天赤二次小説 「ザナンザ生存if 夢小説」   作:ブドゥヘパ

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深緑に根付く者たち⑥

道場が建設されてからの村は、まるで別の熱気に包まれていた。

日々の農作業や建設作業作業、夕方の全体鍛錬が終わった後も、道場からは活気ある音が途切れることがない。

ある者は天井から吊り下げられたサンドバッグに汗だくで拳や蹴りを叩き込み、またある者は藁を詰めた人形相手に鋭い膝蹴りを打ち込んでいる。壁に設置された磨き上げられた巨大な金属鏡の前では、あの大人しかった女性…アシュナをはじめとする村民たちが、真剣な眼差しでフォームを何度も確認していた。

 

さらには――

 

「ふんっ! ぬんっ! まだまだ若いもんには負けんぞぉっ!!」

 

道場の隅で、村長が自分の身体ほどもある大きな丸石を「フンッ!」と掛け声とともに何度も持ち上げ、汗だくで筋トレに励んでいる姿があった。

 

「おいおいおい……父さん、本気でザナンザに挑む気かよ!? 筋痛めても知らねぇぞ!?」

 

呆れ果てたシュワルトの叫び声が響き渡り、それを見たザナンザと私は顔を見合わせて、温かな笑声を漏らすのだった。

 

 

そして――ついに迎えた、満月の夜。

夜空には眩いばかりの満月が浮かび、新設された道場は松明の炎で赤々と照らし出されていた。村人全員が集まり、熱気と熱狂が道場全体を押し包んでいる。

 

「これより! 第一回・深緑の村『競技大会』を開幕する!!」

 

村長の豪快な開会宣言とともに、地鳴りのような歓声が上がった。

 

「最初の種目は――『剣術の部』だッ!!」

 

中央の藁マットの周囲を観客が取り囲み、審判を務めるザナンザが中央へと進み出た。深緑の旅装を身にまとった彼の立ち姿は、静けさの中に圧倒的な威厳を湛えている。

第一試合に呼び出されたのは、大工の棟梁エイと、若手農夫のビイ。

二人は頭と胴に頑丈な木製防具を装着し、手にはズシリと重い木刀を握りしめていた。

 

「両者、構え!」

 

ザナンザの凛とした声が響き渡る。

エイは大上段に木刀を構え、ビイは低く平眼に構える。互いの呼吸が重なり、緊張感で空気が張り詰めた。

 

「はじめっ!!」

 

「うおおおおッ!!」

 

合図と同時に、大地を蹴り破らんばかりの踏み込みで頭上から木刀を振り下ろした! 激しい風切り音。

対する相手は、ザナンザに叩き込まれた足さばきで素早く斜め前へと滑り込み、頭上を通過する木刀を寸前でかわす!

 

『パァァンッ!!』

 

すれ違いざま、ビイの木刀がエイの胴防具を鋭く捉えた!

 

「そこまで! 胴一本! 勝者、ビイ!」

 

ザナンザの手が鮮やかにビイ側へ上がった。

 

「やったぁぁぁッ!!」

 

「くっそー! 足さばきでかわされたか! 見事だビイ!」

 

敗れたエイも爽やかに相手の健闘を称え、観客席からは弾けたような拍手と大歓声が巻き起こる。

 

「すごい……! みんな、ザナンザに教わった型を自分のものにしてる……!」

 

観客席の最前列で応援していた私が目を輝かせると、隣のシュワルトがニシシと鼻を鳴らした。

 

「だろ? ただ振り回すだけだった奴らが、相手の隙を狙って技を出してる。……おいアイラ、次はお前の出番だぞ!」

 

「うん! 行ってくるね!」

 

私も胸当てと頭防具を装着し、木刀を握りしめて立ち上がった。

中央へ進み出ると、審判の位置に立つザナンザと視線が交わる。

彼の琥珀色の瞳が、審判としての厳格さの中に、ほんのりと熱い信頼の光を宿して私を見つめていた。

 

「第一回戦、アイラ対……」

 

月光と松明の明かりが交錯する中、手に汗握る熱戦の火蓋が、次々と切られていくのだった。

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

剣術の部を勝ち進んだ私は、なんとか準決勝まで食い込んだものの、大工の棟梁たちの重い一撃に押し込まれ、惜しくも敗退!

だが、悔しさよりも最高の爽快感で胸がいっぱいだった。

続いて行われた『槍術の部』『弓術の部』も息をのむ熱戦の連続。

そして、大会は最大の盛り上がりを見せる『体術の部』、そして本日のメインイベントへと突入した。

 

 

『体術の部』のトーナメントを圧倒的な力で勝ち上がってきたのは――なんと、あの「目覚めた龍」こと、華奢で大人しい女性・アシュナだった。

普段の柔らかな雰囲気はどこへやら、軽やかなステップから繰り出される鋭い回し蹴りと、私の指導を完璧に吸収した鮮やかな大外刈りで男たちを次々と撃破。見事、体術の部で『優勝』を果たしたのだ!

 

「はぁ……はぁ……! 勝て……ました……!」

 

「すごいよアシュナ! 本当にかっこよかった!」

 

私が駆け寄って抱きしめると、アシュナは恥ずかしそうに頬を染めながらも、凛とした目で道場の中央を見つめた。

 

「それでは……『特別組手』を行う!」

 

村長が声を張り上げると、道場内の熱気が最高潮に達する。

 

「体術の部覇者・アシュナ! ラスボスである最高の軍人、ザナンザに挑む権利を与える! ハンデはどうする!?」

 

エリスは少し考えた後、まっすぐにザナンザを見据えた。

 

「ザナンザさん……! 『ザナンザさんは防具・打撃なし』でお願いできますでしょうか! 自主練で磨いた私の蹴りが、どこまで通用するのか試したいのです!」

 

「……よいだろう。君の覚悟、全力で受け止めさせてもらう」

 

ザナンザは深緑の衣の袖を静かに捲り上げ、藁マットの中央へと進み出た。

防具を外したアシュナも、構えを取る。普段の大人しさは消え失せ、全身から鋭い闘気が放たれていた。

 

「両者、構え……はじめっ!!」

 

『シッ……!!』

 

シュワルトの掛け声と同時に、アシュナが鋭い踏み込みから、容赦のない上段回し蹴りを叩き込んだ!

空気を切り裂く鋭い音。

しかし――ザナンザは微動だにせず、最小限の頭部の動きだけでその蹴りを紙一重でかわした。

 

(速い……! でも、ザナンザの見切りは次元が違う……!)

 

アシュナは止まらない。間髪入れずに鋭いローキック、そして突きを繰り出す。

ザナンザは素手でありながら、彼女の攻撃を一切払うことなく、ぬるりと流すような見事な体さばきですべてを回避していく。

 

「素晴らしい軸だ、アシュナ! だが――踏み込みが甘い!」

 

「くっ……!」

 

ザナンザがすっと懐へ滑り込んだ。

彼の手がアシュナの肩にそっと触れた瞬間――アシュナは自分の身体がふわりと浮き上がり、視界が回転する感覚に襲われた。

ザナンザは決して彼女を叩きつけるような真似はせず、彼女の攻撃の勢いをそのまま殺さずに旋回させ、優しくマットの上へと着地させたのだ。

 

『パァン……!』

 

きれいな音とともに受け身を取ったアシュナは、仰向けになったまま呆然と天井を見上げ……やがて、心底嬉しそうに息を吐き出した。

 

「……降参、です。手も足も……出ませんでした」

 

「見事な闘志だったぞ、アシュナ。君の足さばきと集中力は、すでに一人の立派な武人のものだ」

 

ザナンザがそっと手を差し伸べ、彼女を立たせる。

その瞬間、道場全体から地鳴りのような拍手と大歓声が巻き起こった!

 

「うおおおっ! アシュナもザナンザもすげぇぇぇッ!!」

「負けたけどナイスファイトだ、アシュナーッ!」

「アシュナー!結婚してくれー!!!あ、やっぱ尻に敷かれたら怖いから今のはナシだーー!」

 

村民たちは大笑いした。

 

すべての競技が終わり、月明かりの下で表彰式と賑やかな宴が始まった。

優勝者のアシュナには、村長特製の極上干し肉と私のハーブティーセットが贈られ、村人たちは酒やジュースを交わしながら今日の熱戦を語り合っている。

 

私は少し火照った体を冷ますため、道場の裏手にある小さな木陰へと抜け出した。

そこには、月光を浴びながら静かに夜風に当たっているザナンザの姿があった。

 

「ザナンザ」

 

「アイラ……」

 

私が近づくと、ザナンザは愛おしそうに目を細め、そっと私を自分の隣へと引き寄せた。

 

「お疲れ様。アシュナとの組手、すごく綺麗だったよ」

 

「あぁ……村のみなさんが、これほどまでに武芸を楽しみ、前を向いて強くなろうとしてくれている。それが何より嬉しいのだ。君が伝えてくれた『柔道』や『体術』のおかげだな」

 

「ううん、ザナンザがみんなを温かく、真剣に指導してくれたからだよ」

 

私は彼の深緑の衣服の袖をそっと掴み、彼の肩に頭を預けた。

ザナンザも優しく腕を回し、私の肩を抱き寄せてくれる。

遠くから聞こえる村民たちの楽しげな笑い声と、静かな虫の知らせ。

深緑の村に根付いた確かな絆と、隣にいる大好きな人の温もりを感じながら、私たちは満月の光の下でいつまでも寄り添い続けるのだった。

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