アイシャの本気を感じれていたら正直腹違いなら行けるだろって思わなくもない、倫理寄りだけど最後は気持ちを大事にしてやりたいのが個人的な信条です。
自分一人が飲み込めば解決するなら雑な問題かな現実的な血の問題は回避できないのは覚悟するしかないな、選んだ以上の責任だし。血の問題を考えるなら俺は叔母でもノーを叩きつけるけどね、本人達が構わないって生まれてくる子供にも惜しみなく愛を与えられるって思うなら止められないさ。
考え悩み抜いてあるだろうけどそれでも自分で選んだのだから、その先に苦悩と後悔があるとしても幸せなのは変わらないのだから。子供のことを考えてないと言われたら言い返せないが、そこまで考えて子供作ってる人はおらんし。
原作のアイシャとアルスもそうだし求められることに応え続けた結果できた、逃げれなくなった、観念した。祝福と望みで後先考えて作った子供ではないから。
むしろ足枷になったとさえ、読み取れなくもないのでそのあたりはねじ曲がった解釈かもしれないけど
前書きも僕の蛇足に使う、異論は認めんぜ
ナーグという男には、生まれの記憶がなかった。
父も母も。故郷も。名前すら、本当に自分のものなのか分からない。
気が付けば街角で倒れていた。何も持たず、何も知らず、ただ生きていた。
生きる術を知らない男が最初に覚えたのは、人を観察することだった。
困っている人がいる。何に困っているのかを見る。足りないものを考える。出来ることをする。
壁が壊れていれば土魔術で積み直し、家具が壊れていれば直す。怪我人がいれば回復魔術を施す。
そうして礼を言われ、食事をもらい、寝床を借り、紹介状を書いてもらう。
それだけで十分だった。
「人の役に立つ。」それが自分という人間なのだろうと定義していた。
ある日も、壊れた石像の修復をしていた。
「……ほぅ。」
背後から感嘆の声が聞こえた。振り返ると、一人の青年が目を輝かせていた。
ザノバ・シーローン。人形を愛し、人形のためなら国さえ飛び出す変わり者。
彼は修復された石像を食い入るように眺めると、開口一番こう言った。
「その技術、人形作りに活かしてみる気はありませんかな?」
断る理由はなかった。
いつまでも素性の知れない男を世話になった人々へ預け続けるわけにもいかない。ならば働こう。
そうしてナーグはザノバの工房で人形師となった。
工房にはジュリという少女がいた。飲み込みが早く、負けず嫌い。
互いに作品を見せ合い、競い合い、ときには言い争いながら腕を磨く日々。悪くない時間だった。
ザノバの紹介で、ルーデウス・グレイラットとも顔を合わせるようになった。
仕事で屋敷を訪れる中で、アイシャ・グレイラットという女性とも何度か顔を合わせた。
器用な娘だった。誰よりも周囲を見て、誰よりも空気を読み、誰よりも正しく振る舞う。
だからこそ、どこか危ういとも感じていた。
そして昨日。あの叫びを聞いた。
『納得させてよ!』
あの一言だけが、胸に刺さって離れなかった。
どうして口を挟んだのか、自分でも分からない。ただ、あの叫びは自分が昔、声にも出来なかった何かと似ている気がした。
「……さて。」
工房の荷物を片付けながら、小さく息を吐く。
「明後日から無職か。」
出会いがあれば別れがある。進めば止まる日もある。止まれば、また歩き出す日もある。
世の中とは案外、その繰り返しだ。
人は何でも二つに分けたがる。
正しいか、間違いか。好きか、嫌いか。愛か、愛ではないか。
けれど本当は、その間に数え切れないほどの答えがある。答えは一つでも、そこへ至る理由も、想いも、形も、人それぞれだ。
アイシャ・グレイラットは、それをまだ知らない。だから答えを急ぐ。
だが自分だけの答えは、誰かから教わるものではない。悩み、迷い、遠回りをして、ようやく見つけるものだ。
……もっとも。それは俺も同じなのだが。
木屑の匂いが漂う工房へ戻ると、ジュリが黙々と木材を削り、ザノバは完成間近の人形を眺めていた。
「戻りました。」
「おや、ナーグ殿。少々早いですな。師匠への用向きは済みましたかな?」
「ああ、それなんだが。」
ナーグは頭を掻きながら苦笑する。
「ザノバ、悪い。仕事辞める。いつ戻るか分からん。」
木槌を打つ音だけが工房に響いた。ジュリが驚いて顔を上げる。
「えっ!?」
だがザノバだけは、少し目を丸くした後に静かに頷いた。
「左様ですか。」
引き止めることも、責めることも、理由を問い詰めることもない。
「……驚かないんだな。」
「ナーグ殿がそのようなことを軽々しく口になさらぬ方なのは存じております。辞めると仰る以上、それ相応の理由がおありなのでしょう。無理に引き止めるのは私の流儀ではありません。」
そう言って微笑み、一つだけ尋ねてきた。
「何があったのか、お聞きしてもよろしいですかな?」
「あー……家庭の事情に首を突っ込んで、色々あった、かな。」
「家庭の事情……。」
ザノバはその言葉を繰り返し、静かに目を閉じる。
昨日、自分はナーグへルーデウスへの届け物を頼んだ。向かった先はグレイラット邸。そして今朝の退職。点と点が線になる。
「……そうですか。聞いても話せぬことでしょうし、人様の家庭事情へ首を突っ込むのは私の趣味ではありません。」
「そりゃ俺がおかしいみたいな言い方だな。」
「人形のことなら朝まで語れますが、家庭のことはその家族が決めることです。……ただ、貴方が自ら仕事を辞めるほどの決断をされた。それだけで私には十分です。帰って来られた時、この工房に席が空いていればまた一緒に作りましょう。席が埋まっていても、ジュリを追い出せば済む話ですので。」
「えっ!? マスター!?」
「冗談です。……多分。」
「多分って何ですかぁ!」
工房に笑い声が響く。
「ザノバがそんな冗談言うなんてな。ジュリのこと大事なくせに。」
ナーグも肩を揺らした。
「悪いな。戻れたら、また世話になる。」
「ええ。いつでもお待ちしております。」
ジュリは不安そうにナーグを見つめた。
「……本当に行っちゃうんですか? 戻ってきますよね?」
「……分からん。いつ戻るかも分からない。もしかしたら戻らない結末になるかもしれない。」
ジュリの肩が震える。
「これは俺が決めることじゃない。最後まで見届けなければならないことなんだ。人の人生に首を突っ込んだ以上、途中で『やっぱり知らん』とは言えない。最後まで付き合う。それが今回、俺が選んだ仕事だからな。」
ジュリはしばらく黙っていたが、力強く顔を上げた。
「……分かりました。でも、戻ってきたら今度こそ私が勝ちますから。」
「ああ。腕を落とさず待ってろ。簡単には勝たせない。」
ザノバが静かに頷く。
「良きかな。別れとは終わりではなく、再会の約束でもあります。ナーグ殿、どうか悔いのない旅を。」
「ああ。その時は、またよろしく頼む。」
ナーグは軽く手を挙げ、工房を後にした。
昼下がり。玄関から勢いよく扉が開く音がした。
「ただいま!」
エリスだった。アイシャの前に歩いてくると、どこか真剣な表情で言った。
「アイシャ。少しいい?」
二人は庭へ出た。風が木々を揺らす中、エリスは腕を組み、言葉を探すように頭を掻いた。
「……難しいわね。こういうの、ロキシーやシルフィの方が上手なんだけど。でも、アタシが言いたい。」
アイシャは黙って頷く。
「アンタさ。悪いことだって分かってたんでしょ?」
問いに口を開きかけるが、言葉にならなかった。
「アンタ自身、どこかで違うって思ってたんじゃないの?」
「…………。」
痛いところを突かれた。
「アタシね。ルーデウスが好き。世界で一番好き。」
迷いのない声。
「だから隠したことなんて一度もない。堂々と好きって言った。ルーデウスの隣に立つって決めた。強くなるって決めた。誰に反対されても最後まで貫くって決めた。だって本気だから。本気なら隠れない。本気なら胸を張る。それがアタシ。」
エリスは一歩近づき、アイシャの肩に手を置いた。
「アンタが隠して逃げたのは、本気じゃなかったからと言いたいんじゃない。アルスが好きだった気持ちは本物だったと思う。でも、その好きが何なのかアンタ自身が分かってない。だから苦しくて、『納得させて』なんて叫んだのよ。」
アイシャの肩が震える。
「もし本当にアルスが運命の相手なら、旅をしたって変わらない。離れたくらいで消えるならそれまで。でも違うなら、ちゃんと別れてあげな。それも優しさだから。……アンタの人生を生きなさい。メイドじゃない、妹じゃない、誰かに期待されるアイシャでもない。『アイシャ・グレイラット』として。」
言葉が、昨日ナーグから聞いた言葉と重なる。そしてエリスはふっと笑った。
「それと。アンタがルーデウスを好きだったのも知ってるわよ。」
「えっ……。」
顔を真っ赤にするアイシャに、エリスは誇らしげに胸を張る。
「隠せてると思ってた? アタシには分かるわ。だって、アタシが世界で一番ルーデウスを愛してるんだから。誰がどんな目で見てるかくらい分かる。」
嫉妬も苛立ちもない。圧倒的な愛の自負。
「敵いませんね。」
「当たり前! だから見つけてきなさい。アンタだけの『好き』を。アタシの真似でも、シルフィやロキシーの真似でもない、アイシャ・グレイラットの愛をね。」
「……はい。」
その返事は、昨日よりもずっと力強かった。
その日の夜。屋敷は静かだった。
学校から帰ってきたアルスは、いつもと違って目を合わせようとせず、小さくなっていた。
昼間、我慢できずに学校を抜け出して屋敷へ走り、アイシャへ飛びついた時のこと。
何でも許し、甘えさせてくれたアイシャから突き放されたあの衝動。
『ダメよ、アルス……っ!』
『私たちがやってきたことは……あなたを甘やかして、私も楽な方に逃げていただけ……。』
あの本格的な拒絶と涙の訴えは、三人の母親に叱られるよりも深く少年の胸に刺さっていた。それが愛ゆえの拒絶であることなど、今のアルスにはまだ分からない。
「アルス様。」
部屋の扉が叩かれた。
「……はい。」
「食事のご用意ができました。」
リーリャの声だった。いつもなら自分を呼びに来るのはアイシャだ。
「……アイシャは?」
「本日からは、私がお呼びに参ります。」
責めるでも冷たくもない、けれど決定的な一言。
「……そう。今、行きます。」
扉を開けると、隣にアイシャの姿はなかった。
食堂へ入ると家族が揃っていた。子供たちの楽しげな話、大人たちの穏やかな頷き。いつもと変わらない夜。
その中で、アルスだけが取り残されたように椅子へ座った。
向かいのアイシャと目が合う。
彼女は柔らかく笑った。昔と変わらない笑顔。けれどそれは、もう自分だけへ向けられた特別なものではなく、「家族へ向ける笑顔」だった。
食卓には賑やかな笑い声が響く。
アルスはその輪の中で、一人静かに箸を動かしていた。失って初めて、当たり前だった温もりが当たり前ではなかったのだと、幼い心で感じながら。
あとがき
オリジナルキャラクターを出したはいいものの、一番悩んだのはナーグの立ち位置でした。
アイシャを救う人物にはしたくないし、答えを与える人物にもしたくない。
もし何でも教えてくれる存在にしてしまえば、アイシャはまた「正解をくれる人」に従うだけになってしまいます。それでは、これまでの「言われた道を正しく歩くアイシャ」と何も変わりません。
私が描きたいのは、仕事や家事、生きる術は誰よりも学んできたのに、「人としてどう生きるか」「自分は何を選びたいのか」を学ぶ機会だけがなかったアイシャです。
才能が故に人より先にいたアイシャが24歳になってようやく成長を始められる状況になったが正しい解釈でしょうかね。
だからナーグは、答えを教える人ではなく、考えるきっかけを与える人として描いています。
悩んだら少しだけ背中を押す。
迷ったら少しだけ視野を広げる。
それでも最後に答えを出すのはアイシャ自身。
彼は教師でも救世主でもありません。
旅の終わりにアイシャが誰を選ぶのか、どんな人生を歩むのか、それを決める権利は最後までアイシャ・グレイラット本人のものです。
この物語は、恋愛だけを書く話ではありません。
「誰かに必要とされるアイシャ」ではなく、「アイシャ自身が自分の人生を選ぶ」までの成長を書きたい物語です。
そのための案内人として、ナーグという人物を書いていければと思っています。
追記、少し読みやすくしてみましたがどうでしょう?