病弱貴族になった俺、治癒魔法をかけながら戦えばいいことが判明する(※血反吐付き) 作:池崎
「なるほどな。合法的にお前を追放するために貴族学院に入れと。んで、お前は普通にそれを飲んだと。──合法的に追放ってなんだよ」
「ウケますよね」
「ウケねーよ」
他人事のように言う俺にオルフさんがツッコんだ。
明らかにキレてる彼だが、この人完全にツンデレ隠す気がないのだろうか。変わりに怒ってくれるだけで俺としては救われた気持ちになるのだけれど。
「……申し訳ありません、オルフさん。わたくしは当主様を五体満足で帰してしまいました」
「なっ……!? お前が手を出さずに我慢した……だと……?」
「どういうやり取り? コレ」
直接魔法を教えているオルフさんにとって、エルフィの喧嘩っ早さは異常らしい。それこそ公爵家の当主相手に
「何度も考えました。火魔法か……いや水魔法で呼吸器攻めか……はたまた風魔法で滅多斬りに……とか」
「やるかやらないかを逡巡して欲しかった僕でした」
「いや実行したかっただけで大した成長だぞマジで」
どれもこれも物騒すぎて本当に止めてよかった。
オルフさんは謎に感動しているようだけど、エルフィってもしかして野に解き放ってはいけないタイプの人類になってしまったのだろうか。……解き放つつもりは無いけど。
そんなことを考えながら、俺は二人に呆れ顔を見せつつ正直に思っていることを伝えた。
「僕個人としては複雑な想いがあるのは事実です。でも、貴族家の当主の立場に沿って考えた場合、父上はそこまで間違った対応はしていません。清濁併せ呑んでやっていかないと、誇りを守れない。……そう考えると、醜聞を避けるためとはいえ、生かしてくれたのはある種温情ですから」
すると二人は明確に曇り顔を見せる。
説明してもなお、その表情から怒りが消えることはない。
「……だからなんだよ。客観的に判断したところで、お前がずっと辛い目にあってきたことは事実だろ。顔も見せず、治癒術師も呼ばず。いつ死んでもおかしくない状況下で、ただただ放置した。貴族だろうが何だろうが、人の親としてするもんじゃねぇ行為だ」
「そうですよ。だって、アル様は何も悪くないじゃないですか! 魔毒症になったのも生まれつきのものです。天から定められた不幸をこの身に受けたと言うのに、どうしてそれを家族が守背負おうとしないんですか……!?」
じんわりと温かいものが心に充填される。
どこまでも味方でいてくれて、俺のために怒ってくれる二人がいるだけで本当に十分だっていうのに。
「ありがとう、オルフさん、エルフィ。でも、ある意味貴族学院に行けるのは僕にとっても都合が良いことなんだ。家名が剥奪されても卒業記録は残るからね。その後の就職に便利なのは間違いなく事実だ」
「……まあ、それは違いねぇな。宮廷魔道士の登用資格も貴族学院の卒業だし。貴族学院と名は付いているが、平民枠もある。実態は高額な学校だ」
その通り。
んでもって授業料もしっかり父上が払ってくれるとのことなので、俺にとっては本当に損することが無かったりする。
……そうだな……恨みはあるけど心の底から恨むことができないのは、金銭的には育てて貰ってるからなんだろうな。
はぁと小さく心の中でため息を吐く。
すると、次の瞬間ブワッとエルフィが泣き始めた。
「うぇぇん!! そういえば良く考えたら貴族学院に行っちゃったら離れ離れになるじゃないですか!! 従者枠とか無いんですか!? 普通ありますよね!?」
「あぁ、エルフィも入学しちゃえば良いよ。資格はあるから普通に同級生として来なよ。従者枠はあるけど、それでも普段は離れ離れになっちゃうし」
エルフィは目を丸くして少し放心状態になった。
普通に男爵家の貴族令嬢だから資格はあるんだよ。だから父上から貴族学院に入学しろと言われた時も、エルフィが一緒だから反発する必要が無かった。
それを分かっていると思ってたけれど……エルフィは自分が学校に通うという思考に至らなかったみたいだった。
放心状態のエルフィをしばし観察しといると、彼女はぶるぶると震えたかと思うと、パッと顔を上げてにこやかに言った。
「それです!!! なんて素晴らしい提案なのでしょう!! アル様とご学友になれるとは……!! わ、わたくし! お父様に連絡してきますね!!!」
ドドド!! バタンッ!! と勢い良く部屋を出ていったエルフィ。
残されたのは「あはは」と愛想笑いする俺と呆れ顔のオルフさんだった。
「騒がしいやつだ、まったく。……ま、学院が憂鬱だってんなら何とかしてやろうかと思ったが……その様子なら問題ねぇだろ」
「オルフさんがいないのは寂しいですけどね。……いや本当に寂しいんですけど何とかなりませんか?」
「無茶言うなよ……ぁっ……ん、いや何でもない」
オルフさんは一瞬何かに思い至ったような反応を見せるが、渋面を作ると頭を振って誤魔化した。
……? ここから入れる保険があったりするんか?
いや流石に無理か……まあ、永遠の別れになるわけでもない。
「卒業したら真っ先に会いに来ますよ。これから長い付き合いになるんですから」
「はっ、いつまでもお前の面倒を見るなんてごめんだね」
「オルフさんこそ、僕がいなくなって寂しすぎるがあまり老化が進んで会いに行く頃にはシワシワになってて僕に面倒を見られるなんてことがないようにしないでくださいね」
「やたら具体的な上に嫌なこと言うのやめろ」
早口詠唱で未来予想図を描く俺に、オルフさんは嫌そうな表情でツッコミを入れた。
「──チッ、そうだな。お前が寂しくないようにはしてやるよ」
「え、それって──」
「今日は帰る。やることができた。しばらく来ない。よろしく」
オルフさんは短文で言いたいことを羅列すると、エルフィのように勢い良く部屋を出て行った。
えぇ……なんか言っちゃったか俺。いやでもネガティブな感じでは無かったような気がするけど……。
「カハッ!」
おっと、血反吐が。
まあ、もうちょっとで入学時期だし、オルフさんとの別れも近いのか。寂しいな。
ここから学院入学まで時が飛びます。
ようやく戦い始めます。
どっちがヒロインだと思いますか?
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オルフ
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エルフィ