病弱貴族になった俺、治癒魔法をかけながら戦えばいいことが判明する(※血反吐付き) 作:池崎
「皆さんはじめまして。アルライト・ヴァイルーです。少しだけ体が弱いので迷惑をかけることがあるかもしれませんが、これからどうぞよろしく──ブベバッ!」
「【
「──お願いします」
盛大に吐いた血反吐を秒速で処理するエルフィ。
血の味がする口の中をモニョモニョと動かしながら挨拶を言い切ると、教室は沈黙とドン引きの表情で溢れかえっていた。
(((やべーやつが入ってきた……)))
俺を見る視線は、まさしくそんな感じの表情ばかりだった。
☆☆☆
「エルフィ、僕たちめっちゃ遠巻きに見られてるよ」
「自己紹介が事件現場になりかけたらそうなりますよ」
冷静にツッコミを入れたのは真新しい制服姿に身を包んだ銀髪ポニテの美少女メイドことエルフィである。
メイド服もめちゃくちゃ似合っていたが、前世で言うところのブレザー制服的な姿のエルフィも新鮮で可愛らしい。
エルフィを俺の
……まぁ、友達を作りに来てるわけでもないしな。
「ねぇ、アレって公爵家の恥さらしって呼ばれてた……」
「シッ、バレちゃうよ」
遠巻きにヒソヒソ言われる俺だが、生憎と治癒魔法後に身体強化魔法を使う影響で、五感はかなり優れているのでバッチリ聞こえたりしている。
公爵家の恥さらし云々は多分父上が広めたことだろうけど、魔毒症がバレるよりも自分の息子を恥さらし扱いするほうがマシなのだろうか。
……あー、でもそうだ。
魔毒症は世間で言うところの、神に愛されなかった者……的な扱いを受けているゆえに、宗教的に外聞が悪すぎるのだ。
病弱で能力が劣っているという扱いにすり替えたほうがまだマシなんだろうな。
「アル様、オリエンテーションが終わりましたがどの授業を取られる予定ですか? わたくしと合わせたほうが血反吐の処理ができると思うのですけれど……というか離れたくないのですが」
「うーん……そう言ってくれるのは嬉しいけど、全部合わせるのは多分無理だよ。僕は魔法が使えないから魔法学の単位を取ることはできないし、逆に僕が取ろうとしてる体術Aはエルフィには無理だと思うし……」
魔法を十全に扱うことができているエルフィだが、反対に運動神経については……うん、少し……いやかなり悪かったりする。
武術的なセンスはゼロに近しいため、俺が取ろうとしてる体術の授業をクリアすることはきっとできないだろう。
「うぅ……一緒に卒業するためにはそれぞれ単位を取らなくてはいけませんものね……」
しょぼーん、と落ち込むエルフィ。
まあまあ、血反吐については事前に学院側から「できるだけ我慢して欲しいが、吐いてしまった場合は魔道具で清掃員を呼んでください」というように言われているため、離れ離れでも実利的な面は問題ない。
いつも一緒だから寂しい件についてはどうしようもない。
「アル様……清潔魔法使える方を友達にしましょう」
「なんか利用してるみたいでイヤだし、ダイナミック吐血事故紹介した僕らと友達になってくれる懐の広い人間はいないよ」
「……そんなぁ……」
まあ確かに吐血する度に【清潔】を発動してくれる人がエルフィ以外にもう一人いたら、かなり学院の清潔は保てると思うのだけど……最初からそれ目当てで近づくというのは……ねえ?
でも善意でそれをしてくれる人がいるなら、普通に仲良くなりたいと思うけど。
☆☆☆
「アル様ぁぁぁあ…………!!」
「じゃあね〜」
エルフィが魔法学の授業に行った。
まるで今生の別れみたいなテンションだった。
さて、俺も行くか。
最初の授業だから気合い入れていきたいところ。
ふんっ、とやる気をあらわにして講義場所である格技場に向かっていると、どこか俺を睨むような視線を感じた。
「……?」
辺りを見渡してみるが、視線が合うとビクッと震えるような生徒たちばかりで、敵意を感じさせてくる者はいなかった。
……気の所為か。俺も多少知らない環境で気を張ってるのもあるだろうし。
「……ここか」
格技場に着いた。
前世のイメージ的に格技場と言えば、柔道や剣道を習う場所のように思えるが、実際に行ってみると少し狭めの体育館みたいな感じだった。
ただ流石異世界と言うべきか、魔法でできた結界や魔道具の類が至る所に置いてあって、どこか近未来的ですらあった。
俺が格技場に入ると、生徒たちはギョッとした目で見た。
大体15人くらいか? 思ったより体術を履修する貴族は少ないみたいだ。……ま、大体魔法か剣術のほうに行くよな。
そんなことを考えながら待っていると、教授が入ってきた。
筋肉質な中年のおっさんだ。だが、見せ筋なんかじゃなく実用的に鍛えられている筋肉であることは、素人の俺にでも分かった。
「はい、皆さん集まりましたね。今期の体術Aを担当するアドルブ・ウィローと申します。皆さんにはね、貴族として相応しい自衛精神と実力を身に着けていただきたいと思います! えー──」
「あのー、体術って本当に役に立つんですか? 遠距離じゃ魔法には敵わなくて、近距離だと剣術に敵わないイメージがあるんですけど」
生徒の一人が自己紹介に割り込んで質問をした。
じゃあ履修しなきゃ良いのに、と俺は訝しんだ。
……あぁそっか、まだ履修登録期間だから三回目の授業までに変更することができるのか。大方、冷やかし的な意味合いでここに来たんだろう。
俺が納得していると、アドルブ教授はニコリと笑って────微かな風が吹いた刹那、一瞬で質問した生徒の目の前に移動した。
「なっ…………!?」
「このように、鍛え上げた身体強化魔法は一瞬で間合いを詰めることができる。魔法使いであれば、魔法を放つ前に距離を詰めれば良い。剣士であれば、身体強化魔法を駆使して徒手空拳に持ち込めば勝機は十分にある。君たちがどんな道に進もうが、体術という一つの手段を知っておくことは、大事だと思うね」
……ふむ、大したデモンストレーションだな。
反応的にサクラでは無さそうだが、この演出によって一気に生徒たちの心を掴んだことは事実だ。
きっと体術という講義に疑心暗鬼になっていた者も、今のやり取りを見て履修することを決意したことだろう。
「すげ〜〜」
そして俺も心を掴まれたのである。
いやだって、今のって普通に身体強化魔法の精度凄かったんだぜ? ほぼ常時身体強化魔法を使っている影響もあって、ギリギリ目で追うことはできた。
だが目で追うことが限界だった。
明らかに上澄みの戦士だ。参考になる。
「うん、というわけだ。まずは早速生徒同士で戦ってみようか。私は治癒魔法も使えるから、ある程度の傷は治せる。それに、君たちの今の実力を見て授業の内容を決めたいんだ」
すると、生徒の表情に緊張が走る。
中にはやる気を迸らせ、教授に実力を見せつけてやると意気込んでいた者もいた。自信無さげに右往左往するやつもいたけど……まあ、貴族であれば大抵のことは習ってるからな。
平民枠で入ってきた人間は分からんが、貴族は事前教育で体術、魔法、剣術を一通り習ってることがほとんどだ。
教授はそういう意味合いでも、今の実力を見たいと表現したのだろう。
「ペアはこちら側で今適当に決めるから少し待っててくれ」
そう教授が言った瞬間、ピシリと姿勢よく真っ直ぐの手が上がった。
「どうした? アストル・エイニール」
アストルと呼ばれた透き通るような青色の髪に、マリンブルーの瞳を携えた可憐な
……え、俺? なんで?
「私はあそこの……アルライト・ヴァイルーとやらせてください」
「ふむ、なぜかな?」
青髪の少女は、酷く真剣で正義感の溢れる表情のまま言い放った。
「噂で聞きました。彼は病弱を言い訳に努力を怠り、何もせずに家の名声を使ってやりたい放題していたと。女を漁り、従者に暴力を振るい、気に入らないことがあれば暴れ回っていたと。──そのような人間は、たとえ公爵家の子息であっても、この貴族学院に相応しくありません!!! 私が直々に天誅を下し、退学させてみせます!!」
噂流すにしても限度があるだろ父上ェ!!
これ死ぬほど最悪なのは、情報のソースが公爵家当主だから信憑性があるんだよね。
どっちがヒロインだと思いますか?
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オルフ
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エルフィ