた。唇を噛み締める。
「ドラさん……」
震える声で彼女は続けた。
「もうわかってるでしょ?」
ハイドラは黙って煙草を取り出して、火をつける。雨粒に混じって薄れていく。
「まぁな……」
紫煙越しに彼女を見つめる。その目には同情ではなく、理解の光が宿っていた。
「ドラさん……」
シイナが一歩詰める。血の滲んだ袖口から覗く手が震えていた。
「ドラさんも私と同じなんでしょ?」
ハイドラの煙草を持つ指が止まる。
「!」
微かな驚愕。しかしすぐに飄々とした笑みが戻る。
「やっぱりわかるか……」
シイナは取り出したボロボロの赤い布切れを握りしめた。セツナの服の切れ端。
「セツナからもらった力でわかる。ドラさんがポケモン人だって」
ハイドラは深く煙を吸い込むと、吐き出す煙幕の中で静かに認めた。
「黙ってて悪かったな。そうだ。俺はポケモン人だ」
その言葉を聞いたシイナの目に微かな光が宿る。震える手で制服の切れ端を握りしめた。
「ガブリアス──それが俺のポケモンとしての名前だ」
ハイドラが壁に寄りかかりながら説明する。
「ドラゴン・じめんタイプを持つ。元がサメだからあらゆる感覚器官が発達してるし…」
彼の指が床を叩く。微かな振動が伝わる。
「振動を操ることも可能さ」
シイナがぽつりと言った。
「なんかめちゃくちゃ強そう……」
「まぁ色々修羅場は潜ってきたからな!」
胸を張る。
「さっきも侵略種を600体近く難なくぶっ飛ばしたからな!」
その数字にシイナの目が丸くなった。
「だからドラさんが来てから侵略種達の数が激減したんだ……」
「まあな」
ハイドラは軽く笑った。
「ドラさん」
シイナが膝を抱えたまま尋ねた。
「セツナがね、この力をくれた時……『私を特別な存在』って言ったの」
俯いたまま続ける。
「ドラさんはどう言う意味かわかる?」
ハイドラの目が鋭く光った。内心で
(Zの力……やはり核心に触れられたか)
彼はため息を吐き…ゆっくりと答えた。
「もう隠しても仕方ないか…シイナ…単刀直入に言うぞ。」
ハイドラは煙草を掌で潰す。
「お前はリザードンって言うポケモンの遺伝子を持ったポケモン人だ。」
その答えにシイナが小さく息を吐いた。
「あの魔人の男も言ってた…」
ハイドラは煙草ケースを弄びながら補足する。
「ああ。それも特別な力を持った…」
「特別な力?」
シイナが顔を上げる。不安と好奇心が入り混じった表情だった。
ハイドラは頷いた。
「ああ。お前の持っているリザードンはほのお・ひこうタイプでかなり特殊なポケモンでな」
煙草ケースを机に置く。
一拍置いて重々しく付け加えた。
「X・Y…そしてZと呼ばれる3つのメガシンカを持つ」
シイナの瞳が揺れた。
「メガシンカ…?」
「ああ」
ハイドラが腕を組む。
「一部のポケモン人が持つ強化形態だ。」
「それの何が特別なの?」
「メガシンカを持つポケモン人は通常メガシンカを1つしか持たない。一部は2種類持っているが、最大でも2種類までしか持たないポケモン人が普通だ。」
ハイドラは目つきを鋭くする。
「だが、リザードンは他のポケモン人と違い、3種類のメガシンカを持つ。それがX.Y.Zなんだ。」
ハイドラは近くにあった窓ガラスの破片を拾い、握りつぶす。
「Xはドラゴンタイプを持ち、物理的な攻撃に特化している。Yはタイプはメガシンカ前と変わらないが,その分凄まじい火力の炎技や飛行技を扱える。そして…」
「お前が持っているZはどんな相手にも強制的にほのおの攻撃を与えられるメガシンカだ。」
「どんな…相手にも?」
だが、シイナには疑問が浮かぶ。
「でも…私、そんな力を今まで使った事ないし!自覚も全くなかったよ?」
「それはお前の両親。ユウジとミナミがお前を守るためにZの遺伝子を劣性遺伝子に変えたからだ。」とハイドラは答える。
「父さんと…母さんが?」
「この30年…Zの力を持ったリザードンのポケモン人は人為的に生まれていない。最後に確認されたのは12年前だ…」
ハイドラは潰した煙草をポケットにしまう。
「そして、もしZの力が完全に覚醒すれば侵略種なんて簡単に殲滅できる…だから、強欲な奴らは欲しがるのさ…どんな手を使っても…」
Zの力を持ったリザードンのポケモン人…それを手中に収めれば正に世界の覇権すら握れる。
「それで父さんと母さんは…」
「あぁ。お前が色んなやつから狙われないようにZの力を隠したんだ。」
シイナが胸に手を当てた。セツナから受け継いだ熱がまだ残っているのを感じる。
「そんな力をセツナは……」
「多分セツナがお前に魔人の力を継承した事により…今まで劣性だったZの遺伝子が優性に変わったんだ。」
「そっか…そうだったんだ…」
ハイドラは窓の外に視線を移した。雨粒が窓ガラスを流れ落ちる。
「恐らくセツナは……XかYどちらかのリザードンの遺伝子に適合できずに魔人化したんだろう」
「適合……できない?」
「ああ」
ハイドラの声が低く沈む。
「侵略種の遺伝子は適合者を選り好みする」
指を一本立てる。
「適合すればポケモン人。拒絶されれば魔人になる。魔人になったやつは人間や他の魔人を食う。」
彼は言葉を切った。
シイナの喉が鳴る。
シイナが突然身を乗り出した。
「でもセツナは違った!」
彼女の声が震える。
「私達を襲った魔人とは違ってた。全然他の魔人や侵略種や人を食べようなんて全然なかった!」
ハイドラは黙って耳を傾けた。煙草に再び火をつけない。代わりに煙草ケースを握りしめた手に力が籠もる。
「そうだな…だから俺は見守る事にしたんだ。」
彼の声は普段の軽薄さを完全に排していた。
「正直…最初にお前がセツナを連れ帰った時は驚いたよ…だけど…ユウジとミナミ…挙句にゲンゾウさんまで亡くしたお前にとって心の支えになってると考えると…」
ハイドラはシイナに優しい目を向ける。
「何もできなかったよ…」
シイナはセツナが作ったお守りを手にする。
「そりゃそうだよ…セツナは優しい子だもん…もしもドラさんがセツナを排除しようとしてたら…私、一生ドラさんの事恨んでるよ。」
ハイドラはおっかねと少し冗談ぽく言う。
しかし、すぐに真剣な表情になり、
「でも…悪かった…正直お前の身の安全の事ばかり考えて…セツナの事を警戒していたのは事実だ…」
シイナは一瞬ハイドラを睨むが、すぐに表情は元に戻り
「そのあたりについては…
半分許せないけど…半分はそんな事ないって思ってる…」
「シイナ…」
「ドラさんが私やセツナに色々してくれたり優しくしてくれたのは…紛れもなく本心だと思うから…
これからも変わらずいてくれるだけで…いいよ。」
シイナは笑みを浮かべる。
その事を聞いたハイドラは安心した表情をわずかに浮かべる。
「これは…気休めってわけじゃないけど…
セツナは魔人本来の強い衝動をなくした。魔人の本能に支配されることなく……お前を守ろうとしたんだ」
シイナの目に涙が溜まる。
「やっぱりセツナは優しいな……」
思わず零れた笑みには深い悲しみが滲んでいた。
ハイドラは窓辺に立ったまま振り返らずに言った。
「お前の中に宿った力もまたセツナの意思そのものだ」
煙草ケースをポケットにしまう。
「もう二度と消えない」
部屋の温度が少しだけ上がったような錯覚。シイナの胸の奥で暖かい火が燃えているのを感じる。
「うん……」
彼女はセツナの欠片をそっと抱きしめた。
「私……必ず前に進む」
ハイドラの肩がわずかに震えたように見えた。雨音だけが重く響く夜だった。
翌朝…
ハイドラが玄関ドアを叩いた。昨日までとは違う緊張感が漂う。シイナは既に荷物をまとめ終えていた。
「シイナ……お前これからどうするんだ?」
テーブルに置かれた小さなバッグ。その横にはセツナの赤い布切れが丁寧に畳まれている。
「うん。一晩考えて決めた」
シイナが静かに立ち上がる。
「私さ……やりたい事がちょっとできたから」
彼女の目に昨夜の涙の跡はない。代わりに微かな輝きが宿っていた。
「島を出る」
ハイドラの眉が微かに動いた。
「本土へ……行くのか?」
「うん」
シイナが頷く。
「侵略種を駆除しながら……魔人やポケモン人のルーツについて知りたい」
手のひらを握りしめる。
「この力が何なのか……なぜセツナが苦しんだのか……全部」
ハイドラは深く息を吐いた。煙草に手を伸ばしかけたが、そのままポケットに突っ込む。
「お前なぁ……」
呆れたように天井を見上げる。
「俺としてはお前にはこのまま島で平和に暮らしてて欲しいんだが……」
皮肉っぽい笑みを浮かべる。
「まぁいつまたどんなやつが来るかわからんからな……こんな狭い島じゃすぐに見つかるだろうし……本土で人混みに紛れてた方が安全か……」
彼の視線がセツナの遺品に留まる。その瞬間だけ表情が柔らかくなった。
「よし!」
突然ハイドラが掌を鳴らす。
「わかった!俺が本土に連れて行ってやる!」
シイナの目が丸くなる。
「え?ドラさんも来るの?」
「当たり前だろ」
肩を竦める。
「こんな危なっかしい娘一人で行かせられるか」
冗談めかした口調だが声は真剣だ。
「それに……昔ユウジに頼まれたからな…」
「何を?」
「お前を守ってくれって。」
シイナは首を傾げる。
1週間後…
シイナとハイドラは荷物を持って本土行きのフェリーを待っていた。
すると…
「シイナ!!待ってくれよ!」
イブキが走ってきた。
「イブキ!?」
シイナは昨日イブキやキョウカにも島を出て本土に行く事を伝えた。
「お前本当に本土に行くのかよ!?島にいりゃいいじゃん!俺もいるし!母ちゃんだっている!本土は何があるかわからないぞ!?」
イブキは必死にシイナを引き止めようとするが、
「イブキ…ありがとう。心配してくれて…でもさ、私。本土でやりたい事ができたんだ。だから、暫く島を出る。」
シイナは荷物を背負い直しながら海を見つめる。
「侵略種を駆除しながら…色々な事を知りたいんだ。」
「だったら…だったら俺も!!」
とイブキは言いかけたが、キョウカがイブキの頭を抑えた。
「あんたがいなくなったら誰があたしの仕事手伝うんだよ。ドラもついてくんだからあんたは島にいな。」
「母ちゃん!!」
キョウカはシイナを慈愛の目で見つめる。
「シイナちゃん…体に気をつけてね…いつでも帰ってきていいからさ。此処はシイナちゃんの我が家なんだから。」
その言葉を聞いてシイナは胸が温かくなる。
「キョウカさん…ありがとう!」
すると本土行きのフェリーが港まで来た。
「さぁ!いっといで!!ドラ!!シイナちゃんを頼んだよ!」
「へい!任せてください!!俺、こいつの保護者なんで!」
「いってきまーす!!」
シイナとハイドラはフェリーに乗り、本土へと向かっていった…
to be continued…
いかがでしたか?
因みにドラさんことハイドラは一応作中最強クラスの実力を持ってる設定です。
ガブリアスなんで笑笑
では、また!!