天赤二次 「ザナンザ生存if 夢小説」 作:ブドゥヘパ
翌朝。
「それでは、行ってきますね」
アシュナが少し緊張した面持ちで、けれど嬉しそうに微笑みながら会釈をする。
隣に立つシュワルトは照れくさそうに明後日の方向を向き、どこか落ち着かない様子で鼻を鳴らしていた。
二人は並んでゆっくりと村の徒歩用の門を出ていく。しっかりと教えたとおりにエスコートをしているようだ。
その背中を、私とザナンザは見送りながら静かに並んで見守っていた。
行先は、村からまっすぐ東へ進んだ場所にある一面の花畑。
迷わず無事に辿り着けるように、そして楽しい時間に夢中になりすぎて日没に遅れないようにと、私は出がけに影を応用して作った特製のコンパスと日時計を二人に持たせておいたのだった。
「ふふ、いってらっしゃい! 楽しんできてね!」
「あぁ、道中気を付けてな」
手を振る私とザナンザの声に見送られ、二人の姿は朝靄の向こうへと小さくなっていく。
「さて……私たちも仕事へ向かうとしようか、アイラ」
「そうだね。今日も一日頑張ろう!」
私たちも気持ちを切り替え、それぞれの職務へと向かった。
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そして、夕刻。
仕事を終えた私とザナンザが広場へ戻ると、ちょうど東の門からシュワルトとアシュナが花を抱えて帰ってきたところだった。
「ただいま、です……。あっ、これは……お土産です」
アシュナが私に花のおすそ分けをしてくれたので、「わあきれい!ありがとう!」とはしゃいだ。
シュワルトは明後日の方向を向きながら、頬をポリポリと掻いている。
「ただいま。……その……、花を見て話すだけでも楽しいもんだな。またアシュナと一緒に色んな場所へ行ってみようと思う」
二人の距離感は朝よりも心なしかぐっと近くなっており、しっかりと手は繋がれていた。そして、互いに視線が合うたび、両者揃って頬をポッと朱に染めている。
その分かりやすすぎる空気感に、私とザナンザは顔を見合わせた。
「……ふふ、何かしら確実な進展があったみたいだね」
「あぁ……。これはちょっと、シュワルトに『尋問』した方が良さそうだな」
夕陽に照らされた二人の甘い雰囲気に、私たちは顔を合わせてクスクスと笑った。
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シュワルトがアシュナを優しく送っていくのを遠目に見届けると、私は間髪入れずに彼の背後へと回り込んだ。
「よし、確保!」
「うおッ!? アイラ、何すんだッ!?」
私はシュワルトの首根っこをがっしりと掴むと、そのままずるずると家まで連行していった。
扉を開けると、先回りして待っていたザナンザが腕を組み、温かな眼差しで二人を迎えた。
「デートは上手くいったようだな、シュワルト」
「で〜? どこまで進んだのかしらー? シュワルトく〜ん?」
目の前に立ちはだかり、これ以上ないほど悪戯っぽくニヤニヤと顔を覗き込む私。シュワルトは一瞬で耳まで真っ赤になり、絶句した。
「〜〜〜〜〜〜ッッ!!」
必死に逃げ場を探して目を泳がせるシュワルトだったが、二人の逃がさないと言わんばかりの視線に観念し、両手で固く口元を覆いながら途切れ途切れに白状した。
「だ……だ、抱きしめて……き、キスを……した……ッ」
「おお……!」
私たちはパチパチと拍手をした。
「アシュナは、嬉しい…って。今度はアシュナの方から顔を近づけてくれて……。
っうう、女の子の体は……唇は……あんなに、柔らかいんだな……。ぁああ!もう!思い出すだけで顔から火が出そうだ!
……そ、それから、アシュナが『アイラさんにはこの花が似合いそうです』って、花を摘んで……そう、そこの花だよ!」
シュワルトは、うちの花瓶に丁寧に生けた花を指差す。
「んで、一緒に昼飯や甘いおやつを食って、
腹ごなしに一人で辺りをブラブラしてたら蜂に追い回されちまって……、その時アシュナは駆けつけて手刀の真空波で一閃して蜂を遥か彼方まで飛ばしてくれて…。そんな勇敢な女がこの世にいるか!?
で、お礼に、あいつに似合いそうな花を見つけて、昔母さんに教えてもらったのを思い出しつつ花冠を作ってやったら『一生大事にします……!』って泣き出して……その姿が可愛くて尊くて尊くて可愛くてよぉ……!また、こう抱きしめて………、
って!何でお前らにそんな報告しなきゃいけねぇんだよ!!」
シュワルトのその純情すぎるデート報告に、私はザナンザと思わず顔を見合わせた。
ザナンザは昨日までの不安げな姿を思い返し、感無量といった様子でシュワルトの肩を力強く叩いた。
「シュワルト!! よくぞ勇気を出したな! 男を見せたではないか!」
「ざ、ザナンザァア!」
ザナンザの心からの称賛に、シュワルトの限界突破した照れはついに爆発した。シュワルトは猛烈な勢いで頭をかきむしり、叫ぶように二人を指さした。
「だーかーらー!! 俺らのことはもう大丈夫だからよ!! お前らは! お前らのことを考えろ!!」
「え……?」
「え?じゃねぇよ!人の恋路をニヤニヤ応援してる場合じゃねぇだろ!
お前ら二人でどんだけじれったいことしてんのか、少しは自覚しやがれ!!
ザナンザ!お前こそ男を見せろ!じゃあな!」
捨て台詞を残し、顔から火を噴きそうな勢いで家を飛び出していくシュワルト。
「あ……行っちゃった……」
二人きりになった部屋に、急に静寂が訪れる。
「…………」
私がふと隣を見ると、ザナンザはシュワルトの残していった言葉の余韻の中、何かを深く考えるように、そっと黙り込んでいた。