境界の錬金術師 ー 私、どうやら『人造人間』らしいー 作:女にだって二言はないぜ?
心地良い鳥の鳴き声と朝の光で目が覚める。
__なんてことはなく、目が覚めたら豪華な部屋。
窓が一切ないから日差しなんてない。まぁ地下だから当然だけどね。
片手だけで伸びをして体を起こそうとすると、違和感に気がついた。
「……重い」
「あれ、起きたのおチビちゃん」
「!?」
まさかの寝ている私の隣に、エンヴィーが寝転んでいた。というか私を抱き枕のように抱きしめている。重い、苦しい…
これはある種のセクハラなのではないか?
「エンヴィー、なんでここで寝てるの」
「別にどうでもいーじゃんそんなこと」
「よくないよ…」
呆れ混じりに小さくツッコミを入れると、エンヴィーはフンと鼻を鳴らし、何事もなかったかのようにベッドから飛び起きた。
「お父様の重要なスペアが、夜中に急に壊れたら寝覚めが悪いだろ?まぁ寝ないけど。 ……それより、さっさと着替えなよ。もう『ラース』が来てるんだからさ。あいつ、お父様の命令完璧にこなすから、手加減とか一切しないよ?」
「わかった。着替えるから部屋から出てって」
「ほいほい」
こんな軽く接していいのだろうかと思いつつも、正解なんだろうという結論にたどり着く。昨日のタメ口を要求してくる時点で堅苦しいのは嫌いそうだし。
部屋のクローゼットを開けて適当に服を選び着替える。全部高そうなのは気のせいなのだろうか…。
寝たおかげで頭の整理ができた。
まず、私が今やるべきことは
父さん大丈夫かな…。もう殺されたとか思われてたらどうしよう。「俺のせいでアリスが…!!ならいっそのこと俺も__!」みたいな感じになってたらヤバイな。いつかエンヴィーたちの目を掻い潜って大丈夫だよって伝えれたらいいんだけど。
母さん、エド、アル、ウィンリー、ばっちゃん……皆、今頃何してるのかな。会いたいなぁ…
なんてことをもんもんと考えていたら、コンコン、とドアをノックされた。「どうぞ」と返すと入ってきたのはシルバーヘアーの男性。
「__って、エンヴィーじゃん」
「あれ、バレた?可笑しいなぁ…カンペキだと思ったんだけど」
「ん、まぁ……気配でわかるよ」
「へぇ…」
はたまた『興味』の感情が強く見える。
エンヴィーがこの姿に変身したのはラースという人(ホムンクルスの一人らしい)が軍の
軍のトップである大総統がホムンクルスって、この国もう終わりじゃん……。
父親を演じるエンヴィーに抱っこされながら地上のあるた場所に向かう。ラースという名のキング・ブラッドレイ大総統のご自宅だそう。私は大総統の親戚という設定だ。
「大総統閣下、この少女が……?」
「あぁ、不慮の事故で右腕を無くしてしまってね。君の技術でこの子に最高の
「まだ幼いのに可哀想に…。了解しました、大総統閣下」
わぉ、まんまと騙されている。
「お嬢様、
技師さんは小さく深く息を吐き出すと、工具箱から精巧な金属製の『
サイズに関しては寝てる間とかに測って伝えてたたのかな。怖……
大総統の自宅の一室。その静寂のなかに、工具が擦れ合う冷たい金属音が響く。機械の腕本体を繋ぐ、その前に。まずは私の生身の右肩の骨と筋肉に、機械を固定するための金属の土台を直接、物理的にネジ込んで固定しなければならない。
錬金術の便利な光なんて、そこにはなかった。麻酔もない。生きた肉体へ、容赦なく金属を埋め込んでいく生々しい肉体改造の手術。
「……では、始めますよ」
技師さんの引き締まった声と共に周りの人たちが私が暴れないよう体を固定し、私の右肩の剥き出しの筋肉へ、冷たい生体端子が当てがわれ__工具の力で、骨の根元へと容赦なくボルトがゴリゴリとネジ込まれていった。
「______ッく、あ、ああああああッ!!!!!」
喉が裂けるかと思うほどの、言葉にならない絶叫が私の口から飛び出していた。
生身の骨に鉄のボルトが食い込んでいく、のたうち回るような極限の激痛。
7歳児の肉体にはあまりにも過酷すぎる、これが
あまりの激痛に身体がガタガタと激しく痙攣し、ベッドの上で狂ったように暴れそうになるが、手足は固定されているため動かない。
「……っ、がはっ、は……っ、あ……っ」
どれほどの時間、肉を抉られるような痛みに絶叫し続けていただろう。
涙と汗がボロボロと溢れ、あまりの痛みの激しさに意識が真っ白に飛びそうになりながらも、私の右肩には、強固な金属の土台がガッチリと埋め込まれて固定された。
その土台のソケットからは、私の生身の神経と繋がったプラグが、鈍く光って剥き出しになっている。
「よく頑張ったね、アリス。先生、これで土台の固定は完了ですか?」
エンヴィーは、声のトーンだけは完璧に「健気な娘を心配する優しい父親」を熱演しながら、痛みに震える私の頭をそっと撫でてきた。上手いのなんか癪だな!!
「えぇ。ベースソケットの固定は完璧です。お嬢様、本当によく耐えましたね。ですが……」
技師さんは額の汗をぐっと拭い、工具箱の奥から、鈍い銀色の輝きを放つ機械の腕本体を慎重に持ち上げた。私の小さな右肩のサイズに精密に仕立てられた、冷たい鉄の塊。その接続部からは、幾本もの精巧な神経プラグが、剥き出しの牙のように突き出している。
「ここからが本番です。この機械の腕のコードを、先ほど埋め込んだお嬢様の右肩の『神経』と直接、直結させます。ボルト留めとはまた違う、脳が沸騰するような衝撃が全身を駆け巡ります。……いいですね?」
私は心眼の白い線の世界のなかで、技師さんが構えた金属の腕の輪郭をじっと見つめ、覚悟を決めて小さく顎を引いた。
「よし……繋ぎます!」
技師さんの引き締まった声と同時に、機械鎧のプラグが私の右肩のソケットへと、一気にカチッと深く押し込まれた。
__生身の剥き出しの『神経』と、冷たい鉄の『コード』が、ダイレクトに直結した、その瞬間。
「__________ッあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!!!」
今日一番の絶叫が私の口から飛び出していた。右肩の根元から脳天を、そして足の先から全身のすべての細胞にいたるまで、激しい電撃に似た凄まじい
スパナで骨を抉られた時とは全く違う。金属のコードを通じて、脳と、冷たい鉄が直に繋がって脈動し始める、文字通りの洗礼。これが
「はぁっ、はっ……ぅゔ…っ」
「接続は完了しました。お嬢様、一度指を動かしてみてください」
「は、い……っ」
今にも途絶えそうな意識をなんとか保ち、右手の指に力をいれてみる。生身の腕と変わらぬ反応速度で、指が動いた。
「成功です、お嬢様!!よく頑張りました…!」
「あり、がとう…ございます……!」
カスれた声で感謝を伝える。周りからは、拍手の音。
最後、エンヴィーが耳元でお疲れ様、と囁いたのが聞こえてから、私の意識は深い闇のなかに落ちていった。
オートメイル装着時、語彙力なくてすみません。
エドが初めてつけた時と同じと思ってもらえますと……。