カードショップ【レイズ・ムーン】を運営してから少し経った頃は社会的にも治安悪化が懸念されるようなニュースが多く取り上げられていた。
『今月に入り、カードショップや運搬車両を狙った強盗団による襲撃の発生件数が増加しております。彼等は【
そんなニュースが取り上げられ、その周辺に暮らす住民は不安に駆られて近い場所に居を置く者達は再犯の発生を警戒する。そんな空気感が漂っていた時期だった。
勿論上記のようなニュースは定期的に取り上げられ、そのたびに新しい組織名が挙げられているので日常であるのだろう。
警察だけでなく、フリーで活動する賞金稼ぎのような者達や物語の主人公かと思ってしまうような髪型をした人物が定期的に組織を壊滅させたりしているようだが、一向に減る気配はない。
シエロの指示で俺を呼びに来た彼等と初めて出会ったのはそんな時期だ。
初見での印象は良くはなかった。
なぜなら今でこそ【レイズ・ムーン】所属の人間ではあるが、元々彼等は強盗しに来た
アンティルールなんて当たり前。勝者こそ正義で敗者には何も残らない。そんな世界で生きてきた者達。
当然ながら彼等にも色んな出来事があり、巡り合わせでその道を歩み始めた者もいるのだろうが、一般的に普通の生活が出来る恵まれた者達からすればそんな過去の出来事よりも現在狙われているという事実に対する怒りや恐怖などが先に来るのは当然の話。
「ひゃははは!ここにある貴重な、本当に貴重なカード達は俺達【
「流石っすアニキ!」
「テメェらはありがたく俺達に献上しなぁ!」
そんなチンピラ染みた言動と身なりをしてやってきたのはあまりにも記憶に残る出来事だった。
だが幸か不幸かわからないがこの世界は遊戯王。
強盗だろうが警察だろうが、物事を決める一つの手段として遊戯王を用いたデュエルが根底に存在する。
勿論デュエルディスクに細工などしている者もいるのだろうが、それは
システムを新規導入するよりも結果的に用心棒を雇ったほうが安く済むという理由でプロデュエリストなどを傘下に収めている企業もあるほどだ。
「ぐ…
「こんな所にまで…!」
突然襲来してきた
働いていた店員(一般人)が警察に慌てて通報する準備をバレないように行っている中で、
「て…店長!」
「慌てなくて大丈夫さ。手元が狂ってしまうよ。…任せていいかな
「いや勿論構わないけどさ…知ってたのか?」
「勿論存ぜ無いとも。ただの“勘”さ」
シエロはカードの精霊であることが影響しているかはわからないが勝負勘が非常に強く、ここぞという一局ではミスした所を見たことが無い。
まぁこの前“地雷蜘蛛”*1のコイントスに失敗して自爆はしていたが、それはあくまでもフリーデュエル上での話。
真面目な場面では考え抜かれた構築で組まれたデッキを使用している。
そんな彼女が“勘”と言い切る以上、
「あー、当店ではお客様や当店への誹謗中傷及び妨害するような言動は禁止となっております。守っていただけない場合は相応の対処を取らせていただいております。」
私服姿の為に明らかに店員とは思われていないが、それでも率先して彼等の前に立つ姿を見て彼等の興味を引いたのだろう。最も厄介者に見えていたのかもしれないが…。
「なんだぁこいつ」
「俺らが何者なのか知らねぇのか?」
「おうお前ら!俺らの旗を見せてやりな!」
バサッと普段からバイクを乗り回す際に使用しているであろう組織を代表する旗を掲げることで、自分達がどんな組織なのかを見せつける。
ここが店内であるので非常に迷惑なのだが、生憎この世界ではカードショップは需要が極めて高く、銀行からの融資も受けやすい。なので個人店であってもそれなりの規模の敷地を用いた店舗になることが多いのだが、この店もその流れに沿っており大きな旗を掲げられても備品を壊すような事にはならなかった。
「あ、あれは…!【
「ここ最近で他勢力を取り込んで勢力図を塗り替え始めていると噂の?!」
一応最初に彼等も名乗っていたのだが、それを聞き逃していた者達がご丁寧に解説をしてくれる。ニュースで流し聞きしていたので有難いことだ。
元々は各地で活動をしていた組織を取り込むことで勢力を拡大。バイクなどの移動手段を用いることで固有拠点を持つことなく行動することもあって警察の追撃を躱していたらしい。
頭領と呼ばれる男がいるらしいのだが、その男が持つ実力がかなり高くて要警戒人物として見られているらしい。
身なりがかなり目立っているので情報などすぐに集まりそうなモノだが、どうやら何らかの認識阻害効果が働いているのか…それとも定期的にモンスターを召喚して暴走しながらドンパチを起こしては祭り事の様に騒いでいる者達を見張るのに必死なのかはわからないが、警察に見つからずにここまでやって来ていた。
「行け!“ゴブリン突撃部隊”*2!!」
「“ゴブリン切り込み部隊”*3を召喚!」
「“
昔懐かしのカードから最新カードまで盤面に並ばれていくが、闇鍋仕様も相まってテーマカテゴリーでデッキを纏めていくのも大変な世界。
【ゴブリン】にさり気無く混ざる【
それに加えてカードの精霊としても様々な種が確認されている中で、犯罪ぐるみに巻き込まれるのは御免だと言わんばかりに使い手から離れていく現象も少なくない。
実際【
使い手もフェアプレイを好む好青年だったはずだ。
そういうこともあって彼等にエースカードが行き届いていないのかもしれない。
まぁそんな感想は彼等を蹴散らす理由にすらなっていないのだが…。
「特に反応札はなさそうだな。ダイレクトアタック」
「「「ぐわぁぁああああ!!」」」
残念ながら展開も抑えめ且つ妨害札がほとんど存在していない盤面ならば簡単に巻き返せる。
そのためあっと言う間に相手のモンスター達を盤面から退場させてデュエルを終わらせた。
「す…すげぇ…」
「あんなにあっさり…」
そんな戦いを見て呆然とする観客達。
一部は新しい獲物を見つけたかのような視線を向けてくる者もいるが、高頻度で出現する珍しい戦闘狂なので問題ない。なぜならカードショップ内で正攻法で挑んでくるから。
「こ、こいつ…つえぇ!」
「おい!ボスを呼べ!」
後方待機していた者達が慌ててリーダーを呼びに向かっていく姿を見送りながら、先程倒したプレイヤーたちを逃げない様に縄で縛っていく。
一度デュエルに敗北した者達は素直に従ってくれる人が多いんだよね。
「あの…追いかけなくていいんですか?」
「こうして一度追い返した以上は向こうも尻尾を巻いて逃げるような事はしないと思うよ。向こうにも面子が立たないだろうからね。リーダ―格を呼んできてくれるらしいからここから下手に動いて追いかけられるよりかは、実行犯を確保できるうちに確保して警察到着まで時間を稼ぐのが賢明だろう。なぁに
「やけに協調してくるな…」
シエロの言葉に納得したのか店員は落ち着いて警察への通報を実施。そして店内に居たお客は下手に外には出ず、後方でいつでも逃げれるようにして待機してもらう。
どんなデッキで来るかは不明だが、今は常に身につけているデッキしか持っていないのでこのまま迎撃するしかない。
リラックスとまではいかないが通常通りの状態を維持しながら彼等の到着を待っていると、窓からゆっくりと先程の倍の人数が押し寄せてきているのがわかった。
「おう。テメェが俺の可愛い舎弟たちを泣かせた野郎か?」
鍛えられている事が分かる肉体を見せつける蛮族スタイルの男は第一声にそう言った。
交通規定速度である40キロと信号機を律儀に守りながら安全運転を心がけて、乗ってきたバイクが通行人の邪魔にならないようしっかりと脇に止め、店の入り口を汚さないようにするためか自身についた砂埃を軽くはたき落として入店してきた男が、だ。
堂々たる仁王立ちからのデュエルディスクを構える姿を見て、
こいつ…さては思ったより悪くない奴だな?
星4/地属性/昆虫族/攻2200/守 100
このカードの攻撃宣言時、コイントスで裏表を当てる。
当たりの場合はそのまま攻撃する。
ハズレの場合は自分のライフポイントを半分失い攻撃する。
星4/地属性/戦士族/攻2300/守 0
(1):このカードは攻撃した場合、バトルフェイズ終了時に守備表示になり、
次の自分ターンの終了時まで表示形式を変更できない。
星4/地属性/獣戦士族/攻1900/守 0
このカードの攻撃宣言時、
相手は魔法・罠・効果モンスターの効果を発動できない。
このカードは攻撃した場合、
バトルフェイズ終了時に守備表示になり、
次の自分のターン終了時までこのカードは表示形式を変更できない。
星3/地属性/戦士族/攻1600/守 0
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが手札に存在する場合に発動できる。
フィールドのX素材を1つ取り除き、このカードを特殊召喚する。
(2):このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。
デッキから「ゴブリンライダー」魔法・罠カード1枚を手札に加える。
ランク3/光属性/獣戦士族/攻2100/守 0
レベル3モンスター×2
このカード名の(1)(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードがX召喚した場合に発動できる。
デッキから「ゴブリン」モンスター1体を手札に加える。
(2):フィールドのX素材が取り除かれた場合、フィールドの他の表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターをこのカードのX素材とする。
(3):自分・相手のエンドフェイズに発動できる。
デッキから「ゴブリン」モンスター1体をこのカードのX素材とする。
・
勢力図を広げ始めたイケイケ暴走族集団。
各地に点在していた荒くれが在籍している影響もあって問題行動が多数散見されている。
年齢男女関係なくメンチを切っては問題を起こす可能性がある為、ニュースでも警戒が呼びかけられていた。
ただ賞金が掛けられている集団でもある為、プロを目指す学生や賞金稼ぎからは逆に狙われている事もある。