境界の錬金術師 ー 私、どうやら『人造人間』らしいー 作:女にだって二言はないぜ?
気がつけば私は、地下のアジトにある自室のベッドの上に仰向けになっていた。目を開けても安定の黒一色。けれど、一息つくと同時に境界の視界が脳裏に起動する。
色のない白い線の世界の中に浮かび上がる、自分の右腕の輪郭。長袖ブラウスの右袖から除く
「起きたの?アリス」
「ラスト…!それと、ラース…さん?」
「あぁ。私がラースだ」
ギィ、とドアが開き2人が入ってきた。
ラストいわく、私はあれから2日間ほど眠り続けていたらしい。恐らくここ最近疲労が溜まっていたからだろう、と。
いやその、原因は貴女方なんですけれども……。
「まずは食事と…身なりを綺麗にしないとね」
ラストがそう言ったタイミングで私のお腹がぎゅるると鳴る。恥ずかしい……汗もかいてるし…。
ラストは赤面した私を見てクス、と笑い、おいしそうなスープをすくってスプーンを私の前に持ってきた。
「食べさせてあげるわ。はい、口開けて」
「いいよ、自分で食べれる」
「まだリハビリもしてないし、危ないわ。いいから」
「……わかった」
ご飯を食べるだけなのに何が危ないのだろうか。
反論しても意味がなさそうなので諦めた。時には諦めることも大切だとか何とか聞いたことがあった気がするし。
半ば強制的にあーんをされながら、ラストに一瞬空気扱いされていたラースさんの話を聞く。
「まずは自己紹介からだな。私はラース。表では大総統キング・ブラッドレイとして軍をまとめている」
「アリスです。
「…君は本当に7歳なのかね?」
「え?はい、そうですが」
合計的な精神年齢は前世何歳で死んでしまったのか覚えていないので7歳ですとしか答えようがないよね。
ラースさんは冷たい表情から一変し、以前見た優しそうな大総統の顔ではっはっはと笑い始める。
「いやはや、信じられんな」
「本当よね。精神状態が落ち着きすぎだもの」
「それに、礼儀も正しいときた。この子なら、任務も実行できるだろう」
「任務…?」
何を言い渡されるのか、唾を飲み込んで耳を澄ませる。
「軍に入ってもらう」
…………え?
「軍に、私がですか?何故…?」
「お父様が軍の勢力を上げるために国家錬金術師としてお前を投入したいそうだ」
「そのために、貴方には今日からリハビリと錬金術の勉強をみっちりしてもらうわ」
「国家錬金術師…。わかりました」
錬金術ならお手の物である。なんせ3年も父さんに鍛えられてきたからね。……とはいえ、国家錬金術師かぁ。果たして私にそこまでの才能があるのかどうか。
「あぁ、それと…」
「はい」
「敬語はなしでいい。私のことはラースと呼びなさい」
「あ、はい……じゃなくて、うん」
タメ口と呼び捨てを要求してくるのは本当になんなのだろうか。
☆
ご飯も食べ終わり、お風呂にも入り終わった後。エンヴィーがグラトニーと共に部屋に入ってきた。……山積みの本を抱えて。
「エンヴィー、グラトニー…それって」
「あぁ、今日からこれ全部読んで勉強するようにってお父様が。色はなくても、見えてるんだろ?」
「べんきょう、べんきょう~」
「見えてるけど……」
ざっと700冊ぐらいはあるだろうか。薄いのから、分厚いのまで。分野はタイトルを見るに錬金術と、この国アメストリスや外国について。あとは軍の履歴書や……
「これ全部読むの?」
「そうさ。国家錬金術師になるために必要だってさ」
何年かかるんだろうこれ……と、内心頭を抱えていると、あることに気がついた。
「あ、この本読んだことある」
「これも」
「これも」
「これも……あ、そっちのも」
なんと!この中にあった200冊ほどの本は全て読んだことがあるものだった。父さんの書斎にあったやつと、旅の途中で学んだやつ。
残り500冊だ!と浮かれていた私に厳しい突っ込みが入る。
「つまり、錬金術以外は全部読んだことはないってことね?」
「ゔ……」
地理とか歴史とか苦手なんですってば。軍のこととか興味なかったし……。次々と何も入っていなかった綺麗な棚に本が詰め込まれていく。
この日から私の厳しい勉強が始まったのであった。
☆
午前は勉強、午後はリハビリという過ごし方をするようになって一年が経過し、私は8歳になった。ホムンクルスたちはそれぞれ受け持ちの町があるそうで、日替わり交代のようになっている。
「けっこう動けるようになってきたじゃん」
「まぁね」
怪我してもお互い直っちゃうのでバチバチ戦闘している。皆手加減してくれてるから何回か勝てるようになってきた。
もちろん錬金術を使いながら戦うことだってできる。そういえば、錬金術について変化したことがあった。
錬成陣を描かず、ノーモーションで発動させることができるようになったのである。真理の扉を通ったからなのか、細かい理由はわからないけれど謎に使える。そういえば父さんも錬成陣描かずに錬成してたな。
軍についても時間ができた時にラースから直接教わったりと、なんとか全体を掴めた。これなら国家錬金術師試験も余裕だろうと、大総統の御墨付きである。
まぁとにかく、特段にレベルアップしたのであった。
境界の視界(メモ):このころのアリスはまだ能力を使いこなせていないため、脳内で意識してから周りの細かな事象を捉えることができる。
※わかりにくいかもしれませんが、要は慣れることが必要だということです。
エンヴィーとグラトニーとの手合わせはエドとアルがやってたやつのレベルアップバージョンぐらいに思ってくださると。ラースとの手合わせはバチバチ本物の剣です。