天赤二次 「ザナンザ生存if 夢小説」   作:ブドゥヘパ

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恋情のさざなみ④

翌日。アシュナから話したいことがあると呼び出され、私たちは木陰のベンチに腰掛けていた。

 

「アイラさん! 昨日、シュワルト様に私の想いを告げることができました。そして、その……お付き合いをすることになって……、本当にありがとうございます!」

 

胸の前で両手を握りしめ、頬を少し桃色に染めながら報告してくれるアシュナ。

私は(うんうん、全部知ってるし陰から見てたんだけどね!)と心の中でほくそ笑みつつ、「そうなんだ! おめでとう!」と白々しく拍手をしてみせた。

 

「それから、シュワルト様と話し合って『アイラさんとザナンザさんだけには真っ先に報告しよう』って決めたんです。

それで……アイラさんに私の片思いを相談していたことを打ち明けたら、シュワルト様ったら『やっぱりあのアイラのお膳立てかよぉ!』って、すっごく頭を抱えてて……」

 

ふふ、とアシュナは嬉しそうに吐息を漏らす。

 

「でも、『おかげで腹が括れた、めちゃくちゃ感謝してる』って言っていました」

 

「ふふっ、シュワルトらしいね。

あ、……ねえ、今更なんだけどさ。アシュナって、シュワルトのどこにそんなに惚れたの?」

 

私がずっと気になっていたことを尋ねると、アシュナは遠い目をして、愛おしそうに静かに語り始めた。

 

「……そうですね。私が8年前にこの村へ来た時、ちょうど10歳で、まだ戦争の渦中だったんです。

私の父が背中に矢を受けながら馬を走らせ、私を抱きかかえたまま、この村の近くで倒れ込んでしまって……。

その時に私たちを最初に見つけてくださったのが、シュワルト様だったんです」

 

アシュナの膝の上の手が、小さく握りしめられる。

 

「父はそのまま息を引き取りましたが……私も酷い脱水症状を起こしていて。幼いシュワルト様が夜通し、必死に看病してくださって。……シュワルト様は、私の命の恩人なんです」

 

「そっか……なるほどね」

 

アシュナの原点を知り、私は深く頷いた。いつだってぶっきらぼうだけど、根は誰よりも優しくて温かい。シュワルトのその本質に、幼い頃のアシュナは救われたのだ。

 

「でも……だからこそ、シュワルト様が『嫁の召喚の儀』をするたびに、本当につらくて……」

 

悲しそうにうつむくアシュナに、私はポンと肩を叩いて明るい声をかけた。

 

「あー、そのことなんだけどさ! 召喚の儀をするたびに、80過ぎのおばあちゃんが出たり、あの屈強なオカマが出たり……あとはまあ、私もその珍妙な召喚枠に入ってるのはちょっと悲しいんだけど……」

 

「あ、アイラさん、すみません……っ!」

 

「いいのいいの! でもね、それってさ。周りから『早く結婚しろ』って事ある毎に囃し立てられて、仕方なく召喚の儀をしてたっぽいんだよね……。

で、儀式の最中、いっつもアシュナの顔がちらついて集中できてなかったから変な召喚ばかりになってたんじゃない?」

 

「……!? 」

 

目を丸くしてパチパチさせるアシュナに、私はニヤリと悪戯っぽく笑いかけた。

 

「だって、本命がすぐ近くにいるのに、無理やり別の誰かを呼ぼうとしたって意識がブレちゃうでしょ? だから神様も面白がって、変な人ばっかり送り込んできてたんじゃないかなぁ。

シュワルトが完全にアシュナを意識し始めたのは武術大会の後だろうけど、以前からアシュナは特別な人だったと思うよ」

 

「そ、そんな……まさか、シュワルト様が……っ!?」

 

アシュナの顔が瞬く間に熟したトマトのように真っ赤になり、頭から煙が出そうなほど照れまくっている。

 

「ふふ、間違いないよ。これからは堂々とシュワルトの隣にいられるね、アシュナ」

 

幸せそうに顔を覆う友人の姿を見て、私の胸にもじんわりと温かな『さざなみ』が広がっていくのだった。

 

 

その夜。すっかり静まり返った部屋の中で、私は昼間にアシュナと話した内容をザナンザに告げていた。

 

「アシュナはね、8年前に戦火から逃げ延びて、命を救われたのがきっかけでシュワルトを好きになったんだって。脱水症状のアシュナを必死で看病してたらしくてさ……。

その頃シュワルトって9歳でしょ?昔から、村民を守るって意識が物凄く強かったんだね」

 

ベッドの上で膝を抱える私に、ザナンザは優しく微笑みながら隣に腰掛けた。

 

「ふむ、命の恩人か……。私も、アイラに救われた身だからな。

だが――私が君に惚れたのは、決して命を救われたという理由だけではないぞ」

 

「え……?」

 

ふいに真面目な顔でまっすぐ見つめられ、胸がドキンと跳ね上がる。

 

「きっかけは、確かにそうだったかもしれない。だが、ただ助けられたからという理屈だけなら、命を救われるたびに医師に恋をしてしまうことになるだろう? ……そうではないんだ。

アシュナはきっと助けられたこと以上に、この村で過ごしていく中でシュワルトの気さくさや、時折見せる不器用な誠実さに、知らず知らずのうちに惹かれていったのではないかと思う。

もちろん私も、アイラのあふれる優しさや頼もしい行動力、そして何より、君の可愛らしさに惚れたのだよ」

 

「もーーーっ、ザナンザったら!! いきなり照れるようなことぶち込んでこないでよッ!!」

 

予想外のストレートな愛の言葉に顔から火が出そうになり、私は赤面しながらザナンザの肩をバシッと力いっぱい叩いた。ザナンザは「痛たた……照れ隠しにしては威力が強いぞ」と嬉しそうに声をあげて笑った。

 

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