無職転生はアニメから入り動画とか原作をあさり蛇足編に至りました、賛否あるようですが結末はアイシャというキャラにはありそうな末路だしきっかけがあれば結末は変わっていたなと感じるようなキャラだなと。
無職転生の中で1番、魅力と成長要素があるなと感じましたね
知りたい。その一心だった。
ノルン姉のように笑いたい。
誰かを羨むのではなく、誰かのためだけに生きるのでもなく。
私も、自分で幸せになりたい。
苦しいのは、もう嫌だ。
そう思った時だった。
自然と手が伸びていた。
膝をついたまま。
縋るように。
その手が求めた先は、目の前で泣きそうな顔をしているアルスではなかった。
ナーグの服の裾を、小さく握り締めていた。
「……知りたい。」
震える声が漏れる。
「私も、自分で答えを見つけられるようになりたい。」
その言葉に、部屋の誰も口を開かなかった。
ノルンへの対抗心ではない。
誰かに勝ちたいわけでもない。
ただ。
幼い頃から「できる子」であることだけを求められ、自分のことを知らないまま大人になってしまった、一人の女の子の願いだった。
――アイシャ・グレイラット。
そう呼ばれたのは、いつ以来だっただろう。
アイシャ。
皆が求めるアイシャ。
ルーデウスの妹。
グレイラット家のメイド。
アルスを受け入れるアイシャ。
それにはなれた。
でも。
ありのままのアイシャは、誰が受け入れてくれるのだろう。
そもそも。
ありのままの私は、どんな人間なのだろう。
分からない。
何も知らない。
私は、できることしかできない。
そう思っていた。
昔は、見下していた。
泣いて笑って失敗して、遠回りをする人たちを要領が悪いと効率が悪いとそう思っていた。
違った、違ったのだ
あの人たちは、自分で選んでいた。
だから泣けただから笑えた。
私は選んでるつもりで選んだことがなかった。
気付いてしまえば、もう戻れない。
羨ましかった。
ただ、それだけだった。
普通に笑って普通に泣いて、好きな人を好きになってそんな当たり前を手に入れる人たちが。
だから
ノルン姉ばかり、と。
何度も思ってしまった。
答えは、ずっと前から出ていたのに。
お母さんがいた。
お母さんを支えなきゃ。
役に立たなきゃ。
頑張らなきゃ。
その気持ちも、本物だった。
褒められたかった。
必要とされたかった。
でも。
それだけじゃなかった。
私は。
誰かに甘えたかった。
一人の娘として。
一人の女の子として。
抱き締めてほしかった。
お兄ちゃんは、私を選ばなかった。
きっと。
あの時、傷付いたんだ。
だから。
何も知らないアルスが。
真っ直ぐ私だけを見て。
何度も「好き」と言ってくれた。
その温もりに、溺れてしまった。
あの気持ちも、嘘じゃない。
本物だった。
でも。
考えれば考えるほど。
正しい。
間違っている。
好き。
愛。
悪いこと。
その言葉ばかりが頭を巡る。
分からない。
何が本当なのか。
誰か。
お願いだから。
私を叱って。
私を見て。
ちゃんと、アイシャ・グレイラットを見て。
涙が、溢れ出した
その涙は、恋を失う悲しみではなかった。
初めて、自分自身と向き合おうとした少女が流した涙だった。
ナーグは、泣き崩れるアイシャを静かに見つめた。
「……答えは、きっと見つかります、その涙を見ればそれだけで十分です。」
アイシャは返事をしなかった。
いや、できなかった。
嗚咽を漏らすわけでもない。
声を張り上げるわけでもない。
ただ、涙だけが止まらなかった。
頬を伝い、顎を伝い、次から次へと零れ落ちる。
震える手で何度拭っても、溢れてくる涙は止まらない。
泣き止み方が分からない。
どうすれば、この苦しさが収まるのかも分からない。
長い年月の中で、自分のために泣くことを、どこかへ置き忘れてしまったかのようだった。
その姿は、誰が見てももう「完璧なメイド」ではなかった「有能な妹」でもなかった「誰よりも頼れるアイシャ」でもなかった。
ただ一人。
泣き方さえ忘れてしまった、一人の女の子だった。
部屋を静寂が包む。
誰も声を掛けられない。
誰も、この涙を止める資格がないように思えた。
アルスは拳を強く握り締める。
自分は、何を見ていたのだろう。
好きだと言って。
幸せにすると口にして。
結婚したいと言って
求めるだけ求めて応えて貰うだけの日々
甘えたい時には甘え。
苦しい時には縋り。
泣きたい時には慰めてもらっていた。
彼女が苦しんでいることにも気付かないまま、甘えていただけ
リーリャは唇を噛み締め、震える声で呟く。
「……私は。」
「娘として、抱き締めてあげたことが……どれほどあったのでしょう。」
主人に仕えること。
役に立つこと。
それが娘の幸せだと、信じて疑わなかった。
ルーデウスもまた目を伏せる。
有能だから。
アイシャなら大丈夫だから。
そう言い訳を重ね、何も見ようとしてこなかった。
妹に頼り。
妹へ甘え。
妹なら乗り越えられると、勝手に決めつけていた。
ロキシーは静かに目を閉じる。
シルフィは堪えきれず、そっと涙を拭った。
エリスだけは真っ直ぐアイシャを見つめている。
怒りは、もうなかった。
胸を締め付けるような悔しさだけが残っていた。
誰も気付かなかった。
この子は、こんなにも弱く。
こんなにも不器用で。
こんなにも助けを求めていたのだと。
「……ようやく。」
ナーグが静かに口を開く。
「皆さんも、気付かれたようですね。」
その一言に、誰も反論できなかった。
この場にいた全員が。
同じ過ちを犯していたのだから。
アイシャ・グレイラットという一人の少女ではなく。
『何でもできるアイシャ』という役割だけを見てきた。
その涙は、アイシャ一人の涙ではなかった。
家族全員が、自分たちの過ちと向き合い始めた証でもあった。
重苦しい沈黙が部屋を包む。
先ほどまでの張り詰めた空気とは違う。
涙も、怒りも、後悔も。
すべてを吐き出した後だからだろうか。
ナーグは一同をゆっくりと見回した。
「……では、以上でよろしいでしょうか。」
誰も口を開かない。
「皆様。」
「そして、アイシャ・グレイラット。」
その名に、アイシャはゆっくりと顔を上げる。
「異論がある方は、今お話しください。」
「これ以上、誰か一人だけが我慢するような状況にはしたくありません。」
静寂。
ルーデウスは家族を見渡した。
ロキシーは静かに頷く。
「私からはありません。」
シルフィも柔らかく笑う。
「うん。アイシャさんが自分で決めたことなら、私は応援したい。」
エリスは腕を組んだまま鼻を鳴らした。
「……気に食わない。」
その一言に部屋が少しだけ緊張する。
「でも。」
「アンタが責任持って連れてくって言うなら、今はそれ以上言わない。」
ナーグは静かに頭を下げた。
「ありがとうございます。」
リーリャは涙を拭いながら、小さく娘を見る。
「……ごめんなさい。」
「そして。」
「行ってらっしゃい。」
まだ旅立ちではない。
それでも、その言葉は母として初めて娘を送り出す言葉だった。
アルスは何度も口を開きかける。
何か言いたい。
言わなければ。
そう思うほど、言葉が出てこない。
結局、小さく拳を握ることしかできなかった。
アイシャはそんなアルスを見つめ、小さく微笑んだ。
泣き腫らした目だった。
それでも、どこか吹っ切れたような笑顔だった。
ナーグはその様子を見届けると、静かに口を開く。
「では。」
「旅立ちは三日後といたしましょう。」
「皆様も。」
「アイシャ・グレイラットも。」
「その日までに、心残りを済ませてください。」
「別れの挨拶でも。」
「旅支度でも。」
「伝えたい想いでも。」
「三日あれば、きっとできます。」
ナーグは最後にアイシャを見る。
「旅は、家を出る前から始まっています。」
「この三日間もまた、あなたにとって必要な時間になるでしょう。」
誰も反対しなかった。
こうして。
長かった家族会議は、静かに幕を閉じた。
それぞれが静かに部屋を出ていく。
リーリャだけが立ち上がれない。
アイシャも扉の前で足を止める。
二人きり。
静かな時間が流れる。
「……アイシャ。」
その呼び方だけで、アイシャは振り返る。
いつもの「お世話を任せる」「主人のために」ではない。
ただ娘を呼ぶ母親の声だった。
「少しだけ、お話しできますか。」
アイシャは小さく頷く。
椅子へ座る。
リーリャは向かいには座らない。
ゆっくり娘の隣へ腰を下ろす。
それだけで、二人の距離が今までと違う。
長い沈黙。
先に口を開いたのはリーリャだった。
「私は……。」
「あなたを、とても自慢に思っていました。」
「何でもできて。」
「誰よりも気が利いて。」
「主人にも信頼され。」
「母親として、誇らしかった。」
アイシャは黙って聞いている。
「ですが。」
「その誇りは……。」
「母としてではありませんでした。」
リーリャは震える。
「優秀な使用人を育てた。」
「それを誇っていたのです。」
「……ごめんなさい。」
アイシャは俯いたまま。
返事ができない。
リーリャは続ける。
「私はあなたに。」
「泣いてもいい。」
「甘えてもいい。」
「失敗してもいい。」
そう一度も言ってあげられませんでした。」
「グレイラット家のため。」
「ノルン様のため。」
「ルーデウス様のため。」
「いつも誰かのため。」
「あなた自身のためではありませんでした。」
涙が止まらない。
「あなたを、私と同じ道へ歩かせてしまいました。」
アイシャが初めて口を開く。
「違うよ、お母さん。」
「私が選んだんだよ。」
「お母さんを助けたかった。」
「ルーデウスお兄ちゃんも。」
「ノルン姉も。」
「皆好きだったから。」
「だから頑張れた。」
リーリャは首を振る。
「ええ。」
「その気持ちは本物です。」
「ですが。」
「それだけではありませんでしたね。」
「……。」
「あなたは。」
「娘として妹として家族として甘えたかった。」
「そうでしょう。」
その一言で。
アイシャの肩が震える。
何も言えない。
否定できない。
「私も。」
リーリャは笑った。
泣きながら。
「奥様を裏切ると分かっていて。」
「それでも、自分の気持ちを止められませんでした。」
「私は、自分を淫らな女だと何度も責めました。」
「でも今なら思います。」
「私は、ただ弱かっただけなのだと。」
「誰かに寄りかかりたかっただけなのだと。」
「あなたも同じです。」
「弱かった。」
「それだけです。」
アイシャは顔を覆う。
「お母さん……。」
「ごめんなさい……。」
「違います。」
リーリャは娘を抱き寄せる。
今まで一度もできなかったように。
ぎゅっと。
「謝るのは、私です。」
「今日だけは。」
「主人のメイドではなく。」
「グレイラット家の使用人でもなく。」
「あなたのお母さんでいさせてください。」
その言葉で。
アイシャは子どものように泣き声を上げた。
部屋には静かな寝息だけが響いていた。
泣き疲れたアイシャは、いつの間にかリーリャの腕の中で眠ってしまっていた。
涙の跡が残る顔は、どこか幼く見える。
先ほどまで自分を責め続けていた女性と、同じ人間とは思えなかった。
「……眠ってしまいましたか。」
リーリャはそっと頬に掛かった髪を耳へ掛ける。
その仕草は、主人に仕えるメイドのものではない。
一人の母親のものだった。
「頑張りましたね……。」
返事はない。
あるはずもない。
それでも、そう言わずにはいられなかった。
リーリャは静かにアイシャの身体へ腕を回す。
「よいしょ……。」
抱き上げる。
幼い頃なら軽々と抱けた身体は、すっかり大人の女性の重みになっていた。
それでも不思議と重いとは思わなかった。
この重さこそが、娘が生きてきた年月なのだと思えた。
廊下をゆっくり歩く。
誰の手も借りない。
これは母親である自分が運びたかった。
ようやく、娘を抱けたのだから。
部屋へ入ると、静かに寝台へ寝かせようとする。
その時だった。
「……おかあ、さん……。」
寝言だった。
アイシャは無意識のままリーリャの服を小さく掴む。
離さないで、とでも言うように。
その手は、震えていた。
リーリャの胸が締め付けられる。
「ええ。」
「ここにいますよ。」
優しく答えると、アイシャは安心したように力を抜いた。
その小さな仕草が、たまらなく愛しかった。
リーリャは靴を脱ぎ、そっと寝台へ横になる。
娘の隣へ。
アイシャは眠ったまま身を寄せる。
幼い子どものように。
安心を確かめるように。
胸元へ顔を埋める。
「あなたは……。」
リーリャは娘の頭をゆっくり撫でる。
「ずっと、我慢していたのですね。」
「母さんは、ようやく気付きました。」
「もう、大丈夫です。」
「これからは、あなたが娘でいられる時間も、私が作ります。」
穏やかな寝息だけが返ってくる。
それでよかった。
この言葉は、眠る娘へ向けたものでもあり。
母としての、自分自身への誓いでもあった。
窓の外では、夜風が静かに木々を揺らしている。
旅立ちまで、あと三日。
その夜だけは。
メイドのリーリャではなく
一人の母親として。
娘を抱きしめたまま、眠りについた。
書きたいことはたくさんあります、それとAIとの協議は結構面白いですね。ただ結構こちらの考えてる文と考えてるものと違うものになりやすいので地頭が必要なんだなぁと