病弱貴族になった俺、治癒魔法をかけながら戦えばいいことが判明する(※血反吐付き) 作:池崎
「──というわけで、紆余曲折あった結果、僕とエルフィは貴族学院に足を踏み入れたってわけ」
「なるほどな……病弱体質を無理やり治癒魔法で動かしているから、あんなことになったのか。……戦闘中に身体強化魔法が切れるのは結構致命的じゃないか?」
魔毒症であることを省き、ある程度の事情をアストルに説明すると、彼女は顎に手を当てながら俺の致命的な弱点を指摘した。
……まあ、その結果が腹部貫通だからな。
「いずれ克服できる課題だとは思うよ。ただ、話の途中で──ゴボッ! げほっ、こんな感じで血反吐を吐いちゃうことがあるから申し訳な──どうしたの?」
「やはり血が似合──ハッ、いやなんでもない。【
「ありがとありがと」
デモンストレーションのように湧き上がってきた血反吐をぺっと吐き捨てると、アストルはなぜか微かに口角を上げて俺を見ていた。
呼びかけると正気に戻ったようだが……なんかちょっと怖い顔だったな。気のせいか?
「う、うむ、吐血については私かその従者が【清潔】をかけることで補おう。さして魔力も消費しないから、別段苦に感じることもない」
「本当に? それは助かるけど……大丈夫? 僕と一緒にいると割と悪評が足を引っ張ると思うんだけど……」
流れ的にアストルは俺と行動を共にしてくれるそう。
俺個人としては好感の持てる相手だし、ありがたいと心底思うが……アストルの身に何か起こる可能性は否めない。
「ともに過ごす相手くらい自分で選ぶさ。……他人の物差しでお前に突っかかった私が言うと説得力が無い気もするが」
「始まりは他人の物差しかもしれないけど、結局僕と友達になるって判断してくれたのはアストル自身じゃないか」
「ふふ、そう言ってくれると嬉しいよ」
アストルは口元に手を当てて笑った。
その仕草はまるで深窓の令嬢のようではあったが、俺としては笑った隙に見えた彼女の傷だらけの手のほうに強く好感を覚えた。
努力してきた証だ。どんな見せかけのものより綺麗だ。
「あ、授業終わったね。それじゃあエルフィに紹介したいから付いてきてよ」
「ああ、分かった。……私を歓迎してくれるだろうか?」
「大丈夫だと思うよ。あ、でも僕のお腹をぶち抜いた件は黙っておいたほうが良いと思うよ。最悪学院が焼け野原になる」
「何がどうしてそうなる!?」
自分で言っておいてなんだが、エルフィならやりかねないと思ってしまった。うん……普通にやりそう。
「腹だけ破けた運動着をどう誤魔化すか……」
「……空けたのは私だ。あとでひっそり買っておく」
「本当にお金無いから助かる。ありがとう」
今はもう制服に着替えているから、見た目でバレることは恐らく無い。だけどエルフィは変に勘が鋭い時があるから、バレるかバレないかはもう運次第みたいところがあるのだ。
「実家の支援を受けられないのはキツイな……」
「うん。だから休みの日を使って働こうかなって思ってる」
「公爵家の子息がアルバイトなど周りは驚くだろうな」
確かに。
そもそも噂を払拭しない限りどこも雇ってくれない説があるんだよなぁ……もう冒険者になるしかない気がしてきた。
☆☆☆
「はい、エルフィ。こちらアストル・エイニール。体術の講義で気が合って友達になったんだ」
「……アストル・エイニールだ。よろしく頼む」
「わたくしはエルフィ・セヴェスティアです。よろしくお願いいたします」
表面上はニコニコしていて朗らかな自己紹介だった。
だが実際のところ、エルフィの目は警戒に満ち満ちていて、今のところはよろしくする気が一切無いことは付き合いの長さから分かる。
俺が友達だと紹介したことで、表面上はせめて取り繕おうとしたのだろう。
だが、握手する手にめちゃくちゃ力入れてるし──しかも力が弱すぎてアストルに全く気づかれていないことを気づいてムキになってるし──まるで主人を守る犬みたいだなと他人事のように思った。
握手を終え、アストルが俺に耳打ちをした。
「……他人の悪意に鈍感な自負がある私だが、それでも歓迎されていない気配をビシバシと感じるのだが」
「めっっっちゃ警戒してるね」
コソコソと会話する俺たちをジト目で見るエルフィ。
まあ、近づくことを許容してる辺りは、まだ我慢できてるほうなんじゃないかな。威嚇しないだけ全然マシ……ってマジで犬か猫じゃねーか。
とりあえず俺はエルフィに真摯に想いを伝えた。
「エルフィ、彼女は流布されてる悪評に踊らされることなく僕と友達になってくれたんだ。よく考えてみてよ、この状況で僕と友達になることのメリットの無さを」
「……ヴァイルー家と何らかの形で繋がろうとしているのでは」
「僕の事情についてはある程度伝えたよ。それでもなお一緒にいてくれるんだ」
「……むぅ」
エルフィはぷっくりと頬を膨らませた。
警戒だけでなく、どこか嫉妬のようなものも感じる。
そんなことしても可愛いだけだぞ。
「エルフィさんと言ったか。言葉では何とでも言えるだろうから、私が下心なくアルライトと友誼を交わしていることは行動で判断して欲しい」
「……分かりました。そこまで言うのであれば、一旦信じることにします。けれど、アル様を傷つけるようなことがあれば──焼きます」
「ひょぇ……あ、あぁ分かった」
アストルは一瞬白目を剥いた。
右往左往する視線は罪悪感からだろうか。
まあ、アレは傷つけるうちに入ってないっしょ。ノーカンノーカン。
ニットのセーターに安全ピン通したみたいなもんよ。
「……ふぅ、どうでしたか体術の講義は」
「面白かったよ。新たな発見もあったし」
「……わたくしはつまらなかったです。基礎を振り返るという意味では、よくできた講義だと思いますが……」
エルフィの魔法の実力は今やかなりのものになっている。
オルフさんが師匠なのであれば基礎はきっちり極めさせるだろうし、復習の必要が無い振り返りほど退屈なものは無いからな。
「魔術か。私は使えないからな。羨ましい限りだ」
「あれ、そうなんだ?」
「家系魔法の一つだ。身体強化しか使えない代わりに、体術と身体強化魔法の才能を底上げするという効果のな」
エイニール家は途轍もなく脳筋一家であることが分かった。
まさか魔法を捨ててまで体術に特化させるとはな。
「そりゃ僕のお腹くらい──お腹空いたね」
「……アル様、わたくしに何か隠していませんか?」
「……エルフィに隠し事なんてするわけないじゃないか」
アストルがお前何やってんだみたいな表情で俺を睨んだ。
ごめんて。つい口が滑って…全部言ってないから!!
「まあ良いでしょう」
良かった許された〜。
どっちがヒロインだと思いますか?
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オルフ
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エルフィ