病弱貴族になった俺、治癒魔法をかけながら戦えばいいことが判明する(※血反吐付き) 作:池崎
「うーん……たまに血噴き出すなぁ……長期の運用はまだ無理っぽいかな」
「【
「見た目は派手だけどすぐ治るから大丈夫だよ。それにほら──部屋が汚れてもエルフィの魔法で何とかなるし」
「わたくしこんなことのために魔法覚えたわけじゃないんですけど!!!」
どうして……どうして……とシクシク泣き真似をするエルフィに多少の罪悪感を覚えつつ、彼女はチラチラこっちを見てアピールをしてくるので軽くハグをした。
「……はふぅ……ゆるします」
「僕から謎の成分でも出てるの……? 最近やけに接触が多いけどさ。いや、嫌とかじゃないからそんな泣きそうな顔しないで」
「……抱きついてると、ちゃんと生きてるって感じがするので」
エルフィは俺の胸に顔を埋めながらそんなことを言った。
……うん、それを言われたら何も言えないな。
「それにしても……エルフィは魔法使うの本当に上手くなったね。魔力操作に関しては僕と同じくらい
「ふふふ、アル様に褒められると嬉しいです」
1年前くらいだったか。
エルフィは急に魔法を使うようになった。
最初は簡単な火を灯す魔法だったり、小さな風を起こす魔法だったのだが、最近のエルフィは風と水の複合魔法である【清潔】を始めとして、高難易度の魔法をどんどん使えるようになったのだ。
魔力操作の練度もみるみるうちに上がっていて、俺はどうして急に魔法を使えるようになったのかと聞いたのだが、エルフィは「ないしょです」と耳元で囁いた。
……まあ、十中八九オルフさんに教わってるだろうけど。
俺は魔毒症にかかって以来、痛みと苦しみでほとんど寝れていない生活を送っている。
1日平均で2時間も寝れたらいい方なのだが……1年前から、いつも寝る時間辺りでエルフィがいなくなっていることに気づいた。
最初はオルフさんと逢引でもしてんのかな、と少しNTRを食らったような気分になっていたが、どうにも毎回目が死んだ状態で帰ってくるから、何か違うなと思っていた。
そんな矢先に魔法を使い始めたのだから、エルフィがオルフさんに魔法を習っていることは確実だろう。
まあ、エルフィが何も言わないなら俺も何も言わない。
その得た力を使って俺を助けてくれていることは事実だし。
感謝はすれど、疑うことなんてしない。
「特に【
「絶対そんな用途じゃないと思います」
「…………(ニコッ)」
「誤魔化した!!! ……もぅ、わたくし少しお掃除行ってきますからね」
「うん、気をつけて」
笑顔と呆れの混じった表情でエルフィは部屋を出ていく。
俺が治癒魔法の発動に成功してから、エルフィは更に笑顔が増えてきた。まあ、血反吐を吐くとその度に毎回苦しそうな顔をするものだから、できれば精度を上げたいところなんだが。
それでも日中は常に治癒魔法をぶっ続けで発動し続けてるお陰で、健康体のまま1日を過ごすことができている。
食欲もそれ相応に出てきたし、なかなか良い兆しだ。
残念ながら寝ている間に魔法を発動させることはできないので、睡眠時間に関しては……お察しってやつだな。
いずれこの問題も解決したいところだ。
「……さて、ぼちぼち次のステージに行きたいね」
少なくともエルフィとオルフさんへの恩返しのための行動はしたいところ。
日常的に動けるようになったとはいえ、未だに俺は軟禁中の身だからな。
「追放された後に何をしようかな。冒険者とかになるのが良いのか、はたまた定職に就いたほうがいいか」
勘違い……じゃなければ、エルフィは俺にある程度好意を抱いてくれていると思う。勿論、それが恋心でなく家族に向ける親愛である可能性もある……というか俺はそっちだと思ってる。
だから、俺がこの家を追放された後も付いてきてくれるとは思うんだけど……不自由な生活は絶対にさせたくねぇ。
「身体強化も慣れてきたし、そろそろ格闘訓練でも──」
「──アル様っ!! 大変です!」
突如息を切らせたエルフィが部屋に入ってきた。
相当焦っているようで、瞳に渦巻く憂いの感情から良い話では無いことは少なくとも明らかだろう。
「どうしたんだい、エルフィ」
「はぁ……はぁ……当主様が、こちらに来ると」
「父上が? また隣の部屋を使うんじゃなくて?」
「ええ、アル様を訪ねるとのことです。メイド長から直々に言われたので、間違いないかと」
……ロミュエル・ヴァイルー。
脳裏に過るかつての父上の記憶が、俺の心臓に早鐘を打たせた。
アルライトとしてのトラウマが、未だに体を蝕んでいるらしい。
人格が統合してフラットに見れるようになったとはいえ、幼少期の扱いを忘れたわけじゃない。心の奥底では恨みが鎌首をもたげている。
……落ち着け。落ち着け
俺は
深呼吸をして、俺はエルフィにニコリと笑いかけて言う。
「通して良いよ。元より僕に選択権は無いけど、嫌だって言ったらエルフィは全霊をかけて父上を止めるでしょ?」
「ええ……アル様が嫌だと言ったら、開口一番で魔法をぶち込んでやろうと思いました」
「それはやめたげて」
父上がどうなろうと知ったこっちゃないが、恨みを買ってエルフィが傷つくことだけは許容できない。……というか力を手にしたことで容赦って言葉を忘れてないか??
にこやかにウフフと笑う銀髪ポニテメイドの姿に俺は戦々恐々とした。
「ですがアル様は大丈夫なのですか?」
「うん。今更何を言われたって良いよ。それに……治癒魔法が形になったら報告するつもりだったからね」
「ええ! どうしてですか!?」
エルフィは酷く驚くとともに、何かを思い至ったのかどこか痛いものを見るような表情で俺を見た。……あー、これは勘違いしてるな。
恐らくエルフィは俺がまだ父上のことを信じたいと思っているのだろう。さすがにあの扱いをされて本家に戻りたいとは思わないぞ俺は。
「隠しておいたほうが面倒なことになるからね。別に治ったわけじゃないんだし、人に治癒魔法をかけられるわけじゃない。父上基準で言えば無能なのは変わらないよ」
「アル様は無能なんかじゃなありません。魔法が無くたって、魔毒症だったとしても、替えの利かない唯一の存在です」
「ありがとう。君がそう言ってくれるだけで僕は良いんだよ。今更父上に擦り寄る気もなければ、家族としての情を期待しているわけじゃないんだ。話すくらいどうってことないよ」
「……分かりました」
エルフィはまだ納得していないようだったが、渋々といった表情で頷いた。
言った通り、俺は確かに擬似的に魔毒症を克服したが、魔法を十全に扱えるわけでもなければ、自分の体以外に治癒魔法を行使できるわけじゃない。
いやまあ、できるっちゃできるけど、俺の体が爆散することを引き換えになるから実質できねぇのである。
ははは、と遠い目をする俺。
丁度そのタイミングで、部屋の扉が無造作に開け放たれた。
「入るぞ」
「入ってから言われても……」
「!?!?!?!?」
父上死ぬほど驚いててワロタ。
そりゃ床に伏せってるはずの無能が立ち上がって言い返してきたらビビりますわ
どっちがヒロインだと思いますか?
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オルフ
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エルフィ