アニメの無職転生がアイシャにめちゃくちゃ力入れてるのがわかるので触発された感、現在アイシャの蛇足編は取り下げられてますが。もし結末が変わるならばとりあえずアイシャは一回外に出してやってくれと、あまりにも世界が狭い。グレイラットで完結していい才能じゃないしどうなるかみたい
これは個人的な二次創作だからアイシャじゃないって言われたらそれまでだから
夕食を終え、それぞれが自室へ戻る時間。
賑やかだった食卓も静けさを取り戻し始めていた。
アルスは最後まで口数が少なかった。
笑おうとはしている。普段通り振る舞おうともしている。けれど、幼い彼にはまだ隠しきれない。
アイシャへ向ける視線。話しかけようとしては躊躇う仕草。無意識に探してしまう姿。
それら全てが、大人たちの目には痛々しく映っていた。
ルーデウスは小さく息を吐く。
(……やっぱり、まだ駄目か。)
依存。
その言葉で片付けるには、アルスの想いは真っ直ぐだった。
だが、真っ直ぐだからこそ幼い。失うことも、距離を置くことも、相手のために我慢することもまだ知らない。教えようにも、それは言葉だけで身につくものではなかった。
エリスも腕を組んだまま難しい顔をしている。
「……怒るのは簡単なんだけどね。」
ぽつりと漏らす。
「でも、あの子まだ子供なのよ。叩いたって、余計にアイシャへ行くだけ。」
ロキシーも静かに頷いた。
「恋を知らない子へ恋を教えることは、教師でもできませんから。本人が経験し、悩み、答えを見つけるしかありません。」
リーリャはアルスの背中を見送りながら、小さく目を伏せた。
「アイシャだけではありませんでしたね。アルス様もまた、甘え方しか知らなかったのでしょう。」
誰も責められない。責めても何も変わらない。
だからこそ、大人たちは歯痒さだけを胸に飲み込むしかなかった。
◇
夜。
アイシャが旅支度を進めていると、部屋を控えめに叩く音がした。
「アイシャ。起きてる?」
「シルフィさん?」
扉を開けると、少し困ったような笑みを浮かべたシルフィが立っていた。
「少しだけ、お話いいかな。」
「もちろんです。」
部屋へ招き入れ、二人で椅子へ腰掛ける。シルフィは少し言いにくそうに指先を弄びながら口を開いた。
「……まず、ごめんね。」
「え?」
「家族会議の時。『練習なら他の子とも練習できるよね?』って言ったでしょう。あれ……ちょっと意地悪だった。」
アイシャは目を丸くした。
「あの時の……。」
「アイシャが苦しい言い訳してるって分かってた。『アルスの練習に付き合っただけ』なんて、そんなわけないって。だから、つい意地悪言っちゃった。ごめんね。」
申し訳なさそうに頭を下げるシルフィに、アイシャは慌てて首を振った。
「謝るのは私の方です。苦しい言い訳でした。自分でも分かってました……でも、あの時はそれしか言えませんでした。」
「うん。分かってる。」
シルフィは優しく頷く。
「だから、今さら責めるつもりはないよ。でもね、謝りたいことは謝るべきだと思ったの。私は、そういうのを大事にしたいから。」
その一言が、あまりにもシルフィらしかった。アイシャの胸が温かさで満たされていく。
「アイシャ。旅に出ても、帰ってくる場所はここだからね。迷ったら帰っておいで。誰もあなたを追い出したわけじゃない。あなたに、自分を見つけてきてほしいだけなんだから。」
「……はい。」
今度の返事には、迷いではなく確かな安心が込められていた。
旅先で気をつけること。帰ってきたら聞かせてほしい話。子供たちのこと。何気ない会話を重ね、シルフィは立ち上がる。
「じゃあ、今日はこれで。旅立つ日はちゃんと『いってらっしゃい』って送り出したいから。……おやすみ。」
「おやすみなさい、シルフィさん。」
扉が閉まり、部屋は再び静寂に包まれた。
アイシャは旅支度の続きを始める。服を畳み、小物をまとめ、荷物を鞄へ入れていく。
けれど——
「……少ない。」
思わず苦笑した。私物が驚くほど無い。
着替え、最低限の生活用品、仕事の道具。棚を見渡しても、自分だけの思い出と言える品がほとんどない。
(私……何を買ってきたんだろ。)
必要な物、役に立つ物ばかり。
「好きだから欲しい」「可愛いから買う」そんな当たり前の甘えを、自分は一度もしてこなかったのだと気づく。
「……私、何が好きなんだろ。」
その答えすら、すぐには出てこなかった。
――コンコン。
考え込んでいると、再び扉が叩かれる。
「はい。」
開けると、帽子を軽く押さえたロキシーが立っていた。
「こんばんは、アイシャさん。少しだけ、お時間をいただいてもよろしいでしょうか。」
「もちろんです。」
ロキシーを招き入れる。シルフィとは違う、どこか教師らしい厳かで優しい雰囲気が流れた。
ロキシーは椅子へ腰掛けると、小さく咳払いを一つした。
「えっと……魔術でしたら、先生として教えられる自信はあるのですが。こういうことは、正直あまり得意ではありません。何を言えば正解なのか、私にも分からなくて。」
照れたように頬を掻く。
「私の恋愛経験はルディだけですから。ですので、あまり参考にならないかもしれません。むしろ、恋愛経験だけならアイシャさんの方が多いまであります。先生としては少し複雑ですが……ふふっ。」
アイシャもつられて吹き出した。部屋の空気が解けていく。
「でも、一つだけ確信を持って言えることがあります。」
ロキシーは姿勢を正し、真っ直ぐな瞳を向けた。
「人は、知ることで変わります。魔術もそうです。知って、失敗して、悩んで、また知る。その繰り返しで成長していきます。恋も、愛も、きっと同じなんだと思います。私は先生ですが、恋を教えることはできません。答えは人それぞれですから。ですが——世界を知ることはできます。」
「世界を……。」
「いろいろな人を見て、いろいろな生き方を見て、いろいろな愛を知る。そうすれば、いつかアイシャさん自身の答えも見えてくるかもしれません。」
そう言って照れくさそうに笑ったあと、ロキシーは少しだけ視線を落とした。
「……一つだけ。これは私の勘違いでしたら、忘れてください。」
「はい。」
「もしかすると……アイシャさんは、ルディのことがお好きでしたか? 男性として、です。」
その一言に、アイシャの肩がぴくりと震えた。
「家族会議の時に、ようやく確信が持てたような感じです。もし違っていたら、本当に申し訳ありません。」
静かな問い。責める色など一切ない。
アイシャは視線を泳がせ、否定しようとして——言葉が詰まった。
否定できない。好きではなかったと言えば、嘘になる。
「……重ねてない、とは言えません。」
苦しそうに笑う。
「アルスは、お兄ちゃんに似ています。優しいところも、真っ直ぐなところも、家族を大切にするところも。だから……どこかでお兄ちゃんを見ていたのかもしれません。」
言葉にするほど、自分の心が解き明かされていく。
「それに……お兄ちゃんに求められたかった。選ばれなかった寂しさがあって……。だから、アルスが何度も好きだって、必要だって言ってくれたのが嬉しかったんです。お兄ちゃんに言ってほしかった言葉を、アルスが全部くれたから……。」
ロキシーは静かにその言葉を受け止めていた。
「そうですか。でしたら、なおさら旅に出る意味がありますね。ルディでもない、アルスでもない、アイシャさん自身が誰かを好きになる日が来るかもしれません。あるいは、今の気持ちが本当に愛だったと確信する日が来るかもしれません。それを決めるのは、今ではありませんから。」
胸の荷物が少しだけ軽くなる。ロキシーは立ち上がり、帽子を持ち直した。
「それと……一つだけ約束してください。今度からは、ちゃんと我慢しないでください。『言いたいことがあるなら言う』『困ったら頼る』『甘えたいなら甘える』。全部一人で抱え込まないでください。」
優しく、けれど芯のある教師の声。
「気付けなかったことは、私の未熟さです。ですが、知ってしまった以上、私はもう見過ごせません。旅から帰ってきても、また一人で抱え込もうとしていたらちゃんと叱ります。先生ですから。」
ロキシーは柔らかく微笑む。
「今回の出来事で、私はようやくアイシャさんという人を知ることができました。器用な妹でも優秀なメイドでもなく、ちゃんと泣いて、迷って、甘えたくて、誰かに愛されたかった一人の女性として。そのアイシャさんを知れたことを、私は嬉しく思っています。」
アイシャの目から、温かい涙が溢れ落ちた。
「それでは、今日はこの辺で。旅から帰ってきたら、少しだけ大人になったアイシャさんのお話を聞かせてくださいね。」
「……はい。約束します。」
ロキシーが去り、再び部屋に静けさが戻る。
アイシャはベッドへ腰掛け、小さく息を吐いた。
「……また、ばれちゃった。」
苦笑が漏れる。
エリスにはあっさり見抜かれ、シルフィは全てを察した上で優しく寄り添ってくれ、ロキシーには穏やかに解きほぐされた。
「……そんなに分かりやすいのかな。私なりに隠してたのに。」
思わず額を押さえる。
「……待って。みんな気づいてたなら……お兄ちゃんだけ気付いてなかったの? いや……それ、お兄ちゃんが悪くない?」
誰もいない部屋で、真剣に考え込む。
(妹だなぁ、可愛い妹だなぁって……そこまで鈍い人だった!? 私なりに抱きついたり甘えたり、精一杯好意を伝えてたのに!)
少しだけ肩を落としつつも、不思議と胸の痛みは引いていた。
(選ばれなかったのは変わらないし、ちゃんと諦めないとね。……でも、今度会ったら一回くらい聞いてやろ。『私、そんなに妹でした?』って。)
くすりと一人で笑う。前を向き始めた証拠だった。
……だが。
ふと、どうしようもない想像が頭をよぎる。
もし。
本当に、本気の本気で「お兄ちゃんが好き」と伝えていたら?
あの日、お兄ちゃんが自分の気持ちに向き合って、『君の気持ちに応えたい』と言ってくれていたら?
「……っ。」
胸が激しく締め付けられる。あり得ない仮定だ。兄は家族を愛する人で、自分を受け入れるはずがない。
それでも……もしそうなっていたら、自分は泣くほど嬉しかったはずだ。
アルスの真っ直ぐな愛を離してでも、ルーデウスの手を取ってしまっていたかもしれない。
「……あぁ。」
ぽつりと、愚かな答えが溢れる。
アルスがくれた愛は本物だった。嘘なんて一つもなかった。
でも、自分が一番欲しかったものは。ずっと昔から、たった一人から貰いたかったものは——ルーデウス・グレイラットから一人の女性として向けられる愛だったのだ。
「……はは。お母さんみたい。」
力なく笑う。
悪いと分かっていながら、欲しいものを欲してしまう。叶わないと分かっていても、心が止まってくれない。
「私、本当に……リーリャの娘なんだ。」
そう呟き、ゆっくりと首を振る。
「だから……だから旅に出るんだよね。」
この答えを抱えたまま、アルスのところへ戻ってはいけない。
ルーデウスを想ったまま、アルスを選んでもいけない。
この歪んだ想いを一度全て認めたうえで、その先へ進める自分になるために。
「ちゃんと……私の答えを見つけてくる。」
涙の痕が残るアイシャの瞳は、静かに、けれど強く未来を見据えていた。
最後のルーデウスへの下りはどうしようか悩んだ、これでこう思わないのも違うかなって色々考えてみましたが。どうなのかわかりません
もしかしたら編集するか丸々書き直すかもしれないです
アイシャ・グレイラットという作中もっとも不器用だったと思う女を好きになってしまった僕が悪いな、色々考えてしまうから
追加、屋敷を出た後がね…地名とか出会う人物とか色々見直したり考えなきゃならんからそっからがアイシャの成長にも繋がるような展開にしたいって願望。書くのと考えるのは楽しいけどまとめたりすんのはかなり大変だなです。偉大な小説家達に敬意を評しますよ、よくもまぁなろうであれだけのクオリティの小説をかけたなと化け物かな?と思います、もちろん良い意味で