境界の錬金術師 ー 私、どうやら『人造人間』らしいー 作:女にだって二言はないぜ?
ロイ中佐との食事会から数日後。
東方司令部の私のデスクには、相変わらず地方の治安維持や予算申請の書類が山積みにされていた。地下で勉強漬けにされていた日々に比べたら、ただの作業にしか過ぎないけどね。
なんて、いきがってるけど普通に大変。量が量だよ。なんで2人で分担してこんなにあるんですか?
淡々とペンを動かしていると、執務室の重々しい扉がノックされた。
「マスタング中佐、ブラッドレイ中佐、失礼します。本日付で東方司令部へと着任いたしました。リザ・ホークアイと申します」
カチッとした無駄のない軍靴の音と共に、敬礼をして入室してきたのは、見事な金髪を後ろでまとめた、凛とした佇まいの女性__『リザ・ホークアイ中尉』だった。
そして彼女の後ろからはロイ中佐が中央から一斉に呼び寄せた、直属の部下達がぞろぞろと入ってくる。
口にタバコを咥えようとして慌ててポケットに仕舞い込んでいる、いかにも叩き上がりといった風貌の若い男__『ジャン・ハボック少尉』。
がっしりとした大柄な体格で、少し生意気そうな笑みを浮かべている『ハイマンス・ブレダ少尉』。
気弱そうにメガネの位置を直しながら、緊張でガチガチになっている『ケイン・フェリー曹長』。
そして、生真面目そうな顔で直立不動の姿勢をとっている『ヴァトー・ファルマン准尉』。
ビシッと敬礼をする5人にロイ中佐がよく来てくれた、と声をかける。5人は私の方を見て一瞬ギョッとしたけどちゃんと挨拶してくれた。
ん?どうかした?、、、あぁ、こ〜んなチビなガキだとは思わなかったって?失礼な、私は中佐だぞ。
でもまぁ、上司と部下の関係なわけで。舐められるわけにはいかないよね。厳しくいこう。厳しく。
なーんて、思ってた時期もありました。
「アイリス中佐、お疲れではありませんか?私が変わりにやります」
「えっ?だ、大丈夫ですよ?ホークアイ中尉」
「中佐、飴ちゃんあげます」
「やった!ありがとう、、、じゃなくて!いらないですから!」
「この人形セントラルで流行ってるらしいのでどうぞ!」
「かわいい、、、ありがとうございます」
あれから早くも1年が経ち、私は11歳になった。そして、自分でも呆れるくらい絆されてる。甘やかされすぎじゃないか?これは。
いや、ね?お菓子も人形もうれしいけど?子供扱いされすぎて私の威厳が崩壊しかけてるって!!
ハボック少尉やブレダ少尉はお菓子を渡してくるしホークアイ中尉は何かと心配してくるし、フェリー曹長やファルマン准将はセントラルで流行ってる物をプレゼントしてくるし、、、。
唯一まともに接してくれるのはロイ中佐だけだ、、、
と、思っていたのに。裏切られた。
私を気にして皆で息抜きに、遊びに連れて行ってくれることが増えてしまった。仕事しようよ、、、
そりゃあもう毎日大変で、、、でも幸せで、なんだか昔に戻ったみたいで懐かしさを覚える。たまには年相応の扱いを受けるのも悪くない、なんて思ってしまっている自分がいる。まぁ、前世足したら年相応の扱いでは無い気がするけど。
ワンチャン100歳まで生きて病気で死んだ説もあるからね。わかんないけど。
夜は必ず地下の部屋に帰る。忙しいときは東方司令部に泊まることもあるけれど、大体は帰る。だってそうしないと、、、
「ねぇ。なんで昨日は帰ってこなかったの?」
「ゔ、、、ごめんってばエンヴィー。仕事が終わらなかったんだって、、、」
「そんなの焔の錬金術師に押し付けて帰ってきてよね」
「それはダメでしょ」
「いいんだよ」
「ダメ」
エンヴィーが離れてくれなくなるから。
ついでにラストも、グラトニーも、、、なんならお父様も纏わりついてくる。エンヴィーみたいに抱きついて離れなかったりはしないけど。
「でね、今日はロイ中佐が皆と一緒にお昼ご飯食べに行ってね〜!」
「へぇ、楽しそうね」
「そうだ、ラストもまた今度行こうよ。おいしかったよ?」
「俺は誘ってくれないの?」
「じゃあラストはお姉ちゃんで。エンヴィーはお父さん役に変身してね」
「それもいいわね」
グラトニーも上着被せたらいけるかな、なんて言いながら話す。味覚は一応あるらしいからね。ラースも「妻が作った肉じゃがが好物」って言ってたし。
ラースってなんだかロマンチックな人生してるよね。生い立ちはあんまり知らないけど、ホムンクルスなのに人間である婦人を愛しているんだから。まるで物語の主人公みたいじゃない?
いいなぁ、家族愛。
父さん、一人で大丈夫かな。大変だろうなぁ。
母さんは父さんがいなくて大丈夫かな?昔から無理する人だったし、心配。
エドも、やんちゃしてないかな。危ないことして、怪我とかしてないかな。苦しい思いはしないでほしいな。
アルももう赤ちゃんじゃないんだよね。10歳になるころかな?きっとエドに振り回されてるんだろうな。
それにウィンリーと、ばっちゃんも。
皆に、会いたいな。
そんなことを思っていたら、ふと私の頭に最悪な考えが過った。
『_____エドとアルに忘れられてたら、どうしよう』
こんなにエドたちのことを考えているのは私だけで、皆は私のことなんて覚えてなかったら?
無理もない話だと思う。私がいなくなったのはもう7年前で、エドは4歳でアルは3歳。もしかしたらウィンリーだって、、、。
突如として脳内を駆け巡るその懸念が、私の心を侵食していく。会いたい気持ちが、忘れられているかもしれないという不安に閉じ込められる。
_____あぁ、
ホークアイ中尉達の着任時の詳しい情報がわからず…間違いがございましたら優しく教えてくださると幸いです。
いつも読んでくださりありがとうございます!
さてさて、やっと原作が動き出しますよ…!